※2018年5月10日:
当初1本の記事だった「解説&HCK編」を「その1:解説編」(前編)と「その2:HCK編」(中編)に分割しました。本記事は「解説編」となります。
※2018年11月、2020年12月追記
さらにコネクタの種類をはじめ大幅に追記を行いました。
※2021年6月追記
リッツ線構造について、その他一部追記
2017年に思いつきで、「手持ちのイヤホンケーブルのレビューしようかな」とツイートしたことが発端で書き始めたネタでございます。以降、様々なご要望で追記を繰り返しています( ̄。 ̄;)。
というわけで、リクエストの多かった中華イヤホンケーブルについての「解説編」です。中華ケーブルの場合記載元がハッキリしなかったり、記載仕様がいまいち適当だったりというのも多いのですが、「一般的な」オーディオリケーブルで記載されているものを参考にしつつまとめてみました。あくまで目安としての情報ですので、個々の正確性について担保するものは一切ありません。また異論なども各種あると思いますが、何が正解か、という議論は別にお任せしたいと思います。ここではネットなどで多く記載されている情報をまとめたもので、中華ケーブルを購入する際の参考になれば、という意図での「解説」となります。あらかじめご了承いただきご覧いただければ幸いです。
■ イヤホンケーブルのレビューについて
■ イヤホンのコネクタ形状・対応するケーブルを確認する
またケーブルの種類以外にもタグではより詳細な絞り込み検索ができるようにしています。詳細については以下の記事を参照ください。
→ 過去記事: 【雑記】 私のブログの「レビュー記事の歩き方」。いろいろな視点で過去レビューを手軽に検索、参照いただくための方法について。
・高純度銅線 / 無酸素銅線(OFC線、OFHC線など)・単結晶銅線(OCC線)など
・銀メッキ線・銀コート銅線(銅線は主にOFC、一部単結晶銅線もあり)
・混合線(銀メッキ線と銅線のミックス、銀線と銅線のミックスなど)
・純銀線
・金メッキコート銅線(銅線はOFCまたは単結晶銅線)
・各合金線(銅合金、AuAg合金、希少土合金など)
などがあります。
中心となる銅線では「純度(Nine)」と「線材の芯数(Core)」、さらに線材の太さ、場合によっては線材の加工方法(手編み線、撚り線等)、ミックスの方法(線材の種類等)あたりでバリエーションが考えられます。
「純度」は「99.995%」=4N、「99.9999%」=6N、というように9の数でNの値が決まります。一般的に高純度イヤホンケーブルは「4N以上」の純度になります。ただ中華イヤホンケーブルの表記で多い「7N」など極端に純度の高いケーブルはちょっと基準が違う気がします(じゃないとそんなに安価には流通してないうえに音質的には純度が高すぎるとむしろ音が細るという話もある)ので、以降のケーブルレビューで紹介するケーブルについてはN値の高い低いにこだわらず「高品質とメーカーが言ってるよ」くらいの認識で見て頂く方が無難でしょう。
「芯数」は中華ケーブルの場合は一般的に編み込まれた線材の本数を差します。たとえば最もシンプルな「4芯ケーブル」(4 Core)というと、被膜で覆われたケーブル線材を4本用意し、それぞれにR信号とL信号および左右のGNDを結線します。4本のケーブルは工業製品ではより全体を被膜でまとめますが、中華ケーブルでは手編みしてまとめます。これが8芯になるとそれぞれに2本ずつ、16芯だと4本ずつを結線(2×4=8、4×4=16ですね)します。なお、付属ケーブルやメーカー品のケーブルでは+/-の線をひとつの被膜に入れるパターン(2芯)や、左右も含めてひとつの被膜に入っているケーブル(1芯)が一般的ですね。
ケーブル線材の太さは当然太い方が伝達する情報量が増えますが、金属線ですので太ければそれだけケーブルが固くなり使い回しに多少影響します。実際にはこれらの線材は約0.05mm(24AWG)、0.06mm(22AWG)、0.08mm(20AWG)といった極細の線を数本~数十本使って線材を作り、その本数で太さが変わります)。また単結晶銅線などより高純度な材質で太さのあるケーブルは線材価格を反映して比較的高価なケーブルになる傾向にあります。
いっぽう8芯・16芯などのケーブルは比較的少数の線で構成された細めの線材を複数編み込んだもの。最初から編み込まれたケーブル以外にも細い線材を「手編み」する場合も多くあります。芯数が多ければ細い線材の組み合わせでも太い線材と同様の情報量を確保しつつ、より柔らかくしなやかなケーブルが作れます(線材を覆う表皮の素材が弾力があって固い場合もあります)。また異なる材質の線材によるミックス線を作りやすいのも特徴ですね。
そして、太い線材を使用するより比較的材料原価を抑えることができます。もちろん編み込む工数(中華ケーブルには「手編み」のケーブルも多い)はそのまま人件費になるわけですが、どうも「人件費は(安いところを使えば)コントロールできるけど、材料原価は変えられない」という発想なのか、中華イヤホンケーブルではこのような8芯以上の手編みケーブルが非常に多いのも特徴的です。なお、芯数の多いケーブルは中低域が弱い、という話は、伝導性の低い材質の細い線材の組み合わせの場合はあるかもしれませんが、ケーブルの線材によって一概にはいえないなと思っています。
(追記)ちなみに、線材にも「ブランド」があり、「7N」など表記の怪しいケーブルの多くは中国製の「ノーブランド」品です。世界的に最も認知されている「産地」は台湾のの万隆製のもので、この地域には高級オーディオケーブルでも採用される線材メーカーが数多く存在しているようです。最近では中華ケーブルでも競争の激化により品質が向上しており、「台湾製の線材を使用」という表記も増えてきました。これらの線材ではいわゆる「盛った」表記はあまり行われないため、「5N」や「4N」といった本来の記載になっています。つまり、グレード差は「台湾製5N > 中国製7N(?)」となり、価格も台湾製5N線材を使ったケーブルのほうが(原価が高い分)高い設定になっています。そして、日本の古河電工製など文字通りの「ブランド品」の線材はさらにその上のグレードになります。
■ケーブルの「材質」の違いについて
次に、ケーブルの材質の違いや選び方がわからない、というご意見もときどきいただきますので、その辺をざっくり説明します。すでによくご承知の方も多いと思いますが、適当に読み飛ばしていただければと思います。
【高純度銅線(OFC/OCCなど)】
イヤホンケーブルに限らずさまざまなAVケーブルで使用させる最も一般的な材質が銅線です。ただ、交換用イヤホンケーブルであえて「高純度銅線」と書いてある場合はケーブルの「純度」を高めることでよりイヤホンの特性を強調させることができます。高純度な無酸素銅(OFC:Oxygen-Free Copper、3N以上の高純度銅線)や、結晶化によりさらに不純物を取り除いた単結晶銅線(OCCという表記の場合もあり)などの素材が中華ケーブルでも用いられています。なお、本来の「OCC」は正確には「PCOCC」(Pure Crystal Ohno Continuous Casting process)銅線と呼ばれる古河電工が開発した線材で、製造元の確かではない単結晶銅線のOCC表記は「OCCみたいな線材」という認識のほうが近いでしょう。またOFCでもより高純度なOFHC(Oxygen Free High Conductivity Copper)線のケーブルもリリースされています。
銅線は一般的な素材ですが、より高純度のケーブルは「中低域」の表現に厚みが出ると言われます。また純度が高く、「太さ」や「芯数」を確保することにより解像度および分離感の向上が期待できると考えています。特に「高純度OFC」や「OCC」の特徴が明確に出るケーブルではイヤホンの特性が強調され、より「濃い」音になります。また銅線の場合、線材の製造元によっても品質にはかなり差があり、素性の良くわからない中華線材の「7N OCC」より様々なブランドケーブルの線材で使用されている万隆など台湾製の「4N OFC」のほうが高純度・高音質、ということがあっても何ら不思議ではありません。また音質傾向もより高純度な銅線のほうが歪みなどの雑味のないスッキリした音になります。
【銀メッキ銅線/銀コート線】
いっぽう、銅線は酸化しやすいため、被膜で保護するほかメッキ処理による保護を行うことも少なくありません。このメッキの材質によりさらに音質特性に変化があります。一般的な錫(すず)メッキの場合はほぼ銅線の特徴をそのまま反映するようですが、銀メッキ処理を行った線材の場合、通常の銅線より高域の解像度が高くなる傾向にあるようです。
これは、銀の電導特性の関係で、銅線より高域に特徴があり、さらにイヤホンケーブルでは一般的に高域の信号は線材の外側を通る、と言われていることから、銀メッキ処理を行うことで「高域は銀、中低域は銅」の「いいとこどり」の特徴をもつケーブルになる、という考え方となるようです。リケーブル用の中華イヤホンケーブルでは、これらの銅と銀の材質的な特徴から、多く使われる線材に「銀メッキ銅線」が多用される傾向にあります。ただケーブルの太さや銀メッキの処理具合によって当然バランスは大きく異なるため、一概に「銀メッキ銅線」が同じ傾向の音にはならず、同じ「銀メッキ銅線」でも中華ケーブルの比較的安価な製品では結局は銅線のほうの印象が強くなるケースも多いようです。ただ、より高純度な銅線かつしっかりしたメッキ処理を行った高級な線材では全体の分離感および解像度を底上げしつつ、高域が伸びのあるキラキラした音に変化します。これらのより特徴が明確な線材は「銀コート線」「銀コート高純度銅線」など通常の「銀メッキ線」より少し表現を変えて区別する場合もあるようですね。こちらも銅線同様に材質やメッキの「線材の品質」で大きく音質が変わります。
【銀メッキ線&銅線のミックス線】
これら銅線と銀メッキ線を編み込んだ混合線(ミックス線)も中華ケーブルでは比較的多い線材です。ミックス線にはあらかじめミックスしたうえで被膜加工を行っているものと、それぞれの線材を手編みなどで編み込んだものがあり、中華ケーブルの8芯線、16芯線などでは後者のパターンが多くなっています。ミックス線は「高純度銅線」と「銀メッキ線」の両方の特徴を持っており、全体的な音域でのクオリティアップに比較的低コストで効果が得られます。中華ケーブルの8芯または16芯のミックス線では、中低域はよりメリハリが強調され、高域の伸びは強調される、よりアグレッシブなケーブルとなる場合が多いようです。
【各合金線】※追記
実はオーディオケーブルの世界では高純度線と同様に合金線も頻繁に利用されています。一般的な銅線と比較し、伝導率と強度の点でメリットがあり、オーディオ向けの線材も多く販売されています。ただ、例えば一般的な「銅合金」の場合、0.15%~0.7%といった極めて微量の錫(Sn)を含有した材質のため、敢えて「銅合金線」と記載しない場合もあります。この辺を細かく製品名に記載をはじめたのが「NICEHCK」のケーブル群で、新製品が出るたびに聞き慣れない素材が次々と採用され困惑される方も多いようです。個々のレビューでも紹介していますが、ほとんどの場合、それぞれのケーブルで使用されている線材自体は以前から存在しており、それぞれの分野で活用されていたりしています。それぞれの合金の傾向についてはレビューを参照ください。
【純銀線】【金メッキコート線】と表記上の真偽について
多少高価になりますが、銀メッキではなく純銀の線材を使用した高純度の「純銀線」ケーブルも存在します。国内で販売されている製品でも「純銀線」については、「高級ケーブル」の一種のブランド的位置づけになっています。しかし、中華ケーブルにおいての「純銀線」や「金メッキ線」などの高級線材の表記は線材の製造元などが明確でない場合以外は残念ながらアテにならないものが多いのも実情です。
「純銀線」は銅に比べて高域に特徴があり、中高域のポテンシャルをよりいっそう引き出す特徴があります。4Nなど非常に純度の高い純銀線は高域のギラつきや派手さより解像感や伸びの良さに特徴が有ります。また低域も締まりが良くなり一定の情報量がある(太さがある)ケーブルなら低域が細ること無く鳴ります。明瞭さや透明感を向上させたい場合、また高域の伸びの良さを活かしたイヤホンとの組み合わせに最適といわれます。また銅線より「高級」なため、ハイグレードなイヤホン用としても多く販売されていますね。
いっぽう一部の「純銀線」と呼称するケーブルのなかには、よりキラキラした音、場合によってはかなり高域がアグレッシブな傾向のケーブルもあります。ただこのように傾向が派手な「純銀線」ケーブルはより厚く銀メッキ処理された銅線であったり、銀メッキ銅線の芯材に極細の銀線を巻き付けたタイプの「銀メッキ線と銀線のミックス」というべきケーブルの場合が多いようです(この場合、中華ケーブル的には「純銀を使ってるケーブル」=純銀線、というニュアンスで表記のようです)。私のブログでは「謎銀線」や「偽銀線」「なんちゃって銀線」などと記述することもあります(^^;)。
※最近では以前の中華ケーブルでの純銀線の需要の高さを反映して、「本来の純銀線」を採用しつつ価格を抑えたケーブルも複数登場してきました。これらの製品ではAliExpressなどの製品ページで線材の材質検査の結果を掲載しているケースも多く、状況は今後改善されていきそうです。
他にも金メッキ処理を行った銅線である「金メッキ銅線」のケーブルもあります。(追記・修正)金メッキ線も価格によって品質には随分差がありますが、一般的には銀メッキ線が高域がより明瞭になる傾向に対し、金メッキ線はより高域がウォームになる傾向があります。ただ本記事を最初に掲載した時点では100ドルオーバーでも結構クセの強い製品もあり、より純度の高い金メッキ線は10万以上したりしていました。しかし最近はアンダー100ドル級、100ドル前後あたりの中華ケーブルでも比較的安定した傾向のものも増えていますね。
それでも中華ケーブルでは「金メッキ線」という分類よりは「製品ごと」で傾向が結構異なる場合もあります。100ドル前後、あるいはそれ以下の金メッキ線ではメッキ純度の記載は基本無いのですので、数万円~10万円で販売されている金メッキ線ケーブルとは「全くの別物」と考えておいた方がよさそうです。純度の高い金メッキ線は中音域の情報量が多いのが特徴。また解像度が高いものの傾向としては柔らかい音になることが多いようです(メッキ処理をしたベースの線材の傾向にもよります)。低価格のものは純度が低い場合と、「複合金メッキ線」の場合が考えられます。純度が低い=品質が低いケーブルでは特定の音域が細ったりバランスが崩れることも多くありました(2017年頃に購入した100ドルほどの中華金メッキ線はこのタイプでした)。
いっぽうの、「複合金メッキ線」は例えばパラジウムのメッキなどを下処理で行っているケースです。これらのケーブルではより高域の鮮やかさが強く、派手めの傾向になるケーブルも多く、これはこれで上手く使えば効果的にイヤホンをグレードアップできます。このように金メッキ線の音質傾向は線材によってまちまちのため、実際に試してみないとわからない、というのが正直なところです。前述の通り製品別で「評判の良いもの」「傾向がレビューされているもの」を選ぶのがよいと思います。
また、同じようなことは純銅線における「7N」などの純度表示にも当てはまり、正直「ある程度は盛って書いている」と最初から割り切っておく必要がある、と認識ください。私のブログでも線材の種類についてはあくまで目安として紹介し、取り回しや音の変化を中心に記載したいと思っています。
■線材の構成および撚り線、リッツ(Litz)線、同軸線などの構造について(2021年6月追記)
ここまで記載した通り、中華ケーブルではさまざまな線材を手編みしたものが比較的多く存在しますが、この編み込み自体も「撚り線」構造になっていてオーディオ的には意味があります。またイヤホン付属ケーブルの中にはこのように撚り線に編み込まれたケーブルをさらに被膜で覆い「リッツ(Litz)線」と記載されているケースも見受けられます。
リッツ線構造(Litz structure)は絶縁体のエナメル被膜でシールドされた線材を撚り線構造にすることでノイズを低減し情報伝達の正確性を向上させる手法のひとつとして確立されています。被膜でシールドされた2本の線を撚り線で束ね外周をさらに被膜でシールドした最もシンプルな構造を「タイプ1」として、リッツ線構造は「タイプ6」までの構造があるようです。
具体的には「タイプ1」線材をさらに束ねて撚り線構造にした「タイプ2」、さらに中央にコアとなる線材を配置し、そのまわりを束ねたタイプ2線材で撚り線構造にした「タイプ4」、そして同様にさらに太いコアを中心に今度はタイプ4線材を束ねて撚り線にした「タイプ6」と順を追って複雑になります。一般的に中華ケーブルで「リッツ線」と表記されている場合は「タイプ2」構造であることが多いのですが、最近では「タイプ4」および「タイプ6」構造の製品も登場し始めています。
例えば「NICEHCK BlueComet」は「タイプ4」リッツ線構造だと考えられるケーブルで、中国江西産の0.08mm 6N単結晶銅線を使用し、12本を中心部で撚り線にして薄い皮膜で覆い、その周囲を24本の線を撚り線にすることで覆う二重構造になっています。このように複数の被膜線を縄状に撚って構成するリッツ線構造(タイプ4)をとることで伝送時の高周波損失を最小限に抑える効果が期待できます。
一般的に高周波を流すケーブルでは表皮効果(より高周波が外周をながれる現象)と近接効果(近接する信号が損失する現象)により、高周波つまり「高域」が減衰しやすくなる傾向があります。そのため例えば銀メッキ線では高域が流れる外周分をより電導性の高い銀メッキで覆うことで高域の減衰を抑制しより伸びの良い音を実現します。いっぽうで低価格の高純度銅線ケーブルでは全体として十分な情報量をもちつつもやはり高域の減衰はあるため、相対的に「低域が強くなる」傾向になります。それに対して、線材のなかで中央部分を被膜で覆い、外周部と絶縁した「タイプ4」リッツ線構造のケーブルでは、構造的に高域の減衰を抑制し高純度銅線の特性を最大限に引き出すことができるのはと期待できます。
そして「LINSOUL Euphrosyne」および「NICEHCK BlueIsland」は最も複雑な構造である「タイプ6」リッツ線構造を採用しています。そのため非常に太さのあるケーブルですが、より高純度の線材に匹敵する高い音質特性を実現しているようです。
これらのケーブルでは、江西産の0.05mmの5N 単結晶銅線140本と0.05mm 5N OCC銀メッキ線224本使用し、銀メッキ線を束ねた中央のファイバーコアをしっかりと被膜で覆い、その外周をやはりそれぞれ被膜で覆われた「タイプ4」構造の銀メッキ線4束と高純度銅線4束を撚り線状に編み込んでいます。全体を覆うクリアカラーの被膜からはこの2種類の外周の束が2色の螺旋状のカラーリングに見えます。
このように圧倒的な複雑さをもつ構造で仕上げることにより、高純度銅線と銀メッキ線の2種類の線材の特徴を引き出すとともに、歪みなどの雑味のない滑らかで自然な表現力を持つ仕様になっています。
今後もこのような複雑な構造の線材も増えてくるのではと思われます。
■バランス接続/アンバランス接続について
リケーブルが可能かどうかに関わらず、通常のイヤホンは「3.5mmステレオ」プラグ仕様になっており、イヤホンによってはヘッドフォンで用いられる6.3mmプラグ用の変換コネクタが付属する場合もありますね。これらのステレオケーブルは「R」「L」「GND(-)」の3極で、次のバランス接続に対して「アンバランス」(不安定ではなく「バランスではない」の意味)接続と表記する場合も多いですね。
そしてリケーブルを行う場合の「理由」としておそらく最も多く考えられるのが「バランス化」です。最近は3万円~クラスの比較的低価格なDAP(デジタルオーディオプレーヤー)でも「バランス接続」をサポートしていますので「せっかく付いている機能ならば試してみたい」と思うのは当然の心理かな、と思います。今回はケーブルの「解説編」のためバランス接続についての詳細は割愛しますが、バランス接続では「R+」「R-」「L+」「L-」の4極(2.5mm)、さらに「GND」を加えた5極(4.4mm)のプラグ仕様があります。左右のマイナス極性が分離することでプレーヤー側の音の分離が向上し、より明瞭なサウンド特性になるというポジティブな特徴がある反面、3.5mmステレオでチューニングされたイヤホンの場合、音質傾向が変わってしまうことをネガティブに捉える方も結構多いようです。もっとも、メーカーの意図しない極端な傾向の線材へのリケーブルでも同様のことが起こる可能性もあります。この辺はマニア同士でもそれぞれの考え方や好みがあると思いますので、「これが正解」というのは特にないと思います。
ただ、個人的には、このようなバランス接続の傾向より、一般的にバランス接続に対応している「きちんと設計されたプレーヤー」では「アンバランスよりバランスのほうが出力が大きい」点に注目したいと思います。ある程度ポテンシャルが高いイヤホンの場合、リケーブルによる情報量のアップに対してDAP側の駆動力が不足するようなケースをバランス接続によって補ってくれる可能性が考えられます。リケーブルによるバランス接続が駆動力を稼ぐための「手段」になるという場合もあるわけですね。
■コネクタの違い、耳掛けの加工などについての補足
交換用イヤホンケーブルでは当然ある程度汎用性のあるコネクタを採用していることが前提となりますが、このコネクタにもいくつかの種類があります。特に2pinタイプには「合う/合わない」がありますので注意が必要です。
①「MMCXコネクタ」
中華イヤホンに限らず、「Shure SEシリーズ」など、リケーブル可能なイヤホンで最も多く使用されているコネクタ。そのため汎用性は最も高いのでリケーブルの際の敷居が低いのも特徴的。また音質アップだけでなく単純に現在使用中の付属ケーブルが断線した場合などの交換用という「本来の目的」で購入するケースも多いかもしれません。MMCXコネクタ採用で互換性で問題になるのは旧版のWestone UMシリーズなど本体形状の関係でコネクタ部品の太さによっては装着できないなどかなり限定的だと思います。しかしそれ以上に「接点不良」と呼ばれる接続部分の接触不良が起きやすかったっり、コネクタが外れやすかったりするなどの「相性」が起こりやすいのも事実です。音質面の影響も考慮し、MMCXを敬遠し次の2pinタイプを好むマニアの方も比較的いらっしゃいます。
中華イヤホンケーブルでは以前から使われているクロームメッキ加工された汎用部品タイプ(オヤイデ等で部品として販売されているコネクタと見た目は同じもの)が以前は多かったですが、最近は中華タイプの汎用品(アルミ製のタイプ)や各ブランドごとの独自タイプも増えてきました。
見た目は「汎用部品タイプ」が良いですが、「相性」的にはやはり比較的低価格なケーブルほど「外れ」遭遇率が多いかもしれません。できれば異なるメーカーのMMCX仕様のイヤホンを複数用意し、購入・到着後に接続に問題ないか確認し、トラブルがあればすぐに返品などの手続きを取った方が良いでしょう。AliExpressで購入の場合はセラーとの交渉が必要ですので、私も何度が不良返品していますがこの点はAmazon購入のほうが安心ですね。
②「2pinコネクタ」 ※ CIEM 2pin/中華 2pin/qdcタイプ/KZ(A/B、Cタイプ) / TFZタイプ
そしてよく混乱されがちなのが「2pin」コネクタです。もともと「2pin」コネクタは、私のブログでは「CIEM 2pin」と記載している0.78mmの埋め込み対応の2pinコネクタを挿します。ただ、中華ケーブルでは当時のKZ(AまたBタイプ)や「qdc」コネクタ、「TFZ」コネクタなどのカバー付きのコネクタ仕様でも汎用的に使えるコネクタ形状として、私のブログでは「中華2pin」と記載している埋め込み部分の浅いコネクタが登場。現在は「2pin」と記載する場合、この2種類のどちらか、となりました。
なお、それぞれの2pinのピン位置は互換性が有り、相互に使うことが出来ます。
つまり、以下の内容について結論から先に言うと「使えるかどうか」だけで言えば、イヤホン側が
・0.78mm 中華2pin(窪み無し/浅い窪み)
・0.75mm 中華2pin(KZ タイプA/タイプB、TRNなど)
・qdc互換 2pin(タイプC極性、qdc極性)
・TFZ互換 2pin(カバー付き 0.78mm 2pin)
の全てで、「0.78mm 中華2pin」「0.78mm CIEM 2pin」のケーブルを利用できます。もちろんqdcやTFZではqdcコネクタ(またはタイプC)やTFZコネクタ仕様のケーブルが使用できます。
実際のところ「CIEM 2pin」と「中華2pin」の違いについては以前から懸念されることが多いようです。この「CIEM 2pin」「中華2pin」という表記は私のブログ上で「区別」のために付けているもので正式な名称ではありませんが、「CIEM 2pin」は0.78mm仕様で本体側に四角い窪みがあるタイプのカスタムIEMにも対応できるように丸いコネクタ部分と2pinの間に四角い樹脂製の突起があるタイプのケーブルです。いっぽう、「中華2pin」はこの四角い突起が僅かにしか無いタイプのコネクタです。そのため「中華2pin」では本体側に窪みがあるイヤホンでは使用することができません。2pinは抜き差しにより緩くなる可能性があるため、qdcのようなカバー付きやCIEM 2pin用の窪みのあるタイプのほうがしっかりホールドできるのですが、最近は2pinタイプの中華イヤホンの多くは中華2pin対応で、中華以外の製品でもこのタイプのコネクタが増えています。また「TFZ」コネクタのように付属ケーブルはカバー付きですが、オプションケーブルでは以前はTFZ純正も中華2pinだった、というパターンもあります。
【2pinのコネクタ形状について】
リケーブル製品では2pinコネクタには「CIEM 2pin」「中華2pin」以外に「qdc」「TFZ」などのコネクタが選択できる場合があります。KZ/CCA/TRNやTFZなどイヤホンでは、純正ケーブルの2pinコネクタ部分の外周がカバー状に覆われています。KZについてはイヤホン本体側の形状で従来モデルの「Aタイプ」「Bタイプ」と最近のモデルの「Cタイプ」があり、TFZの場合はイヤホン本体のコネクタ部分のわずかな突起にあわせたイヤホンごとにカバー形状が異なる仕様になっています。
しかしリケーブルではKZの「A」「B」タイプと「TFZ」コネクタのイヤホンについてはカバー部分の無い2pin仕様(「CIEM 2pin」「中華2pin」)のケーブルをそのまま使用することができます。正確にはKZ「A」「B」およびTFZ、そしてqdc製イヤホンでより汎用的にリケーブルできるように「CIEM 2pin」を「改良」したのが実は「中華2pin」の「生い立ち」だったりします。
これに対して、「qdc」コネクタおよび「TFZ」コネクタですが、これらはその名の通り、「qdc」製イヤホンおよび「TFZ」製イヤホンで採用されているコネクタで、ピン位置などは通常の2pinと同じですが、それぞれカバーが付いた形状となっています。「TFZ」コネクタ(「TFZ」のほか、一部中華ブランドが採用)はカバーが比較的浅く、以前はTFZ純正のオプションケーブルでも「中華2pin」タイプでリリースされるなど、中華2pinで代用してもほとんど違和感がありません。最近ではNICEHCKやKBEARなどの中華ケーブルでTFZ用のカバー付きケーブルもリリースされています。
「qdc」コネクタはピンサイズが0.75mmとわずかに細く、カバーによってしっかり覆われた仕様になっています。そして「qdc」コネクタでは「CIEM 2pin」とは極性が異なっており(いわゆる「qdc極性」)、後述の通り「初期の中華2pin」ケーブルではこの「qdc極性」を採用していた時期がありました。そして「KZタイプC」コネクタではコネクタおよびカバー形状はqdcコネクタと互換性があるものの「CIEM 2pin」と同じ極性を採用している、という点で「リケーブルとして使えるものの厳密にはqdcコネクタとは異なる」というちょっとややこしい状態になっています。これについては後述します。
【2pinのコネクタの口径、0.78mmと0.75mmの違いについて】
2pinコネクタには「0.78mm」と「0.75mm」の2種類のピン口径が存在します。多くの2pinタイプのイヤホンは0.78mmを採用していますが、低価格中華イヤホンの「KZ」と中国のカスタムIEMで圧倒的な人気を持つ「qdc」は0.75mmを採用しています。このうちqdcは後述する「コネクタカバー形状」が独自のため、「qdc用」のケーブルを使用することが多いためあまり問題にはなりませんが、KZではこのピン口径の違いを気にする方もいるのではと思います。しかし結論から言うと(あまり違いは気にせず)リケーブルの際は「0.78mm」コネクタのケーブルで対応します。リケーブルでコネクタの穴がわずかに広がることで純正ケーブルが緩くなる可能性もありますが実際にはほぼ問題にはならないでしょう。
※(追記)よく「このケーブルのピン口径は何ミリですか?」という質問がありますが、KZ用など特に注記がない場合は0.78mmです。またイヤホン側の仕様も上記の通りKZやqdc以外はほぼ0.78mmと考えてよいでしょう。ただ頻繁に抜き差しをすることで緩くなるため、サイズが違うのでは?という質問をいただくことが多いようですね。
【「2pin」コネクタの極性について①】 「逆相」って何?
2pinコネクタは片方が+、もう片方が-の極性があります。前述の通り過去には多少の変遷がありましたが、現在は2pinの主要なタイプ「CIEM 2pin」「中華2pin」「qdc型(KZ/TRNタイプC、またはCIEM極性)」のすべてが同じ極性の設定になっています。耳掛け型のカナル型イヤホンの本体側からだと下記の写真の通り「上が+」「下が-」です。
そして、2pinコネクタで最も注意しなければいけないことは「逆相」で接続してしまうことです。「逆相」の場合、文字通り左右で定位が逆になって鳴るため非常に違和感のある音になりますし、機器の故障の原因ともなります。この逆相というのは「左右で異なる極性で接続されている状態」を指します。
しかし、よく間違われやすいのですが、左右とも逆につないだ場合は、逆相にはならず、動作も特に問題はありません。後述の「qdc」タイプのケーブルの場合、いわゆる「qdc極性」のためこの状態で接続される場合がありますが逆相にはならないため問題なく利用できます。
また写真のケーブルの様に耳掛け加工がされていないタイプの場合は+、-がわかりにくい場合があります。中華2pinコネクタの場合は-側に青色のマーキングがされています。また、マーキングが無く「R」「L」の表記が側面にプリントされている場合は左右ともプリント側を外側にすることが多いようです。
【「2pin」コネクタの極性について ②】(2018年-2019年追記)
もともとカスタムIEM用で使用されていた0.78mm 2pinコネクタ(本レビューでは「CIEM 2pin」と表記)は繰り返し記載しているとおり、装着時に+極性が上に来るようにイヤホンに接続します。国内のイヤホン専門店でも販売されている有名ブランドの「カスタムIEM用 2pinケーブル」は基本的にすべてこのコネクタで、極性は突起部分の窪みを参考に判断します。また現在販売されている「中華2pin」も同じ仕様で、TFZやKZ/CCAおよびTRNなど(A/B/Cタイプを問わず)の純正ケーブルも同じ極性です。
ただし「中華2pin」の場合については、以前の話ですが、2018年春頃までにリリースされた製品は初期のタイプで、極性が「qdc仕様」とよばれる、左右ともCIEM 2pinとは逆のものが出荷されていた時期がありました(いわゆる「qdc極性」です)。つまり耳掛けタイプ(シュア掛け)のイヤホンの場合装着時に上に来る方が左右とも「マイナス」となる極性です。
その後、リケーブル製品もミドルクラス、ハイグレード製品が充実したことで一時期各セラーとも「CIEM 2pin」タイプに変更したのですが、実際のイヤホンのほうが「窪みのある2pin」タイプの製品が著しく減少していることもあり、2018年秋以降の製品では「中華2pin」が復活しました。しかし、この秋以降に復活した「中華2pin」タイプは「CIEM 2pin」と同じ極性になっています。これはその後発売された「KZ ZSN」以降のモデルで採用された「KZタイプC」コネクタが形状的にはqdcコネクタと互換性のあるものの極性はCIEM 2pinと同じ、という独自仕様になったことに起因していると思われます。
ただどちらの場合も2pinの場合は左右で極性が異なる状態(つまり「逆層」ですね)となってなければ使用に支障はありませんし、音質的にも影響はないためリケーブル利用では問題はありません。
とはいえ、バランス接続などではどうしても極性の違いは気になると思います。そこで、中華ケーブルにおける見分け方ですが、主にEasy系(Yinyoo/Kinboofi/HiFiHear)のケーブルでは2pinの直下に「青色」のマーキングがある方が「マイナス」です。初期中華2pinではシュア掛け時にこのマーキングが上向きになります。HCKの場合も2018年春頃までの「中華2pin」ははqdc極性で、「CIEM 2pin」となった「CT1」「TDY1」「TYB1」を境にして、秋頃に復活した「中華2pin」では極性がCIEM極性になっています。私のブログでも耳掛け加工されているケーブルのレビューでは「中華2pin」「中華2pin CIEM極性」と区別して表記していますので参考にしてください。
また上記の通り「CIEM極性」でも「qdc極性」でも逆層(左右で+-が異なる)でなければ問題ないため、耳掛けのないタイプの2pinケーブルを使用する場合は特に断りがなければCIEM極性(青マークを下)で繋ぐようにしています。
【「qdc型(タイプC、またはCIEM極性)」仕様のイヤホン用ケーブル】
逆のパターンで、最近の「KZタイプC」仕様のイヤホン向けを想定し、「qdc型コネクタ」仕様の中華ケーブルも積極的にリリースされています。前述の通りqdcコネクタ=「qdc極性」と「KZタイプC」はピンの極性が異なりますが、さまざまな「KZタイプC」仕様のKZ製イヤホンでリケーブルを行い、「qdc型コネクタ」のケーブルで音質面の違いや問題な無いことを改めて確認していますので安心して選択いただいて良いと思います。
ただどうしても極性を併せたい場合は、これまで通り、現在のCIEM極性でリリースされている「中華2pin」ケーブルを選択いただくと良いと思います(突起部分はコネクタシールドなどを使用してカバーするのも良いですね)。安価に抑える場合は4mm口径のシリコンチューブを切って使用する方法もあります。
ちなみに現在はqdc型の中華ケーブルのほとんどは「qdc型(タイプC、またはCIEM極性)」仕様を採用しています。また「KZタイプC」と完全互換の「タイプC」を採用するTRN製のオプションケーブルも複数リリースされています。中華ケーブルブランドでは「KBEAR」「JSHiFi」「BINGMANGO」ブランドのケーブルでは「qdcコネクタ」と記載でも実際は「タイプC相当」(CIEM極性)になっていることを確認済みです。また比較的最近までqdc極性だったNICEHCKのqdcコネクタも2022年頃以降からは同様に「タイプC相当」(CIEM極性)になっています。
【コネクタが緩くなったら?】(2018年11月追記)
ちなみに、リケーブルによってコネクタが緩くなった場合ですが、イヤホン側に凹みのあるタイプではソフトレジンなどを使ってコネクタの凹みをきつくする方法もありますが、私の場合は多少強引ですが金属製の耳かき(手持ちのものを使ってます)でピンを僅かに「ハ」の字に広げています。
耳かきの先端は厚さが細く2pinの間に余裕ではいるので、ピンの先端部分に挟み込み、徐々にスライドさせながら広がってくる厚みでピンとピンの間にテンションをゆっくりかけ、わずかに「ハの字」になるようにします。少しずつ広げて実際にイヤホンに装着してみながら程度は確認します。もっとも、やり過ぎるとピンが折れる危険性があるのであまりお勧めする方法ではありませんのであくまで自己責任&参考までに。
また、「KZ Bタイプ」や「qdcコネクタ」などカバー付きのコネクタが緩くなった場合、つまりカバーで覆う部分が削れてしまった場合などは、外周にネジ緩み防止剤(「ねじロック」など)をほんの少し塗って外れにくくする方法もあるようですね。ただピンなどに防止剤が付着しないように気を付ける必要があります。
中華イヤホンケーブルのレビューについては以下の一覧を参照ください。また、それぞれのケーブルレビューで紹介している線材ごとの特徴やコネクタの種類については以下の解説編でご質問などを反映し随時追記しておりますので都度ご覧頂ければと思います。
→ 過去記事(一覧): イヤホンケーブルのレビュー■ イヤホンのコネクタ形状・対応するケーブルを確認する
また私のブログでは中華イヤホンを中心にさまざまなリケーブル可能な製品をレビューしていますが、「このイヤホンはどのコネクタを採用しているのだろう」「このケーブルが使えるイヤホンはどんなものがあるだろう」などが多少でも分かりやすいように、各レビューに「コネクタ」と「リケーブル」のタグを付けています。「タグ」については「タグ絞り込み検索」で抽出することが可能です。
またケーブルの種類以外にもタグではより詳細な絞り込み検索ができるようにしています。詳細については以下の記事を参照ください。
→ 過去記事: 【雑記】 私のブログの「レビュー記事の歩き方」。いろいろな視点で過去レビューを手軽に検索、参照いただくための方法について。
■ケーブルの種類の違いを簡単におさらい
私が自分で購入したケーブルの紹介、ということで、今回は「MMCXコネクタ」または「2pinコネクタ」に対応したリケーブル(イヤホンケーブルの交換)が可能なイヤホン用のケーブルを紹介しています。
イヤホンケーブルの材質もいろいろなものがありますが、ざっくり言うと私が自分で購入したケーブルの紹介、ということで、今回は「MMCXコネクタ」または「2pinコネクタ」に対応したリケーブル(イヤホンケーブルの交換)が可能なイヤホン用のケーブルを紹介しています。
・高純度銅線 / 無酸素銅線(OFC線、OFHC線など)・単結晶銅線(OCC線)など
・銀メッキ線・銀コート銅線(銅線は主にOFC、一部単結晶銅線もあり)
・混合線(銀メッキ線と銅線のミックス、銀線と銅線のミックスなど)
・純銀線
・金メッキコート銅線(銅線はOFCまたは単結晶銅線)
・各合金線(銅合金、AuAg合金、希少土合金など)
などがあります。
中心となる銅線では「純度(Nine)」と「線材の芯数(Core)」、さらに線材の太さ、場合によっては線材の加工方法(手編み線、撚り線等)、ミックスの方法(線材の種類等)あたりでバリエーションが考えられます。
「純度」は「99.995%」=4N、「99.9999%」=6N、というように9の数でNの値が決まります。一般的に高純度イヤホンケーブルは「4N以上」の純度になります。ただ中華イヤホンケーブルの表記で多い「7N」など極端に純度の高いケーブルはちょっと基準が違う気がします(じゃないとそんなに安価には流通してないうえに音質的には純度が高すぎるとむしろ音が細るという話もある)ので、以降のケーブルレビューで紹介するケーブルについてはN値の高い低いにこだわらず「高品質とメーカーが言ってるよ」くらいの認識で見て頂く方が無難でしょう。
「芯数」は中華ケーブルの場合は一般的に編み込まれた線材の本数を差します。たとえば最もシンプルな「4芯ケーブル」(4 Core)というと、被膜で覆われたケーブル線材を4本用意し、それぞれにR信号とL信号および左右のGNDを結線します。4本のケーブルは工業製品ではより全体を被膜でまとめますが、中華ケーブルでは手編みしてまとめます。これが8芯になるとそれぞれに2本ずつ、16芯だと4本ずつを結線(2×4=8、4×4=16ですね)します。なお、付属ケーブルやメーカー品のケーブルでは+/-の線をひとつの被膜に入れるパターン(2芯)や、左右も含めてひとつの被膜に入っているケーブル(1芯)が一般的ですね。
ケーブル線材の太さは当然太い方が伝達する情報量が増えますが、金属線ですので太ければそれだけケーブルが固くなり使い回しに多少影響します。実際にはこれらの線材は約0.05mm(24AWG)、0.06mm(22AWG)、0.08mm(20AWG)といった極細の線を数本~数十本使って線材を作り、その本数で太さが変わります)。また単結晶銅線などより高純度な材質で太さのあるケーブルは線材価格を反映して比較的高価なケーブルになる傾向にあります。
いっぽう8芯・16芯などのケーブルは比較的少数の線で構成された細めの線材を複数編み込んだもの。最初から編み込まれたケーブル以外にも細い線材を「手編み」する場合も多くあります。芯数が多ければ細い線材の組み合わせでも太い線材と同様の情報量を確保しつつ、より柔らかくしなやかなケーブルが作れます(線材を覆う表皮の素材が弾力があって固い場合もあります)。また異なる材質の線材によるミックス線を作りやすいのも特徴ですね。
そして、太い線材を使用するより比較的材料原価を抑えることができます。もちろん編み込む工数(中華ケーブルには「手編み」のケーブルも多い)はそのまま人件費になるわけですが、どうも「人件費は(安いところを使えば)コントロールできるけど、材料原価は変えられない」という発想なのか、中華イヤホンケーブルではこのような8芯以上の手編みケーブルが非常に多いのも特徴的です。なお、芯数の多いケーブルは中低域が弱い、という話は、伝導性の低い材質の細い線材の組み合わせの場合はあるかもしれませんが、ケーブルの線材によって一概にはいえないなと思っています。
(追記)ちなみに、線材にも「ブランド」があり、「7N」など表記の怪しいケーブルの多くは中国製の「ノーブランド」品です。世界的に最も認知されている「産地」は台湾のの万隆製のもので、この地域には高級オーディオケーブルでも採用される線材メーカーが数多く存在しているようです。最近では中華ケーブルでも競争の激化により品質が向上しており、「台湾製の線材を使用」という表記も増えてきました。これらの線材ではいわゆる「盛った」表記はあまり行われないため、「5N」や「4N」といった本来の記載になっています。つまり、グレード差は「台湾製5N > 中国製7N(?)」となり、価格も台湾製5N線材を使ったケーブルのほうが(原価が高い分)高い設定になっています。そして、日本の古河電工製など文字通りの「ブランド品」の線材はさらにその上のグレードになります。
■ケーブルの「材質」の違いについて
次に、ケーブルの材質の違いや選び方がわからない、というご意見もときどきいただきますので、その辺をざっくり説明します。すでによくご承知の方も多いと思いますが、適当に読み飛ばしていただければと思います。
【高純度銅線(OFC/OCCなど)】
イヤホンケーブルに限らずさまざまなAVケーブルで使用させる最も一般的な材質が銅線です。ただ、交換用イヤホンケーブルであえて「高純度銅線」と書いてある場合はケーブルの「純度」を高めることでよりイヤホンの特性を強調させることができます。高純度な無酸素銅(OFC:Oxygen-Free Copper、3N以上の高純度銅線)や、結晶化によりさらに不純物を取り除いた単結晶銅線(OCCという表記の場合もあり)などの素材が中華ケーブルでも用いられています。なお、本来の「OCC」は正確には「PCOCC」(Pure Crystal Ohno Continuous Casting process)銅線と呼ばれる古河電工が開発した線材で、製造元の確かではない単結晶銅線のOCC表記は「OCCみたいな線材」という認識のほうが近いでしょう。またOFCでもより高純度なOFHC(Oxygen Free High Conductivity Copper)線のケーブルもリリースされています。
銅線は一般的な素材ですが、より高純度のケーブルは「中低域」の表現に厚みが出ると言われます。また純度が高く、「太さ」や「芯数」を確保することにより解像度および分離感の向上が期待できると考えています。特に「高純度OFC」や「OCC」の特徴が明確に出るケーブルではイヤホンの特性が強調され、より「濃い」音になります。また銅線の場合、線材の製造元によっても品質にはかなり差があり、素性の良くわからない中華線材の「7N OCC」より様々なブランドケーブルの線材で使用されている万隆など台湾製の「4N OFC」のほうが高純度・高音質、ということがあっても何ら不思議ではありません。また音質傾向もより高純度な銅線のほうが歪みなどの雑味のないスッキリした音になります。
【銀メッキ銅線/銀コート線】
いっぽう、銅線は酸化しやすいため、被膜で保護するほかメッキ処理による保護を行うことも少なくありません。このメッキの材質によりさらに音質特性に変化があります。一般的な錫(すず)メッキの場合はほぼ銅線の特徴をそのまま反映するようですが、銀メッキ処理を行った線材の場合、通常の銅線より高域の解像度が高くなる傾向にあるようです。
これは、銀の電導特性の関係で、銅線より高域に特徴があり、さらにイヤホンケーブルでは一般的に高域の信号は線材の外側を通る、と言われていることから、銀メッキ処理を行うことで「高域は銀、中低域は銅」の「いいとこどり」の特徴をもつケーブルになる、という考え方となるようです。リケーブル用の中華イヤホンケーブルでは、これらの銅と銀の材質的な特徴から、多く使われる線材に「銀メッキ銅線」が多用される傾向にあります。ただケーブルの太さや銀メッキの処理具合によって当然バランスは大きく異なるため、一概に「銀メッキ銅線」が同じ傾向の音にはならず、同じ「銀メッキ銅線」でも中華ケーブルの比較的安価な製品では結局は銅線のほうの印象が強くなるケースも多いようです。ただ、より高純度な銅線かつしっかりしたメッキ処理を行った高級な線材では全体の分離感および解像度を底上げしつつ、高域が伸びのあるキラキラした音に変化します。これらのより特徴が明確な線材は「銀コート線」「銀コート高純度銅線」など通常の「銀メッキ線」より少し表現を変えて区別する場合もあるようですね。こちらも銅線同様に材質やメッキの「線材の品質」で大きく音質が変わります。
【銀メッキ線&銅線のミックス線】
これら銅線と銀メッキ線を編み込んだ混合線(ミックス線)も中華ケーブルでは比較的多い線材です。ミックス線にはあらかじめミックスしたうえで被膜加工を行っているものと、それぞれの線材を手編みなどで編み込んだものがあり、中華ケーブルの8芯線、16芯線などでは後者のパターンが多くなっています。ミックス線は「高純度銅線」と「銀メッキ線」の両方の特徴を持っており、全体的な音域でのクオリティアップに比較的低コストで効果が得られます。中華ケーブルの8芯または16芯のミックス線では、中低域はよりメリハリが強調され、高域の伸びは強調される、よりアグレッシブなケーブルとなる場合が多いようです。
【各合金線】※追記
実はオーディオケーブルの世界では高純度線と同様に合金線も頻繁に利用されています。一般的な銅線と比較し、伝導率と強度の点でメリットがあり、オーディオ向けの線材も多く販売されています。ただ、例えば一般的な「銅合金」の場合、0.15%~0.7%といった極めて微量の錫(Sn)を含有した材質のため、敢えて「銅合金線」と記載しない場合もあります。この辺を細かく製品名に記載をはじめたのが「NICEHCK」のケーブル群で、新製品が出るたびに聞き慣れない素材が次々と採用され困惑される方も多いようです。個々のレビューでも紹介していますが、ほとんどの場合、それぞれのケーブルで使用されている線材自体は以前から存在しており、それぞれの分野で活用されていたりしています。それぞれの合金の傾向についてはレビューを参照ください。
【純銀線】【金メッキコート線】と表記上の真偽について
多少高価になりますが、銀メッキではなく純銀の線材を使用した高純度の「純銀線」ケーブルも存在します。国内で販売されている製品でも「純銀線」については、「高級ケーブル」の一種のブランド的位置づけになっています。しかし、中華ケーブルにおいての「純銀線」や「金メッキ線」などの高級線材の表記は線材の製造元などが明確でない場合以外は残念ながらアテにならないものが多いのも実情です。
「純銀線」は銅に比べて高域に特徴があり、中高域のポテンシャルをよりいっそう引き出す特徴があります。4Nなど非常に純度の高い純銀線は高域のギラつきや派手さより解像感や伸びの良さに特徴が有ります。また低域も締まりが良くなり一定の情報量がある(太さがある)ケーブルなら低域が細ること無く鳴ります。明瞭さや透明感を向上させたい場合、また高域の伸びの良さを活かしたイヤホンとの組み合わせに最適といわれます。また銅線より「高級」なため、ハイグレードなイヤホン用としても多く販売されていますね。
いっぽう一部の「純銀線」と呼称するケーブルのなかには、よりキラキラした音、場合によってはかなり高域がアグレッシブな傾向のケーブルもあります。ただこのように傾向が派手な「純銀線」ケーブルはより厚く銀メッキ処理された銅線であったり、銀メッキ銅線の芯材に極細の銀線を巻き付けたタイプの「銀メッキ線と銀線のミックス」というべきケーブルの場合が多いようです(この場合、中華ケーブル的には「純銀を使ってるケーブル」=純銀線、というニュアンスで表記のようです)。私のブログでは「謎銀線」や「偽銀線」「なんちゃって銀線」などと記述することもあります(^^;)。
※最近では以前の中華ケーブルでの純銀線の需要の高さを反映して、「本来の純銀線」を採用しつつ価格を抑えたケーブルも複数登場してきました。これらの製品ではAliExpressなどの製品ページで線材の材質検査の結果を掲載しているケースも多く、状況は今後改善されていきそうです。
他にも金メッキ処理を行った銅線である「金メッキ銅線」のケーブルもあります。(追記・修正)金メッキ線も価格によって品質には随分差がありますが、一般的には銀メッキ線が高域がより明瞭になる傾向に対し、金メッキ線はより高域がウォームになる傾向があります。ただ本記事を最初に掲載した時点では100ドルオーバーでも結構クセの強い製品もあり、より純度の高い金メッキ線は10万以上したりしていました。しかし最近はアンダー100ドル級、100ドル前後あたりの中華ケーブルでも比較的安定した傾向のものも増えていますね。
それでも中華ケーブルでは「金メッキ線」という分類よりは「製品ごと」で傾向が結構異なる場合もあります。100ドル前後、あるいはそれ以下の金メッキ線ではメッキ純度の記載は基本無いのですので、数万円~10万円で販売されている金メッキ線ケーブルとは「全くの別物」と考えておいた方がよさそうです。純度の高い金メッキ線は中音域の情報量が多いのが特徴。また解像度が高いものの傾向としては柔らかい音になることが多いようです(メッキ処理をしたベースの線材の傾向にもよります)。低価格のものは純度が低い場合と、「複合金メッキ線」の場合が考えられます。純度が低い=品質が低いケーブルでは特定の音域が細ったりバランスが崩れることも多くありました(2017年頃に購入した100ドルほどの中華金メッキ線はこのタイプでした)。
いっぽうの、「複合金メッキ線」は例えばパラジウムのメッキなどを下処理で行っているケースです。これらのケーブルではより高域の鮮やかさが強く、派手めの傾向になるケーブルも多く、これはこれで上手く使えば効果的にイヤホンをグレードアップできます。このように金メッキ線の音質傾向は線材によってまちまちのため、実際に試してみないとわからない、というのが正直なところです。前述の通り製品別で「評判の良いもの」「傾向がレビューされているもの」を選ぶのがよいと思います。
また、同じようなことは純銅線における「7N」などの純度表示にも当てはまり、正直「ある程度は盛って書いている」と最初から割り切っておく必要がある、と認識ください。私のブログでも線材の種類についてはあくまで目安として紹介し、取り回しや音の変化を中心に記載したいと思っています。
■線材の構成および撚り線、リッツ(Litz)線、同軸線などの構造について(2021年6月追記)
ここまで記載した通り、中華ケーブルではさまざまな線材を手編みしたものが比較的多く存在しますが、この編み込み自体も「撚り線」構造になっていてオーディオ的には意味があります。またイヤホン付属ケーブルの中にはこのように撚り線に編み込まれたケーブルをさらに被膜で覆い「リッツ(Litz)線」と記載されているケースも見受けられます。
リッツ線構造(Litz structure)は絶縁体のエナメル被膜でシールドされた線材を撚り線構造にすることでノイズを低減し情報伝達の正確性を向上させる手法のひとつとして確立されています。被膜でシールドされた2本の線を撚り線で束ね外周をさらに被膜でシールドした最もシンプルな構造を「タイプ1」として、リッツ線構造は「タイプ6」までの構造があるようです。
具体的には「タイプ1」線材をさらに束ねて撚り線構造にした「タイプ2」、さらに中央にコアとなる線材を配置し、そのまわりを束ねたタイプ2線材で撚り線構造にした「タイプ4」、そして同様にさらに太いコアを中心に今度はタイプ4線材を束ねて撚り線にした「タイプ6」と順を追って複雑になります。一般的に中華ケーブルで「リッツ線」と表記されている場合は「タイプ2」構造であることが多いのですが、最近では「タイプ4」および「タイプ6」構造の製品も登場し始めています。
例えば「NICEHCK BlueComet」は「タイプ4」リッツ線構造だと考えられるケーブルで、中国江西産の0.08mm 6N単結晶銅線を使用し、12本を中心部で撚り線にして薄い皮膜で覆い、その周囲を24本の線を撚り線にすることで覆う二重構造になっています。このように複数の被膜線を縄状に撚って構成するリッツ線構造(タイプ4)をとることで伝送時の高周波損失を最小限に抑える効果が期待できます。
一般的に高周波を流すケーブルでは表皮効果(より高周波が外周をながれる現象)と近接効果(近接する信号が損失する現象)により、高周波つまり「高域」が減衰しやすくなる傾向があります。そのため例えば銀メッキ線では高域が流れる外周分をより電導性の高い銀メッキで覆うことで高域の減衰を抑制しより伸びの良い音を実現します。いっぽうで低価格の高純度銅線ケーブルでは全体として十分な情報量をもちつつもやはり高域の減衰はあるため、相対的に「低域が強くなる」傾向になります。それに対して、線材のなかで中央部分を被膜で覆い、外周部と絶縁した「タイプ4」リッツ線構造のケーブルでは、構造的に高域の減衰を抑制し高純度銅線の特性を最大限に引き出すことができるのはと期待できます。
そして「LINSOUL Euphrosyne」および「NICEHCK BlueIsland」は最も複雑な構造である「タイプ6」リッツ線構造を採用しています。そのため非常に太さのあるケーブルですが、より高純度の線材に匹敵する高い音質特性を実現しているようです。
これらのケーブルでは、江西産の0.05mmの5N 単結晶銅線140本と0.05mm 5N OCC銀メッキ線224本使用し、銀メッキ線を束ねた中央のファイバーコアをしっかりと被膜で覆い、その外周をやはりそれぞれ被膜で覆われた「タイプ4」構造の銀メッキ線4束と高純度銅線4束を撚り線状に編み込んでいます。全体を覆うクリアカラーの被膜からはこの2種類の外周の束が2色の螺旋状のカラーリングに見えます。
このように圧倒的な複雑さをもつ構造で仕上げることにより、高純度銅線と銀メッキ線の2種類の線材の特徴を引き出すとともに、歪みなどの雑味のない滑らかで自然な表現力を持つ仕様になっています。
今後もこのような複雑な構造の線材も増えてくるのではと思われます。
■バランス接続/アンバランス接続について
リケーブルが可能かどうかに関わらず、通常のイヤホンは「3.5mmステレオ」プラグ仕様になっており、イヤホンによってはヘッドフォンで用いられる6.3mmプラグ用の変換コネクタが付属する場合もありますね。これらのステレオケーブルは「R」「L」「GND(-)」の3極で、次のバランス接続に対して「アンバランス」(不安定ではなく「バランスではない」の意味)接続と表記する場合も多いですね。
そしてリケーブルを行う場合の「理由」としておそらく最も多く考えられるのが「バランス化」です。最近は3万円~クラスの比較的低価格なDAP(デジタルオーディオプレーヤー)でも「バランス接続」をサポートしていますので「せっかく付いている機能ならば試してみたい」と思うのは当然の心理かな、と思います。今回はケーブルの「解説編」のためバランス接続についての詳細は割愛しますが、バランス接続では「R+」「R-」「L+」「L-」の4極(2.5mm)、さらに「GND」を加えた5極(4.4mm)のプラグ仕様があります。左右のマイナス極性が分離することでプレーヤー側の音の分離が向上し、より明瞭なサウンド特性になるというポジティブな特徴がある反面、3.5mmステレオでチューニングされたイヤホンの場合、音質傾向が変わってしまうことをネガティブに捉える方も結構多いようです。もっとも、メーカーの意図しない極端な傾向の線材へのリケーブルでも同様のことが起こる可能性もあります。この辺はマニア同士でもそれぞれの考え方や好みがあると思いますので、「これが正解」というのは特にないと思います。
ただ、個人的には、このようなバランス接続の傾向より、一般的にバランス接続に対応している「きちんと設計されたプレーヤー」では「アンバランスよりバランスのほうが出力が大きい」点に注目したいと思います。ある程度ポテンシャルが高いイヤホンの場合、リケーブルによる情報量のアップに対してDAP側の駆動力が不足するようなケースをバランス接続によって補ってくれる可能性が考えられます。リケーブルによるバランス接続が駆動力を稼ぐための「手段」になるという場合もあるわけですね。
■コネクタの違い、耳掛けの加工などについての補足
交換用イヤホンケーブルでは当然ある程度汎用性のあるコネクタを採用していることが前提となりますが、このコネクタにもいくつかの種類があります。特に2pinタイプには「合う/合わない」がありますので注意が必要です。
①「MMCXコネクタ」
中華イヤホンに限らず、「Shure SEシリーズ」など、リケーブル可能なイヤホンで最も多く使用されているコネクタ。そのため汎用性は最も高いのでリケーブルの際の敷居が低いのも特徴的。また音質アップだけでなく単純に現在使用中の付属ケーブルが断線した場合などの交換用という「本来の目的」で購入するケースも多いかもしれません。MMCXコネクタ採用で互換性で問題になるのは旧版のWestone UMシリーズなど本体形状の関係でコネクタ部品の太さによっては装着できないなどかなり限定的だと思います。しかしそれ以上に「接点不良」と呼ばれる接続部分の接触不良が起きやすかったっり、コネクタが外れやすかったりするなどの「相性」が起こりやすいのも事実です。音質面の影響も考慮し、MMCXを敬遠し次の2pinタイプを好むマニアの方も比較的いらっしゃいます。
中華イヤホンケーブルでは以前から使われているクロームメッキ加工された汎用部品タイプ(オヤイデ等で部品として販売されているコネクタと見た目は同じもの)が以前は多かったですが、最近は中華タイプの汎用品(アルミ製のタイプ)や各ブランドごとの独自タイプも増えてきました。
見た目は「汎用部品タイプ」が良いですが、「相性」的にはやはり比較的低価格なケーブルほど「外れ」遭遇率が多いかもしれません。できれば異なるメーカーのMMCX仕様のイヤホンを複数用意し、購入・到着後に接続に問題ないか確認し、トラブルがあればすぐに返品などの手続きを取った方が良いでしょう。AliExpressで購入の場合はセラーとの交渉が必要ですので、私も何度が不良返品していますがこの点はAmazon購入のほうが安心ですね。
②「2pinコネクタ」 ※ CIEM 2pin/中華 2pin/qdcタイプ/KZ(A/B、Cタイプ) / TFZタイプ
そしてよく混乱されがちなのが「2pin」コネクタです。もともと「2pin」コネクタは、私のブログでは「CIEM 2pin」と記載している0.78mmの埋め込み対応の2pinコネクタを挿します。ただ、中華ケーブルでは当時のKZ(AまたBタイプ)や「qdc」コネクタ、「TFZ」コネクタなどのカバー付きのコネクタ仕様でも汎用的に使えるコネクタ形状として、私のブログでは「中華2pin」と記載している埋め込み部分の浅いコネクタが登場。現在は「2pin」と記載する場合、この2種類のどちらか、となりました。
なお、それぞれの2pinのピン位置は互換性が有り、相互に使うことが出来ます。
つまり、以下の内容について結論から先に言うと「使えるかどうか」だけで言えば、イヤホン側が
・0.78mm 中華2pin(窪み無し/浅い窪み)
・0.75mm 中華2pin(KZ タイプA/タイプB、TRNなど)
・qdc互換 2pin(タイプC極性、qdc極性)
・TFZ互換 2pin(カバー付き 0.78mm 2pin)
の全てで、「0.78mm 中華2pin」「0.78mm CIEM 2pin」のケーブルを利用できます。もちろんqdcやTFZではqdcコネクタ(またはタイプC)やTFZコネクタ仕様のケーブルが使用できます。
実際のところ「CIEM 2pin」と「中華2pin」の違いについては以前から懸念されることが多いようです。この「CIEM 2pin」「中華2pin」という表記は私のブログ上で「区別」のために付けているもので正式な名称ではありませんが、「CIEM 2pin」は0.78mm仕様で本体側に四角い窪みがあるタイプのカスタムIEMにも対応できるように丸いコネクタ部分と2pinの間に四角い樹脂製の突起があるタイプのケーブルです。いっぽう、「中華2pin」はこの四角い突起が僅かにしか無いタイプのコネクタです。そのため「中華2pin」では本体側に窪みがあるイヤホンでは使用することができません。2pinは抜き差しにより緩くなる可能性があるため、qdcのようなカバー付きやCIEM 2pin用の窪みのあるタイプのほうがしっかりホールドできるのですが、最近は2pinタイプの中華イヤホンの多くは中華2pin対応で、中華以外の製品でもこのタイプのコネクタが増えています。また「TFZ」コネクタのように付属ケーブルはカバー付きですが、オプションケーブルでは以前はTFZ純正も中華2pinだった、というパターンもあります。
【2pinのコネクタ形状について】
リケーブル製品では2pinコネクタには「CIEM 2pin」「中華2pin」以外に「qdc」「TFZ」などのコネクタが選択できる場合があります。KZ/CCA/TRNやTFZなどイヤホンでは、純正ケーブルの2pinコネクタ部分の外周がカバー状に覆われています。KZについてはイヤホン本体側の形状で従来モデルの「Aタイプ」「Bタイプ」と最近のモデルの「Cタイプ」があり、TFZの場合はイヤホン本体のコネクタ部分のわずかな突起にあわせたイヤホンごとにカバー形状が異なる仕様になっています。
しかしリケーブルではKZの「A」「B」タイプと「TFZ」コネクタのイヤホンについてはカバー部分の無い2pin仕様(「CIEM 2pin」「中華2pin」)のケーブルをそのまま使用することができます。正確にはKZ「A」「B」およびTFZ、そしてqdc製イヤホンでより汎用的にリケーブルできるように「CIEM 2pin」を「改良」したのが実は「中華2pin」の「生い立ち」だったりします。
これに対して、「qdc」コネクタおよび「TFZ」コネクタですが、これらはその名の通り、「qdc」製イヤホンおよび「TFZ」製イヤホンで採用されているコネクタで、ピン位置などは通常の2pinと同じですが、それぞれカバーが付いた形状となっています。「TFZ」コネクタ(「TFZ」のほか、一部中華ブランドが採用)はカバーが比較的浅く、以前はTFZ純正のオプションケーブルでも「中華2pin」タイプでリリースされるなど、中華2pinで代用してもほとんど違和感がありません。最近ではNICEHCKやKBEARなどの中華ケーブルでTFZ用のカバー付きケーブルもリリースされています。
「qdc」コネクタはピンサイズが0.75mmとわずかに細く、カバーによってしっかり覆われた仕様になっています。そして「qdc」コネクタでは「CIEM 2pin」とは極性が異なっており(いわゆる「qdc極性」)、後述の通り「初期の中華2pin」ケーブルではこの「qdc極性」を採用していた時期がありました。そして「KZタイプC」コネクタではコネクタおよびカバー形状はqdcコネクタと互換性があるものの「CIEM 2pin」と同じ極性を採用している、という点で「リケーブルとして使えるものの厳密にはqdcコネクタとは異なる」というちょっとややこしい状態になっています。これについては後述します。
【2pinのコネクタの口径、0.78mmと0.75mmの違いについて】
2pinコネクタには「0.78mm」と「0.75mm」の2種類のピン口径が存在します。多くの2pinタイプのイヤホンは0.78mmを採用していますが、低価格中華イヤホンの「KZ」と中国のカスタムIEMで圧倒的な人気を持つ「qdc」は0.75mmを採用しています。このうちqdcは後述する「コネクタカバー形状」が独自のため、「qdc用」のケーブルを使用することが多いためあまり問題にはなりませんが、KZではこのピン口径の違いを気にする方もいるのではと思います。しかし結論から言うと(あまり違いは気にせず)リケーブルの際は「0.78mm」コネクタのケーブルで対応します。リケーブルでコネクタの穴がわずかに広がることで純正ケーブルが緩くなる可能性もありますが実際にはほぼ問題にはならないでしょう。
※(追記)よく「このケーブルのピン口径は何ミリですか?」という質問がありますが、KZ用など特に注記がない場合は0.78mmです。またイヤホン側の仕様も上記の通りKZやqdc以外はほぼ0.78mmと考えてよいでしょう。ただ頻繁に抜き差しをすることで緩くなるため、サイズが違うのでは?という質問をいただくことが多いようですね。
【「2pin」コネクタの極性について①】 「逆相」って何?
2pinコネクタは片方が+、もう片方が-の極性があります。前述の通り過去には多少の変遷がありましたが、現在は2pinの主要なタイプ「CIEM 2pin」「中華2pin」「qdc型(KZ/TRNタイプC、またはCIEM極性)」のすべてが同じ極性の設定になっています。耳掛け型のカナル型イヤホンの本体側からだと下記の写真の通り「上が+」「下が-」です。
そして、2pinコネクタで最も注意しなければいけないことは「逆相」で接続してしまうことです。「逆相」の場合、文字通り左右で定位が逆になって鳴るため非常に違和感のある音になりますし、機器の故障の原因ともなります。この逆相というのは「左右で異なる極性で接続されている状態」を指します。
しかし、よく間違われやすいのですが、左右とも逆につないだ場合は、逆相にはならず、動作も特に問題はありません。後述の「qdc」タイプのケーブルの場合、いわゆる「qdc極性」のためこの状態で接続される場合がありますが逆相にはならないため問題なく利用できます。
また写真のケーブルの様に耳掛け加工がされていないタイプの場合は+、-がわかりにくい場合があります。中華2pinコネクタの場合は-側に青色のマーキングがされています。また、マーキングが無く「R」「L」の表記が側面にプリントされている場合は左右ともプリント側を外側にすることが多いようです。
【「2pin」コネクタの極性について ②】(2018年-2019年追記)
もともとカスタムIEM用で使用されていた0.78mm 2pinコネクタ(本レビューでは「CIEM 2pin」と表記)は繰り返し記載しているとおり、装着時に+極性が上に来るようにイヤホンに接続します。国内のイヤホン専門店でも販売されている有名ブランドの「カスタムIEM用 2pinケーブル」は基本的にすべてこのコネクタで、極性は突起部分の窪みを参考に判断します。また現在販売されている「中華2pin」も同じ仕様で、TFZやKZ/CCAおよびTRNなど(A/B/Cタイプを問わず)の純正ケーブルも同じ極性です。
ただし「中華2pin」の場合については、以前の話ですが、2018年春頃までにリリースされた製品は初期のタイプで、極性が「qdc仕様」とよばれる、左右ともCIEM 2pinとは逆のものが出荷されていた時期がありました(いわゆる「qdc極性」です)。つまり耳掛けタイプ(シュア掛け)のイヤホンの場合装着時に上に来る方が左右とも「マイナス」となる極性です。
その後、リケーブル製品もミドルクラス、ハイグレード製品が充実したことで一時期各セラーとも「CIEM 2pin」タイプに変更したのですが、実際のイヤホンのほうが「窪みのある2pin」タイプの製品が著しく減少していることもあり、2018年秋以降の製品では「中華2pin」が復活しました。しかし、この秋以降に復活した「中華2pin」タイプは「CIEM 2pin」と同じ極性になっています。これはその後発売された「KZ ZSN」以降のモデルで採用された「KZタイプC」コネクタが形状的にはqdcコネクタと互換性のあるものの極性はCIEM 2pinと同じ、という独自仕様になったことに起因していると思われます。
ただどちらの場合も2pinの場合は左右で極性が異なる状態(つまり「逆層」ですね)となってなければ使用に支障はありませんし、音質的にも影響はないためリケーブル利用では問題はありません。
とはいえ、バランス接続などではどうしても極性の違いは気になると思います。そこで、中華ケーブルにおける見分け方ですが、主にEasy系(Yinyoo/Kinboofi/HiFiHear)のケーブルでは2pinの直下に「青色」のマーキングがある方が「マイナス」です。初期中華2pinではシュア掛け時にこのマーキングが上向きになります。HCKの場合も2018年春頃までの「中華2pin」ははqdc極性で、「CIEM 2pin」となった「CT1」「TDY1」「TYB1」を境にして、秋頃に復活した「中華2pin」では極性がCIEM極性になっています。私のブログでも耳掛け加工されているケーブルのレビューでは「中華2pin」「中華2pin CIEM極性」と区別して表記していますので参考にしてください。
また上記の通り「CIEM極性」でも「qdc極性」でも逆層(左右で+-が異なる)でなければ問題ないため、耳掛けのないタイプの2pinケーブルを使用する場合は特に断りがなければCIEM極性(青マークを下)で繋ぐようにしています。
【「qdc型(タイプC、またはCIEM極性)」仕様のイヤホン用ケーブル】
逆のパターンで、最近の「KZタイプC」仕様のイヤホン向けを想定し、「qdc型コネクタ」仕様の中華ケーブルも積極的にリリースされています。前述の通りqdcコネクタ=「qdc極性」と「KZタイプC」はピンの極性が異なりますが、さまざまな「KZタイプC」仕様のKZ製イヤホンでリケーブルを行い、「qdc型コネクタ」のケーブルで音質面の違いや問題な無いことを改めて確認していますので安心して選択いただいて良いと思います。
ただどうしても極性を併せたい場合は、これまで通り、現在のCIEM極性でリリースされている「中華2pin」ケーブルを選択いただくと良いと思います(突起部分はコネクタシールドなどを使用してカバーするのも良いですね)。安価に抑える場合は4mm口径のシリコンチューブを切って使用する方法もあります。
ちなみに現在はqdc型の中華ケーブルのほとんどは「qdc型(タイプC、またはCIEM極性)」仕様を採用しています。また「KZタイプC」と完全互換の「タイプC」を採用するTRN製のオプションケーブルも複数リリースされています。中華ケーブルブランドでは「KBEAR」「JSHiFi」「BINGMANGO」ブランドのケーブルでは「qdcコネクタ」と記載でも実際は「タイプC相当」(CIEM極性)になっていることを確認済みです。また比較的最近までqdc極性だったNICEHCKのqdcコネクタも2022年頃以降からは同様に「タイプC相当」(CIEM極性)になっています。
【コネクタが緩くなったら?】(2018年11月追記)
ちなみに、リケーブルによってコネクタが緩くなった場合ですが、イヤホン側に凹みのあるタイプではソフトレジンなどを使ってコネクタの凹みをきつくする方法もありますが、私の場合は多少強引ですが金属製の耳かき(手持ちのものを使ってます)でピンを僅かに「ハ」の字に広げています。
耳かきの先端は厚さが細く2pinの間に余裕ではいるので、ピンの先端部分に挟み込み、徐々にスライドさせながら広がってくる厚みでピンとピンの間にテンションをゆっくりかけ、わずかに「ハの字」になるようにします。少しずつ広げて実際にイヤホンに装着してみながら程度は確認します。もっとも、やり過ぎるとピンが折れる危険性があるのであまりお勧めする方法ではありませんのであくまで自己責任&参考までに。
また、「KZ Bタイプ」や「qdcコネクタ」などカバー付きのコネクタが緩くなった場合、つまりカバーで覆う部分が削れてしまった場合などは、外周にネジ緩み防止剤(「ねじロック」など)をほんの少し塗って外れにくくする方法もあるようですね。ただピンなどに防止剤が付着しないように気を付ける必要があります。
YXX4822を買ってKZ AS12等に繋いだら逆相でした。
説明にはZSN、ZSX等対応とあったので信じたのですが、、、
つまりCタイプ対応と記載されている物以外は極性が反対と理解するという事ですかね?