KZ ES3

まさかのKZ製イヤホン3連続です(笑)。しかも先日の「ZS6」も含めると10月だけでKZのレビューだけで4本目・・・(゜д゜)。さすがに先日の「ZST Pro」「新ZS5」のレビューでも多少のやりすぎ(買いすぎ)感も自覚はあるのですが、まったく懲りてる感がない自分が残念ですね( ´ ▽ ` )。

というわけで、今回紹介するのは「KZ ES3」となります。KZ-ES3
KZ(Knowledge Zenith)最新の1BA+1DDハイブリッド構成のイヤホンです。先日アップデート版レビューを行った「KZ ZST Pro」「ZST」と同じ構成ですが、今回は全く新しいハウジングデザインの製品として発売されました。
「KZ ZST」のデザインに元ネタ(T○Z)があるのに対し、「KZ ES3」はおそらくKZのオリジナルだとおもいますので、「ZS6」「ZS5」をはじめとするパ○リ体質からハイブリッドもいよいよ脱却するのか、と同社のイヤホンをこれまでも大量買い(滝汗)してきた関係上、我が子の成長と独り立ちを見るようで感慨深いものがあります(大げさ)。

ところで、実際の販売は中国の通販サイト「GearBest」あたりで先行しており、すでに9月頃に入手されている方もぼちぼちいらっしゃるようです。今回、ようやくAliExpressでも販売されました。
AliExpress(Easy Earphones):KZ ES3

さらに日本のアマゾンで出店しているマーケットプレイス「WTSUN Audio」「Kinboofi」などでの取り扱いも開始されています。
Amazon.co.jp(WTSUN Audio):KZ ES3
Amazon.co.jp(Kinboofi):KZ ES3

私自身も10月に入ってからGearBestでオーダーをしてはいたのですが、送料無料の通常配送を使用したため届くまでに約1ヶ月近くかかりました。その間にWTSUN AudioでPrime扱いとなり、結局アマゾン経由のほうが先に届いてしまいました(笑)。
KZ ES3KZ ES3
GearBestやAliExpress等の海外通販より多少の価格差はありますが、元々低価格のイヤホンですのでアマゾン倉庫発送ですぐ届きますし、初期不良の交換・返品はもちろん1年間の保証も得られるという点ではWTSUN Audioで買っておいたほうが安心感はありますね。

KZ ES3KZ ES3
KZ ES3」の本体カラーは「ブルー」と「パープル」の2色で、「ブルー」のほうのハウジングは「ZST(ZST Pro)」の紫のハウジング部分と同じライトブルーのプラスチック素材になります。パッケージ構成は「ZST」など他のKZ製イヤホンとほぼ同様でイヤホン本体以外にS/M/Lのイヤーピース(Mサイズは装着済み)と0.75mm 2pin仕様のケーブルと説明書、といったシンプルな内容。
付属ケーブル形状は「ZST」タイプのL時に傾斜のあるもので、同社から販売されている「ZST用のアップグレードケーブル」でのリケーブルが可能な仕様になっています。



■「KZ ES3」のスペック、価格ともに「ZST」と酷似しているが実際は結構違う?

KZ ES3」のアマゾンでの販売価格は2千円台で、同じKZ製の1BA+1DDハイブリッドの「KZ ZST」と非常に近い構成および価格となっています。両者のイヤホンの形状を比較してみると「ES3」のほうが全般的に細長くステムもより深く傾斜してることがわかります。
ES3 / ZSTES3 / ZST
サイズ自体は「ZST」より大きくなっていますがステム付近のハウジングの厚みは「ES3」のほうが薄くなっており(いちばん厚みがある部分はほぼ同じ)、耳の形状が合えば「ZST」より耳奥まで装着できるデザインになっているようです。そのため「ZST」のハウジングが大きすぎていまいちフィット感的に合わなかった方は「ES3」の細長デザインはすっぽり装着できそうです。
ES3 / ZSTES3 / ZST
もっとも、私自身は逆に「ZST」の装着感のほうが耳の形状的に合っていたので「ES3」はいまいちフィットしなかったため、ZSTより少し大きめのイヤーピースに変更して装着をしました。このようにそれなりにサイズのあるハウジングなので合う合わないはあるかと思いますが、多くの方にとっては改善された部分になっていると思います。

いっぽう中身についてですが、「ES3」と「ZST Pro(紫)」のパッケージ裏面の記載を比較してみると、記載スペック上は全く同一でこれといった違いは見当たりません。しかし、ステム部分に搭載されている「搭載するBAドライバー」が両者では異なっており、「KZ ZST」では「Bellsing 30095BA」を、いっぽう「KZ ES3」では「KZ 30095」という自社用ドライバーを搭載しています。
ES3 / ZSTKZ-ES3

KZ 30095」については先日の「新ZS5」のアップデートレビュー等でも紹介しているとおり、同社の「ZS6」および「新バージョンZS5」でデュアル搭載されているBAドライバーと同一のもので、今後発売される同社のイヤホンでは主力となるドライバーと考えられます。



■新BAドライバーによる明瞭な高域と、透明感のある聴きやすいサウンドバランス

KZ ES3」の周波数特性は典型的なドンシャリ。もっとも特徴的なのは高域で、ZS6とも共通する多少人工的なエッジを感じる解像度の高い音ですが、BA部分はシングル構成のため刺さりは少なく比較的スッキリとまとまっている印象です。全般的に分離性はよく解像度の高い透明感のあるサウンドが印象的です。

KZ ES3低域はZSTより締まりのある音ですが、100時間以上のエージングにより量的にも厚みが増し、全体としてメリハリのある音になります。音場は比較的広く心地よく定位します。中域は音場の広さと合わせてボーカルは少し凹み遠くなる印象ですが自然なバランスです。多少「過激」に振っているZS6あたりと比較するとずいぶんスッキリ「まとまった」仕上がりで、オールマイティに使える内容になっていると思います。
サウンドバランス的には最近の「ZST Pro」(白箱の紫モデル)等が多少フラット寄りに向かっているのと比較して「ES3」は「イマドキの音」にアレンジされた印象で、より多くの方々が受け入れやすい音だと思います。

バランスの取れたイヤホンのためジャンル的にな得手不得手は少ない方ですが、音のアレンジ的にはポップス系、アニソン、ロックなどに向いていると思います。いっぽうクラシックやジャズなどは個人的には同じKZでも最近の「ZST Pro」のほうが好印象でした。

ちなみに「KZ ZS3」はハイブリッドのBA部分に上記の通り「KZ 30095」という自社向けドライバーを採用しています。また、ハウジングを見てみるとステムに搭載されたBAドライバーの隙間を埋める形でスポンジがついており、ダイナミックドライバー側からの音を多少コントロール(抑制)させているのがわかります。
KZ ES3KZ ES3

いっぽう「KZ ES3」のダイナミック部分はサイズ的にも「ZST」と同一のものが使われていると思われます。ただ「ZST」では(一部のロットを除き)ステム部分にスポンジはついておらず、ダイナミックドライバー側の音を多少「抜けさせて」いたと考えられます。というのも「ZST」で採用されている「Bellsing 30095BA」というBAドライバーは「超高域用」と呼ばれる性質のドライバーのため、「ZST」ではダイナミック側でもある程度高域をカバーさせていると思われます。
ES3 / ZSTKZ ES3
いっぽう、「ZS6」や新バージョン「ZS5」で高域用にも採用されている「KZ 30095」は中高域のより広いレンジをカバーしていると考えられるため、(ZSTと同じ)ダイナミックドライバーからの音(特に高域)を多少抑制することでBAとのバランスをとる必要があるのではないかと思われます。
ドライバーの性質の違いと、それに伴うダイナミックドライバーの制御、ハウジングの形状からくる音の流れ、これらの要素がスペック的には酷似した「ZST」と「ES3」のサウンドを決定的に変えている理由のようですね。



■ユーザー傾向に結構敏感で「ウケそうな音」に全力を振り向けるKZのイヤホン

ところで、私自身まだまだ期間は長くないもののイヤホン関係のレビューをいくつか行っていく中で、以前より傾向が変わっているなと感じる部分があります。特に「ハイレゾうんぬん」という話が業界を席巻するようになって最初に変わったのは「低音人気の終焉」だったのではないかと思います。
KZ ES3BOSEやかつてのBeatsをはじめ、日本の各メーカーなども「低域強調モデル」のヘッドホンやイヤホンをこぞって投入していた時期もありましたが、最近はそういったモデルより、ひと言でまとめるなら「メリハリ」のある音が「一般ウケが良くなりやすい」のではないかと思います。実際にハイレゾの音を聴き分けられるかどうかは別として、より広いダイナミックレンジを捉えられる高い解像度と分離感を求め、充分な低域と同時に高域もクリアに表現できるサウンド。ただそれは「Hi-Fi(原音忠実性)」とはまた別のアプローチで、多少人工的に強調してでもこの条件を満たした音にすることで「わかりやすさ」を演出する、というイメージでしょうか。

・・・と、これって、先日レビューした「KZ ZS6」のアプローチそのものじゃないかと思います。「ZS6」はこのメリハリのある「わりやすさ」を多少頭悪く感じるくらい(笑)強調しまくったイヤホンではないかと思います。そして今回レビューした「KZ ES3」もまた同じ考え方のベクトルで、「ZS6」ほど派手な演出ではないものの「聴きやすい音でまとめた」イヤホンだと感じます。

KZは「低価格のイヤホン」を「大量に売って」成り立っているということを考えると、実は「イマドキの音」には結構敏感で、なりふり構わず全力で流行にベクトルを向けることができるメーカーに見えます。
KZ ES3「ZST」も発売当初はその前の「ZS3」同様に「低音イヤホン」のベクトルでした。それが紫モデル以降ロットごとに変更を加えて、いまではむしろフラット寄りの美音イヤホンに「キャラ変」を果たしています。そして現在は自社向けBAなども含めて「高域」に力を入れている、という感じでしょうか。
そういえばKZはハイレゾマークの取得はしていませんが(ロゴ貼るのにも使用料かかりますからね^^)、「ES3」はもちろん、「ZST」などの従来モデルも周波数特性の上限を40kHzの「ハイレゾ仕様」にこっそり仕様変更しています。そう考えると白箱にして裏面に仕様を記載するようになったのは、ロゴマークの代わりでは・・・(スーパーで食品の原材料を確認するのと同じ心理を狙ったとか)。
KZのような「低コスト勝負」のイヤホンメーカーには「売るための」計り知れない努力が隠されているのかもしれませんね。

KZ ES3」は、これまでのZS6/ZS5、そしてZSTと「無茶な低コスト」で高音質を作り出す技術力を持ちながらもパ○リ体質でどうしてもキワモノ感が抜けないKZが、ようやく手がけた本格的な「オリジナル製品」だと思います。音質面についてはこれまでの経験が積み重なった素晴らしいものですので、より多くの人たちに人気の得られる製品となるとよいなと思います。
まあ、今後は多少製品の価格が上がってもバラツキのないクオリティコントロールができる生産体制もそろそろ考えた方が良いのではとは思いますが(^^)。