TFZLUX Tequila 1

私のブログでもたびたび紹介している中国「TFZ」(www.tfzither.com)の新イヤホン「TFZLUX TEQUILA 1」です。このイヤホンはTFZの従来製品とは異なり、「開放型」の構造となっています。また今回のモデルは従来の「TFZ(The Fragrant Zither)」ブランドではなく、「TFZLUX」という新しいブランドラインの製品と位置付けられており、さらに製品名に「テキーラ(Tequila)」を選ぶあたりにこのイヤホンがこれまでとは全く違うイメージを狙っているのがわかります。
TFZLUX中国語サイトのインタビュー記事などによると「TFZLUX」ブランドでは今後バッグやアクセサリー、ウォッチなどの製品も企画されているそうです。本レビュー記載時点ではまだアクセスできないパッケージ記載のブランドサイト(www.tfzlux.com)に近日中にこれらの製品も登場してくるのかもしれませんね。

私は「TEQUILA 1」を先日募集されたMassdropでのグループ購入でドロップしましたが、到着後本レビュー掲載のタイミングで国内正規版の販売も開始されました。中国AliExpress等では香港のPenon Audioなど限られたセラーのみの取り扱いとなっており、保証などを考慮すると今後購入される場合は国内版のほうが良いのではと思います。
Amazon.co.jp(国内正規品): TFZLUX(TFZ) TEQUILA 1

ちなみに、アマゾンでは並行輸入品も販売されているようです。そういえば昨年の冬のポタフェスに「TEQUILA 1」が参考出品された際は先日レビューした「TFZ KING PRO」と一緒だったのですが、なぜか「KING PRO」はまだ国内版は販売されておらず、「TEQUILA 1」のほうが先に開始しましたね。この2つではどう考えても「TEQUILA 1」のほうがマイナーなような・・・(^^;)。まあ販売サイドもいろいろ事情があるんでしょうね。
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なお、Penon Audioなどで購入できる海外版では、グリーン/レッド/ブルーの3色に加えレッド&ブルーの構成、さらにフェイスデザインもスパイダー柄とホイール柄が選択できます。もっとっもホイール柄はいわゆる「原子力施設(バイオハザード)のマーク」に見えなくもないためか、いまのところ日本ではスパイダー柄のみの販売のようですね。


■「KING PRO」同様の豪華版パッケージ。前衛的なデザインながら装着感は良好。

TFZLUXTFZ TEQUILA 1」は二重磁気回路(ダブルマグネティックサーキット)グラフェンドライバーを搭載しています。昨年のポタフェス参考出品時に8.9mmドライバーとの表記があり、並行輸入品などでは現在もそうなっていますが、国内正規版は「KING PRO」と同じ12mmドライバーとの記載になっています。ただ「TEQUILA 1」についてはPenon Audioなどの海外セラーやMassdropでの記載も「8.9mm」となっているため、もしかすると国内版の12mmのほうが誤りかもしれませんね(なお「KING PRO」はMassdropPenonも「12mm」との記載)。

到着した製品は「KING PRO」同様の豪華版パッケージとなっていますが、「KING PRO」のホワイトとは真逆のブラックのボックスで、前述の通り「TFZLUX」ブランドの製品となっています。
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裏面には中身のイヤホンのカラーおよびデザインがマーキングされています。
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今回は私は国内版では設定されていない「レッド&ブルー」のカラーで購入しました。
パッケージ構成はイヤホン本体、ケーブル、イヤホンケース、イヤーピース(2種類の各S/M/Lサイズと装着済みMサイズ、ウレタン1種類)、説明書など。
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TEQUILA 1」の本体は、CNC加工による削り出しのアルミ製ハウジングとなっており、ビルドクオリティも非常に高く、かつこれまでのTFZ製イヤホンとは一線を画したデザインも特徴的です。
この丸いデザインと本体の厚さから装着性は期待できないかも、と思いきや、ステムの絶妙な角度・長さと、ケーブル装着位置からうまい具合に耳穴にすっぽりと収まり、なかなか良好な装着感となっています。
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前述の通り「スパイダー」または「ホイール」(海外版のみ選択可能)のフェイスデザインの下には黒いメッシュで覆われており、さらにその下にスリット状のベント(抜け穴)が確認できます。
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また付属ケーブルは「KING PRO」と同様の0.78mm 2pin仕様の5N OFC線ケーブルですが本体側コネクタは「KING PRO」が「SERIES 2」などと同じ本体側の「でっぱり」を覆うような形状だったのに対し、「TEQUILA 1」では本体に合わせた形状となっています。
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イヤーピースおよびケースも「KING PRO」と同様のもので、本体装着済みの開口部の大きいMタイプ以外にイヤーピースは開口部の大きいタイプと小さいタイプがそれぞれS/M/Lの各サイズと白いウレタン製が1セットケースの中に入っています。ケースはTFZLUXロゴが貼られています。
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なお、「TEQUILA 1」は開放型のイヤホンのため、音漏れはそこそこしますので、屋外や静かな場所での利用は多少注意が必要です。


■TFZにはめずらしい低音の響きの良い暖色系フラットサウンド。ロックやジャズとの相性は良好。

TFZLUX TEQUILA 1」の周波数特性はフラット寄りですが、聴いた印象としては量感のある低域部分が非常に特徴的なイヤホンです。TFZの既存モデルでも特にポピュラーな「EXCLUSIVE KING」や「EXCLUSIVE 5」などのイメージで「TEQUILA 1」を聴くとかなり拍子抜けするかもしれません。
同様の12mmドライバーを使用している「KING PRO」がこれまでのTFZのサウンドを踏襲しつつ、非常にまとまりの良いフラットな音に仕上がっているのとは全く異なる印象で、「TFZLUX TEQUILA 1」はこれまでのTFZ製品とは全く異なる暖色系で濃いめの味付けとなっています。

TFZLUX Tequila 1確かに全体的にシャープで解像度の高いサウンドはTFZのグラフェンドライバーのそれですが、既存のTFZ製品は特に低域が十分な厚みがありつつ締りのあるソリッドな印象なのに対し、「TEQUILA 1」ではすこし膨らみのある他のTFZにはない独特の響きがあります。この低域の響きにより、これまでのTFZ製品ではあまりなかったライブハウスなどのグルーヴ感や空気感のようなものを感じるサウンドとなっています。また音場は曲によってはすこし狭いですがボーカルは比較的近くに定位します。
いっぽうで分離感や高域の抜けの良さは従来と比べると多少割り切っている部分で、アニソンやEDMなど高域成分の多い曲や中高域の音数の多い曲ではすこしうるさく感じる場合もあるようです。
この辺は同様にフラット傾向ながら非常にクリアで透明度の高いサウンドを実現している「KING PRO」とは対極的なセッティングといえるかもしれませんね。ただ高域の刺さりは「KING PRO」同様にほぼ皆無となっています(「TEQUILA 1」は音数が多いと少し気になるかもしれませんが)。
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全体として「TEQUILA 1」のサウンドは、低域の響きのよさと、高域の伸びはそこそこながら聴きやすい音にまとめられた、TFZとしては非常に珍しい暖色系のイヤホンだと思います。「EXCLUSIVE KING」や「EXCLUSIVE 5」などに代表されるこれまでのTFZのイヤホンが全体的に金属質な寒色系のサウンドでとてもソリッドな印象だったのとは対照的ですね。とはいえグラフェンドライバーによる立ち上がりの早いサウンドも健在ですのでロックなどにも向いています。


TFZLUX Tequila 1というわけで、「TFZLUX TEQUILA 1」はこれまでのTFZ製イヤホンのなかで最もモダンで前衛的なデザインをした製品ながら、そのサウンドはどこか「艶っぽさ」を感じるイヤホンだと感じました。
例えばBlue Noteレーベルのスタンダード曲や耳慣れた古いロックやポップスなどを聴いているとこのイヤホンの心地よさが最大限に発揮されるような気がします。「テキーラ」という名称のとおり、アルコールが似合う大人のイメージで、雰囲気のあるバーで愉しいひとときを過ごしているような、そんな雰囲気にもなるイヤホンです。
正直なところ音質傾向は好みは結構分かれるイヤホンですので、手放しでお勧めとは言い難い部分もあります。しかしながら製品としてのクオリティは非常に高い製品ですので、所有する満足度は十分にあると思います。特にジャズやクラシックを気持ちよく聴きたい方や、すでにTFZの製品を持っていて少し毛色の違うイヤホンも試したい、という方には良い製品ではないでしょうか。

とりあえず今回の製品は「TEQUILA 1」という名称ですので、今後「2」「3」ナンバリングされていく可能性もあります。このシリーズが本流のTFZとどう変化していくのか、そしてTFZ自身も今後どのように展開していくのか(まだ見ぬ「SERIES 7」など)、いろいろ興味と楽しみは尽きないところです。