FitEar ROOM

こんにちは。最近の私のブログでは中華イヤホンのレビューが非常に多くなっていますが、今回はカスタムIEM(CIEM)、それも国内を代表するメーカー「FitEar」の製品です。

今回購入したのは「FitEar ROOM」、今年4月2日より受注受付を開始した最新モデルです。ポイントはなんといっても「FitEar」ブランドとしては脅威の「49,800円(税別)」という価格を実現したカスタムIEMだということ。受注開始アナウンスを行った際には信じ難いプライス設定と4月1日ということで「エイプリルフールのネタではないか」というウワサが立ったとか立たなかったとか(笑)。
FitEar ROOM (公式サイト)

FitEar ROOMFitEar ROOM」は、上記の通り同社としては最も低価格となる49,800円(税別)のプライス設定で、「より多くの方にカスタムIEMを身近に体感してもらうべく、プロの現場で培われた12年間の蓄積で作られた」といった内容の紹介がされています。厳選した使用ユニットと3Dプリンタ出力によりコストを抑えつつ音質面にもこだわったモデルだそうです。また須山氏のツイートによると、「コストを可及的に抑制しつつ音質には妥協せず、従来の遮音性とフィット感を持つBAマルチ機」とのことです。なおドライバー構成は非公開となっています(たぶん2BA、もしかしたら3BA、ですかね?)。
また販売価格を抑えるために直販のみの取り扱いで、実際に試聴およびオーダー可能なのは「須山補聴器 銀座店」のみとなっています。

私自身、カスタムIEMは以前から作成する機会を狙っていたのですが、これまでは(後述しますが)耳穴の形状の問題などもあり、実際にオーダーには至っていませんでした。しかし「ROOM」ならば装着しやすい先端部分の短いレイアウトだし、なにより本体5万円程度と、最近増えているミドルクラスのイヤホンとほぼ変わらい価格設定で「これはオーダーするしかない」と思いました。価格的にもすでに「ROOM」より高価なユニバーサルもすでに何個も持ってますからね(^^;)。


■さっそく「ROOM」を試聴・オーダーしてみた。

というわけで、受注開始直後の4月初旬の某日、唯一「ROOM」のオーダーを受け付けている「須山補聴器 銀座店」さんへお伺いしました。「ROOM」の試聴、オーダーには事前に予約が必要ですが、できればメールよりお店の営業時間内に直接電話して予約をしたほうが確実なようです。

オーダーする気満々でお伺いしたわけですが、とりあえずはじっくり試聴させていただきます。
ドライバー構成は非公開ながら、とにかくサウンドバランスが抜群でモニターとしてだけでなく、リスニングイヤホンとしてのクオリティの高さに魅了されます。
FitEar ROOMFitEar ROOM
もちろんそのまま耳型採取、オーダーとなるわけですが、ここで実際のフェイスプレート各色のカラーサンプルをみせていただきます。フェイスプレートは6色(ブルー/オレンジ/レッド/イエロー/ホワイト/ブラック)より選択することができます。私の場合、試聴から耳型採取、オーダーまでの所要時間は1時間程度でした。「ROOM」の試聴は銀座店でのみ受け付けていますが、現在は複数の試聴機を用意することでより試聴しやすいようにされている模様です。また他の場所での試聴機会も今後検討していくという情報もありますね。

オーダー時点で完成までの期間は約4週間ということで話を伺いましたが、私の場合は約20日程度で完成し、なんとかゴールデンウィーク前に受け取ることができました。完成品の受領は再度店舗への訪問を予約するか、自宅へ郵送(別途送料がかかります)を依頼することができます。そのため「ROOM」の購入のため店舗へ行く必要があるのは最低1回ということになります。関東近郊以外の方も東京への出張や旅行とタイミングをうまくあわせることができればオーダーはそれほど大変ではないかもしれませんね。

購入価格はROOM本体 49,800円+耳型採取 5,000円 プラス消費税と、本当にサイト記載の通りでした(^^)。

受け取った「FitEar ROOM」はボックスの中に黄色の専用ケースに「005(シルバー)」ケーブルが装着された「ROOM」本体、クリーニング用ブラシが付属します。
FitEar ROOMFitEar ROOM

私はにブラックのフェイスプレートをチョイスしました。「パンダ色」の構成ですね(^^;)。付属の「FitEar cable 005」は少し硬めのケーブルですが取り回しそのものは良好です。
FitEar ROOMFitEar ROOM

FitEar ROOM」は「ミドルレッグシェルデザイン」という実際に耳穴に入る先端部分が短いデザインを採用しています。耳の形状の違いに影響されにくい内部レイアウトとともに、この短い先端部分により一般的なカスタムの独特の装着感を緩和し、「カスタムが苦手」という方にも配慮したフィット感になっています。

ちなみに、私の場合は、左右とも耳穴の奥が極端に細くなっており、ユニバーサル型でも奥に装着するタイプの場合「XSサイズ」のイヤーピースでやっと装着できる、という感じです。そのため一般的なカスタムIEMでは、先端部分が細長くなりすぎて強度が確保できなかったりドライバーがレイアウトできなかったりするため、このようなケースでは先端を切ってしまう対応をするようです。そうすると内部レイアウトに影響が出てしまう場合もあり、これまでもカスタムを断念していました。しかし「FitEar ROOM」の場合は「FitEar Air」同様に最初から先端部分の短いデザインのため、問題なく作成することができました。私のようなパターンの方にも「ROOM」なら大丈夫ですよ(^^)。


■「ROOM」の名称通りの抜群の音場表現とFitEarサウンドを継承したフラットな音質傾向。

こうして無事届いた「FitEar ROOM」のサウンドは試聴で感じたとおり、それ以上に耳に確実にフィットすることでより鮮明にその良さを実感することができました。安定したフラットサウンドで上から下までしっかりと表現しており、聴き疲れしないチューニングでとても気持ちのよいサウンドです。
FitEar ROOM単なる廉価版のエントリーモデルではなく、FitEarサウンドをしっかり踏襲しているという印象(過去に試聴した経験での比較)で、ユニバーサルのイヤホンと比較しても音質面でのコストパフォーマンスは抜群に高いと思います。高域の刺さりなどの刺激は少なく、ボーカルなどの中音域はとても聴きやすく感じます。低域も厚みがあり力強さがあります。同時に音場も十分な広さがあり、モニターとして定位感も当然しっかりしています。
さすがに手持ちのより高額なイヤホンと比較して音数が多い曲となってくると解像度的に追いついていないと感じる場面もあり、おそらく上位モデルとの差別化された部分だろうと思いますが、トータルとしてのサウンドバランス、完成度の高さが素晴らしいため、多くの方が不満に感じることは少ないのではないかと思います。

また、ケーブルを「WAGNUS. Water Lily (ブルー&ホワイト)」のバランスケーブルにリケーブルしたところ、低域の締りが向上し、中低域との分離感が向上することでさらにしっかりと定位する印象となりました。サウンドモニターとしてはもちろん、とても優れたリスニングイヤホンとして活用できるサウンドだと思います。
FitEar ROOMFitEar ROOM

不得手なジャンルは特になく、オールラウンドにどのような曲も楽しめると思いますが、もちろんモニターとしての精度を高めたい場合はMH334など、同様の傾向といわれる同社の優れたラインナップへのアップグレードを検討すべきなのだと思います。また、低域や高域に特徴を持たせたい場合にはさらに別の選択肢も出てくるのだろうと思います。


このように「FitEar ROOM」はまずは最初のカスタムIEMとして最適なイヤホンのひとつであることは間違いないですし、これまでユニバーサルのイヤホンを愛用されているマニアの方でもひとつ持っていて損はないと思います。なにより音質面のクオリティはもとより装着性も含めたFitEarらしさをこの価格で手にできることの満足感はかなり高いと実感しました。