SEMKARCH SKC-CNT1

こんにちは。ゴールデンウィーク期間中にちょっと集中して書きかけレビューをまとめて書き上げたいと思っていたのですが途中で息切れしてしまいました(前回のちょっと変則的なやつとか^^;)。その分いまだ4月に届いたイヤホンのレビューが終わってない状況がつづいております(反省)。

というわけで今回は「SEMKARCH SKC-CNT1」です。国内代理店さんで試聴機のキャンペーンを開始されたので、すでに聴かれている方も増えていますしネットでも露出が増えてきていますね。このイヤホンは中華イヤホンのなかでは比較的ハイグレードな製品を作っている「LZ」(老忠)の会社が新しくつくったブランド「SEMKARCH」(聖卡奇/セインカチイ)の最初の製品だそうです。

ちなみに、「聖卡奇」の「聖」は「St.~」ですが、「卡奇」は「Carrchy」(音楽アーティスト)だったり「Kaqi」(お菓子)だったり「Cachí」(コスタリカの都市)だったり、しまいには聖もつけて「Saint Casimir」(ポーランドの聖人)と、まったくスペルも意味も定まらない「それっぽいワード」かなと理解しました(日本にもよくわからんカタカナ語ありますよね。厨〇が使いがちな←ォィ)。とりあえずセイン・カ〇ュみたいなもんだろうということで(何の話?)。


■独自のカーボンナノチューブ(CNT)振動膜ダイナミックドライバーを搭載

ヨタ話はさておき(^^;)、「SEMKARCH SKC-CNT1」(国内代理店さんのモデルは異なる型番「CNTDD1」となっていますが同一の機種です)は同社が独自開発した10mm カーボンナノチューブ製ダイヤフラム(振動膜)を採用した高性能ダイナミックドライバーをシングルで搭載します。
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またLZ製の高音質イヤホン「LZ-A5」の特徴である交換式ステムノズルによるフィルターが「SEMKARCH SKC-CNT1」でも採用されており、素材の異なる「ブラック」と「ゴールド」の2種類のノズルにより音質傾向の変化が楽しめます。

購入はいつもお世話になっている中国のイヤホンセラー「HCK Earphones」にて。
なお、「LZ」ブランドのイヤホン同様、販売価格はメーカーにより固定されているため、どのショップやセラーでも同額となっています。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): SEMKARCH SKC-CNT1 / 販売価格 95ドル
Amazon.co.jp(NICEHCK): SEMKARCH SKC-CNT1 / 販売価格 10,479円

為替レートの関係もありますが、現時点ではAliExpressでの購入価格よりAmazonの価格のほうが若干安価になるようです。またAmazonではプライム扱いでアマゾン倉庫出荷によりすぐに届きます。
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私がオーダーした「SEMKARCH SKC-CNT1」は、GW直前の4月下旬に届きました。パッケージは前述の「LZ-A5」のパッケージとほぼ同サイズのボックスです。

パッケージ内容は金属製のイヤホン本体(ブラックのノズル装着済み)、ブルーのイヤホンケース、ゴールドの交換ノズル、専用MMCXケーブル、イヤーピース(S/M/L)、説明書など。
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イヤーピースはゴム部分がカラフルな各サイズのシリコン製で「LZ-A5」に付属しているものと同じですが、できれば市販のイヤーピースに交換した方が音質面でも良いようです(後述)。

本体はアルミ合金による金属製で少し重量感があります。形状は「LZ-A5」と同様のSHUREタイプの形状です。デザインについては「LZ-A5」のH○NDAマーク(毎度伏せ字になってない^^;)もそうですが、このメーカーにはあまり多くを期待してはいけないようですね(汗)
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付属のMMCXケーブルは見た目は地味ですが樹脂被膜で使い回しは比較的良好です。「LZ-A5」の付属ケーブルはコネクタ部分などちょっと残念な部分もあったので、多少改善した印象はあります。


■交換式フィルターノズルは「LZ-A5」と同じサイズですが、今回は「ゴールド」一択かも

そして、フィルターノズルは「ブラック」と「ゴールド」の2種類で、付属の説明書によるとブラックが「3kHz~10KHz +2dB」、ゴールドが「3kHz~10KHz -2dB」の記載になっており、ゴールドの方が低域強調型になります。ただし、実際に聴いてみるとブラックのノズルのほうが解像度は上がりますが少し平坦な音になるのに対し、ゴールドの方はよりメリハリのある音になります。「SEMKARCH SKC-CNT1」では余程のことがない限りゴールドのノズルを使った方がよいのではと感じるくらい、かなり聴いた印象には差がありますね。
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ただ、試しに同じサイズで流用可能な「LZ-A5」のノズルを「SEMKARCH SKC-CNT1」で使用してみると「ブラック」のノズルと似た印象となることから、どうやら「ゴールド」のノズルのみが他のノズルと音質傾向が大きく異なるのかもしれませんね。
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なお、「LZ-A5」のフィルターノズルは金属製のメッシュパーツでふたがされていますが、「SEMKARCH SKC-CNT1」のほうは布製or樹脂製の少し弾力のあるメッシュとなっています。

また「SEMKARCH SKC-CNT1」の本体ハウジングを「LZ-A5」と比較すると、実際には大きさや形状が大きく異なっています。もちろん「LZ-A5」は4BA+1DDのマルチドライバーをコンパクトなメタルハウジングに収納しているため多少大振りになるのは当然ですが、「SEMKARCH SKC-CNT1」はそれ以上に厚みのあるハウジングであることがわかります。
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またステムノズルの位置も「LZ-A5」よりわずかに中央に寄った位置から伸びているため、多少装着性に変化がでる可能性があります。
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私の場合、「LZ-A5」ではRHAのイヤーピースを使用して普通に装着できていますが、「SEMKARCH SKC-CNT1」ではちょっとサイズ的に合わず、手持ちの小さいダブルフランジのタイプでちゃんと装着できました。もともと私は耳穴がとても小さくイヤーピース選びで苦労するため、通常はこのようなことはないと思いますが、それでも付属のイヤーピースを変えるだけでも結構印象が変化するので、「final Eタイプ」や「Spin Fit」「Acoustune AET08」など好みのイヤーピースをいろいろ試してみるのも面白いと思います。


■低域モリモリの印象ながら上から下までしっかり聴かせる個性的で濃いめのサウンド

SEMKARCH SKC-CNT1」を聴いた印象は、低域にかなりパワーを感じるサウンドで、「LZ-A5」のフィルターによって高音域の密度のある伸びの良さを感じる印象とは非常に対照的です。また「LZ-A5」はわりとドンシャリ傾向の音作りだったのに対し、「SEMKARCH SKC-CNT1」は音質傾向的にはフラットに近く、全域にわたってバランス良く聴かせる音作りとなっています。特に「ゴールド」のノズルを装着するとメリハリのある空気感で独特の「濃さ」を感じるサウンドになります。

SEMKARCH SKC-CNT1全体としては、シングルのダイナミックドライバーらしく、上から下までの音域の自然なつながりによる「音楽の楽しさ」を実感するタイプのイヤホンですね。解像度はこのクラスのダイナミック型としては優秀なほうですが、マルチBAイヤホンのような音の細かさ、解像度の高さを売りにするタイプではありません。またカーボンナノチューブの特性からか、グラフェンコートのドライバーのような金属質なキレとは全く異なるサウンドですが、立ち上がりは結構早く、また力強く深みのある低域ながら分離性も非常に良い、(他のイヤホンと比べると)ちょっと不思議な印象のサウンドだと感じます。比較的広めの音場感に加え、このように独特の響き方をする点は特に様々なイヤホンを聴いているマニアの方ほど特徴的に感じるのではないかと思います。

SEMKARCH SKC-CNT1中音域はきちんと定位するタイプで必要以上に前に出てくることはないですが、凹むこともなくむしろ響きの良い厚めのサウンドでボーカルなども埋もれることなくしっかり聴かせてくれます。また高域は刺さることはありませんが十分な伸びがあり、ハイハットなども綺麗に鳴るのが確認できます。
ハードロックや派手めのアニソンなどと抜群に相性が良く、クオリティの高さを実感します。個人的にはよく音数の多さと高域のテストも兼ねて(個人的に好きだから)使う「fripSide」の楽曲は最近聴いたイヤホンのなかでは一番相性が良いのではないかと思う気持ちよさ、楽しさがありました。

ちなみに、「ゴールド」「ブラック」のノズルでの変化が極端すぎることもあり、リケーブルでの音質変化は限定的です。また、インピーダンス32Ω、感度108 ±1 dB/mWと一般的なレベルで音量も取りやすく、DAPなど再生環境での変化も比較的少ない印象ですね。
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とはいえ、たとえばHCKの「8芯銀コート線ケーブル」や「銀メッキ/銅線のミックスケーブル」など情報量の多いケーブルを使用することである程度の解像度の向上が期待できますので、使い勝手も含めてリケーブルを検討してみるのも良いかと思います。特に見た目が・・・なので(汗)、ケーブルでちょっと「盛ってみる」という考え方もありますね(笑)。


■新ブランドでも「LZ」らしさは健在。抜群のサウンドも、デザインセンスも。。。(^^;)

SEMKARCH SKC-CNT1というわけで、「SEMKARCH SKC-CNT1」は1万円前後のイヤホンとしてはかなりハイレベルなサウンドで、聴きやすさと同時に楽しさを持ったイヤホンだと感じました。またこれまで多くのイヤホンを聴いてきたマニアの方にも「ちょっと個性的でクセのあるサウンド」でコレクションのひとつに加えても決して損のない存在だと思います。
さすが、これまで非常に評価の高いイヤホンを作り続けている「LZ」の音作りの確かさを改めて実感するとともに、わざわざ新しいブランドを立ち上げてまで作りたかった「個性的なサウンド」についても十分に納得がいくものでした。
ただ、同時に「LZ」の何とも言えない「デザインセンスの残念さ」もそのまま継承している点だけは、ほんとうにどうにかしてほしいものだと思いますね。「LZ-A5」もそうでしたが、ここさえ外部の意見を取り入れるとか、もう少しだけ投資するとかすればもっともっと売れるはずだと思うのですが・・・(^^;;;)。