HIFIMAN SUNDARA

こんにちは。今回はHIFIMAN JAPANさんよりお借りした最新ヘッドフォン「HIFIMAN SUNDARA」の紹介です。

HIFIMAN」というと、私のブログではハイエンドイヤホンの「RE2000」と「RE800S」について購入&レビューを行っておりますが、やはり同社の主力商品と言えばハイグレードなヘッドフォン製品だと思います。特にHIFIMANのほとんどのヘッドフォンで採用されている「平面駆動ドライバー」は、かつては「超高級ヘッドフォン」のみで採用された方式でしたが、今回の「SUNDARA」も含め、最近では一般的なオーディオファンにも手が届く価格帯の製品が数多く登場しており、個人的にも嬉しい限りです。

HIFIMANでもHE400シリーズより、エントリークラスのモデルでも平面駆動ドライバーを採用し、HIFIMANブランドのヘッドフォンのユーザーを大きく拡大しました。そして今回、5月25日に国内販売を開始した「SUNDARA」はこの「HE400i」の後継機種的な位置づけになるかと思います。しかし「SUNDARA」は、HE400シリーズおよび上位機種のHE500シリーズ(「HE560」など)からリニューアルした本体デザインと新たに開発された平面駆動ドライバーを搭載し、全く新しいサウンドキャラクターをもった製品としてリリースされました。前述の通り、かつては希少だった数万円クラスの平面駆動式のヘッドフォンも現在はライバルが多く存在する中で、単なる後継モデルではなく、HIFIMANとして心機一転し、より多くのオーディオファンに訴えかけようという意図も「SUNDARA」という新しい製品名に込められているのかなと感じています。

HIFIMAN SUNDARA 

そんなHIFIMANとしてはかなり気合いがはいっていそうな新モデル「SUNDARA」は、国内販売価格は 54,000円 で販売されています。
Amazon.co.jp: HIFIMAN SUNDARA

海外での価格が$499ですから為替や税金などを考慮するとかなり良心的な設定といえるでしょう(同社の他の製品の国内価格設定でも同様のことがいえますね)。また、「SUNDARA」の価格ですが、同社の代表的モデル「Edition X V2」(148,000円)やハイエンドの「HE1000 V2」(398,000円)、「SUSVARA」(702,000円)といった製品の価格を見ているせいかもしれませんが(^^;)、個人的には割とお手頃感のある価格かな、と思っています。


■モダンでシンプルなデザイン、高級感のある新しいスタイリング

さて、今回発売したばかりで新品の「HIFIMAN SUNDARA」をレビュー用にお借りすることができました。
HIFIMAN SUNDARAHIFIMAN SUNDARA
HIFIMANの製品は「RE2000」「RE800J」のときも思いましたが、とにかくパッケージデザインが秀逸で、同社製ヘッドフォンとしては比較的低価格の「SUNDARA」でも手を抜いている感じは一切しません。
高級感のあるパッケージのなかには、「SUNDARA」本体とケーブル、イヤホンジャックの変換コネクタ、保証書、そして今回も「Owner's Guide」として詳細な説明書・ストーリーブック(英語)が付属します。
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SUNDARA」よりHE400シリーズ、HE500シリーズ等とは異なる全く新しいハウジングデザインが採用されており、よりシンプルでモダンなスタイリングになりました。新しくデザインされたヘッドバンドは側圧は普段使っているAKGやゼンハイザーのヘッドフォンよりは少し強めですが、感触の良いイヤーパッドはクッション性にも優れ、長時間の使用でもストレスを感じにくいバランスとなっています。またスライダーを伸ばせば頭の大きい方でも大抵は問題なく使用できる十分な長さが確保されています。
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私はHIFIMANのヘッドフォンとしては、同社がMassdropコラボした「Massdrop x HIFIMAN  HE4XX 」を最近購入したのですが、ハウジングやヘッドバンドなど比べると当然ながら圧倒的な質感の違いを感じます。ケーブルはハウジング接続部分が「HE4XX」が2.5mmに対して「SUNDARA」は3.5mmステレオミニと同じ大きさのコネクタになっており耐久性面でも向上しています。

また、イヤーパッドは上下左右の4カ所にプラスチック製のフックで固定されており、どこか1カ所をつまんで中央方向に軽く押し込むことで外すことができます。
SUNDARA」はメーカーの情報によると「HE400i」と比較し80%も薄型の平面振動板(ダイヤフラム)を採用しているとのことですが、手持ちの「HE4XX」と比較すると、ダイヤフラムの薄さだけでなく平面駆動ドライバーそのものの大きさもかなり違いがあることがわかります。
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「HE4XX」は「HE400i」など他のHE400シリーズと同サイズの平面振動板を採用していますが、「SUNDARA」はこれらのモデルより大幅に薄いダイヤフラムと大きくなったドライバーが採用されており、この点だけみても「SUNDARA」がHE400シリーズより劇的に進化を遂げていることが想像できますね。

なお、これは「HE4XX」でも採用されている点ですが、「SUNDARA」は「HE400i」のようにハウジングを軸部分で前後方向に回すことができないかわりに、イヤーパッドが四方で厚みが異なるデザインを採用し自然な装着感を実現しています。
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ちなみに「SUNDARA」のイヤーパッドのほうが「HE4XX」より耳に触れる部分のベロア素材がすこし高級なものを採用しているようですね。


■新開発の平面駆動ドライバーが生み出す、「らしさ」と「明瞭さ」を両立したサウンド

そして実際に「HIFIMAN SUNDARA」を聴いてまず感じたことは、「HE4XX」等と比較してよりモニターライクに「抜けの良いハッキリしたサウンド」に仕上がっているな、という印象でした。トータルとして完成度は非常に高く、まとまりのよいサウンドとなっています。

HIFIMAN SUNDARAちなみに、Massdropコラボの「HE4XX」は「HE400i」とほぼ同スペックのドライバーを専用のハウジングやヘッドバンドなどでパッケージングしたモデルですが、個人的にはより「HE400シリーズらしさ」がアップした音質傾向だと思っています。
このようにある意味「HE400シリーズの最終モデル」でもあり、もっとも「らしい」サウンドの「HE4XX」とは「SUNDARA」は非常に対照的で、「HE4XX」がとても緩やかで中音域をウォームに感じさせてくれるサウンドなのに対し、「SUNDARA」は解像度が高くスッキリとした描写でひとつひとつの音の表現も精緻で美しさと正確さを感じます。高域も「HE4XX」と比較すると伸びは良好で2つを比べると別のメーカーの製品のようにさえ感じるほどです。「SUNDARA」ではキラキラ感のある明瞭な高域ですが、曲によっては多少の刺さりを感じる場合があります。

SUNDARA」は「HE400シリーズ」同様にスマートフォン直挿しでも音量が取れる程度に鳴りやすく、ある程度駆動力のあるDAP(デジタルオーディオプレーヤー)であれば十分に実用的な音質で使用できると思います。それでもできれば小型のヘッドフォンアンプ(据置きまたはポータブル)等を併用するほうが望ましいと思います。駆動力・出力の違いにより中低域の印象が結構変化します。この環境では締まりが良く存在感のある低域と、しっかり分離して明瞭感のある中域とボーカルを感じる事ができると思います。
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また開放型らしく音抜けはとても良いいっぽうで、ボーカルなど中域が耳元付近で定位するため、音場は私が普段使っている「AKG K712 Pro」などと比較すると狭く感じます。もっともK712 Proは非常に解像度の高いモニターサウンドであると同時に広大な音場が特徴的なヘッドフォンですから、定位の仕方は「SUNDARA」とは対照的な存在かもしれませんね。

HIFIMAN SUNDARA「HE4XX」は決して解像度が高いヘッドフォンとはいえませんが、真空管アンプを通して古いアルバムなどを聴くととにかく気持ちよく音楽の楽しさを感じることができました。いっぽうの「SUNDARA」はむしろ音数の多いEDMやアニソンなどをハイレゾプレーヤーで聴いたりストリーミングの洋楽ヒットチャートを楽しむ上では抜群に相性の良さを感じます。
しかし、アコースティックな演奏曲のほか、音場表現が重要なクラシックなどはあまり向いていないようです。定番曲で私も音場の確認でよく試聴する「Pure2 Ultimate Cool Japan Jazz」(DSD64)の「届かない恋」を聴いてみると高音から低音までしっかり描写しているのですが空間表現が少しのっぺりとした印象となり「あまり得意じゃないんだな」と感じます。
ただし、「K712 Pro」等と比較すると、「SUNDARA」はモニターライクとはいえレコーディング品質があまり良くない古い音源なども気持ちよく聴ける(音源のアラが出にくい)という点で、「HE400シリーズ」同様、より「音楽を楽しむためのリスニング向けのヘッドフォン」としてまとめられている、と考えられるのではないかと思います。


■手持ちのオーディオで手軽にHIFIMANの平面駆動のサウンドが楽しめるヘッドフォン

HIFIMAN SUNDARAというわけで、「HIFIMAN SUNDARA」は従来の「HE400シリーズ」にあったリスニングヘッドフォンとしての「楽しさ」はしっかり踏襲しつつ、本体デザインに加え「平面駆動ドライバー」を一新し全体的なサウンドの大幅なクオリティアップを行うことでより高次元の「愉しさ」を実現した製品ではないかと思います。各社の優れた製品がひしめく価格帯で登場した「SUNDARA」ですが、同社の上位モデル的な要素を多少取り入れることで、とてもバランスの良いHIFIMANらしさを感じるモデルに仕上がったのではないかと思います。何より私も含め、同社の上位モデルを本来の実力でドライブするために必要な、ハイパワーで相応にグレードの高い、本格的な再生設備を持っていない大多数の人でも、「SUNDARA」ならHIFIMANのヘッドフォンサウンドを気軽に堪能できるのはとても有り難いことですね。すでに同社以外の数種類のヘッドフォンを使い分けている方に、「最初のHIFIMANヘッドフォン」としてもお勧めの製品だと感じました。