TFZ QUEEN

こんにちは。例によって到着から多少時間が経過していますが、今回は「TFZ QUEEN」の紹介です。
中国「TFZ」(The Fragrant Zither)ブランドのイヤホンほ昨年くらいから新モデルが出るたびに購入してレビューをしていますが、今回の「TFZ QUEEN」は最近の同社の「既存のTFZとはちょっと違うアプローチ」の流れの製品のようです。

なお、私のブログでは昨年以降購入した各モデルについてレビューで紹介しています。よろしければ併せてご覧ください。
「TFZ」イヤホンのレビュー・一覧

TFZ QUEENTFZ QUEEN
さて、「TFZ QUEEN」は同社の最新モデルとして登場したイヤホンで、最近の上位モデルである「KING PRO」や「TEQUILA1」同様にアルミ製の金属ハウジングを搭載した100ドル越えの製品のひとつとなります。インピーダンス30Ω、感度110dB/mWとインピーダンスはTFZ製の製品としては少し高めすが感度も高いため「KING PRO」より音量は取りやすい設計となっています。ちなみにTFZのサイトにリンクされている同社直営のTaobaoの販売サイトには「16Ω・低インピーダンス版」というモデルも販売されているらしいです。

TFZ QUEEN搭載されるドライバーについては、「TFZ」製イヤホンのすべてのモデルに共通する「グラフェン振動板のダイナミックドライバーのシングル構成(1DD)」というデザインは「TFZ QUEEN」も踏襲されています(発売前にマルチBA化という噂もありましたが、そんなことはなかったですね)。
TFZ QUEEN」でもアップグレードされた二重磁気回路(ダブルマグネティックサーキット)グラフェンドライバーを搭載している、ということで、「KING PRO」や「TEQUILA1」のドライバーと同様に「第2.5世代」という表現をしています。そのポイントはドライバー部分のマグネットを上級グレードの「N52ネジウム磁石」を内側・外側で採用し、解像度などが向上している点などが挙げられるようです。
さらに、メーカーの分解図によると「TFZ QUEEN」ではフェイスパネルが交換可能な設計となっています。現在「TFZ QUEEN」はカラーバリエーションとして、「レッド」「ブルー」「シルバー」と「レッド(右)&ブルー(左)」の4パターンが設定されていますが、さらに「パーソナルカスタマイズ」としてさまざまなフェイスパネルのバリエーションも情報として公開されています。今後これらのカスタマイズをどのようなかたちで展開していくかは現時点では不明です。
TFZ QUEENQUEEN-color

今回私は現在オーダー可能な4モデルのなかより「レッド&ブルー」をオーダーしました。
購入したのはいつもお世話になっている「HCK Earphones」にて。販売価格は129ドルとなっています。AliExpressでの購入方法はこちらを参照ください。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): TFZ QUEEN

また国内正規版は 18,400円 にて販売されています。
Amazon.co.jp(国内正規品): TFZ QUEEN

TFZ QUEEN」のパッケージは最近のTFZ共通の白箱タイプですが、大きさは先日レビューした低価格モデルの「T1 Galaxy」と同タイプの細長いもの。「TFZ QUEEN」も海外での販売価格は100ドルを超えるモデルではありますが、ポジショニングは99ドルの「EXCLUSIVE KING」(PROじゃないほうのKING)までのラインと同様の位置づけで、「KING PRO」(169ドル)や「TEQUILA1」(139ドル)よりは1段階下の設定なのかもしれませんね。
TFZ QUEENTFZ QUEEN

パッケージ構成はイヤホン本体、ケーブル、ケーブルフック、布製ポーチ、イヤーピースが開口部が大きいタイプと小さいタイプのシリコン製がS/M/Lの各サイズと、標準で装着済みのMサイズ、白いウレタン製イヤーピースが1ペア。あとは説明書という内容です。
TFZ QUEENTFZ QUEEN

ハウジングはアルミニウムのCNC加工による削り出しで相変わらず非常に美しい仕上がりです。ちなみにフェイスパネルのネジを試しに外してみましたが、フェイスパネルを簡単に外せるような雰囲気ではなかったため、今回分解はしていません。「TFZ QUEEN」では「KING PRO」や従来のTFZの定番のSERIES5タイプのシェルよりひとまわりコンパクトなフェイスサイズとなっており、これまで「TFZのイヤホンは大きすぎて耳に入らない」と思っていた方には装着性が向上している可能性がありますね。
TFZ QUEENTFZ QUEEN
ただし、厚みが少し増しているため逆に耳に合わなくなったという方もいらっしゃるかもしれません。ステムは金属製の太めのタイプですが個人的にはハウジングが小さくなった分、フィット感を高めるためにもイヤーピースは付属のものより、Acoustune(日本ディックス)の「AET06」などダブルフランジタイプを使用した方が装着性が良く感じました。
TFZ QUEENTFZ QUEEN
また、2pin部分の「出っ張り」は従来のモデルより少し大きくなっています。これくらい出てくるといよいよqdcのコネクタと互換性があるかも、とも思いましたが、さすがにqdcと比べるとまだまだ差があります。また凸部の形状もqdcが楕円形なのに対し、「TFZ QUEEN」は他のTFZ同様に四角なので基本的にqdc用とはケーブルの互換性はありません(基本的に、というのは使える場合もあるので)。

シェルがコンパクトになった関係で、遮音性についてはわずかながら低下しています。日常的な使用で外の音が気になることはありませんが、電車内など大きめの環境ノイズが発生する場所では少し印象が変化する場合があります。
TFZ QUEENTFZ QUEEN
付属ケーブルは最近のTFZ同様に「5N OFCケーブル」とのことですが、「KING PRO」や「TEQUILA1」のような樹脂製の透明な被膜ではなく、ソフトな感触のブラックの被膜で覆われています。


■低域がちょっと「暴れん坊」な感じも受ける、独特の暖色系サウンド

TFZ QUEENTFZ QUEEN」の音質傾向はこれまでの「TFZ」の寒色系でシャープなイメージとは結構異なるもので、低域の印象が強い暖色系の印象となっています。周波数特性としてはフラット寄りなのですが、実際に聴いてみると真っ先に丸く広がるような低域の多さを実感します。開封直後はこの低域がちょっと「暴れまくる」ような傾向もあり、100時間ほどエージングを実施(エージング方法はいつものApple Musicランダム&エンドレス再生)することで多少は落ち着いた印象となりました(ただ基本的な特徴は同じままですが)。低域の広がり方はボーカル曲などでエモーショナルな印象をうけますが、最近の音圧が高くダイナミックレンジの狭い曲の場合、低域の膨らみで中高域が少しマスクされてしまう場合もあります。いっぽう沈み込みは浅めで低域のディテールはそれなりのようです。全体的に低域の扱いがかなり個性的なサウンドバランスだと思います。

TFZ QUEENTFZ QUEEN」の音像表現は、中高域は非常に解像度が高く、グラフェンドライバーらしいシャープさを感じるサウンドで、特にボーカルなど中音域の描写は同様に暖色系の「TEQUILA1」より曲によっては多少の進化を実感します。
高音もしっかり表現していますが刺さりは少なくコントロールされています。音場は狭く、耳元ではりつくような定位をするため、空間表現を楽しむタイプではありませんが、ボーカルなどはしっかり聴き取りやすいイヤホンだと思います。この点は「TEQUILA1」のフェイス部分に大きめのベントがある「開放型」デザインにより広い音場を持つ傾向とは対照的です。そうえば「TFZ QUEEN」の周波数特性も「TEQUILA1」に最も近く、サウンドチューニングとしては「TEQUILA1」をそのまま密閉型にするとこんな感じになるのかな?という印象も受けます。

TFZ QUEENアコースティックなバラード曲やロック、ジャズなどとの相性が良いほか、それほど音数の多くない女性ボーカルのポップスやアニソンなども良いのではないかと思います。個人的には年齢的に(^^;)、ちょっと古いロックを聴くことも多いのですがこの辺は結構気持ちよく聴けますね。あ、Queenももちろん相性いいですよ(^^;)。あまりにベタですがオッサンなのでどこかに書かないと気が済まないのでした(笑)。
いっぽう上記の通り音圧が高く音数の多い曲では中音域がうるさく感じてしまいますし、音場が狭いためクラシックなどには向きません。特徴的にも万人受けタイプではなく、TFZの製品のなかでもかなり好みが分かれるイヤホンではないかと思います。

ただし、前述の通り、中国では「TFZ QUEEN」の低インピーダンス(16Ω)版が存在するらしく、このタイプで音質傾向がどのように変化するかとても気になるところではありますね。

また「TFZ QUEEN」はリケーブルによっても印象を変化させることができます。「HCK Earphones」が最近出した新しい8芯ケーブル「8芯 純銅OFCケーブル」と「8芯 純銅銀メッキケーブル」を試したところ、どちらも変化を実感できましたが、特に「8芯 純銅銀メッキケーブル」の組み合わせが好印象でした。
TFZ QUEENhck cable
どちらのケーブルでも音抜けが良くなり明瞭感が向上する印象がありますが、特に「8芯 純銅銀メッキケーブル」では標準ケーブルでちょっと嫌な感じに低域が膨らむような場合も比較的スッキリ処理される印象で、中高域の解像度の高さをしっかり実感できるようになります。「TFZ」のイヤホンではすべてのモデルでOFC銅線ケーブルが標準で採用されていますが、「TFZ QUEEN」については低域の締りを多少向上させながら高域の伸びをよくする銀メッキ線の特徴のほうが相性が良いようですね。この組み合わせはなかなかオススメです。他にも同様の銀メッキ線の16芯ケーブルなど情報量の多いケーブルとの相性が良さそうですね。


■高域の「EXCLUSIVE KING」、低域の「QUEEN」? でもまだ「本気出してない」気もしますね

というわけで、「TFZ QUEEN」の紹介でしたが、今回は手放しでオススメできるイヤホン、という感じにはなりませんでした。正直なところ「人を選ぶ」製品だと思います。
TFZ QUEENもちろん「TFZ QUEEN」のサウンドが好みという方もいらっしゃると思います。また上記の通り「TFZ QUEEN」はシェルがコンパクトになった関係で遮音性が他のモデルより若干落ちますが、私も標準ケーブルでの利用でも新幹線の移動中などロードノイズなどが低域にマスクされるようなケースではちょうど良いところの帯域が持ち上げられているような感じもしました。とはいえやはりすべての方にオススメできるイヤホンではないと思います。例えば「EXCLUSIVE KING」や「KING PRO」といった「同価格帯か以上の」TFZ製イヤホンを持っていて毛色の違うタイプの製品も、という方には面白い選択肢となると思います。しかし「SERIES 2」などで「TFZの良さ」を実感された方が次に買うイヤホンとしてはお勧めできない気がします(「KING」や「KING PRO」など、次に行くべきモデルは他にあります)。

そういえば「TFZ QUEEN」のネーミングについて、「KING PRO」と比較するとちょっとピンと来ないのですが、「EXCLUSIVE KING」なら「高域にアプローチしたEXCLUSIVE KINGに対する、低域のQUEEN」という対比もないことはないなぁ、という気がしました。そうなるとやっぱり「QUEEN PRO」もあんのか!?という話にもなってくるわけですが、どうなんでしょう。
TFZ QUEEN」はハウジングの大きさからも「KING PRO」や「TEQUILA1」とは異なるサイズのドライバーを搭載している可能性が高いと思いますが、チューニング面ではまだ「本気出してない」気がします。今後同様のドライバーを使用した次の製品につながるのか、あるいは「2.5世代」という過渡的な数字から「第3世代」にさらにグレードアップした「何か」へ変わるのか、など今後のモデルについての想像は尽きませんね。最近はデザインを大きく変えたり、ブランドイメージを多角化したりと色々なアプローチを始めている「TFZ」ですが、あくまで「らしさ」を失わずに、より楽しい進化を続けることをひとりのファンとして期待するばかりであります。