【 ZS6系イヤホンレビューマラソン その③ 】
こんにちは。今回は中国のイヤホンブランド「TRN」の最新モデル、「TRN V80」です。前回「宣言」した「ZS6系イヤホンレビューマラソン」ですが、今回はちょっと「ZS6系イヤホン」とは言い切れない部分もありますが、当然比較対象となる製品だと思いますので(^^;)。
さて、「TRN」というブランドのイヤホンは、私のブログでも最初の「V10」から毎回レビューしていますが、全てのモデルでとても同一メーカーとは思えない一貫性のない本体デザインに加え、毎回盛大に「アタリ」「ハズレ」を出すため発売前のオーダーはなかなかのギャンブル感のあるブランドであります。なにしろ前回の「V60」は中華イヤホンの世界でも稀に見る「大ハズレ」でしたので、ドキドキ感は尋常ではありません。
そして今回、手元に届いた「TRN V80」はどうやら音質面では「アタリ」のモデルらしく、これでTRNの「勝率」はなんとか5割に戻した格好となりました(ヤレヤレ)。
「TRN V80」は2BA+2DDと言うことで、金属製ハウジングを採用するなどの相違点はありますが、ドライバー構成は最初のモデルである「V10」と共通した仕様になっています。
ハウジングに収納されたデュアルダイナミックドライバーはケースの中に10mmと6mmの2個のドライバーが直列に並んだ形状で収納されている「一体型2DD」を今回も採用しており、ステム部分にデュアルBAユニットを収納しています。初代の「V10」では強烈な高音の刺さりとシャリ付きでとてもバランスがよいイヤホンとは言い難かったのですが、今回はこのカスタムメイドの2DDユニットがどの程度チューニングされているかがポイントとなります。
カラーは「ブルー」「ブラック」の2色。今回それぞれのカラーを異なるセラーにオーダーし、ブルーについてはいつもお世話になっている中国の「HCK Earphones」で購入しました。
「TRN V80」は中国AliExpressの表示価格が38ドル~39ドル、アマゾン(NICEHCK)での価格が4,800円~4,900円となっています。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): TRN V80
Amazon.co.jp(NICEHCK): TRN V80
アマゾンではすぐに届きますし、アマゾン経由での1年間の保証が受けられるので安心感が高いですね。またセールにより購入時に割引を受けられる可能性があります。
またより低コストで購入したい場合はAliExpressでとなりますが、購入方法などはこちらを参照ください。どちらの場合も、HCKのTwitterアカウント(@hhckexin)では頻繁に割引情報などもツイートされますのでフォローのうえこまめにチェックされることをお勧めします。
■TRN初のメタルハウジング。某イヤホンに似たデザイン、そしてビルドクオリティは・・・
パッケージは他のTRN製品と同じサイズのボックス。金属製ハウジングの本体はなかなかの存在感です。
パッケージ構成は本体、イヤーピース(装着済みのMサイズ+S/Mサイズ)、ケーブル、説明書、保証書など。
アルミ製のハウジングは厚めのメタリック塗装を施されており、ちょっとギラギラした感じの仕上がりになっています。ブルーはちょっとエロさを感じるのはおっさんだから?(笑)
ちなみに、このハウジングのデザインはDUNUの「Falcon-C 隼」をがっつりパクってます(^^;)。まあ最近の中華イヤホンではあまりにしょっちゅうある事なので、すっかり慣れてしまっている自分が残念ではあります。いっけんビルドクオリティは悪くないように思えるのですが、ステム部分のパーツがぱっくり取れて、その勢いでBAの配線が切れてしまう、という惨劇に遭遇された方もネット上で複数みかけるなど、そこはTRN、油断がなりません。扱いにはちょっとだけ気をつけた方が良いかもです。
また付属のイヤーピース以外を使用する場合は、あまり穴が小さくステムを圧迫するものは避けた方が良いかもしれませんね。「TRN V80」の装着性についてですが、ハウジングはコンパクトですがステムが太いこともあり、耳の形状に合うかどうかは多少個人差があります。できるだけフィット感を得られるイヤーピースを選んだ方が特に低域の印象が良くなります。私の耳では装着感はいまひとつだったので、いつも使っているAcoustuneの「AET07」のほか、コンプライ等を合わせています。
そして、情報提供をいただき私も気がついたのですが、「TRN V80」では付属するケーブルの仕様(線材)が若干変っています。初期の「TRN V10」などに付属していたケーブルより編み込みが強くなっており少し細い印象を受けます。
また音質についても「TRN V80」自体がメリハリのある音なので違いはそれほど気になりませんが旧ケーブルの方が低域が厚く、わずかですが情報量が多い印象を受けました。ハウジングを金属化することでいろいろコストアップをしたのでしょうか。なかなか油断ならないですね(2回目)。今回は「TRN V80」の実力を発揮させる上でもリケーブルは必須、と考えた方が良さそうです。
■今回は「アタリ」。明瞭感とキレのある軽快なサウンドが心地良い。ただしリケーブルは必須。
「TRN V80」は最近の2BA+2DDイヤホン達と同様のドンシャリと感じますが、開封直後から明瞭感とキレのある明るめのサウンドはかなりの好印象です。「今回のTRNは『アタリ』だな」とほっと胸をなで下ろました(^^;)。
ビルドクオリティの問題からか多少の個体差は存在するようですが、100時間ほどのエージングにより安定するようです(私はいつも通りApple Musicのランダム&エンドレス再生にてエージングを実施)。ある程度エージングがすすんだ状態で聴くと、全体的なバランスの良いサウンドで、低域は軽めですが十分な量感があり、中高域との分離性は良好です。
実際には周波数特性はフラット寄りの弱ドンシャリ程度にコントロールされていることもあり、中音域は厚みがあり、ボーカルなども近く定位します。高域は解像度や伸び自体は一般的なレベルで、曲によっては少しシャリ付きを感じることもあるのと、シンバル等の残響音がちょっと癖のある響き方をしますが、高域の刺さりもほぼ感じず聴きやすい印象です。全体的には中高域はかなりハッキリした明るい音のため、よりメリハリを求める方には相当良い印象を受けるのではと思います。いっぽう自然なバランスを好まれる方には、特にこの中高域が人工的なサウンドに感じ、その点では好みが分かれる可能性がありますね。あとは明るい音は軽快で気持ちよいのですが、バラードなど重めの曲には向いていない印象があります。
このように「TRN V80」は「明瞭で派手なサウンド」という意味ではサウンドバランスも秀逸で「かなり上手にできた」イヤホンだと思いますが、同時に低域の印象など「TRN V10」を元に作ったと感じる部分も多くあります。刺さりすぎる高域で決して良いサウンドバランスとは言えなかった「TRN V10」を改めてブラッシュアップして作り直したイヤホンが「TRN V80」なのだろうな、と感じます。
またHCKの新しい「8芯 OFC 純銅線ケーブル」などにリケーブルすることで、分離感がさらに向上しより明瞭でキレが増したサウンドになります。リケーブルは是非とも行った方がよいでしょう。
というわけで、4作目にしてようやく初代のV10をきちんとリプレースできた、という感じの製品になった「TRN V80」ですが、やはり残念な点としてはビルドクオリティの点で「細かく手を抜いている」、または「行き過ぎたコストダウンをしている」という感じが否めません。
前回のあちらこちらで酷評された「V60」もネットの情報によると内部結線ミスによる不良だった可能性が指摘されています。まあ「個体ごとの当たり外れを楽しむ」といわんばかりの以前のKZ製品も問題でしたが、「手を抜いている」という点が見え隠れするのも、購入者としては結構な問題です。今回の「TRN V80」でTRNの音質面でのレベルの高さを実証できたわけですから、どうにか今後の製品でビルドクオリティについても高めて欲しいと思います。そのために、まずはより多くの方に「TRN V80」を購入して聴いていただく必要も、またあるわけですけどね(^^;)。
次回は、「TRN V80」「RevoNext QT3」「BQEYZ K2」の比較をしてみたいと思います。