こんにちは。今回は中華イヤホンの世界では老舗の「SENFER」ブランドの最新モデル「SENFER DT8」の紹介です。
「SENFER DT8」はコンパクトな金属ハウジングに2BA+2DD構成のハイブリッドユニットを搭載したイヤホンです。開封直後はちょっと微妙かも、という印象でしたが十分なエージングを経て落ち着いてくるとボーカルに寄せたセッティングを実感できるようになってきました。とはいえ、手元に届いた製品が初期ロットだったこともあると思いますがお勧めできるイヤホンかというと現時点ではかなり「?」という感じです。
「SENFER」というとお馴染み「KZ」と同じくらい以前から存在するブランドで、技術力などには結構定評があるのですが、いまだに以前レビューした「EN900」や「6in1」などのように「パ○リ」感満載の製品を作っちゃう残念な側面もあります。しかし今でこそ低価格中華イヤホンの定番とも言えるハイブリッドや2DDなどのドライバー構成もSENFERの「UE」(2DD)や「UEs」(1BA+1DD)といった往年のモデルが好評を得たことでKZをはじめ他の中華イヤホンメーカーにも広まっていったという流れがあります。
そんなSENFERが、気がつけばあっという間に大きくなってしまったKZの昨年の人気モデル「ZS6」に倣った「2BA+2DDのメタルハウジング+フェイス部分の大きめのベント(空気孔)」という構成のオリジナルデザインのイヤホンをこの時期に発売するのは、中華イヤホンの世界でも時代の変化を感じずにはいられませんね。
というわけで「SENFER DT8」ですが、内部構造としてはステム直下のハウジング内に2個のBAが並列に装着され、最近多いシングルケースタイプの直列2DDユニットがサイドに配置されます。2個のBAとダイナミックの各ユニットからの音がそれぞれ音導管を通じてステムノズルの3個の穴から出力される構造となっているようです。
購入は毎度お世話になっている中国のイヤホンセラー「Kinboofi」のアマゾンマーケットプレイスにて。表示価格は7,500円となっています。Kinboofi(@kinboofi)のTwitterアカウントでは頻繁に割引情報等がツイートされていますのでフォローの上こまめにチェックされることをお勧めします。
Amazon.co.jp(Kinboofi): SENFER DT8
■SENFERらしい高いビルドクオリティのメタルハウジング。ケーブル2種類付属も嬉しいポイント
アンダー50ドルクラスの製品が多い「SENFER」のなかで70ドル前後の価格設定は同社では比較的高級モデルの位置づけとなると思われますが、「SENFER DT8」はこれまでの同社のイヤホンより少しだけ豪華仕様という感じかもしれません。
本体デザインおよびスペックをカラープリントしたパッケージを開けると、付属品はイヤホン本体(グレーのイヤーピース装着済み)、ケーブルがマイク付きのケーブルと、銀メッキ線&銅線ミックスのケーブルの2種類、ケーブルフック、説明書といった内容となっています。
「SENFER DT8」の本体は想像したよりかなりコンパクトで耳穴にすっぽり収まるようなサイズ感です。CNC加工によるハウジングはこれまでも金属ハウジングのイヤホンを数多く手がけてきたSENFERらしく手堅い仕上がりにまとまっています。
フェイス部分の大きめのベント(空気孔)があり、多少の音漏れがあります。日常的な利用であれば全く問題ないレベルですが、図書館などの静かな場所では注意した方が良いかもしれませんね。
「SENFER DT8」のサイズ感を同じく2BA+2DD構成の「ZS6」とコンパクトな1BA+1DD構成の「ZSA」と比較すると、改めてその小ささを実感します。「SENFER DT8」は非常にコンパクトな「ZSA」と比較してもさらに小さくまとまっています。耳にすっぽり収まるサイズ感のため、装着性についてはあまり悩む必要はなさそうですが、後述のとおりできれば小さめのイヤーピースで耳奥まで押し込むように装着した方がよさそうです。
「SENFER DT8」にはMMCXケーブルが2種類付属しています。マイクリモコン付きのタイプは低価格の中華イヤホンでよく使用されるタイプのものですが、リスニング用は同社のロゴの入ったものが付属。こちらは銀メッキ線と銅線のミックス線となっており、プラグ部品などのグレードも含めなかなか品質の良いケーブルとなっています。
■ボーカルなどの中音域の一点突破型サウンド。長時間エージングとイヤピ交換は必須かも
「SENFER DT8」の周波数特性はフラット寄りで、全体的にスッキリめで中音域メインのサウンドです。しかし、ダイナミックドライバー部分の音抜けが原因か、特に開封直後は微妙なバランスの悪さを感じました。そこで、100時間以上の長時間エージングを実施したところ(エージング方法はいつものApple Musicのエンドレス・ランダム再生)、全体的に落ち着いてきたのかバランスの悪さは少し改善されました。
最低でもこのイヤホンはしっかりと長時間のエージングを行った方がよさそうです。
曲によってはわずかに離れて定位することもあり、そのような曲では高域が弱くなりがちですが、普段よりひとまわり小さいイヤーピースで耳奥まで押し込むように装着するとかなり印象が改善します。できれば開口部の大きい中高域タイプのイヤーピースが良いと思います。私自身は耳穴が小さいこともありJVCのスパイラルドットのSサイズ(他のメーカーだとSSサイズくらいの大きさです)を使用しましたが、同様にAZLAのSednaEarfitやAcoustuneのAET07なども良いのではと思います。
十分にエージングが進んだ「SENFER DT8」の中音域の表現力は、このイヤホンのもっとも特徴的な部分で、特に女性ボーカルとの相性はなかなか良好です。音場は広く、特に中音域に関しては奥行きのあるサウンドでボーカルとコーラスの定位などは気持ちよく感じます。いっぽうの高域は、最近のSENFERに共通した硬質な印象で解像度も一般的なレベルですが、上の方の表現は少し粗く、また伸びが圧倒的に不足しているようです。それでもイヤーピースを交換し耳奥までしっかり装着すると多少改善し、不快に感じない程度にまとめられている印象となります。ただ付属のイヤーピースでは結構物足りなく感じる曲も多くありました。
また低域は直列型のデュアルドライバーにより結構な量感があり、十分なエージングで音抜けが良くなることで、広がるような音場感を実感できるようになります。曲によってはかなりボワつく印象となるのですが、上記のようにイヤーピースを変えて耳奥に挿入することで印象が改善できます。
逆にウレタンタイプのイヤーピースは低域の響きか過剰になる可能性があります。どちらにせよ低域の締まりはそれほど高くなく、沈み込みの浅めなので、低音のクオリティにこだわる方にはかなり物足りないサウンドに感じるかもしれませんね。
このように、「SENFER DT8」は中音域、特にボーカルの「一点突破型」的な印象が強く、特にしっかり装着しないと高域及び低域が微妙な印象になってしまうのは少しもったいない気がします。せっかく高いビルドクオリティで、品質の良い銀メッキ線&銅線のミックスケーブルを付属させるなど品質面にこだわった製品だからこそ全体のバランスにもこだわって欲しかったところです。もっともSENFERもロットによって音が変ることのあるメーカーなので、今後改善される可能性はあるかもですが。現在の「SENFER DT8」についてはポップスなどのボーカル曲との相性が非常に良いです。いっぽうでEDMやアニソンなどの音数の多い曲やメタルなどの高域・低域の強い曲には向いていなさそうです。
というわけで、SENFERの新しいイヤホンは個性的なデザインと同様に?音質面もかなりクセのある内容でした。これが「SENFER DT8」の「特徴」なのか、今後のロットで変る可能性があるのかは現時点ではわかりませんが、すでに数多くの中華イヤホンを嗜んでいるマニア諸氏には「キワモノ」アイテムのひとつとしてコレクションに加えてみるのも良いと思います。また音質変化の強いケーブルへのリケーブルなどで変化を楽しむのも面白いかもしれません。
どちらにせよ、やはりSENFERは「パ○リやらなくても、結局マニア向けのキワモノなのね」というオチに行き着くのでした(ぉぃぉぃ)。
私もこのSENFER DT8をAliexpressにて手に入れたのですが、
期待を相当下回る出来で、ハズレ個体の可能性もありますが、投げ捨てようと思っていました。
本体の仕上げなどとても良いし、どうせ捨てる気持ちならばと、
ステム部の3つの音導管のフィルターをマチバリでほじほじしてみたら
高音が出るようになって、とても聞きやすくなりました。
このような行為は、メーカーが意図したバランスを崩してしまうことで邪道であるのは分かっていますが進められることではないものの、
実験として報告しておきたくて、
失礼しました。