Sabaj PHA3

こんにちは。今回は結構ひさしぶりの据置きのアイテムです。紹介するのは小型オーディオ製品を中心に展開する中国のメーカー「Sabaj」の真空管ヘッドフォンアンプ「Sabaj PHA3」です。
個人的にはこのようなコンパクトな据置き製品もいろいろ購入しているのですが、ついついレビューは滞りがちです。ただ今回はSabajさんよりサンプル提供をいただきましたので怠けずにレビューしたいと思います(^^;)。
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さてさて、今回の「Sabaj PHA3」ですが、写真の通り2本の真空管によるサウンドが楽しめるアナログ・ヘッドフォンアンプとなります。入力は背面のRCA端子と、前面のステレオミニ端子の2系統、出力は前面のヘッドフォン端子、という非常にシンプルな構成の製品で、Amazonでは 6,199円 で販売されています。
Amazon.co.jp(Sabaj): Sabaj PHA3

中華の「真空管アンプ」というとAmazonなどでも実は結構多くの種類が検索できたりするのですが、昔から出しているメーカーでも「本当に真空管で音を出してるの?」という製品もあって、私も以前実際に「実は真空管は点灯しているだけ」(真空管が無くても音が出る)という類いのアンプを購入したことがあります。しかし、「Sabaj」はデジタルオーディオ製品も含めとても高品質な製品をリリースしている「ちゃんとした」メーカーのようで、今回の「Sabaj PHA3」についても安心して購入できる製品でした。

ちなみに「真空管アンプ」は当然ながら増幅回路(アンプ)に真空管が使用されている機器ですが、デジタルアンプと比べ独特の「味」のあるサウンドが楽しめる反面、出力効率は著しく低くなります。そのため、「真空管だけ」の増幅回路でアンプを作ると出力効率の低さから非常に大きな電力が必要となり、とてもサイズが大きく、また(オーディオ的に)電源など気にすべき要素がとても多くなります。結果的にかなり価格的にも場所的にも構成的にも難易度の高いものとなります。

そこで、コンパクトな真空管アンプ製品では基本的な内部構造はデジタルIC(オペアンプ)等を使用した、いわゆる中華デジタルアンプ等と同様の構成で作られていますが、その前に真空管を経由した増幅を行うことで「真空管らしい音」をつくりつつ、少ない消費電力で効率的に出力を確保するように設計されています。つまりコンパクトな真空管アンプ製品での「真空管」の役割はサウンドにアクセントをつける「調味料」的な位置づけですね。
Sabaj PHA3そのため、このようなタイプの「真空管アンプ」を作る上では、まずベースとなるデジタルアンプについて十分に自社製品の特性を理解していて、そのうえで「真空管」という味付けをバランス良くチューニングすることが重要になってくると思います。
Sabaj PHA3」では入力信号の増幅に2本の6J9タイプの真空管を使用しており、さらにヘッドフォン端子への出力部にオペアンプとしてJRC「NJM4556D」を2個搭載しています。またノイズを低減させるためのチップや回路へでの制御を行っていてホップノイズ等が発生しないような工夫が施されているようです。


■非常にコンパクトでシンプルな作りながら細かく配慮されたビルドクオリティ

手元に届いた「Sabaj PHA3」のパッケージは非常にコンパクトな製品にも関わらずかなりしっかりした梱包となっており好感が持てます。
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この手の製品はACアダプタが別売りだったり、付属品の品質がいまひとつ、というパターンも多いのですが、「Sabaj PHA3」では自社ロゴの入ったACアダプタが付属しており、品質面でも問題ありませんでした。まあ本来は当たり前のことなのですが、改めてしっかりしたメーカーであることが確認できます。なお付属するACアダプタの規格はDC12V・1.67Aで5.5/2.1mmのコネクタが使用可能です。
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製品サイズは据置きタイプのヘッドフォンアンプとしては非常にコンパクトで、特に奥行きはMojoなどのポータブルアンプと比較してもその小ささが実感できます。作りはとてもしっかりしていて安っぽさは全く感じない印象です。

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真空管を外してみると、基板をある程度確認でき、2個のオペアンプ(NJM4556D)なども確認できます。なお、オペアンプは基板に直付けのため交換は出来ない仕様となっています。

電源投入後は数秒間LEDが点滅状態が続き、点灯にかわると使用できるようになります。入力端子は前後2系統ありますが入力切替のスイッチ等はなく、このタイプの小型アンプ(例えばCarrotOneとか)で多い、背面のRCA端子で接続している場合でも前面のステレオミニで接続した場合はステレオミニが優先される仕様となっています。ただ内部的なスイッチングを行っているわけではないので、両方の端子を通電状態にするのは(故障の原因となる可能性もあるので)避けた方がよいでしょう。


■「真空管アンプ」らしさを手軽に楽しめる素直なサウンド

実際に「Sabaj PHA3」を使用し、いろいろな環境で聴いてみた印象は、「真空管アンプ」らしさを十分に反映させつつ、とても素直なサウンドに仕上がっていると感じました。
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標準では中華アンプでは一般的な北京電子管の6J9真空管を使用していますが、他社の真空管アンプと比較しても、とてもウォームで中低域の膨らみを感じる「真空管らしさ」を感じる仕上がりとなっています。前述の通り小型の真空管アンプではオペアンプなどのデジタルICも出力確保のために併用していることもあり、デジタルアンプとしての性格の方がむしろ強くなっている製品もわりと多いですが、「Sabaj PHA3」については同様のアプローチの製品の中ではかなり真空管のキャラクターを前面に出したセッティングになっていると感じます。
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駆動力に関しても通常のヘッドフォンでは十分な出力を確保でき、AKG「K712 Pro」や「K701」はもちろん、インピーダンス250Ωのbeyerdynamic「DT1770 PRO」でも据置きのDACやアンプからの出力であれば特に問題はありませんでした(音量は半分以下)。これらモニター的なヘッドフォンで聴いてみると解像度や音のキレなどは多少丸められた印象も感じますが、中音域の濃度が増したような厚みを感じ、全体的にも聴きやすいサウンドに変化しているのが分ります。
手持ちのヘッドフォンでは同様にリスニング傾向が強いHIFIMAN×Massdropの「HE4XX」(HE400ベースで同400iに近いサウンドのヘッドホンですね)との組み合わせが結構気に入ってます。
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また、DAP(デジタルオーディオプレーヤー)など、ライアンアウトの出力音量が小さいポータブルオーディオと接続する場合も「Sabaj PHA3」側の音量を4分の3程度まで上げれば十分に使用できました。
そのため、「真空管らしい音を楽しみたい」という目的以外にも、普段はDAPで反応の良いイヤホンと組み合わせて聴いている方が、屋内で出力の欲しいヘッドフォンで聴きたいときに組み合わせる、という普段使い用の据置きアンプとしても、小型でシンプルな「Sabaj PHA3」はとても使い勝手が良いと思います。ちなみに、これは「Sabaj PHA3」に限ったことではありませんが、ヘッドフォンに最適化されたチューニングのため、反応の良いイヤホンでは一定のホワイトノイズが発生します。イヤホンと組み合わせたいと考えている方は念のため注意が必要ですね。

いっぽう、「Sabaj PHA3」はボリュームを最大まで上げても歪みなどは非常に少ない印象のため、ヘッドフォン出力から外部アンプへラインアウトしスピーカーで出力するプリアンプ(ラインアンプ)的な使い方でも使用可能でした。この場合、デスクサイドなどニアフィールドのコンパクトスピーカーでの利用などで真空管アンプの中低域を少し持ち上げる傾向が活かされるのではと思います。
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さらに、「Sabaj PHA3」は真空管のキャラクターをしっかり反映しているアンプのため、管の交換による音の変化を楽しむ上でも最適です。この手のお手軽なアイテムとしては日本ではNFJが販売する「FX-AUDIO- TUBE01J」や「TUBE03」(どちらのモデルもより小さい「6J1」真空管を使用)といった真空管ラインアンプがとても人気ですが、「Sabaj PHA3」もヘッドフォンアンプ出力部にオペアンプICを搭載しているものの、かなり近いレベルで真空管ごとの特徴が出るようです(手元にあった低価格の旧ソ連製「E180F」でも少し音の厚みが増すなど印象の変化を実感できました)。


というわけで、「Sabaj PHA3」を紹介してきましたが、手軽に真空管のサウンドを楽しむ上では非常に使いやすい製品だと感じました。特に作りの丁寧さやビルドクオリティの高さはちょっと驚いた部分で、とてもしっかりしたメーカーだと改めて実感しました。
これまで中華アンプやDACなどはTOPPINGやS.M.S.Lの製品を多く購入していましたが、今回の品質の良さとコストパフォーマンスの高さを実感したことで、Sabajのデジタルオーディオ製品にも俄然興味がわいてきました(「Sabaj D4」あたりはなかなか面白そうです)。機会があれば同社の他の製品にもいろいろ挑戦してみようと思っています。