SMSL Sanskrit 10th

こんにちは。今回は久しぶりにUSB-DACの紹介です。今回紹介するのは中国「S.M.S.L」社の「SMSL Sanskrit 10th」です。「S.M.S.L」は中国のオーディオブランドの中でも高品質で比較的ハイグレードなオーディオ製品を製造しているメーカーとしてマニアの間ではお馴染みになってきています。また同社の公式Twitterアカウント(@SMSL_Official)もあります。

今回紹介する「SMSL Sanskrit 10th」は、同社のUSB-DAC製品である「Sanskrit」シリーズの10周年モデルの位置づけで、約1万円程度の低価格モデルながら「AK4490EQ」をDACチップに搭載し、「32bit/386kHz、DSD256」に対応するなど、高性能・高音質なDAC機能をCNC加工されたアルミ製のコンパクトな筐体に搭載し、デザイン的にもこだわった内容のモデルです。
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また、特徴的な仕様として、重力センサーにより縦置き・横置き、さらにどちらを上に向けても正面のディスプレイ表示が調整される機能がついており(サイコロめざまし時計みたいなギミックですね^^;)、好きなレイアウトで配置ができる仕様になっています。また入力切替やボリューム等をコントロールできるリモコンも付属しています。

SMSL Sanskrit 10thSMSL Sanskrit 10th」の内部仕様は、まず、USBインターフェース部分に高機能USB-DACでは定番の「XMOS」チップを採用。最大32bit/384kHzのPCMおよびDSD256(11.2MHz)の入力に対応します。「USB Audio Class 2.0」に準拠するMac等ではドライバー不要で接続が可能(DSDはDoP仕様)です。また、Windows用ドライバー(Thesycon製)も用意されておりASIO接続が可能となっています。
DACチップは最近ではすっかり定番となったAKM製の「AK4490EQ」を搭載。「AK4490」は現在は低価格DAP製品などでも採用されはじめておりチップ単価もかなり下がってきていますが、もともと様々なオーディオ製品やAK380などの高級DAPにも搭載されてきた実績のあるDACチップですので、低価格・多機能な「SMSL Sanskrit 10th」にはぴったりな選択でしょう。ほかにも回路チップやパワーモジュールには安定した高音質を実現するための工夫が施されています。

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入力インターフェースはUSB(microUSBコネクタ)、2系統のSPDIF入力(COAX端子および光端子)の3系統の入力に対応します。PC/Macへの接続時にはUSBのバスパワー稼働が可能で、さらにmicroUSB端子の補助入力から電源を供給することで、iOSデバイス(Lightningカメラアダプタと変換コネクタが必要)およびAndroid(OTGに対応する端末とOTGケーブルが必要)の出力が可能です。つまり、USB-Audio出力に対応したDAPとの接続も可能になります。

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SMSL Sanskrit 10th」は「ブルー」または「レッド」の2色から選択でき、日本国内ではアマゾンのオフィシャルストアで購入が可能です。価格は 10,530円 となっています。プライム扱いでアマゾンの国内倉庫より出荷され、万が一の場合もアマゾン経由での対応が可能です。
Amazon.co.jp(S.M.S.L-Audio): SMSL Sanskrit 10th

また、Windows用ドライバーやPDFのマニュアルなどは同社サイトの製品ページよりダウンロードが可能です。
S.M.S.L社サイト(SMSL Sanskrit 10th)

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SMSL Sanskrit 10th」は製品写真を掲載したボックスで届きました。パッケージ内容は本体、接続用USBケーブル、リモコン、説明書、保証書。リモコンの電池は付属せず、単4電池2本が必要です。
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SMSL Sanskrit 10th」の本体は非常にコンパクトにまとめられており、アルミ製のシャーシはしっかりしたビルドクオリティがあります。とてもシンプルかつスマートなデザインは好感が持てます。さすがにポータブル利用を想定した「Mojo」や「iFI nano iDSD BL」のようなコンパクトさはありませんが他のUSB-DAC製品と比較しても比較的コンパクトにまとめられています。

ところで、「SMSL Sanskrit 10th」は既存の「Sanskrit」シリーズ同様に、ヘッドフォン入力端子(ヘッドフォンアンプ)を持たず、アンプやアクティブスピーカーに接続しスピーカー出力を行うことを前提とした据置型USB-DACです。

SMSL Sanskrit 10th1万円程度のUSB-DAC製品では採用チップの古さや対応周波数などスペック的に見劣りするものが多い中で、「SMSL Sanskrit 10th」の対応データ(32bit/384kHz、DSD対応)、搭載するDACチップ(AK4490EQ)はかなり魅力的なスペックだと思います。特に同価格帯で384kHzのPCMに加えてDSDのASIO再生が可能な製品を探すと非常に選択肢が限られるのがわかります。
国内で販売されている同価格帯の製品ではDACチップに「ES9018K2M」を採用した「TOPPING D10」があり、DSD対応も含め同等の対応スペックを持つ製品ですが、「SMSL Sanskrit 10th」は複数のデジタル入力を持ち、OTGによるスマートデバイス対応やリモコン制御など、外観デザインも含めより多くのシチュエーションでの利用を想定した製品となっているのがわります。

今回はMacに「SMSL Sanskrit 10th」を接続して定番の「Audirvana Plus」で聴いてみます。Windows環境の場合はメーカーサイトでドライバーをダウンロードしてインストールします(注意事項は後述)。Windows環境でのfoobar2000やJRMCなどでのASIOの設定方法はここでは割愛します。
SMSL Sanskrit 10th  Audirvana Plus

SMSL Sanskrit 10th」をUSB-DACとしてバスパワー接続して聴いた印象は、とにかく「素直な音」ですね。「AK4490」はもともと味付けの非常に少ないナチュラルなサウンドが特徴的なDACですが、まさにその印象そのままのサウンドです。1万円程度のUSB-DACとしてはS/Nはかなり高いほうでスッキリした印象のサウンドです。解像度は極端に高いわけではないですが、各音域の1音1音、ボーカルの息づかいなどもしっかり捉えておりとても気持ちよく聴けます。またDSDもアナログっぽさは少ないものの比較的自然な印象です。

SMSL Sanskrit 10th前述の「TOPPING D10」と比べると、「SMSL Sanskrit 10th」のほうが全体的に自然なサウンドで、「D10」はより明瞭感とメリハリを感じる元気な音、という印象になります。解像度は「D10」のほうが高い印象ですがいっぽうで少し人工的なザラつきを感じる場合があります。おそらく「D10」はデスクトップオーディオやコンパクトオーディオに特化したサウンドアレンジを行っているのがわかります。そのため、小型スピーカーをニアフィールドで配置する場合は「D10」くらいのメリハリがあったほうが「濃い音」に聴こえ、「SMSL Sanskrit 10th」は少しアッサリした印象に感じるかもしれません。
いっぽうの「SMSL Sanskrit 10th」はスモールレンジの製品ではあるものの、さまざまなシチュエーションでの利用を想定しており、機能性・操作性を高めつつ、ユーザーがーアンプ以降で好みのアレンジを加えやすいナチュラルなサウンドバランスにしているのかもしれませんね。

また「SMSL Sanskrit 10th」はOTG出力に対応しているため、補助電源出力にUSBの充電ケーブルなどを接続したうえで、スマートフォンを接続すれば外付けDACとして使用することが出来ます。またAstell&KernやShanlingなど「USB-Audio出力」に対応したDAC(デジタルオーディオプレーヤー)を接続してスピーカー出力させるのにもとても便利です。
SMSL Sanskrit 10thSMSL Sanskrit 10th
あと、付属のリモコンは、「電源ON/OFF」、「ディスプレイ表示ON/OFF」、「入力切替」、「ボリューム」で使用することができます(他の機種と共通のリモコンのため、使用しないボタンも半分くらいあります)。また最初に使用する前に「C」ボタンを押して連携をさせる必要があります。私はAirPlay再生用の「AirMac Express」や動画再生のメディアプレーヤー等ををSPDIF接続でデジタル入力しているため、リモコンで切り替えて使用できるのは結構便利ですね。また最近であれば赤外線リモコンを登録できるスマートホーム機器と連携して音声制御で使用するなどさらなる利便性の向上も図れそうです。

というわけで、「SMSL Sanskrit 10th」は低価格ながらハイスペックな製品に匹敵する再生能力を持ち、音質面もノイズの少ないスッキリしたサウンドが楽しめます。また様々な用途で活用できる利便性の高さや、どのような場所でも使いやすいデザイン性の高さなど、トータルでの完成度の高いUSB-DAC製品だと感じました。1万円程度で音の良いUSB-DACを探している場合はお勧めできるアイテムだと思います。
お使いのアンプやアクティブスピーカー、定番の「SMSL SA-98E」などの中華デジタルアンプと組み合わせての使用のほか、アナログのヘッドフォンアンプを組み合わせて利用するのも良いと思います。


【補足】
余談ですが、XMOSチップを搭載するUSB-DACを数種類同時にWindows環境で使用する場合は注意が必要です。XMOS社製チップのASIO対応のリファレンスドライバーはドイツ Thesycon社からのみ供給されており、XMOSチップを搭載する製品のドライバーはほぼ100%このドライバーを元に作られています。ただ組み込みドライバーのためメーカーによってバージョンにバラツキがあり、複数のUSB-DACを接続する場合、同一ドライバーの複数バージョンが混在することでの動作不良が起こる可能性があります。特に新しいバージョンのドライバーを使ったUSB-DACが接続済みの環境で古いものをインストールすることで元々のUSB-DACが正常に動作しなくなる、というトラブルが考えられます。

XMOSチップを採用したUSB-DACは非常に多岐にわたりますが、私の手持ちの製品でも「iFI-Audio」(nano iDSDなど)や「TOPPING」(D10、D50など)などのメーカーで採用されています。これらのドライバーはインストーラーのファイル名の末尾に「v4.11.0」といったようにバージョンNo.が記載されており、すでにインストールされている場合も情報を確認すると同様の数字が確認できます。もし既にインストールされているUSB-DACのドライバーバージョンのほうが新しかった場合はいちどそのドライバーをアンインストールし、追加したい機器のドライバーをインストール後に再度インストールし直すことで「古いもので上書きする」という状況は回避でき、どちらの機器も使用できると思います。