LZ Z04A LZ Z05A

こんにちは。今回紹介するのは中国のイヤホンメーカー「LZ HiFi Audio(老忠)」の「LZ Z04A」および「LZ Z05A」というシングルダイナミック構成の2モデルです。LZといえば現在は「LZ A6 黒将軍」や「LZ A6 mini」といった中華イヤホンでは比較的高価格帯の製品を中心に展開するブランドですが、今回は50ドルクラスと、現在の同社にとってはかなり低価格帯に挑戦した製品となります。

どちらも本体形状は同一ですが、ブラックのフェイスパネルのモデルが「LZ Z04A」、ブルーのフェイスパネルのほうが「LZ Z05A」となります。2つの製品の最大の相違点は搭載しているダイナミックドライバーで、「LZ Z04A」は「バイオセルロース振動板」を採用し、「LZ Z05A」は「カーボンナノチューブ振動板」を採用します。一般的なダイナミック型ドライバーでは珍しい2種類の素材をダイヤフラム(振動板)に採用することで、低価格中華イヤホンがひしめく価格帯の中で、どちらのモデルも他には無い個性的なサウンドを実現しています。
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LZ Z04A」の「バイオセルロース振動板」は採用例は少なく、最近では先日レビューした「Yinyoo Topaz」のダイナミック部分で使用されていました。「LZ Z05A」も「カーボンナノチューブ振動板」の採用例は少ないもののこちらはいつくかのメーカーで採用されており、最近ではLZ自身が「SEMKARCH」で搭載しているドライバーとしてマニアには知られていますね。低価格モデルとはいえ、搭載ドライバーで個性を前面に打ち出してくるあたりはいかにもLZらしい気がします。
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また今回は低価格も出るということで、スマートフォン等でのライトユーザーもターゲットにしているらしく、付属のMMCXケーブルはマイクリモコン付きのみとなります。
LZ-Z04ALZ-Z05A
購入は、いつもお世話になっている中国のイヤホンセラー「Easy Earphones」にて。AliExpressでの購入方法はこちらをご覧ください。またアマゾンではプライム扱いで国内倉庫より出荷されるためすぐに商品が届きます。アマゾン経由でのサポートを受けられますので安心感がありますね。

「LZ Z04A」  AliExpress(Easy Earphones)  56.25ドル
Amazon.co.jp(WTSUN Audio) 4,980円

「LZ Z05A」  AliExpress(Easy Earphones)  75ドル
Amazon.co.jp(WTSUN Audio) 6,980円

※WTSUN Audioから「LZ Z04A」「LZ Z05A」の 5% OFF クーポンの提供をいただきました。
購入時に「 ENHHJCPL 」を入力すると 5% OFF となります(有効期限 2019年12月31日23:59まで)。ほかのクーポンや割引きなどとの併用もほとんどの場合可能だと思います。


■コストダウンの印象はあるものの、軽量で装着性はむしろ向上

到着したパッケージはどちらも同様のデザインでモデル名の表記意外に相違点はありません。
LZ Z04A LZ Z05ALZ Z04A LZ Z05A

LZ Z04ALZ Z04A
パッケージ内容はどちらのモデルも本体、MMCXケーブル、イヤーピース(2種類・各S/M/Lサイズ)、イヤホンケース、保証書、説明書。ケースなどコストダウンの形跡が見受けられます。

LZ Z05ALZ Z05A

ハウジングはLZ-A6と似たデザインですがひとまわり以上コンパクトで、とても軽量です。しかしサイズが大きく重いA6と比べてむしろ装着性はかなり良い印象で、個人的にはLZ製イヤホンのなかでもっとも耳に馴染みました。ハウジングは樹脂製でアルミ製のプレートが貼り付けられたシンプルなデザインとなっています。とはいえ、樹脂ハウジングの質感やA6同様に角を面取りしたフェイスプレートなどにより安っぽさはあまり感じない印象となっています。
LZ Z04A LZ Z05ALZ Z04A LZ Z05A
付属ケーブルはマイク付きの樹脂被膜の線材で、被膜が硬く弾力も強めなので絡まりにくいものの取り回しはいまひとつ。また手元に届いた個体では片方のケーブルはMMCXコネクタのカバーが外れてしまうものがあり、見た目同様にちょっと安っぽい印象は否めませんね。
こちらについては後述の通りMMCXコネクタ仕様のリケーブルをお勧めします。


■より多くのユーザーに訴求しやすい「わかりやすい」アプローチのサウンド

LZ Z04A」「LZ Z05A」の音質傾向はどちらも中低域寄りのバランスでまとめられていますが、それぞれが搭載するダイナミックドライバーの材質の違いをかなり色濃く反映させた仕上がりとなっています。
LZ Z04A LZ Z05A「SEMKARCH」などのモデルでもみせた低域の質の高さは健在で、5~6千円程度の価格帯のイヤホンとしては相当なレベルの高さを感じますし、全体的に聴きやすくまとめられたバランスと奥行きを感じる音場感は、「わかりやすく良い音に感じさせる」サウンドではないかと思います。言い換えれば「細かいところはともかく全体の雰囲気として良く聴こえるよう演出した」という印象となるかもしれませんね。LZがこの製品のターゲットと考えていると思われる「より本格的なイヤホンに挑戦したい」というライトユーザーにとっても分りやすく「違い」を実感できるイヤホンだと思いますし、マニアにとっても低価格ながら聴きやすいバランスでそれぞれの搭載ドライバーの違いを楽しめるアイテムとして良いのではないかと思います。


「LZ-Z04A」  バイオセルロース振動板による低域重視のサウンド

LZ-Z04A「バイオセルロース振動板」を採用したした「LZ Z04A」は従来のLZのサウンドとは一線を画した「暖色系」寄りのサウンドで、より低域の質の高さを感じるサウンドとなっています。「LZ Z05A」と比較するとより低域寄りのチューニングとなっており、高域は少なめです。とはいえ、このイヤホンの低域を考えるとこのバランスがむしろ正解だと感じます。ただ後述しますが再生環境によって中高域の印象が変わる傾向で、ボーカルを上げると少しキツめの歪みを感じる場合があります。

低音域は重量感があり沈み込みも深く、とてもしっかりした音です。分離性は比較的高く中低域への籠りなどはありません。低域の解像度はこの価格帯のイヤホンとしてはかなり良好で、質の良さを感じる音です。
中音域はボーカルを楽しむタイプの音で比較的近い場所で鳴ります。全体的に音場はやや広めですが、それ以上に前後に折り重なるように鳴る印象で、曲によっては臨場感を演出しておりとても楽しく感じます。特に最近の洋楽ポップスのように打ち込みが主体の音ではボーカルにフォーカスを当てつつ、演奏が緩やかに前後左右に広がる印象が心地良いサウンドに感じます。例えるなら一眼レフで「ボケ味」を効かせた写真のような印象ですね。いっぽうで音の描写にラフさもあり1音1音をきちんと聴くという聴き方は不向きです。
LZ-Z04ALZ Z04A」の高域は量感自体はそれなりにありますが明瞭感は少なく天井は低めで抜けもいまひとつ。そのため高域好きの人にはかなり物足りなさを感じると思います。刺さり等は全くありません。全体的なバランスは良く聴きやすいサウンドですが、曲の種類や再生環境によって印象が結構変わるイヤホンでもあります。スマートフォンなど、もともとダイナミックレンジが狭くS/Nがそれほど高く無い再生環境であればあまり気にならない可能性も高いと思いますが、分厚い低域とバランスを取るために中高域も強めのバランスになっているため、音量を上げることで高域の歪みが出やすく、高音に音数の多い曲では耳に負担を感じるキツめの音になるようです。これらの点については、ある程度S/Nが高く出力が取れるDAPを使用する、より反応が良く情報量の多いケーブルにリケーブルする、というアプローチでより低音量でも音圧が取れるようにするアプローチでかなり印象が良くなります。また50時間~100時間程度のエージングによりイヤホン自体の音もかなり馴染んでくるようです。エージングで雑味が多少解消されより聴きやすくなります。

LZ Z04ALZ Z05A
「Easy Earphones」では以前、「LZ Z04A」および「LZ Z05A」に「YYX4823 8芯 高純度銅線ケーブル」や「YYX4822 8芯 銀メッキ線ケーブル」をオマケにつけるキャンペーンを行っていましたが、これらのケーブルは価格的にも音質的にも是非ともお勧めしたい組み合わせです。上記のような中高域の歪み軽減のためにも「リケーブルは必須」なイヤホンだと思いますので、これから検討される方も併せて購入することをお勧めします。


「LZ-Z05A」  カーボンナノチューブ振動板によりさらに中高域の明瞭感をアップ

LZ Z05A「カーボンナノチューブ振動板」を「LZ Z05A」は、「LZ Z04A」と比べてより中高域に振ったサウンドになっています。ただ同じカーボンナノチューブ振動板を使用しつつ思い切り低域寄りに振った「SEMKARCH」と比べると全体の完成度はいまひとつで、印象としては異なるドライバーで「LZ Z04A」と同様に作ったらちょっとバランスが崩れてしまった、みたいな「どっちつかず」感があります(もちろん実際には異なるチューニングだと思いますが)。何というか両方のイヤホンを聴いていると「ダイヤフラム(振動板)を替えると結構音変わるでしょ」というデモンストレーションでも受けているような気になってきます。

LZ Z05A高域は相対的に強くなっており、「LZ Z04A」よりは天井が高い気もしますが、高域の煌めきなどもあまり感じない印象で明瞭感はいまひとつ。いっぽうで「LZ Z04A」同様に再生環境によって音量をあげると中高域がすこしキツく感じる傾向にあり、「LZ Z05A」は中高域寄りのチューニングとなっているためか、その傾向がさらに強く感じやすい印象があります。
中音域はほぼ暖色系だった「LZ Z04A」と比べるとかなり明瞭感があり、演奏も含めて音の描写はよりしっかりした印象。同様にボーカルを中心に聴きやすいバランスです。ただサウンドチューニング自体は同様で「LZ Z04A」と多少雰囲気のある音に感じたものが「LZ Z05A」ではちょっと中途半端になってしまっている印象があります。高域同様に音量を上げることで音数の多い曲では歪みによる刺激をより感じやすく、個人的には雑味のほうの印象が耳に付きがちな音でした。
低域は量感こそ「LZ Z04A」より少ないものの十分に存在感があり重低音の沈み込みもしっかりしています。個人的には「LZ Z04A」の厚みのある低域のほうが好みの印象だったため、比較すると少しアッサリとまとまっている感じもありますが、同様に質は高く、中高域とはしっかり分離しつつ重低音の厚みのある音で心地良いサウンドだと思います。
そして「LZ Z05A」もやはりリケーブルが必須のイヤホンで、同様に「YYX4823」「YYX4822」との組み合わせをお勧めします。
スマートフォン等でのストリーミングが中心のライトユーザーであれば「LZ Z04A」より中高域の明瞭感のあるサウンド、という点で「LZ Z05A」は選択肢になると思います。またマニアの方であれば2種類のドライバーの音の違いを楽しむ上では楽しめる製品かなとは思いました。