NICEHCK F3

こんにちは。今回は「NICEHCK F3」の紹介です。とにかく美しい鏡面処理ハウジングに特徴的な平面磁気ドライバーを含むトリプルドライバー・ハイブリッド構成のイヤホンです。その独自のドライバー構成を活かしたチューニングのため非常にすっきりした高域寄りのサウンドで、RHA社の「CL1 Ceramic」などを彷彿とさせる印象の音質的にも「かなりマニア向け」なイヤホンです。

中国の代表的なイヤホンセラーは最近オリジナルブランドの製品を数多くリリースしていますが、「NICEHCK」ブランドの製品を展開する「HCK Earphones」はとりわけ「キャラの立った」イヤホンを最近は集中的にリリースしていますね。
やはり中華イヤホンを日本をはじめとする多くの市場のマニアに広めたパイオニア的なセラーですので、客のことをわかってるというか、もう明らかに普通のイヤホンはさんざん買ってるヲタクをさらに狙い撃ちするような製品展開は「かなりえげつない」(褒め言葉)印象があります(^^;)。

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そんなわけで、今回の「NICEHCK F3」ですが、まずはクロームメッキにより鏡面処理されたメタリックシェルが圧倒的に「目立つ」イヤホンです。すべてCNC精密加工させたアルミニウム合金製でロゴマークなどのデザインのない無地のフェイスプレートと装着性を考慮し耳にフィットしやすいデザインに加工されたハウジングは価格以上の存在感を放ちます。

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そして、この外観以上に強力なキャラクターを与えているのが搭載しているドライバーで、「NICEHCK F3」ではバランスド・アーマチュア型(BA)ドライバー、5mmダイナミック型ドライバーと併せて10mmの「平面磁気ドライバー」と、3種類のドライバーユニットを搭載しています。

「平面磁気」(または「平面駆動型」)ドライバーもダイナミック型ドライバーの一種で、強力な磁石を使った電気回路で振動板(または振動膜)を振動させることで音を発生させる仕組み自体は同じです。しかし通常のダイナミックドライバーの振動板が緩やかなコーン型、ドーム型なのに対し、平面ドライバーではその名の通り平面の振動板(Planar Diaphragm)を使用します。
通常のダイナミックドライバーでは磁気回路により振動板(ダイヤフラム)の中心部分が振動し、その振動が外周部に伝播する方法をとっていますが、平面磁気ドライバーでは平面上のダイヤフラム全体を振動させる方法をとります。
NICEHCK F3  NICEHCK F3
このため、通常のダイナミックドライバーと比較しより歪みの少ないサウンドが表現できる点が最大の特徴です。しかしダイヤフラム全体を振動させるため、より大きなサイズのドライバーを使用する平面駆動型ヘッドフォンや平面スピーカーほどではないものの、通常のダイナミックドライバーより効率が低く(より大きな電力が必要)、鳴らしにくい傾向にあります。また、特にイヤホン用の平面磁気ドライバーでは歪みのより少ない解像度の高い音が期待できるいっぽうで深みのある重低音はあまり得意ではなく、どうしても中高域がメインのユニットとなることが多くなります。
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そのため、「NICEHCK F3」ではBAドライバーと小型のダイナミックドライバーを加えハイブリッド構成とすることで比較的扱いやすいサウンドチューニングを実現しています。とはいえ、インピーダンスは16Ω、感度95dB/mWと、鳴らしにくさと、平面磁気ドライバーをしっかり鳴らすための安定した駆動力が必要な使用のため、再生環境は大きく制限されます。スマートフォンのように超低電力でゲイン(音圧)を確保するタイプのオペアンプを使用しているプレーヤーの場合、「NICEHCK F3」のようなイヤホンでは大きく歪みが出るため本来のサウンドを楽しむことができません。高域寄りな音質傾向も含め、やはり相当に「わかっている」マニア向けの製品であるといえますね。
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NICEHCK F3」の購入はAliExpressのHCK Earphonesにて。AliExpressでの表示価格は183.41ドル(セール価格)で、さらにオーダー時にフォロワー値引きが受けられます。また、アマゾンでも一時期 19,000円で販売していましたが現在は取り扱っていないようです(今後在庫が復活したらまたリンクを貼ります)。AliExpressでの購入方法およびフォロワー値引きの方法はこちらをご覧ください。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): NICEHCK F3
Amazon.co.jp(NICEHCK): NICEHCK F3


■ 鏡面処理のシェルがとにかく美しい。装着性の高さもポイント

NICEHCK F3」のパッケージはいつものHCKのボックスでパッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/Lサイズ)、ケースと、至ってシンプルな内容。
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クロームメッキの鏡面処理加工が施されたアルミニウム合金製ハウジングは非常に美しく、装着していても存在感をしっかりと主張します。細めのステムやシェルの形状もあり装着性は非常に良く、多くの人は装着性に困ることはないでしょう。イヤーピースは付属のもので問題ありませんが、「final E」シリーズやAcoustuneの「AET08」(開口部の小さいタイプ)などでフィット感を向上させると中低域に厚みが出てより良い印象のサウンドになると思います。
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付属ケーブルは「NICEHCK TDY1」シルバーと同様の線材を使用したタイプですが、2pinコネクタ部分が「中華2pin」仕様となっています。現在販売されている「TDY1」はCIEM 2pin仕様ですが、このタイプのコネクタのバージョンも使い勝手がよいので是非とも単独でも販売してほしいところです。


■ 圧倒的に「クリア」でフラットなサウンド。主張のある高域ながらバランスの良さも秀逸

NICEHCK F3NICEHCK F3」の音質傾向は、かなり明瞭感のある、高域の主張が強めなチューニングですが全体的にはフラットな印象で、とにかくスッキリとした見通しのよいサウンドが特徴的です。同時に中低域の質も非常に高く、透明感と伸びのあるサウンドはその見た目同様にとても個性的です。いっぽう最近増えている高域の刺激を抑制した聴きやすいバランスのイヤホンと比較するとかなり高域が強くシャリ付きなどの刺激を感じやすいサウンドだと思います。
箱出し直後はとにかく高域の強さだけが目立つ印象もありましたが、50時間程度のエージング(エージング方法はApple Musicのランダムエンドレス再生)で低域の厚みが増加し、高域寄りの傾向は変わらないものの、個人的には良い感じのバランスになりました。エージングでの変化はかなり大きいイヤホンですので、まずはしっかりと鳴らし込んで聴いてみることをおすすめします。

前述の通り、このイヤホンは明確な「マニア向け」「わかってる人向け」に全振りした構成で、サウンドチューニング的にもその個性がしっかり発揮できるような仕上がりとなっています。あくまで「マニア限定イヤホン」という前提条件で言うならば、200ドル以下、1万円台で買える製品としては「NICEHCK F3」の高域の質は驚くほど高く、この高音だけでも「(マニアならば)絶対に押さえておくべきイヤホン」だと明言できるほどです(まあこの点については初動である程度の数が出ていますし、言うまでもなく割と多くの方が既に持っていそうですけどね^^;)。

NICEHCK F3」の高域は「クリア」という言葉はこのイヤホンにこそ使うべき、という感じの見通しの良さ、伸びの良さを持った音で、抜群の解像感と煌びやかさは結構病みつきになるレベルの良さを感じます。「NICEHCK F3」の高域の強さは「RHA CL1 Ceramic」と「TIN Audio T2 Pro(T2の高域を強化したバージョン)」の中間くらい(ややCL1寄り)の印象で、ある程度のシャリシャリ感などの刺激がある音ですが、エージング後は駆動力のある再生環境ならば中低域のバランスも良くなるため、正直「CL1 Ceramic」よりは格段に聴きやすく、刺激強めではあるものの個人的には多少の長時間リスニングでも全く問題ない印象でした。
NICEHCK F3NICEHCK F3
中音域も澄んだ空気感が気持ちよい透明感のあるサウンドで、同時に自然なまとまりの良さが印象的です。とても精緻な描写で、1音1音にしっかりピントが合った表現をしつつ、人工的な味付けを感じないフラットさが印象的です。女性ボーカルの伸びの良さはかなりの心地よさを感じます。
低域は高域の主張の強さにより少なく感じますが、実際はある程度の量感があり、全体としてまとまりのあるサウンドバランスになっています。重低音の締まりも良く、解像度の高いサウンドです。特に一定のエージングを行うことでしっかりとした存在感が現れ、高い分離性によるキレの良さやアタックの印象は「NICEHCK F3」の質の高さを改めて実感します。


■ しつこいですが「マニア限定」で「買う人を選ぶイヤホン」です。

低音域の量感を求めるような曲には向きませんが、ポップスやロック、アニソンなどのボーカル曲と相性がよく、中高域がスッキリした音を聴きたい場合には最適なイヤホンだと思います。
繰り返し書いていますが、「NICEHCK F3」はあくまで色々なイヤホンを聴いている「マニア限定」のイヤホンです。そのため、よくコメントでもいただく「○○とどっちがいいか悩んでます」という感じの方は「まだ」買わない方がよいでしょう。逆に、すでにこの価格帯以上、つまり数万円クラスのイヤホンに「複数」手を出していて(笑)、よりスッキリした音を、と考える方は「迷わず」ポチりましょう(おいおい)。
NICEHCK F3個人的には好きな音のため、結構べた褒めしているような内容になっていますが、実際の「NICEHCK F3」はこれくらい「買う人を選ぶ」製品で、「(いろいろ既に持ってるけど)こういう音のイヤホンも押さえておこう」という感じで購入するイヤホンだと思います。
多少リスクをとってチャレンジしてみることそのものを「中華イヤホンの醍醐味」して楽しめることが必要かもですね。
また、以前のレビューでも書きましたがHCKのオリジナルイヤホンでの「攻める姿勢」(どうも意見を聞いてたら結果的にそうなってるだけ、という説もあるみたいですが^^;)は個人的には結構応援しています。いいぞもっとやれ(笑)、という感じです。今後もどのような製品が登場するか、本当に楽しみですね(にやり)。