Acoustune HS1670SS

こんにちは。今回はちょっと「今さら」感もあるのですが、発売から1年越し(汗)で、香港のイヤホンブランド「Acoustune」のハイグレードモデル 「HS1670 SS」の紹介です。
私が購入したのが平成の終り、2019年の4月で、本来は5月頃にレビュー予告をしていた「書きかけレビュー」を夏も終わるこの時期にようやく仕上げた、という感じです(相変わらずズボラですね)。昨年の発売段階から試聴などですっかり気に入っていて買う気は満々だったのですが、7万円台の価格設定と、なかなかの高級イヤホンですので、さすがに1~2万円くらいまでの製品のようにホイホイと衝動買いもできないな、という感じではありますね。同様に熟考されている方からのレビューのリクエストもいただいており、あらためてレビューさせていただくことにしました。
ちなみに、「Acoustune」(アコースチューン)の製品については過去に2回ほど試聴機をお借りしての紹介レビューを掲載しています。
過去記事(一覧): 「Acoustune」製品のレビュー
Acoustune HS1670 SS香港のイヤホンブランドである「Acoustune」は、同社独自の「ミリンクス振動膜」ダイナミックドライバーを搭載したメーカーであることが知られています。「鼓膜」を意味する「ミリンクス」は人工皮膚などで使用される材質で軽量かつ柔軟性があり反応性の良さとダイナミックレンジの広さを持っています。
そして、同社のHS1500シリーズ以降、現在のひときわ目を引くメカニカルで独創的なデザインを採用し、一気に注目度がアップしました。これらはすべてモジュール構造のデザインを採用していて、精度の高いCNC加工によるアルミ切削のハウジング部の中央で存在感を示している音響チャンバー部(ドライバーを格納)を完全分離し、共振を抑える設計となっています。さらに、ドライバー自体に加えて、音響チャンバー部の素材により音質傾向にバリエーションを持たせています。また同シリーズの製品は高品質を維持するため日本で生産されている点も特徴です。

現在の最新モデルである「HS1670 SS」と兄弟商品の「HS1650 CU」は、ちょうど1年前の2018年8月に国内版がリリースされており、さらに2019年4月より「Acoustune」の国内販売元が現在のアユートへ変更となり、取扱店舗も一気に拡大しました。
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HS1670 SS」「HS1650 CU」は「第4世代 ミリンクス振動膜」10mmダイナミックドライバーをシングルで搭載し、「HS1650 CU」はマットブラック/ゴールドのアルミ切削ハウジングと「真鍮」切削チャンバー、「HS1670 SS」はガンメタル/シルバーのアルミ切削ハウジングと「ステンレス」切削チャンバーを採用し、スペックだけでなく見た目でもキャラクターに個性を与えていますね。
アマゾンでの表示価格は「HS1670 SS」が 76,980円、「HS1650 CU」が 59,980円 でした。
Amazon.co.jp: Acoustune HS1670 SS / HS1650 CU

「Acoustune」のハイグレードモデルのパッケージと言えば、ジュラルミンケースのような頑丈なケースが印象的です。購入した「HS1670 SS」もパッケージを開封するとこの重厚なケースに遭遇します。
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Acoustune HS1670SSAcoustune HS1670SS

そして、とにかく付属品が豪華なことも「Acoustune」の特徴でしょう。「HS1670 SS」では私も普段から愛用している同社製イヤーピースの各バリエーションがすべて入っており、それだけでもかなり嬉しくなります。さらにケーブルタイが2種類、レザーケースとどれも実用性のある付属品です。
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現在の「Acoustune」のモジュラー構造のメタリックハウジングは非常に個性的で、そのメカメカしいデザインは非常に格好良いものです。ブラック/ゴールドの「HS1650 CU」もかなり渋いデザインですが、ガンメタル/シルバーの「HS1670 SS」は金属の塊感が凄まじく、その精緻なビルドクオリティの高さは所有欲を十分に満たしてくれるものです。
Acoustune HS1670 SSAcoustune HS1670 SS
結構重量のあるハウジングですが耳へのホールド感は良好で、さらに定評のある同社の「AET07」やダブルフランジの「AET06」などイヤーピースのバリエーションの豊富さも有り、付属イヤーピースで装着性で困ることはほぼ無いと思われます。また付属のシルバーコートOFC線材の付属ケーブルも非常に品質の高いもので、イヤホン自体もこのケーブルに最適化されたチューニングが行われています。ほとんどの場合は付属品のみで十分に満足できる構成が得られるのもこのシリーズの魅力といえますね。


■クラスを超えた明瞭感と音場感、美しくも聴き応えのあるサウンド

Acoustune HS1670 SSHS1670 SS」および「HS1650 CU」のサウンドは製品価格である7~8万円、あるいは6万円ほどの価格帯の他のハイグレードイヤホンと比較しても非常に優れた音作りがされており、評価も総じて高いようです。両モデルはそれぞれアプローチの異なる音作りが行われているため、グレードというよりサウンドアレンジの好みで選ぶようなラインナップだと思われます。どちらも情報量が多く解像度の高いサウンドで、「HS1650 CU」のほうがややナチュラルな描写なのに対し、「HS1670 SS」のほうが一段と情報量が多い印象ですが、いっぽうで硬質で高域および低域にメリハリの強い傾向があります。そのような意味では実際により多くの人に好まれるのは「HS1650 CU」のほうのサウンドかな、という気がします。
私の場合、ヘッドフォンはAKGやbeyerdynamicのモニターサウンドを好み、その方向性で言うと「HS1650 CU」のほうが近いのですが、これまでのレビューで何度か記載しているとおり、イヤホンでは寒色系で解像度の高いサウンドを好むため、「HS1670 SS」のほうが好印象を持ちました。

HS1670 SS」のサウンドはとにかく明瞭かつ美しく、高域の響きと伸びの良さと鮮やかさは魅力的です。以前「HS1551 CU」を初めて聴いたときに感じた、Acoustuneならではの制動に優れたハウジングとミリンクスドライバーが生み出す丁寧で上質な音作りはよりハイレベルにまとまっており、いっぽうで「HS1551 CU」では若干物足りなさを感じた(それ故に購入に至らなかった)高域の抜けの良さと解像感が「HS1670 SS」では見事に実現できていると感じています。

HS1670 SS」の高域は非常に解像度が高く明瞭なチューニングがされています。再生環境によってはやや刺激が強すぎる印象を持つかもしれませんが、歯切れが良く煌びやかな音をしっかりと鳴らしてくれるサウンドは高域好きの方にも十分に満足のいくものだと思います。ただ金属質で寒色系の派手な音とは多少高域の質が異なっており、どちらかというとより自然な、ただ刺激のある音はちゃんと刺激的に鳴らしてくれるという印象です。
Acoustune HS1670 SS中音域は非常にフラットかつ明瞭なサウンドで、解像度の高さと情報量の多さはこのシリーズの最大の特徴でしょう。明瞭さについて、よく「空気の膜を取り除いたような」という表現を使いますが、「HS1670 SS」はさらに見通しが良く、例えるなら視力が1.0から2.0に突然あがったような、あくまで自然で人工的な音ではないものの、聴こえる音像がより精緻で細かく感じる感覚があります。その表現力ゆえ、音場は広く、ひとつひとつの音にしっかりフォーカスをあてて立体的に定位します。そして「HS1670 SS」は「HS1650 CU」と比べてもよりクールな印象で、特に女性ボーカルの透明感や繊細さは特筆すべきでしょう。
そして低音域は非常にパワフルで「HS1670 SS」のリスニングイヤホンとしてのキャラクターを明確にしています。個人的に「HS1670 SS」の低域はこのイヤホンの大きな魅力のひとつだと感じています。解像度は中高域同様に非常に高く、やや硬質でキレの良い音でありつつも決して軽くはならず、深い沈み込みと下支えのしっかりした重低音が楽しめます。よりモニターライクな低域の「HS1650 CU」と比べると強すぎる印象を受ける可能性もあるため高域同様に好みの分かれる要素ではありますが、リスニング向けのイヤホンとしてはかなり聴き応えのあるチューニングに仕上がっていると思います。


■「あえて」中華イヤホンケーブルでリケーブルしてみる

Acoustune HS1670 SS個人的には付属の銀メッキコート線ケーブルでの利用で大いに満足できているのですが、リケーブルについてのコメントも時折いただくので手持ちの中華イヤホンケーブルで少し確認してみました。まずKinboofiの「KBF4815 4芯 合金ケーブル」(13,000円)を試してみます。このケーブルはハイグレード中華ケーブルとして高い人気がある金銀合金&OFC線の「YYX4765」のシルバーカラー版で見た目的にも「HS1670 SS」と良いマッチングです。さすがにこのグレードのケーブルだと純正ケーブルと比較して解像度や分離性において遜色なく、より高い再現性で楽しむことができます。ただこのケーブルの特性として「音がスッキリする」傾向があり、すこしアッサリしすぎることで標準ケーブルでより空気感が少し損なわれるような印象がありました。もっともこれは好みの問題で、「HS1670 SS」のクオリティにも対応しうる優れた組み合わせだと思います。

次にHCKの「NICEHCK CY8 8芯 純銀 アップグレードケーブル」(9,550円)を試します。Yinyooからも「YYX4821」として販売されています。こちらのケーブルの場合、中高域がよりスッキリした印象で全体的な解像感が向上するのが実感できます。もともと解像度の非常に高いイヤホンですので描写の違いはそれほど大きくはありませんが、低域の響きがすこし抑えられてフラット寄りの印象になるため、「HS1670 SS」の低域が強すぎると感じる方には検討しても良い組み合わせかもしれませんね。
NICEHCK CY8 + Acoustune HS1670 SSAcoustune HS1670 SS
そして16芯単結晶銅線ケーブルの「Yinyoo YYX4836」も試してみます。このケーブルは現在在庫限りで販売終了となっていますが、内容的にはHifiHear「HiF4837 16芯 7N 単結晶銅線ケーブル」(8,500円)の色違いバージョンです。 こちらのケーブルの場合、おもにボーカル帯域の厚みが増し、よりボーカル映えするサウンドになります。非常に聴きやすく良いケーブルですが傾向的には「HS1650 CU」のほうが相性が良さそうです。

KBF4804 + Acoustune HS1670 SS最後にKinboofiの「KBF4804 8芯 単結晶銅 銀メッキ線ケーブル」 (5,900円)を合せてみました。こちらも単結晶銅の銀メッキ線ケーブルですが、見た目で低価格ケーブルと比較されがちなこともあり、今ひとつ人気がないケーブルみたいです。しかし、実はTFZのようなシングルダイナミックや中華系マルチBAやハイブリッドとも相性が良く、結構「使える」ケーブルだったりします。見た目でも取り回しでも純正ケーブルにもっとも近く、価格も比較的手頃です。リケーブルしたサウンドは標準ケーブルに最も近く、純正ケーブルの代替でもいけそうな気がします。3.5mmステレオの場合、わざわざリケーブルするメリットはほぼありませんが、発売当初より大幅に価格が下がっていることと、バランス接続の場合はよりスッキリと見通しが良くなる印象があり、ひとつ持っていても良いなと思います。

まあ、結論としては個人的な好みとしては「やっぱり標準ケーブルがベストだよね」というオチになるわけですが(^^;)、そのうち、純正ケーブルのバランス版「Acoustune ARC33」(シルバーコート・4.4mm/5極、税別27,880円)または「ARC32」(同・2.5mm/4極、税別23,380円)も追加購入してみようかなとも思っていたります。

Acoustune HS1670 SSAcoustune HS1670 SS
というわけで、発売から1年越し、購入からも4ヶ月越しでのレビューとなりました。Acoustuneでもイベントで次期モデルが参考出品されていたりしますし、今後も目が離せませんが、とりあえずはお気に入りの「HS1670 SS」を今後も愛用していこうとおもっています(^^)。