TINHIFI P1

こんにちは。今回は「TIN HIFI P1」の紹介です。「TIN HIFI」(旧名称「TIN Audio」)は個性的イヤホンをリリースしている中国のイヤホンブランドですが、今回は「平面磁気ダイナミックドライバー」の採用したよりハイグレードなモデルとなります。レビュー掲載時点ではまだ販売は開始していませんが、今回はいつもお世話になっている中国のイヤホンセラー「L.S オーディオ」よりサンプル提供をいただき、事前紹介でのレビューとなります。

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TIN HIFI」(旧名称「TIN Audio」)は2010年頃に設立されたメーカーで当初はOEM/ODMによる他ブランドでの委託製造がメインだったようです。しかし2017年に登場した2DDモデルの「TIN Audio T2」は中高域メインの優れたサウンドとそのビルドクオリティの高さ、美しいパッケージと、トータルの完成度でじわじわと人気が高まり、高域アップグレードモデルの「T2 Pro」が登場する頃には多くのマニアに知られる存在ととなりました。さらにブランド名称を「TIN HIFI」に変更後に投入した1BA+1DDハイブリッドモデルの「TIN HIFI T3」も非常に高い評価を獲得し、高音質な中華イヤホンのメジャーブランドのひとつとして認知されるようになりました。
→ 過去記事(一覧): TIN HIFI / TIN Audio のイヤホンレビュー

TINHIFI T3TIN Audio T2 ProTIN Audio T2

そして、今回の「TIN HIFI P1」では新たに「10mm 平面磁気ダイナミックドライバー」をシングルで搭載する構成となります。「平面磁気(駆動型)」もダイナミック型ドライバーの一種ですが、文字通り振動板(または振動膜)が平面であることが特徴です。ダイナミック型のドライバーは強力な磁石を使った電気回路で振動板を振動させることで音を発生させる仕組みですが、通常は振動板が緩やかなコーン型、ドーム型なのに対し、平面磁気ドライバーでは平面の振動板(Planar Diaphragm)を使用します。
TINHIFI P1そして、通常のダイナミックドライバーでは磁気回路により振動板(ダイヤフラム)の中心部分が振動し、その振動が外周部に伝播する方法を取るのに対し、「平面駆動型」ドライバーでは平面上の振動板全体を振動させる方法をとります。このため、通常のダイナミックドライバーと比較しより歪みの少ないサウンドが表現できる点が最大の特徴です。しかし振動板全体を振動させるため、より大きなサイズのドライバーを使用する平面駆動型ヘッドフォンや平面スピーカーほどではないものの、通常のダイナミックドライバーより効率が低く(より大きな電力が必要)、鳴らしにくい傾向にあります。また、特にイヤホン用の平面磁気ドライバーでは歪みのより少ない解像度の高い音が期待できるいっぽうで深みのある重低音はあまり得意ではなく、どうしても中高域がメインのユニットとなることが多くなると言われています。

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TIN HIFI P1」では「TIN HIFI」独自のウルトラナノレベルの精度を持つダイヤフラムの採用で高解像度かつ高レスポンスの高い音質性能を持つドライバーを採用したとのこと。さらに本体も「304ステンレス」を採用した金属ハウジングとなっており、精度の高さが魅力的です。

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TIN HIFI P1」の購入はアマゾンの「L.S オーディオ」にて。価格は 18,800円 となっています。またL.S オーディオ(@North_Bear7)のTwitterアカウントもフォローの上こまめにチェックされることをお勧めします。
Amazon.co.jp(L.S オーディオ): TIN HIFI P1


■コンパクトな鏡面仕上げステンレスハウジング。充実したパッケージング。

「TIN HIFI」はもともとパッケージがしっかりしたメーカーという印象がありますが、「TIN HIFI P1」のパッケージは、さらに高級感のあるものとなっています。化粧箱を開けるとイヤホン本体とレザー製のケースが配置されており、そのなかに付属品がびっしりと入っています。
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TIN HIFI P1」のパッケージ内容はイヤホン本体、イヤーピースがシリコン製が2種類(それぞれS/M/Lサイズ)、ウレタン製が大小2ペア、ケーブル、説明書、レザーケース。
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ステンレス製の本体は非常にコンパクトで鏡面処理された表面の美しさが特徴的です。コンパクトなハウジングのため耳に収まらないことはないと思いますが、ステム部分がかなり太めのため耳穴の小さい方はイヤーピースを多少工夫する必要があります。全体的に中高域メインのチューニングのためか、よりフィット感が強く低域の厚みが向上するウレタン仕様のイヤーピースを標準で付けているのは「T2」「T2 Pro」「T3」などと共通ですね。ただし、ここはより耳にフィットするイヤーピースを別途選ぶことが望ましいでしょう。
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ちなみに、「TIN HIFI P1」のシェルデザインは、以前レビューした「ZODIC ET2202」(現在は販売終了)と同一の外観をしています。これは「ET2202」がTIN HIFIの工場でODM(Original Design Manufacturing/委託生産)されたイヤホンだったことに起因します(TwitterにてTIN HIFIより直接コメントをもらいました)。今回の「TIN HIFI P1」で晴れて自社製品でこのハウジングが採用できた、というところでしょうね。
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TIN HIFI P1」では高純度無酸素銅線(5N OFC)タイプの撚り線ケーブルが付属します。標準でもクオリティの高いケーブルですが、MMCXコネクタ仕様ですのでリケーブルでサウンドアレンジを変えてみるのも楽しいですね。また「TIN HIFI P1」ではレザー製のかなりしっかりした作りのケースが付属するのも嬉しいところです。


■全域にわたって質の高い描写が特徴的なフラットサウンド。

TIN HIFI P1」の音質傾向は高域・中域・低域と全域にわたって均等のとれたフラットなサウンドです。一般的な平面イヤホンの多くが高域寄りの傾向なのに対し、「TIN HIFI P1」では高域はもちろん、予想以上に中低域もしっかり存在感のあるサウンドでした。
高域は繊細な音までしっかり描写していますが思ったより刺激は少ない印象で、ボーカルやギターなどの中音域や低域もとても綺麗な描写です。歪みの少ない平面ドライバーの特徴がしっかり現れていて、非常に解像度が高くまたレスポンスの良さを感じる寒色系の音ですが、各音域間のつながりはとても自然でマルチBAやハイブリッドのような人工的な印象をほとんど感じない音作りはシングルドライバーのイヤホンならではでしょう。
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なお、インピーダンスは20Ω±15%ですが感度は96 ± 3 dB/mWと通常のイヤホンよりかなり鳴りにくく、音量を取るためには相応にボリュームを上げる必要があります。インピーダンスがそれほど高くないこともありスマートフォンや小型USB-DAC、小型DAP等でも必要なゲインを得ることは容易ですがこのような製品で使われているデジタルアンプは出力を上げるほど歪みやすく、せっかくの「平面ドライバー」の歪みの少なさが台無しになってしまう場合もあります。「TIN HIFI P1」は一般的な平面駆動イヤホンやヘッドフォンより再生環境は選びませんが、やはり相応のDAPやアンプを組み合わせる方が良いですね。

TINHIFI P1TIN HIFI P1」の高域は、非常に高い解像度で明瞭感のある音です。しかし中音域に比べると主張はやや穏やかですが、ハイハットなどは非常に鮮やかに鳴らし、繊細な音をしっかり描写しているのがわかります。刺激はほとんどなくとても聴きやすい印象。くっきりはっきりというよりは綺麗な音という音ですね。
中音域は「TIN HIFI P1」のもっとも特徴的な音域で、高域および低域と非常に自然なつながりで平面ドライバーらしい歪みのない純粋で質の高さを感じる音です。ボーカルは比較的近くで定位しますが楽器はやや下がり奥行きを感じる音場感となります。女性ボーカルの高音などのハイトーンやロングトーンの抜けは良く、鮮やかさを感じます。高域同様に解像度は非常に高くレスポンスも良いため、情報量は多く、分離感もかなり良い印象です。
低音域はTIN HIFIの「T2」「T2 Pro」を思い出すような多少軽めながら硬質で輪郭のしっかりした音を鳴らします。中高域同様にレスポンスの早い分離の良い音で、スピード感のある印象。重低音は「T3」に比べると軽さを感じますが、バスドラムなどのキレも良く、中高域寄りのイヤホンとして個人的には十分な表現力だと感じます。

また「TIN HIFI P1」は同社製の他のモデル同様にMMCXコネクタを採用しておりリケーブルが可能です。試しにL.Sオーディオで販売される「TRIPOWIN C8」8芯ミックスケーブルに交換してみたところ、中低域の厚みが向上し、より立体的な音場感のあるサウンドに変化しました。またバランス接続の場合多くの対応DAPでステレオミニ端子より出力が大きいため、より鳴らしやすくする効果もありそうですね。
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というわけで、今回の「TIN HIFI P1」は平面磁気ドライバーの採用により、従来モデルと比べかなりハイグレードな仕様となりましたが、十分に価格に見合うサウンドクオリティを持った製品であることが確認できました。2万円以下の価格設定で多少の出力は必要なものの比較的鳴らしやすく、音質的にもジャンルを選ばず楽しめるフラット傾向というキャラクターは相変わらずTIN HIFIの音作りの上手さを感じます。あくまでマニア向けのアイテムであることは間違いありませんが、平面ドライバー搭載モデルとしてはチャレンジしやすいお勧めできるイヤホンだと思います。