KB EAR KB10

こんにちは。今回は「KB EAR KB10」の紹介です。「KB EAR」は中国の新しい低価格イヤホンブランドで今回は5BAモデルでの登場となります。私のブログをご覧いただいている皆様には容易に想像いただけるかと思いますが、この製品は中国を代表するイヤホンブランド「KZ」によるODM(Original Design Manufacturing:委託生産)モデルの「派生イヤホン」という位置づけですね。

KB EAR KB10KB EAR KB10

現在同様の仕様のイヤホンはKZの姉妹ブランド「CCA」の「CCA C10」、そして同様にODM製品の「TRIPOWIN TP10」がリリースされており、どれもこれまでに紹介してきました。これらのモデルは8BA仕様の「KZ AS16」と同様のシェルデザインを採用しつつドライバーを5BA構成にしています。
そして今回の「KB EAR KB10」の搭載するドライバー構成自体はこれらのモデルと同様ですが、音質面での改善が行われている点が大きなポイントです。

CCA A10TRIPOWIN TP10KZ AS16
3種類の5BAモデルはどれも中高域寄りのチューニングですが、特にベースモデルといえる「CCA A10」は全体的に中高域の主張の強さに対して低域が腰高で軽い音のため、どうにも曲に厚みを感じない印象になってしまう傾向がありました。その点「KB EAR KB10」はやや中高域の主張を抑えめにすることで全体的なバランスがかなり整えられたと思います。

KB EAR KB10KB EAR KB10
KB EAR KB10」はすべてKZ製のBAユニットで高域用「30095」×2、中音域用「29689」×2、低域用「22955」×1の5基のバランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーによって構成されます。各BAは側面のネットワーク基板によって出力が調整されています。
また「CCA A10」および「TRIPOWIN TP10」が亜鉛合金製フェイスプレートを採用しているのに対し、「KB EAR KB10」ではよりコストのかかっている「304ステンレス」製のフェイスプレートを採用しています。デザイン的にもKZの「ZS10 Pro」を彷彿とさせる鏡面仕上げが特徴的です。
KB EAR KB10KB EAR KB10
搭載されている低域BAの「KZ 22955」はユニットにベント(空気孔)があるタイプのユニットのため、ハウジングの形状やフェイスプレートの材質および厚さにより低域は異なる聴こえかたをします。「KB EAR KB10」のデザインや材質についてはもちろんこの点を考慮した「チューニングのひとつ」と考えられますね。
KB EAR KB10KB EAR KB10
KB EAR KB10」は「ブルー」と「ブラック」の2色が選べ(セラーによって在庫のない色がある場合もあり)、価格はAliExpressで 68ドル~69ドル、アマゾンで 6,900円~7,500円となっています。
今回AliExpressの「Easy Earphones」でオーダーしましたが、アマゾンでは「Kinboofi」「HiFiHear Audio」「WTSUN Audio」の各セラーで購入することができます。AliExpressでの購入方法およびフォロワー値引きについてはこちらを参照ください。
AliExpress(Easy Earphones): KB EAR KB10

またアマゾン経由では在庫があれば国内から発送されすぐ届きますし、アマゾン経由でのサポートにより万が一の場合も安心感がありますね。
Amazon.co.jp(Kinboofi): KB EAR KB10 6,800円
Amazon.co.jp(HiFiHear Audio): KB EAR KB10 6,800円 ※5%OFFクーポン配布中
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): KB EAR KB10 7,500円


■ ステンレス製鏡面仕上げフェイスプレートが印象的。ドライバーは別ロットを採用?

KB EAR KB10」のパッケージはKZ製の他のモデルと同様のパッケージでKB EARのロゴ付きのデザインになっています。内容は本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/L)、説明書、保証書、とKZ同様の最小構成です。
KBEAR KB10KB EAR KB10
KB EAR KB10KB EAR KB10

KB EAR KB10」のデザインは「CCA A10」および「TRIPOWIN TP10」と同一のハウジングおよびサイドから見えるドライバーの構成ですが、他と異なる鏡面仕上げのステンレス製フェイスプレートはかなり厚みがあり重量感を感じます。
KB EAR KB10KB EAR KB10
ちなみにハウジングから透けて見えるBAユニットですが、低域のユニットの刻印が「KZ AS16」(KZ 22955)、「CCA A10」および「TRIPOWIN TP10」(A22955)と異なり、「KB EAR KB10」では「A22955X」という刻印になっています。これがチューニングが異なるのか単なるロットの違いなのかは不明です。ステンレス製ハウジングは「CCA A10」の亜鉛合金製と同様の厚みがあります。
KB EAR KB10KB EAR KB10
付属ケーブルは「TRIPOWIN TP10」に付属のものと同一で線材は最近のKZおよびCCAと同じものですが、プラグ部分およびケーブル分岐部分の樹脂製パーツは異なるデザインのものが採用されています。これらのパーツはシンプルな円筒状でODM用のモデル用のものかもしれませんね。またイヤーピースはKZのおなじみのものですので、できればフィット感を向上させるために、定番のJVCの「スパイラルドット」、Acoustune「AET07」、AZLA「SednaEarfit Light」など開口部が大きいタイプの製品を利用することをお勧めします。


■ 中高域メインながら全体のバランスが整えられフラット寄りのサウンドに

KB EAR KB10」の音質傾向は基本的には他の5BAモデル同様に中高域メインのサウンドですが、よりフラット寄りの印象になっています。開封直後はあまりチューニングの違いを感じなかったのですが、ある程度のエージングによりかなり印象が良くなりました。50時間~100時間程度のエージングは行った方が良さそうです。エージング後の「KB EAR KB10」も最近のKZのマルチBAイヤホンに共通する低コストイヤホンとは思えない各音域の音作りのクオリティの高さがあり、特にボーカル曲の綺麗な印象を感じる仕上がりです。

KB EAR KB10」および「CCA A10」、「TRIPOWIN TP10」の3種類を比較すると、3種類とも低域はKZの3BAモデルで低域用に同様の「KZ 22955」を使用する「KZ AS06」に非常に近い音を出します(「CCA A10」では「KZ AS06」のネットワーク基板をそのまま使っている、という情報もありますね)。
KB EAR KB10KB EAR KB10
しかし、ベースモデルと考えられる「CCA A10」は「AS06」に比べて中高域のバランスが極端に強く、明らかに低域の出力が足りていない感じがします。そして、KZでは新モデルとして6BA構成の「KZ AS12」が発表されており、このモデルが「CCA A10」などの5BAから低域用の「KZ 22955」を2個にし文字通り低域を増強した仕様になっていたりします。また「TRIPOWIN TP10」も基本的には「CCA A10」と同様ですが、フェイスプレートのベントなどチューニングの微調整により低域の響きがやや向上され、同時に高域の刺激がアップすることで「高音イヤホン」的なキャラクターが強くなっています。

いっぽうで「KB EAR KB10」はこれら2モデルより中高域がひとまわり抑えられた印象となっており、相対的に低域の存在感が向上するバランスとなっています。「KZ AS06」と比べるとやはり中高域寄りのサウンドで低域は軽い印象であることは違いありませんが、「CCA A10」のような不自然な腰高さはかなり解消されており、かなり聴きやすいイヤホンに仕上げられていると感じました。

KB EAR KB10KB EAR KB10」の高域は煌めきのある硬質で明瞭な印象の鳴り方をします。KZ系のイヤホンに共通する派手さを感じる音で、ある程度スッキリとした伸びの良さも感じるチューニングになっています。
中音域は「CCA A10」に比べるとかなり控えめなものの、いかにもKZらしい派手めの鳴り方をします。ボーカルなども比較的近くで定位し、マルチBAらしい解像感のある印象のサウンドを実感することができます。ただし、「CCA A10」のように音場が狭く感じるほどの主張の強さではないため、ある程度の音場感を感じ、中高域の分離の良さから後方に奥行きを感じる鳴り方をするため平面的な印象はありません。この辺の音場感はより分離に優れた情報量の多いケーブルにリケーブルすることでより明瞭に変わる可能性があります。フラット傾向で味付けはないものの伸びの良さと余韻を感じる音でこの価格帯のイヤホンとしては表現力は高いと思います。
低域は軽い印象ではあるものの「CCA A10」と比べると不自然さはなく解像度の高い綺麗な音を鳴らしてくれます。分離性は非常に良く硬質でスピード感のある音は好印象。曲によっては重低音もある程度表現できており、量的および質的にも本来は十分に表現力のある音であることが確認できます。再生環境やリケーブルなどでのアレンジにより印象はかなり変わるかも知れませんね。
KB EAR KB10KB EAR KB10
KB EAR KB10」は最近のKZ製イヤホン同様に「KZ タイプC」コネクタを採用しています。このコネクタは厳密には違いがありますがqdc仕様のコネクタと互換性が有り、最近ではqdcコネクタのリケーブルも多く登場しはじめています。「KB EAR」ブランドでも「KB EAR 8芯 銀メッキ線ケーブル」と「KB EAR 16芯 高純度銅線ケーブル」がAmazonで購入可能となっています。実際にリケーブルしてみると「KBEAR 8芯 銀メッキ線ケーブル」では全体的な印象は変えず全体的にメリハリが強く濃い音になる印象になります。いっぽうの「KB EAR 16芯 高純度銅線ケーブル」では全体的な解像度が向上し分離がよくなるのが実感できます。相対的に重低音の沈み込みなどをより感じることができました。
またアンダー2千円クラスのYinyoo「YYX4822 8芯 銀メッキ線ケーブル」および「YYX4823 8芯 高純度銅線ケーブル」もqdcコネクタ仕様を選択できるようになりました。このケーブルでは、KB EARのケーブルより多少派手さがアップする印象です。「KB EAR KB10」の場合はブラウンの高純度銅線タイプのほうが相性が良いかもしれませんね。
KB EAR KB10KB EAR KB10
というわけで、「KB EAR KB10」はほかの2モデル同様に中高域メインのサウンドではあるものの、デザイン的にも音質的にも最も完成形に近いチューニングのサウンドという印象でした。全体的に「後出しじゃんけん」の勝利ともいえる製品かなと思います(笑)。もちろん6BA構成の「KZ AS12」も気になるところではありますが、ポップスやロック、アニソンなどでボーカルを中心に考えるならば全体的な質の高さからもお勧めできるイヤホンだと思います。リケーブルやイヤーピースなどによりさらにチューニングをしてみるのも楽しいですね。