NICEHCK NX7

こんにちは。今回紹介するのは「NICEHCK NX7」です。中国のイヤホンセラー「HCK Earphones」のオリジナルブランド「NICEHCK」の最新イヤホンで、今回も特徴的なドライバー構成を持ちつつ低価格を実現しています。
ただ、ちょっとHCKのJimも製品への思いが強すぎたのか、最近E○syあたりがよく「やらかす」(笑)発売前の煽りツイートをさらに被せる勢いでやっちゃたおかげで、「変な期待」を持たれたり購入後の反応が過剰になったり、みたいなこともあったかも知れません。たしかに「KZ」あたりが軽く意趣替えしたような「割と受け入れやすい」デザインではありますが、中身は最近のHCKのオリジナルモデル同様「かなりマニアックな変態イヤホン」ですし、そのスペックから繰り出すサウンドも本来は私自身も含めたマニア向け(=普通の中華イヤホンじゃ物足りなくなってるヲタク向けw)の製品です。その視点を忘れなければ、高域寄りのチューニングで非常にコストパフォーマンスに優れた良いイヤホンだと思います。

NICEHCK NX7NICEHCK NX7

NICEHCK NX7」はその名称の通り7個ドライバーによるハイブリッドモデルで、4基のBA(バランスド・アーマチュア型)ドライバー、「複合カーボンナノチューブ振動板」ダイナミックドライバー(2DD)、そして超高域用の「ピエゾセラミック振動板」ドライバーのによる「7ドライバー」の組み合わせにより構成されています。「カーボンナノチューブ+セラミック」ドライバーの組み合わせは以前紹介した「NICEHCK N3」で採用された組み合わせですが(「NICEHCK N3」のレビュー)、これに4基のBAが加わりさらにリッチな構成になったことになります。

NX7

そして「NICEHCK NX7」では「N3」と比べてよりクールで見た目にも格好いいシェルデザインを採用しています。この7基のドライバーを樹脂製のハウジングにびっしり収納し、まるでオフロードカーを連想させるようなデザインのアルミ合金製フェイスプレートで仕上げられています。一見するとKZ製イヤホンのような雰囲気もありますが、このちょっとワイルドで個性的なデザインのフェイスプレートのおかげで雰囲気は一変しており、特殊なドライバー構成を度外視しても十分に「見た目買い」できそうな仕上がりになっていますね。
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購入はAmazonの「NICEHCK」マーケットプレイス、またはAliExpressの「NiceHCK Audio Store」にて。カラーは「シアン」と「ブラック」の2種類が選択できます。
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表示価格はアマゾンが 8,590円、AliExpressが 93.75ドル となっています。現在AliExpressではフォロワー値引きにより 65ドル(マイク無し)で購入できます。AliExpressの購入方法およびフォロワー値引きはこちらをご覧ください。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): NICEHCK NX7

アマゾンではプライム扱いで国内倉庫から出荷されますのですぐに手元に届きますし、万が一故障などのトラブルがあった場合もアマゾン経由でのサポートも得られる安心感がありますね。
Amazon.co.jp(NICEHCK):NICEHCK NX7

※現在アマゾンのNICEHCKでは「NICEHCK NX7」購入時に15% OFFになるキャンペーン中です。そのため実際の購入価格は 7,301円(マイク無し)で購入可能です。


■KZぽい見た目ながら、思ったよりコンパクトなハウジング。

今回私はシアンの「NICEHCK NX7」をオーダーしました。パッケージはいつものHCKのボックスで、お馴染みHCKのイヤホンケースの中に、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(2種類、それぞれS/M/Lサイズ)が入っており、さらに保証書が同梱されます。
なお、現在出荷されているバージョンはNX7用の化粧箱タイプでケースは布製ポーチに変更になっているようです。
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NICEHCK NX7」の本体はフェイスパネルのサイズはKZのZSNやZS10 Proのように少し大きめのサイズですが、樹脂製のシェル自体の厚みは少なく、実際にはかなりコンパクトな印象を受けます。アルミ合金製のステムパーツもこれらのKZのモデルより小さい印象です。0.78mm 2pinコネクタは少し突起状になってますが形状的にはTFZ製イヤホン(KINGやT2Gなど)に近い形状で、KZタイプC(またはqdc)コネクタとは異なります。
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7ドライバー構成のイヤホンですが厚みが少なく、樹脂製で思ったより軽量のため、装着性は比較的良好です。付属のイヤーピース以外にも、定番のVCの「スパイラルドット」、Acoustune「AET07」、AZLA「SednaEarfit Light」など開口部が大きいタイプの製品を利用することでよりフィット感が向上し後述の通り低域など音質面での改善も期待できます。
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付属ケーブルは4芯の撚り線タイプで、取り回しは悪くありませんが、実際に聴いてみるとスペック不足は否めないようです。後述の通り基本的にはリケーブルは必須と考えた方が良いかもしれませんね。


■高域のスッキリ感とソリッドながら表現力のある低域は魅力的。高域好きに特化したサウンド

NICEHCK NX7」の音質傾向は中高域に特徴のあるフラット寄りの印象です。ピエゾセラミックのツィーターを搭載する7ドライバー・ハイブリッド構成ということもあり、インピーダンス55Ω、感度108dB/mWとKZなどの低価格ハイブリッドと比べるとかなり駆動力を必要とする仕様です。
NICEHCK NX7このような傾向もあってか、スマートフォン直挿しなどでは高域寄りに歪んだ印象になるようで、再生にはそれなりの出力やS/Nが確保できるDAP(デジタルオーディオプレーヤー)やポータブルアンプが必須だと思います。「NICEHCK NX7」は見た目こそKZなどの低価格ハイブリッドを彷彿とさせますが、最近のHCKが手がけてきたオリジナルイヤホン同様「わかってるマニア向けの製品」と考えるべきでしょう。だったら「マイク付き」みたいなスマホに日和ったモデルを選択肢にいれるなよ、と個人的には思いますが・・・(笑)。またHCKのツイートでも比較的長時間のエージングを推奨していて、特にカーボンナノチューブ振動板ダイナミックドライバーが落ち着くことで全体的なバランスが向上し低域の厚みもかなり増してきます。またイヤーピースの変更や後述の通りリケーブルにより特に中低域はかなり変化します。

NICEHCK NX7」の高域はピエゾセラミックのスーパーツィーターの恩恵もあり、非常に解像度の高い、硬質かつスッキリした音で、伸びの良さ、高さと抜けるような見通しの良さが印象的です。最近のKZのマルチBAモデルのような派手な鳴り方とは全く異なる、とても丁寧な描写を感じます。アタックはとても正確で、シンバルなども軽くならずにしっかりと表現している点は、この価格帯のイヤホンとしては出色の出来かもしれません。再生環境によって刺激を感じやすくなる場合もありますが、かなり絶妙にコントロールされており、超高域を含めて高音好きの方も満足できるレベルの表現力だとおもいます。いっぽうで高域の刺激があまり得意では無い方やより自然なサウンドが好みの方には確実に「向かない」イヤホンだろうと思います。
NICEHCK NX7中音域は凹むこと無く鳴り、高域同様にスッキリした抜けの良さと、味付けの無いフラット寄りの描写が印象的です。非常にキレが良く分離に優れているため、ボーカルや演奏もしっかり前に出る存在感があるのですが、実際は全体的にバランスをとったサウンドであるため主張自体はそれほど強くはありません。そのため派手めの中華ハイブリッドやマルチBAのサウンドに慣れているとかなり「あっさり」した印象に感じる可能性もありますね。高域への抜けの良さはを感じるいっぽうで女性ボーカルのハイトーンの硬質な伸びはちょっとやりすぎ感があるかもしれません。やはりシングルダイナミックなどによる自然なバランスを好む方には合わない可能性もありますね。音場は比較的広めで、分離のよさから奥行きはそれほぼ深くありませんが定位も良好です。
低音域はエージングに加え、再生環境によりかなり厚みと存在感が変わってきます。できればイヤーピースはよりフィット感の高いものに交換した方が低域の厚みが増すようです。さらにリケーブルにより激変する(低域が増えるのではなく、本来出ていたはずの音が実感できる)と思います。中高域同様に非常に硬質な印象の低音で、解像度の高いカチッとした音を鳴らします。また沈み込みも非常に深く、ポテンシャルを発揮できる再生環境があれば深く厚みのある重低音を実感できると思います。ただ、開封直後はキレはあるものの量的に少ない音に感じると思いますので、十分なエージングは必ず行ってください。

NICEHCK NX7」はリケーブルにより特に低域の印象が大きく変化します。おそらく付属のケーブルでは十分な情報量を送ることができず、音が細ってしまっている感じがします。HCKのケーブルの場合、お勧めは「NICEHCK CT4 16芯 高純度銅線ケーブル」(2,250円)、そして現在はAliExpressでのみの取り扱いですが低価格8芯タイプのミックス線ケーブル(TYB3)です。8芯 ミックスケーブルについては既存の「NICEHCK TYB1」(3,050円)でも良いと思います。どちらにせよ、「NICEHCK NX7」は本来の実力を発揮させるためにはリケーブルはかなり効果的だと感じました。
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これらのケーブルにリケーブルすることで、低域の存在感が大幅に向上すると同時に、ベースラインなどの輪郭がより明瞭となり、解像度の高さとソリッドながら音場感のある響きを実感できます。また中高域についても立体的な定位感が楽しめます。16芯銅線ケーブルでは本来の印象のまま底上げする印象で、ミックス線ケーブルではより音が濃くなる印象を感じました。あっさりした音が多少気になる方はミックス線のケーブルを選ぶ方が良いかもしれませんね。


というわけで、「NICEHCK NX7」は見た目と異なり、色々な意味で予想を裏切る個性的なイヤホンでした。果たしてHCKの「煽りツイート」程の実力か、というのはよくわかりませんが、少なくともこれまで多くのイヤホンを聴いてきたマニア層には確実に響く、「狙い所」を心得た製品だと思いました。実際のところ「好き嫌いが相当はっきり分かれる」とは思いますが、もし興味があればぜひともチャレンジいただければと思います。特に手ごろな価格で中高域の表現力の高さを求めている方にはかなりお勧めできるイヤホンだと思います。