水月雨 「Moondrop KXXS」

こんにちは。今回は先日「Drop」で購入した「水月雨」(Moondrop)の「Moondrop KXXS」です。個人的に購入した「水月雨」の製品としては最初になります。
中国のイヤホンブランド「水月雨」はマニアの間では以前からとにかく評価が高く、日本国内版でも高級インナーイヤーの「Liebesleid」など一部の製品が販売されており、やはり多くの方から絶讃を受けていました。私も国内版「Liebesleid」と今回の「KXXS」は過去に聴かせていただいたことがあるのですが、非常に自然で美しいサウンドを実感していました。
そんなタイミングで、米国の共同購入サイト「Drop」で「Moondrop KXXS」が登場したため、反射的にポチってしまいました(^^;)。
Moondrop KXXS IEM | Price & Reviews | Drop (formerly Massdrop)

Moondrop KXXS」は、同社のDLC振動板シングルダイナミック構成のカナル型イヤホンである「Kanas」「Kanas Pro」に続く、同シリーズのフラグシップモデルという位置づけの製品です。「Moondrop KXXS」および「Kanas Pro」や「Kanas」といった製品は、「DLC(Diamond-Like Carbon)」による表面処理を施された振動膜を採用した独自の10mmダイナミックドライバーを搭載しており、応答速度に優れたスピード感のあるサウンドを実現しています。

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また「Moondrop KXXS」のハウジングには亜鉛・アルミニウム合金を採用。鏡面処理で美しく磨き上げられた美しくミニマルなシルエットが特徴的です。また、「Moondrop KXXS」は「Kanas Pro」より少し大きめのハウジングで、音質的にも多くの改良が加えられています。

私は上記のDropの募集で購入しましたが、通常はAliExpressの水月雨のオフィシャルストアや取り扱いのある一部セラーにて購入が可能です。オフィシャルストアでの「Moondrop KXXS」の価格は 189.99ドル となっています。
AliExpress(MOONDROP Official Store): Moondrop KXXS

※10月11日より国内版が発売になりました。価格はAmazonでの販売価格が 20,350円 と、海外版と同等になっているためサポート面も考慮し、今後は国内版を購入した方が良さそうですね。
Amazon.co.jp(国内正規品): Moondrop KXXS


■ 磨き上げられたミニマルで美しいデザイン。重量感のあるハウジングながら装着性は良好。

Moondrop KXXS」というと、やはり「ヲタク仕様」というか、アラフィフのおっさん(私です^^;)が店頭で持っていくのにはちょっと気合いが必要なイラストパッケージが印象的です(笑)。今回はDropで買ったので関係ないわけですが、もし国内版だったとしてもネットで購入してそうです(^^)。
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その外箱(カバー)を取り外すと、「水月雨」のシックなパッケージが現れ、その内容もなかなかの豪華さを感じる内容になっています。
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パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、フライトアダプター、イヤーピースが6セット(S/M/L各サイズ2セット)、スペアのノズルフィルター(3セット)と取付け用ピンセット、ブルーのレザーケース、布製ポーチ、説明書、保証書、など。なんというか、このメーカーの製品や顧客に対する真摯な向き合い方を感じる内容ですね。

Moondrop KXXS」のハウジングは「Kanas Pro」同様に亜鉛・アルミニウム合金を採用しており、美しく磨き上げられた鏡面仕上げとなっています。ハウジングのサイズは「Kanas Pro」よりひとまわり大きくなっているようですが、装着性は良好で、重量感のあるハウジングながらしっかり耳に収まります。
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ただ、私は付属のイヤーピースではぴったり合うものがなかったため、JVCの「スパイラルドット」に交換しました。他にも、Acoustune「AET07」などフィット感の良い製品を組み合わせるのも良いと思います。

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付属するケーブルは、4N 銀メッキOFC(高純度無酸素銅)線の撚り線ケーブルで、比較的取り回しは良く使い勝手は良いと思います。また0.78mm 2pin仕様のコネクタを採用しており、リケーブルが可能です。本体のコネクタ部分は若干の窪みがありますが、CIEM 2pinタイプ以外にも中華2pinのケーブルでも問題なく利用することができました。


■ 解像度の高い明瞭な音ながら柔らかい自然な印象。透明感のある綺麗なサウンド

水月雨 「Moondrop KXXS」Moondrop KXXS」の音質傾向は、解像度の高い明瞭なサウンドですが、非常にナチュラルで、透き通ったような、まさに「美音系」という印象です。開封直後からスッキリとした印象で非常に綺麗なサウンドを楽しめますが、メーカー自身が「100時間以上のエージング」を強く推奨しており、実際じっくりと鳴らし込むことでサウンドバランスがさらに向上し、より完成度の高い音に変化します。具体的にはエージングが進むにつれ低域の厚みが増し、開封直後は若干高域が強めで腰高に感じたサウンドが全体的にフラット方向に落ち着きます。十分にエージングが進むことで、全体的な明瞭感とともに自然な柔らかさを持つ中高域と締まりの良い低域を楽しむことができ、さらに広がりのある優れた音場表現を実感できると思います。

Moondrop KXXS」の高域は、解像度が高く明瞭感のある音で、比較的スッキリ目のサウンドです。歪みや曇りのない、見通しの良い明るい音で、シンバル等も鮮やかに鳴ってくれます。とはいえ金属的な音ではなく自然な音がスッキリと伸びていく感じはとても心地良いですね。なお、開封直後は多少強めの主張を感じますが、十分なエージングにより中低域とのバランスが整うと、高域の煌めきを感じつつも、耳障りに感じる刺激は十分にコントロールされた印象になります。

水月雨 「Moondrop KXXS」中音域は「Moondrop KXXS」のミニマルなシルバーデザインの外観そのままに、透明感が高く明瞭なサウンドを実感できます。高域同様に非常に解像度が高く1音1音の描写は精緻ですが、人工的な印象は皆無で、非常にナチュラルで柔らかい印象の鳴り方をします。そのためある程度刺激のあるハイトーンなども綺麗に鳴らしつつ、心地良く聴けるバランスになっています。
音場は広く、前後に奥行きを感じ、さらに十分なエージングにより左右にスッと広がっていく空間表現を楽しめます。また分離性の高さと見通しの良さから感じる優れた定位感があります。ボーカル帯域は若干前に定位し、ある程度の主張を感じますが、あくまで自然なバランスにコントロールされており、艶のある心地良いサウンドを楽しむことができます。同時にギターやピアノの音色も美しく、演奏の気持ちよさも特徴的です。

低域は、開封直後は中高域にくらべて主張が控えめでしたが、100時間以上のエージングにより、存在感を増し、締まりの良くスピード感のある鮮やかな音を鳴らします。重低音の沈み込みも深く、重量感のある音です。スピード感のある音ですが僅かに感じる余韻により、明瞭で鮮やかながら柔らかさも感じる絶妙な低音になっている印象です。


■ 突出したバランスの良さ。ジャンルを問わず楽しめるリスニングイヤホン

というわけで、「Moondrop KXXS」は明瞭さと同時に柔らかく自然な音で仕上げられた、とにかくバランスの良さに突出したイヤホンだと思います。そのため基本的にどのようなジャンルの曲とも相性が良く、ロック、ポップスなどのボーカル曲はもちろん、クラシックのオーケストラ演奏などでも抜群の相性の良さを感じます。「Moondrop KXXS」のサウンドはまとめるなら「質が良く、より高級な音」ですね。もちろん、十分にコストをかけたハイグレードなイヤホンでしか出せない音、というのはあるのですが、「Moondrop KXXS」は透明感のある音色で、フラットよりややリスニング寄りにバランスを取った音作りで他には無い個性を作り出していると感じます。

また、「Moondrop KXXS」は0.78mm 2pinコネクタを採用しており、リケーブルが可能ですが、付属する4N 銀メッキOFC(高純度無酸素銅)線ケーブルとの相性が良く、十分にエージングが進めばほとんどの場合でリケーブルは不要だと思います。逆に傾向がわかりやすいケーブルに変えるとバランスが崩れてしまう可能性もありますね。
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そのため、もしリケーブルする場合は、「Moondrop KXXS」の特性を見ながらケーブルの傾向と合せてみるのが良いでしょう。手持ちの中華ケーブルで試した範囲で印象が良かったのは金銀合金&OFCケーブルの「HiF4814」、16芯ケーブルの「HiF4827/HiF4828」、4芯OFHCケーブルの「NICEHCK GCT4」、8芯単結晶銅線ケーブルの「KBF4804」などです。個人差はあると思いますが、同じ16芯ケーブルでも「YYX4745」だと若干平坦になり、単結晶銅線ケーブルでも「YYX4810」だとちょっと派手すぎる印象だったりするので、もしリケーブルする場合は、気持ちよいバランスになるよういろいろ試した方が良いかもしれませんね。

水月雨 「Moondrop KXXS」また、参考までに、同様のグレードで個人的にも「好み度」の高い製品と比較すると、まず、同様の価格帯の「ikko OH10 Obsidian」は十分な解像度の高さと音場感をもち、つながりの良い音を鳴らしますが、「Moondrop KXXS」と比べると多少派手めの音で、特に低音域はより厚みがあり、いかにもハイブリッドらしさ感じます。楽しさという点で「OH10」が優れているいっぽうで、やはり各音域の美しさでは「Moondrop KXXS」が優れており、両者は全く異なる特徴のイヤホンと感じます。
そして「TFZ No.3 Ti」と比較すると、「No.3 Ti」はボーカルの表現力と広く立体的な音場感は特徴的な要素ではあるものの、同時に「寒色系ドンシャリ」の典型のようなイヤホン(特に国内版も含め現在付属する銀メッキ線ケーブルの場合)でもあるため、その硬質で派手なサウンドや中低域の濃さも含め、「Moondrop KXXS」とは毛色が結構違うかもしれませんね。
個人的には典型的な浮気性タイプなので(笑)、どのタイプのイヤホンもとても好みの音で、気分に応じて楽しみたいと思っています(^^)。

というわけで、「Moondrop KXXS」は最近のボーカル偏重傾向のイヤホンとは異なる、演奏も含めて各音域を楽しめる「美音系」イヤホンとして、評判通り非常に高い完成度を持った製品でした。思いのほか稼働率も高く愛用しているイヤホンのひとつになっています。もっとも、ある程度しっかりした音源ほど実力を発揮するイヤホンですので、ついつい音源にもコストを掛けたくなり、さらにお買い物が増えていたりもしています(^^;)。