TRN T3

こんにちは。今回も前回に引き続き中華イヤホンケーブルの紹介です。中国の低価格イヤホンブランド「TRN」のケーブル製品は以前より価格破壊っぷりがえげつなかった印象ですが、とうとう高級ケーブルの代名詞ともいえる「純銀線ケーブル」でもどんでもない製品を登場させました。それが今回紹介する「TRN T3」です。このケーブルは4N(99.99%)純度の純銀線を使用した8芯ケーブルで、AliExpressで20ドル台、日本のアマゾンでも3千円台の驚きの価格設定となっています。
ちなみに、同様な仕様のリケーブル製品だと比較的安価なものでも七福神商事の「丸七銀龍」(19,800円/直販価格)等のような価格で、より安価な中華ケーブルでも「KBF4782」(14,800円/アマゾン在庫無し)、「NICEHCK CY1」(9,550円)くらいはします。確かに一部で「謎銀線」という俗称でも言われる「自称純銀線ケーブル」もアマゾンでは販売されています(なお、そのショップでは銀メッキ線仕様も同じくらいの価格で販売されており、「謎銀線」の音質傾向も上記の1万円~2万円くらいの製品とは全く異なり、どちらかといういうと銀メッキ銅線寄りだったりします)。

TRN T3TRN T3
しかし、今回紹介する「TRN T3」はサイト上に線材の材質証明(99.99%の純銀)の資料を掲載していたり、線材をバラした写真(本来の純銀線同様にナイロン芯を使った撚り線)の情報が掲載されており、ともすると「1万円前後の中華純銀線より信憑度が高いまである」内容になっています。となるとその音質傾向も非常に気になるところで、試さないわけにはいかない、とう感じになりますね。私も早速MMCXと2pinタイプの2種類のコネクタでリリース直後にオーダーしました。
購入はAliExpressの各セラーおよびアマゾンにて。AliExpressでの購入方法はこちらをご覧ください。現時点ではアマゾンでも国内在庫が無い場合は中国からの発送となりますが、不良などの際はアマゾン経由での対応ができるので安心感がありますね。


[ TRN T3 ] TRN 8芯 4N 純銀線 アップグレードケーブル
TRN T3 8 Core Pure Silver Cable 3.5/2.5mm MMCX/2Pin Upgrade Earphone Cable
【 MMCX 】【 0.78mm 2pin 】【0.75mm 2pin】【3.5mm】【2.5mm/4極】

TRN T3TRN T3
TRNのオリジナルケーブルの最新モデル。8芯ミックス線「TRN T1」、16芯銀メッキ線「TRN T2」に続き、よりハイグレードなケーブルとして「4N(99.99%)純度の純銀線」を採用した8芯イヤホンケーブルが「TRN T3」です。通常は数万円クラスの製品も数多く存在する高級ケーブル用線材の純銀を採用しつつ驚異的な低価格を実現したケーブルです。
同社ケーブルの中でもハイグレード扱いと言うこともあり、コネクタ、プラグ、分岐部分はクローム仕上げの金属部品を採用。より高級感のある仕上がりとなっています。プラグは3.5mmステレオのほか、2.5mm/4極のバランス仕様も選択可能。また2pinは通常の「中華2pin」(0.78mm)のほか、TRNおよびKZ/CCA製イヤホン向けの「0.75mm 2pin」が選択できるのも「TRN純正ケーブル」ならでは、でしょう。
TRN T3TRN T3
今回はMMCXコネクタと中華2pin(0.78mm)の2.5mmバランス仕様を購入。パッケージは「TRN T1」「TRN T2」同様にコンパクトな白箱のパッケージで届きました。線材は少し弾力のある透明な被膜に覆われた線材がしっかり編み込まれており、若干硬さはあるものの取り回しは良好です。同じ銀線との比較では「丸七銀龍」より被膜のぶん線材ごとに僅かに太く、やや硬め。同様な被膜の「KBF4782」を8芯にしたような感じです。

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TRN T3」の音質傾向は想像以上にナチュラルで、1音1音をより明瞭に捉え、よりきめ細やかな表現力を与える印象。言い方を変えると大きな音質傾向の変化は無いため、リケーブル効果を実感できるのは相応にポテンシャルの高いイヤホンで、かつ十分にS/Nの高いDAPなどの再生環境を利用したケースでしょう。
ケーブルの情報量は16芯銀メッキ線の「TRN T2」のほうが多い印象で、「TRN T2」のほうが、わかりやすいリケーブル効果(変化)を感じることができます。TRNのT1〜T3の各ケーブルはグレードの違いと言うより「傾向の違うケーブル」と考えるのが適当で、より「濃い音」にしたい場合は8芯ミックスの「T1」、より情報量をアップしメリハリのある音を楽しみたい場合は16芯銀メッキ線の「T2」を選ぶ方が「TRN T3」より良い選択だと思います。特に低価格中華イヤホンでは「TRN T3」より「T1」「T2」のほうが「合う」製品も多いかもしれませんね。

そして「TRN T3」はもともと十分に明瞭で解像感のあるイヤホンで音質傾向を変化させずに中高域を中心に粒状感をアップさせ、より1音1音の表現力を発揮させるのに最適です。そういった意味では情報量では価格相応の差を感じますが、傾向自体は「丸七銀龍」に近く、確かに「純銀線」らしい傾向だなと思います。とはいえ例えば「TFZ KING EDITION」のようにもともと反応の良いイヤホンと組み合わせる場合は「TRN T3」のほうがバランスが崩れること無く楽しめるようで、音の粒立ちがナチュラルに向上することもあって、とくにアコースティックな音源などでの実在感は息をのむほど変化します。また低域も細るようなことは無く、しっかりとイヤホンの特徴を活かしているのを感じます。
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さらに、フラット寄りで解像感のあるマルチBAイヤホンとの相性も良く、こちらも同様に解像感が向上し、特に中高域の明瞭感がアップするのを実感します。「Rose BR5 Mk2」の場合、16芯銀メッキ線ケーブルなどでは高域の刺さりが強くなりすぎる場合もありますが、「TRN T3」ではしっかりバランスを維持したまま抜けの良さが向上し、明瞭かつ深みのあるボーカルをしっかり堪能することが出来ました。中華イヤホン以外でもSE846やAndromedaなどの製品でも相性の良さを感じると思いますよ。このクラスの製品の場合、数万円クラスのケーブルを普通に使っている方も多いと思いますが、「TRN T3」をものは試しで使ってみるもの興味深いですね。きっととても3千円台で買えるケーブルだとは感じないと思います。

いっぽうで、「TRN T3」はインピーダンスが高く感度が低い(鳴りにくい)傾向のイヤホンとの相性は今ひとつの場合が多いかもしれません。つまりある程度ハイグレードなシングルダイナミックのイヤホンでは少し「細る」印象を感じる可能性があります。これらのイヤホンはもともと質の良い銀メッキ線ケーブルやミックス線ケーブルのほうが純銀線より相性が良い場合も多いのですが、「TRN T3」の場合はその辺の差が多少出やすいかもしれません。この辺は価格的な要素と、線材の特性ですので上手く使い分けをしたいところですね。

というわけで、「TRN T3」は1〜2年前なら「低価格ケーブル」のカテゴリーの価格帯の製品ながら「純銀線」としての特徴を十分に発揮しており、驚くほどコストパフォーマンスの高いイヤホンケーブルでした。「純銀線ケーブル」自体が本来「相当に分かってるマニア向け」で組み合わせるイヤホンの向き・不向きは結構ありますが、その点を踏まえればとてもお勧めできる製品だと思います。個人的にも何本か買い増ししようかと思っています。