こんにちは。今回は「AUDIOSENSE DT200」の紹介です。中国の高音質IEMブランド「AUDIOSENSE」の最新モデルでKnowles製バランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーを搭載した2BA仕様の製品です。今のところ「AUDIOSENSE DT200」は日本限定で販売される製品のようですね。今回は「AUDIOSENSE」よりサンプル提供を受けての紹介となります。
さて、「AUDIOSENSE」は2012年に設立された中国のアコースティックイヤホンブランドで、最近では片側8BA仕様の多ドラモデルで同社の代表的な製品である「AUDIOSENSE T800」(33,000円)がよく知られていますね。「AUDIOSENSE T800」は(同社向けカスタムドライバーを含む)Knowles製バランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーをバランス良く組み合わせ、3Dプリンティングされたシェルと組み合わせることで低コストながら高音質を実現している製品、としてマニアの間でも非常に評価が高いイヤホンです。また最近では2BA+1DDハイブリッド仕様の「AUDIOSENSE AQ3」(19,998円)もリリースされています。
そして今回の「AUDIOSENSE DT200」は「2BA」仕様で低コスト化を実現しつつも個性的なサウンドを実現。また3Dプリンティングによる製造を行いつつドライバー数にあわせてシェルサイズも小型化しています。
特に2個のBAの出力を制御するネットワーク回路にオーディオプレーヤーなどで使うようなサイズの電解コンデンサを埋め込む設計は見た目にも音質的にもかなり独創的といえますね。そのためインピーダンスは14Ωながら感度は99dB/mWと通常のIEMよりかなり「鳴らしにくい」仕様のイヤホンになっているようです。
「AUDIOSENSE DT200」は当面は日本限定販売でのモデルとのことですが、1月にアマゾンで販売した分は既に品切れになっています。再販開始がいつごろかは今のところ不明ですが、わかりましたら追記したいと思います。
中国からの発送となりますが、受注が再開されました。アマゾンでの表示価格は 16,450円 です。
Amazon.co.jp(AUDIOSENSE Official Store JP): AUDIOSENSE DT200
■ コンパクトなシェルに圧倒的な存在感を放つ電解コンデンサ。
「AUDIOSENSE DT200」のパッケージは、シルエットデザインが描かれたボックスで高級感を感じるしっかりした作りのものです。ボックス内には結構大きいサイズのハードケースが入っており、本体および付属品もすべてこの中に入っています。なお、本体ケースはAliExpressのオフィシャルストアにて「防水ハードケース」として単品でも販売されています。
パッケージ内容はイヤホン本体、MMCXケーブル、イヤーピース(シリコン、ウレタン、それぞれS/M/Lサイズ)、清掃用ブラシ、ハードケース、説明書など。付属ケーブルは「6N OCC 単結晶銅」タイプの8芯線ケーブルで、こちらもオフィシャルストアで40ドル近くの価格で販売されているものと同一の線材を使用していると思われます。
「AUDIOSENSE DT200」の本体は、8BAモデルの「T800」よりひとまわり以上小さいコンパクトなシェルデザインで、3Dプリンタにより成型されたレジン製ハウジングと金属製ステムノズルを採用しています。コンパクトなサイズ感もあり装着性は良好で、耳の小さい方でもすんなり装着できるのではと思います。イヤーピースはシリコン製とウレタン製が付属しますが、個人的にはもうすこしフィット感が高く開口部の大きいものを使用した方が好印象でした。私は定番のAcoustuneの「AET07」を合せましたが、他にもJVCの「スパイラルドット」やAZLA「SednaEarfit Light」「SednaEarfit Light Short」なども良いと思います。
そして何といっても「AUDIOSENSE DT200」の最も特徴的な部分はレジンシェルから透けて見える円形の電解コンデンサでしょう。見た目にはハイブリッドイヤホンのダイナミックドライバーかと思うサイズ感で埋め込まれており、実際に音を出す2基のBAドライバーより圧倒的な存在感を放っています。
ちなみにイヤホンのネットワーク回路にコンデンサを使うことで、ドライバーの出力を調整する抵抗のひとつとして機能するとともにネットワーク内の電圧平準化やフィルタ(ノイズ除去)などの効果があると思われます。そのためマルチドライバーのイヤホンでは内部に小さいコンデンサが埋め込まれている製品は時々見かけますが、このサイズ(6.3V 220μF)のアルミニウム電解コンデンサをそのまま使用したイヤホンはたぶん他には無いと思います。
一般的に2BAイヤホンは高域側と低域側の2種類のドライバーを組み合わせることでダイナミックレンジの狭い特性を補完する考え方ですが、それでもダイナミックドライバーに比べると構造的に深い低域の表現には限界があります。しかし、「AUDIOSENSE DT200」ではこの電解コンデンサを組み合わせることで、従来の2BAとは全く異なるサウンドを実現しているのだと考えられますね。
■ BAらしい解像感と2BAイヤホンらしからぬ重厚な低域が特徴的。
「AUDIOSENSE DT200」の音質傾向は、中低域寄りで緩やかなドンシャリのリスニング向けのサウンドバランスに調整されています。最も特徴的なのはやはり低域で、一般的な2BA仕様のイヤホンと比べて明らかに印象の異なる、非常に深く厚みのある音を鳴らします。最近増えている傾向ともいえますが、ポップスやアニソンなどのボーカル曲にフォーカスした印象が強いサウンドで、まずは日本で限定販売されたというのも、この辺のチューニングと関係があるのかもしれませんね。
ただ前述の電解コンデンサを含むネットワークの影響もあり、「AUDIOSENSE DT200」は非常に「鳴りにくい」イヤホンで、音量自体は比較的取りやすいものの、しっかりと鳴らすためにはやはり相応の駆動力を必要とします。駆動力が不足するととても平坦で全体的に籠もったようなサウンドになります。なお、この点については情報量の多いケーブルへのリケーブル、特にバランス接続により「出力を稼ぐ」ことでかなり印象が改善できる可能性があります。また数十時間程度のエージングで多少印象が変化する場合もあるようです。
「AUDIOSENSE DT200」の高域はやや抑えめですが明瞭で伸びのある音で鳴ります。2BAイヤホンらしい硬質で解像感のある音です。ただ駆動力が不足した再生環境では少し暗く籠もりを感じる場合もあるため十分な環境で再生したいところです。中音域に比べると僅かに下がって定位し、もう少し抜け感が欲しい場合もあるため高域好きの方には多少物足りなく感じるかも知れません。とはいえシンバル音などは綺麗に鳴りますし、十分な伸びの良さもあるため多くの方は不満無く聴くことができると思います。また刺さりなどの刺激はほとんどなく非常に聴きやすい印象なのも好まれる点でしょう。
中音域は比較的スッキリした印象で、ボーカル帯域は特に凹むことなくしっかりした主張のある鳴り方をします。力強い低域とのバランスで少し下がって感じる場合もありますが、分離が良いため自然な印象で聴くことができます。これはボーカルが遠くに感じやすい音数の多い曲でも同様です。BAらしく明瞭感のある音であるいっぽう、2BA構成イヤホンには珍しい少し暖かみのあるゆったりとした印象です。味付けは無く自然な音で、音域のつながりも良く、確かに「シングルダイナミックのような鳴り方」という感じもありますね。ポップスやアニソンなどのボーカル曲との相性は非常に良く、余韻も含めてきちんと感じさせてくれます。いっぽうで音数が多くスピード感のある曲ではもう少しキレが欲しく感じる場合があります。ただし中高域の伸びも含め、リケーブルなどでかなり印象が変化するようです。
低域は2BAイヤホンとは信じられないくらい力強く重厚な音を鳴らします。解像感のある明瞭な音でマルチBA特有の低域の籠もり感は全くありません。さらに重低音は驚くほど深く沈み、重量感のある音で鳴ります。いっぽうでボーカル帯域とはかなりハッキリと分離する印象はダイナミックドライバーとは異質のもので、「AUDIOSENSE DT200」ならではの個性的な低域となっています。多くのイヤホンを持っているマニアの方でしたら、この低音のためだけでも「AUDIOSENSE DT200」を加えても損は無いかも、と感じる質の高さです。
「AUDIOSENSE DT200」はこのように非常に個性的かつ質の高いサウンドを実現したイヤホンですが、やはり「鳴らしにくさ」という点ではなかなかの難物ではあります。また高域について物足りなさを感じる場合もあります。これらの点についてはリケーブルによりかなり印象を変化させることが可能です。また再生するDAP(デジタルオーディオプレーヤー)の仕様でバランス接続のほうが出力が大きいケースも多いため、バランスケーブルを利用するのもより変化を実感しやすいポイントでしょう。
個人的な印象としては、情報量を向上させるという点で「NICEHCK C16-1」や「YYX4865」などの「ミドルグレードの16芯銀メッキ線ケーブル」、明瞭感をアップし、よりスッキリしたサウンドにするという点で「NICEHCK GCT4」「YYX4859」といったOFHC線ケーブル、そしてよりメリハリとキレのあるサウンドとして単結晶銅線の定番「YYX4810」や最新の8芯ケーブル「HiF4881」といったケーブルが好印象でした。好みに合わせていろいろチャレンジしてみるのも楽しいですね。
というわけで今回初めて「AUDIOSENSE」のイヤホンをレビューしましたが、「AUDIOSENSE DT200」のサイト写真の「普通っぽさ」とは裏腹のかなり個性的な製品にとても驚かされました。鳴らしにくさなどを考慮するとかなりマニア向けの製品だとは思いますが、1万円台という価格帯のイヤホンとしてはかなりお勧めできる製品だろうと感じました。こうなるととても濃い音という評判の「T800」もとても気になりますね。機会があればこちらも挑戦してみたいですね(^^)。
そして今回の「AUDIOSENSE DT200」は「2BA」仕様で低コスト化を実現しつつも個性的なサウンドを実現。また3Dプリンティングによる製造を行いつつドライバー数にあわせてシェルサイズも小型化しています。
特に2個のBAの出力を制御するネットワーク回路にオーディオプレーヤーなどで使うようなサイズの電解コンデンサを埋め込む設計は見た目にも音質的にもかなり独創的といえますね。そのためインピーダンスは14Ωながら感度は99dB/mWと通常のIEMよりかなり「鳴らしにくい」仕様のイヤホンになっているようです。
「AUDIOSENSE DT200」は当面は日本限定販売でのモデルとのことですが、1月にアマゾンで販売した分は既に品切れになっています。
中国からの発送となりますが、受注が再開されました。アマゾンでの表示価格は 16,450円 です。
Amazon.co.jp(AUDIOSENSE Official Store JP): AUDIOSENSE DT200
■ コンパクトなシェルに圧倒的な存在感を放つ電解コンデンサ。
「AUDIOSENSE DT200」のパッケージは、シルエットデザインが描かれたボックスで高級感を感じるしっかりした作りのものです。ボックス内には結構大きいサイズのハードケースが入っており、本体および付属品もすべてこの中に入っています。なお、本体ケースはAliExpressのオフィシャルストアにて「防水ハードケース」として単品でも販売されています。
パッケージ内容はイヤホン本体、MMCXケーブル、イヤーピース(シリコン、ウレタン、それぞれS/M/Lサイズ)、清掃用ブラシ、ハードケース、説明書など。付属ケーブルは「6N OCC 単結晶銅」タイプの8芯線ケーブルで、こちらもオフィシャルストアで40ドル近くの価格で販売されているものと同一の線材を使用していると思われます。
「AUDIOSENSE DT200」の本体は、8BAモデルの「T800」よりひとまわり以上小さいコンパクトなシェルデザインで、3Dプリンタにより成型されたレジン製ハウジングと金属製ステムノズルを採用しています。コンパクトなサイズ感もあり装着性は良好で、耳の小さい方でもすんなり装着できるのではと思います。イヤーピースはシリコン製とウレタン製が付属しますが、個人的にはもうすこしフィット感が高く開口部の大きいものを使用した方が好印象でした。私は定番のAcoustuneの「AET07」を合せましたが、他にもJVCの「スパイラルドット」やAZLA「SednaEarfit Light」「SednaEarfit Light Short」なども良いと思います。
そして何といっても「AUDIOSENSE DT200」の最も特徴的な部分はレジンシェルから透けて見える円形の電解コンデンサでしょう。見た目にはハイブリッドイヤホンのダイナミックドライバーかと思うサイズ感で埋め込まれており、実際に音を出す2基のBAドライバーより圧倒的な存在感を放っています。
ちなみにイヤホンのネットワーク回路にコンデンサを使うことで、ドライバーの出力を調整する抵抗のひとつとして機能するとともにネットワーク内の電圧平準化やフィルタ(ノイズ除去)などの効果があると思われます。そのためマルチドライバーのイヤホンでは内部に小さいコンデンサが埋め込まれている製品は時々見かけますが、このサイズ(6.3V 220μF)のアルミニウム電解コンデンサをそのまま使用したイヤホンはたぶん他には無いと思います。
一般的に2BAイヤホンは高域側と低域側の2種類のドライバーを組み合わせることでダイナミックレンジの狭い特性を補完する考え方ですが、それでもダイナミックドライバーに比べると構造的に深い低域の表現には限界があります。しかし、「AUDIOSENSE DT200」ではこの電解コンデンサを組み合わせることで、従来の2BAとは全く異なるサウンドを実現しているのだと考えられますね。
■ BAらしい解像感と2BAイヤホンらしからぬ重厚な低域が特徴的。
「AUDIOSENSE DT200」の音質傾向は、中低域寄りで緩やかなドンシャリのリスニング向けのサウンドバランスに調整されています。最も特徴的なのはやはり低域で、一般的な2BA仕様のイヤホンと比べて明らかに印象の異なる、非常に深く厚みのある音を鳴らします。最近増えている傾向ともいえますが、ポップスやアニソンなどのボーカル曲にフォーカスした印象が強いサウンドで、まずは日本で限定販売されたというのも、この辺のチューニングと関係があるのかもしれませんね。
ただ前述の電解コンデンサを含むネットワークの影響もあり、「AUDIOSENSE DT200」は非常に「鳴りにくい」イヤホンで、音量自体は比較的取りやすいものの、しっかりと鳴らすためにはやはり相応の駆動力を必要とします。駆動力が不足するととても平坦で全体的に籠もったようなサウンドになります。なお、この点については情報量の多いケーブルへのリケーブル、特にバランス接続により「出力を稼ぐ」ことでかなり印象が改善できる可能性があります。また数十時間程度のエージングで多少印象が変化する場合もあるようです。
「AUDIOSENSE DT200」の高域はやや抑えめですが明瞭で伸びのある音で鳴ります。2BAイヤホンらしい硬質で解像感のある音です。ただ駆動力が不足した再生環境では少し暗く籠もりを感じる場合もあるため十分な環境で再生したいところです。中音域に比べると僅かに下がって定位し、もう少し抜け感が欲しい場合もあるため高域好きの方には多少物足りなく感じるかも知れません。とはいえシンバル音などは綺麗に鳴りますし、十分な伸びの良さもあるため多くの方は不満無く聴くことができると思います。また刺さりなどの刺激はほとんどなく非常に聴きやすい印象なのも好まれる点でしょう。
中音域は比較的スッキリした印象で、ボーカル帯域は特に凹むことなくしっかりした主張のある鳴り方をします。力強い低域とのバランスで少し下がって感じる場合もありますが、分離が良いため自然な印象で聴くことができます。これはボーカルが遠くに感じやすい音数の多い曲でも同様です。BAらしく明瞭感のある音であるいっぽう、2BA構成イヤホンには珍しい少し暖かみのあるゆったりとした印象です。味付けは無く自然な音で、音域のつながりも良く、確かに「シングルダイナミックのような鳴り方」という感じもありますね。ポップスやアニソンなどのボーカル曲との相性は非常に良く、余韻も含めてきちんと感じさせてくれます。いっぽうで音数が多くスピード感のある曲ではもう少しキレが欲しく感じる場合があります。ただし中高域の伸びも含め、リケーブルなどでかなり印象が変化するようです。
低域は2BAイヤホンとは信じられないくらい力強く重厚な音を鳴らします。解像感のある明瞭な音でマルチBA特有の低域の籠もり感は全くありません。さらに重低音は驚くほど深く沈み、重量感のある音で鳴ります。いっぽうでボーカル帯域とはかなりハッキリと分離する印象はダイナミックドライバーとは異質のもので、「AUDIOSENSE DT200」ならではの個性的な低域となっています。多くのイヤホンを持っているマニアの方でしたら、この低音のためだけでも「AUDIOSENSE DT200」を加えても損は無いかも、と感じる質の高さです。
「AUDIOSENSE DT200」はこのように非常に個性的かつ質の高いサウンドを実現したイヤホンですが、やはり「鳴らしにくさ」という点ではなかなかの難物ではあります。また高域について物足りなさを感じる場合もあります。これらの点についてはリケーブルによりかなり印象を変化させることが可能です。また再生するDAP(デジタルオーディオプレーヤー)の仕様でバランス接続のほうが出力が大きいケースも多いため、バランスケーブルを利用するのもより変化を実感しやすいポイントでしょう。
個人的な印象としては、情報量を向上させるという点で「NICEHCK C16-1」や「YYX4865」などの「ミドルグレードの16芯銀メッキ線ケーブル」、明瞭感をアップし、よりスッキリしたサウンドにするという点で「NICEHCK GCT4」「YYX4859」といったOFHC線ケーブル、そしてよりメリハリとキレのあるサウンドとして単結晶銅線の定番「YYX4810」や最新の8芯ケーブル「HiF4881」といったケーブルが好印象でした。好みに合わせていろいろチャレンジしてみるのも楽しいですね。
というわけで今回初めて「AUDIOSENSE」のイヤホンをレビューしましたが、「AUDIOSENSE DT200」のサイト写真の「普通っぽさ」とは裏腹のかなり個性的な製品にとても驚かされました。鳴らしにくさなどを考慮するとかなりマニア向けの製品だとは思いますが、1万円台という価格帯のイヤホンとしてはかなりお勧めできる製品だろうと感じました。こうなるととても濃い音という評判の「T800」もとても気になりますね。機会があればこちらも挑戦してみたいですね(^^)。