こんにちは。昨今の情勢でテレワークが増えたため、日常的なイヤホンの利用頻度が増えている一方で、やはりチャイナポストやシンガポールポストでの海外便の荷物が予想以上に遅れがちで結構やきもきする今日この頃です。できるだけ早く平常に戻ると良いですね。
さて、そんなこともあって以前から放置していた「書きかけレビュー」の消化企画、「棚からレビュー」の第5回目です。今回は国内イヤホンブランドでもマニアからの圧倒的な支持と信頼を得ている「 final (S'NEXT) 」の「E Series」、「E500」「E1000」「E2000」「E3000」の超定番低価格モデルをまとめて比較するという、何というか超安直なネタです(滝汗)。
正直なところ、かなり「今さら」感が否めないのですが、私のブログでは普段は「中華イヤホン」のレビューがメインになっているため、国内メーカーの製品をレビューするのは実はかなり珍しかったりします。またこのシリーズは都度購入しているくせに全くレビューを書いていない、ということに気付いたのが「E500」を購入した約半年ほど前。でも結局書きかけのまますっかり掲載するタイミングを逸してしまったという流れです。また、これまでの「棚からレビュー」同様に、過去の「書きかけ」をまとめたため、微妙に長くなっております(汗)。
■ まずは4種類のイヤホンの概要をざっくり確認
というわけで、改めて「final E500」「E1000」「E2000」「E3000」について簡単に紹介をします。とっくに定番イヤホンですので、いまさらなことは控えめに、ちょっと目線が斜めな感じになっているのはご了承ください(^^;)。
「final E500」 (2,020円)
いわゆる「バイノーラル」サウンドに特化したイヤホン、という謳い文句で、当初はfinalのダイレクトショップ限定で販売されていた「特殊モデル」が「final E500」です。
通常のイヤホンでバイノーラル録音された音源を聴くと高域に違和感が生じる場合が有り、その空間イメージの再現に特化したチューニングを施している、という点が他のモデルとは全く異なるポイント。バイノーラル録音の定番であるASMRはもちろん、映画やVRゲーム等でバイノーラルレンダリングされた立体音響でその実力を遺憾なく発揮します。
いっぽうで、リスニング用としてもリリース以降いろいろな方面で絶讃されたことで大人気になりましたね。ドンシャリ傾向のサウンドが好みの方にはリスニング向けには物足りないかも知れませんが、その特性からも2ch録音されたライブ音源などにも強みがあるのは間違いないでしょう。現在はアマゾンなどでも購入が可能となっています。
Amazon.co.jp: final E500
「final E1000」 (2,200円)
「final E1000」は「E500」のような特殊モデルとは異なり、まっとうに「E Series」のエントリーに位置するイヤホンです。まあ先行する「E2000」「E3000」がそもそもfinal製品の「エントリー」だった気がしますが、ターゲットはまだまだマニア層に近いところでした。それに対して「final E1000」ではいわゆるオーディオマニアではない層の最初のステップアップをターゲットとして2千円台のプライス設定で販売したモデルですね。販売当初は雑誌付録として書店販売し、その後量販店などでの一般販売がスタートしました。また「ブラック」「ブルー」「レッド」のカラーバリエーションも用意し、選択の幅を広げています。
エントリークラスとはいえ、他の製品同様の6.4mmダイナミックドライバーと単品販売されている定番の「final Eタイプ」のイヤーピースを各サイズ同梱しており、「finalのイヤーピースセットを買ったらイヤホンが付いてきた(笑)」みたいな冗談がいえるくらいのコスパで、単なるエントリー製品の枠に収まらないのがすごいですね。
Amazon.co.jp: final E1000
「final E2000」 (3,864円)
一周回って最近は発売当初よりかなり評価が上がってる感もある「final E2000」。ただ販売当初はとりあえずマニアは次の「E3000を推すことになっている」と言いたくなるくらい「E3000」の評判が高かったため、「final E2000」はついつい「こっちもいいけど」扱いをされがちなモデルでした。もっとも、これは上位モデルの「E4000」も「E5000」の陰に隠れがちなのでもはやキャラ付けと言ってもいいかもしれません(なことはない)。
しかし、実際のところ「final E2000」のサウンドは幅広い方が楽しめそうなチューニングで同価格帯の他社製品と比べても非常に完成度が高いと思います。いわゆるドンシャリ傾向の明瞭サウンドで、KZなどの中華イヤホンを普段聴かれている方なら最も相性が良いのもこの「final E2000」でしょう。また、最近では次の「E3000」が「E5000」の廉価版的な雰囲気があるのに対し、「final E2000」と「E4000」は結構ターゲットが分かれている印象もあり、今後も人気は継続しそうな感じですね。
Amazon.co.jp: final E2000
「final E3000」 (4,445円)
言わずと知れたfinalの低価格モデルの代表選手、に留まらず、発売以降エントリークラスの一推しイヤホンとして数々のメディアで取り上げられ、現在も超定番イヤホンとして不動の地位を築いているモデルですね。
5千円クラスの製品にもかかわらずフラット傾向の本格的なリスニングサウンドを実現したいたため、発売当初から専門家やマニアの間で大きな話題になりました。「E2000」がこの価格帯の多くの製品と同じターゲットを狙ってfinal的な回答を出したイヤホンだったとすると、「final E3000」はより高い価格帯のイヤホンを彷彿とさせる正統派的なサウンドを持ち込ん製品といえるかも。
そういった意味で間違いなく「final E3000」は非常に優れたイヤホンなのですが、実はしっかり鳴らすのには駆動力が必要だったり、やはりマニア受けのサウンドかな、と思う点も含めて、どうも最近「E5000」の廉価版、みたいな雰囲気になってしまってるのは少し残念かもです。
Amazon.co.jp: final E3000
■ 「正統派」らしさを表現しつつ、それぞれに個性を感じるサウンド。
久しぶりに4種類のイヤホンを聴き比べてみると、それぞれに非常に良くできたイヤホンだなとい印象を改めて実感しました。finalの「E Series」はどれも非常に耳馴染みが良く、普段キレッキレの中華ハイブリッドを聴く機会が多いと軽く癒やしのような気分になります(^^;)。どのモデルも高域の刺さり等はなく長時間のリスニングでも聴き疲れしにくいのも特徴でしょう。ちなみに、4モデルとも普段から使っていますので、メーカーサイトで記載される150~200時間程度のエージングはとっくに済んでいる状態ですね。
今回の4モデルについては解像感や分離感そのものは実際にはそれほど大きな違いはありません。ただチューニングやハウジングの設計などの違いにより、音の「抜け感」や「フォーカスの定まり方」、そして「音場表現」はモデルごとの特徴があり、それぞれの製品の良さになっていますね。
「final E500」
もともと「バイノーラル録音」専用イヤホンというだけあって、これらの音源での立体的な定位感は凄まじいですね。ASMRなんかは普段聴き慣れないおじさん(私です)にはちょっと刺激が強すぎ(笑)ってくらいの表現力があります。コレを体験できるだけでも2千円くらい出す価値は十二分にあるよ、大満足!!って感じはします。
いっぽうで、この立体音響での正確な定位を実現するために、「final E500」はオーディオ的には極めてフラットで、これといって音場が広いわけでも低域に迫力があるわけでもありません。そのため、通常のオーディオソースを聴く分には聴きやすいもの可もなく不可もなし、という印象で他のモデルのほうが好感することが多いでしょう。まあ「final E500」は元々そのような意図に「特化して」作られたイヤホンですし、当初は「わかってるマニア向け」にダイレクトショップ限定での販売をしていたことからも「E Series」の他の製品とは明らかに位置づけが異なるのは当然ですね(当時ネット上で少し誤解を招く「煽り」みたいなのもあって本来の良さじゃないところで話題が広がったときは個人的には「ちょっと何だかなぁ」と思ったりはしました)。
ちなみに、オーディオソースでもライブやコンサートなどでの「マスタリングでの加工が比較的少ない」音源は距離感が掴みやすく、楽しさがあります。そういった意味では比較的古い音源ではより「雰囲気を楽しめる」イヤホンと言えます(個人的にはクラプトンやABBAとかの古いアルバムなどは「final E500」でかなり好印象)。ジャンルや曲の種類によってはオーディオ用途でも実力を発揮するイヤホン、というほうが正確でしょう。ちょっと鳴らしにくいイヤホンということもありますが、駆動力のある環境(音量を上げても歪みにくい環境)でボリュームを大きめで聴くのが良いですね。
また個人的には「Netflix」などの動画サービスをスマートフォン等の2ch化された環境で試聴する場合には結構重宝します。このような動画サービスなどで「final E500」を使用すると、「シアターモード」なイヤホンやヘッドフォンと比べてちょっと臨場感が足りない、と感じる方も多いかもしれませんが、個人的にはSRSなどに代表される少し定位を下げて低域を響かせるタイプのバーチャルサラウンドが好きではないので、バイノーラルレンダリングされた立体音響でなければ本来の定位ではないかもしれませんが、これくらいの音場感でちょうど良いかなと思ったりしています。とりあえず最初に買うべきfinalのイヤホンではないですが、色々イヤホンを楽しんでいる方なら持ってて当然レベルのアイテムではありますね(^^)。
「final E1000」
「E2000」「E3000」をリリースし、さらに上位モデルの「E4000」「E5000」とグレードアップした後に、さらなるエントリーとして登場したのがこの「final E1000」です。音質傾向はシリーズの中で最もオールラウンダーなチューニングで、いわゆる「80点主義のイヤホン」という感じです。つまり最初から100点を狙わない代わりに、普段はあまりオーディオに興味の無い方から、ゴリゴリのマニアまで、より多くの層に「良い音のイヤホン」と感じてもらえるなチューニングをしている、というわけです。これは簡単そうで結構難しい。もともと「E Series」はどれも高域が柔らかく刺さり等の刺激はほぼ無いイヤホンですが、高域にもある程度の明瞭感と抜けの良さを持たせないと緩すぎたり籠もった印象になる場合があります。またドンシャリ傾向はサウンドにメリハリが生まれますが、曲の種類にもさまざまなジャンルの趣味嗜好がありますので「ちょうど良いバランス」はそれぞれです。その点、「final E1000」はこの価格帯のイヤホンとしてはかなり上手くまとめていると思います。
「final E1000」も「E500」同様にしっかり鳴らすためにはある程度駆動力が必要です。しかしスマートフォンで鳴らしても「それなり」には聴けますし、しっかり分離しつつ厚みのある低域と音場の広さを実感できるため、まったくオーディオに興味の無い方でも臨場感のある「良い音」に感じるはずです。また駆動力の少ない環境では多少平坦になるのですが、それでもボーカルなどはしっかり前に出て聴きやすく、むしろこのような層には聴き疲れしにくくBGMなどで長時間のリスニングに向いている、と感じるかもしれませんね。
いっぽうDAPやアンプ等でしっかり聴くと細かいところはやはり他のモデルと比べて価格なりの部分も感じます。ボーカル帯域をメインとしたチューニングで、全体のバランスとしては非常に優れていますが、中高域などは輪郭の緩さを感じますし、伸びは今ひとつで天井も高くありません。低域も分離は良いものの重低音の沈み込みは浅く高域同様に締まりもそれなりで、中音域を下支えしてる低音という印象です。雰囲気重視でまとまりの良さを楽しむのが正しい聴き方という感じのイヤホンでしょう。私の場合、別のところでも書いているとおり、マニアではない人に2000円くらいのイヤホンを勧めたりプレゼントする場合、「KZ ZSN Pro」を挙げることが多いのですが、「final E1000」と比べると、全体的なサウンドバランスは「final E1000」のほうが圧倒的に優れているものの、聴いたときに「おっ、これは安物イヤホンとは違うな」と感じさせる「演出」(鮮やかさ、メリハリ、音場感など)は「KZ ZSN Pro」が上手いなと思います。これは良し悪しと言うよりfinalの「生真面目さ」が表現されている、というところかも知れませんね(まあ、それに比べてKZの音はぶっちゃけ「下品」ですからね。良い意味で)。
「final E2000」
マニア受けという意味では「E3000」がやはりベストですし、個人的にも「E3000」のサウンドが好きですが、おそらくこの4種類のイヤホンを購入されるターゲット層で、聴き比べた際に最も好感されるのは「final E2000」ではないかと思います。まあ、それはそうですよね。「E3000」がフラット方向でチューニングされたイヤホンだとすると、「final E2000」は心地良いドンシャリ傾向のサウンドです。とはいえ中華イヤホンのような派手さはなく、適度に伸び、適度に沈む、そしてボーカル帯域はスッキリとした印象で表現する、という要所を押さえた音作りに好感が持てます。
アルミ製ハウジングによる抜けの良いサウンドが印象的で、キレのあるサウンドは疾走感のある曲との相性の良さを感じます。また刺さり等の刺激はないものの、高域がしっかり伸び、前に出るボーカル帯域と合せて明るく鮮やかさのある「final E2000」のサウンドはポップスやアニソンなどと抜群の相性があります。また中高域がスッキリした印象のため、ミッドバスを中心に低域の力強さがより引き立ち、心地よさが一層引き立ちます。
まあ、ネット上にある多くのレビューを見てもだいたい同様の事が記載されているのでは、と思いますが、発売から3年近くが経ってもまったく遜色が無く、むしろ最近のイヤホンの音作りの傾向に非常に近いところを高いレベルで実現できているのは流石ですね。ちょっと本格的に良い音で、ということで最初に選ぶイヤホンとしてはやはり「鉄板」の選択だと思います。「とりあえずコレ買って置いたら良いよ」と勧めておいても外さないイヤホンですね。かつてはイヤホン沼に落ちるきっかけと言えばShureの「SE215SPE」というパターンが「あるある」でしたが、最近では「final E2000」や「final E3000」だったという方も少なくないのかも知れません。ちなみに、「final E2000」で沼に落ちた(笑)としても、そこから何故か「E4000」には行かないのは興味深いところですね。
「final E3000」
そして、今回の4モデルの中でもまさに「代表選手」と呼べる、巷でもっとも「高音質」という評価を受けているイヤホンが「final E3000」です。多くのレビューでも書かれているとおり、間違いなく良いイヤホンなのですが、元々マニア受けなサウンドなうえ、上位モデルの「E5000」が登場した後からは扱いがちょっとだけ微妙になってしまった存在かも知れません。本気を出すためには結構駆動力のある再生環境が必要で、かつ「E Series」の中でも最も正統派なサウンドのイヤホンだと思います。印象としてはフラット寄りでニュートラルなサウンドながら適度な鮮やかさと圧倒的な滑らかさを感じます。このクラスとしては十分な解像感と、適度に広い音場感、「E2000」より少なめながら十分な厚みがありより重低音の表現にも優れた低域。4種類を聴き比べるとひとつひとつの表現が非常に自然な印象であることを実感します。「E2000」がポップスやアニソンなどの「イマドキのサウンド」との相性の良さを感じるのに対して「final E3000」はアコースティックなサウンドで大きく実力を発揮します。ボーカル曲はもちろんインストゥルメンタルも良い。ジャズなどは流石、という印象。またバラード曲なども気持ちよいですね。
ただ、「E2000」と比べて「final E3000」は良さを実感するためにはある程度の駆動力のある再生環境が必要で、よりメリハリのある「E2000」に対して非常に自然なバランスではあるものの、さまざまなイヤホンを聴いているマニア向けの製品という印象も感じます。そのうえで、マニアからすると、抜けの良さや音場の広がり、より精緻な定位感など、「もう少しここが良くなれば」みたいな欲をつい感じてしまうイヤホンでもあります。とはいえ、この価格帯のイヤホンとしては3年経った今でも十分に高いレベルを維持しています。
なお、「final E3000」を聴いて感じた「もう少しこうなれば」については、その後、まさに需要を満たす形でリケーブルに対応した「マニア向け」の上位モデル「E5000」 が登場することでひとつの回答を得てしまいました。「E5000」は約3万円程度と、「final E3000」の5~6倍近い価格設定ながらマニアの感心が一気にそちらに流れたのは「必然」だったような気もします。いっぽうで、3万円近い「E5000」があるからこそ、改めて「final E3000」のコストパフォーマンスの高さを実感できる、とも言えるわけで、マニア向けの製品としてはかなり「入りやすい」イヤホンであるのは間違いないでしょう。興味のある多くの方に体感して欲しいイヤホンだと思いますね。
■ 今後も「棚からレビュー」は「中華イヤホンじゃない」定番イヤホン・ヘッドフォンで。
というわけで、「final E Series」低価格モデルの「棚からレビュー」でした。実は相当以前に書いた部分もあったのですが、なんとか再構成してまとめました。当初は通常のレビューと同じ形式で書いていたのですが、やはり「今さら」感がえげつなかったので(^^;)、ざっくり割愛しました。このような感じで、お蔵入りした「書きかけレビュー」、主に「中華イヤホンじゃない定番のイヤホンやヘッドフォンのネタで、今後も気が向いたときに掲載したいと思います。
なお、余談ですが、finalのサイトでは耳道にぐっと入れてフィットさせ最も良く聴くことができるポジションを探す、という装着方法が掲載されています。付属の「final Eタイプ」イヤーピースは耳道に合せて装着時に曲がるためベストポジションを掴みやすい仕様になっていますね。
ちなみに、私の場合、某メーカーのカスタムIEMを耳型採取の時点で断念した経験のあるほど耳の大きさに対して耳穴がとにかく細く、「final Eタイプ」のSSサイズでもしっかり入りません(汗)。まあ耳掛け式で使用すればなんとかベストポジションで固定できるので今回はその方向でまとめました。
余談ですが、このような理由のため普段は別メーカーのトリプルフランジのイヤーピースを使い、さながらER-4S状態で使っていたりします(^^;)。トリプルフランジを使用すると遮音性が向上し、よりダイレクトに音が入ってくる印象になるため、メーカーによっては音がキツめに感じる事がありますが、もともと耳馴染みの良い「E Series」の場合はどのモデルでも大きく変化すること無く快適に利用できます。装着性や遮音性を向上させたい場合には良い方法かもしれませんよ(^^)。
■ まずは4種類のイヤホンの概要をざっくり確認
というわけで、改めて「final E500」「E1000」「E2000」「E3000」について簡単に紹介をします。とっくに定番イヤホンですので、いまさらなことは控えめに、ちょっと目線が斜めな感じになっているのはご了承ください(^^;)。
「final E500」 (2,020円)
いわゆる「バイノーラル」サウンドに特化したイヤホン、という謳い文句で、当初はfinalのダイレクトショップ限定で販売されていた「特殊モデル」が「final E500」です。
通常のイヤホンでバイノーラル録音された音源を聴くと高域に違和感が生じる場合が有り、その空間イメージの再現に特化したチューニングを施している、という点が他のモデルとは全く異なるポイント。バイノーラル録音の定番であるASMRはもちろん、映画やVRゲーム等でバイノーラルレンダリングされた立体音響でその実力を遺憾なく発揮します。
いっぽうで、リスニング用としてもリリース以降いろいろな方面で絶讃されたことで大人気になりましたね。ドンシャリ傾向のサウンドが好みの方にはリスニング向けには物足りないかも知れませんが、その特性からも2ch録音されたライブ音源などにも強みがあるのは間違いないでしょう。現在はアマゾンなどでも購入が可能となっています。
Amazon.co.jp: final E500
「final E1000」 (2,200円)
「final E1000」は「E500」のような特殊モデルとは異なり、まっとうに「E Series」のエントリーに位置するイヤホンです。まあ先行する「E2000」「E3000」がそもそもfinal製品の「エントリー」だった気がしますが、ターゲットはまだまだマニア層に近いところでした。それに対して「final E1000」ではいわゆるオーディオマニアではない層の最初のステップアップをターゲットとして2千円台のプライス設定で販売したモデルですね。販売当初は雑誌付録として書店販売し、その後量販店などでの一般販売がスタートしました。また「ブラック」「ブルー」「レッド」のカラーバリエーションも用意し、選択の幅を広げています。
エントリークラスとはいえ、他の製品同様の6.4mmダイナミックドライバーと単品販売されている定番の「final Eタイプ」のイヤーピースを各サイズ同梱しており、「finalのイヤーピースセットを買ったらイヤホンが付いてきた(笑)」みたいな冗談がいえるくらいのコスパで、単なるエントリー製品の枠に収まらないのがすごいですね。
Amazon.co.jp: final E1000
「final E2000」 (3,864円)
一周回って最近は発売当初よりかなり評価が上がってる感もある「final E2000」。ただ販売当初はとりあえずマニアは次の「E3000を推すことになっている」と言いたくなるくらい「E3000」の評判が高かったため、「final E2000」はついつい「こっちもいいけど」扱いをされがちなモデルでした。もっとも、これは上位モデルの「E4000」も「E5000」の陰に隠れがちなのでもはやキャラ付けと言ってもいいかもしれません(なことはない)。
しかし、実際のところ「final E2000」のサウンドは幅広い方が楽しめそうなチューニングで同価格帯の他社製品と比べても非常に完成度が高いと思います。いわゆるドンシャリ傾向の明瞭サウンドで、KZなどの中華イヤホンを普段聴かれている方なら最も相性が良いのもこの「final E2000」でしょう。また、最近では次の「E3000」が「E5000」の廉価版的な雰囲気があるのに対し、「final E2000」と「E4000」は結構ターゲットが分かれている印象もあり、今後も人気は継続しそうな感じですね。
Amazon.co.jp: final E2000
「final E3000」 (4,445円)
言わずと知れたfinalの低価格モデルの代表選手、に留まらず、発売以降エントリークラスの一推しイヤホンとして数々のメディアで取り上げられ、現在も超定番イヤホンとして不動の地位を築いているモデルですね。
5千円クラスの製品にもかかわらずフラット傾向の本格的なリスニングサウンドを実現したいたため、発売当初から専門家やマニアの間で大きな話題になりました。「E2000」がこの価格帯の多くの製品と同じターゲットを狙ってfinal的な回答を出したイヤホンだったとすると、「final E3000」はより高い価格帯のイヤホンを彷彿とさせる正統派的なサウンドを持ち込ん製品といえるかも。
そういった意味で間違いなく「final E3000」は非常に優れたイヤホンなのですが、実はしっかり鳴らすのには駆動力が必要だったり、やはりマニア受けのサウンドかな、と思う点も含めて、どうも最近「E5000」の廉価版、みたいな雰囲気になってしまってるのは少し残念かもです。
Amazon.co.jp: final E3000
■ 「正統派」らしさを表現しつつ、それぞれに個性を感じるサウンド。
久しぶりに4種類のイヤホンを聴き比べてみると、それぞれに非常に良くできたイヤホンだなとい印象を改めて実感しました。finalの「E Series」はどれも非常に耳馴染みが良く、普段キレッキレの中華ハイブリッドを聴く機会が多いと軽く癒やしのような気分になります(^^;)。どのモデルも高域の刺さり等はなく長時間のリスニングでも聴き疲れしにくいのも特徴でしょう。ちなみに、4モデルとも普段から使っていますので、メーカーサイトで記載される150~200時間程度のエージングはとっくに済んでいる状態ですね。
今回の4モデルについては解像感や分離感そのものは実際にはそれほど大きな違いはありません。ただチューニングやハウジングの設計などの違いにより、音の「抜け感」や「フォーカスの定まり方」、そして「音場表現」はモデルごとの特徴があり、それぞれの製品の良さになっていますね。
「final E500」
もともと「バイノーラル録音」専用イヤホンというだけあって、これらの音源での立体的な定位感は凄まじいですね。ASMRなんかは普段聴き慣れないおじさん(私です)にはちょっと刺激が強すぎ(笑)ってくらいの表現力があります。コレを体験できるだけでも2千円くらい出す価値は十二分にあるよ、大満足!!って感じはします。
いっぽうで、この立体音響での正確な定位を実現するために、「final E500」はオーディオ的には極めてフラットで、これといって音場が広いわけでも低域に迫力があるわけでもありません。そのため、通常のオーディオソースを聴く分には聴きやすいもの可もなく不可もなし、という印象で他のモデルのほうが好感することが多いでしょう。まあ「final E500」は元々そのような意図に「特化して」作られたイヤホンですし、当初は「わかってるマニア向け」にダイレクトショップ限定での販売をしていたことからも「E Series」の他の製品とは明らかに位置づけが異なるのは当然ですね(当時ネット上で少し誤解を招く「煽り」みたいなのもあって本来の良さじゃないところで話題が広がったときは個人的には「ちょっと何だかなぁ」と思ったりはしました)。
ちなみに、オーディオソースでもライブやコンサートなどでの「マスタリングでの加工が比較的少ない」音源は距離感が掴みやすく、楽しさがあります。そういった意味では比較的古い音源ではより「雰囲気を楽しめる」イヤホンと言えます(個人的にはクラプトンやABBAとかの古いアルバムなどは「final E500」でかなり好印象)。ジャンルや曲の種類によってはオーディオ用途でも実力を発揮するイヤホン、というほうが正確でしょう。ちょっと鳴らしにくいイヤホンということもありますが、駆動力のある環境(音量を上げても歪みにくい環境)でボリュームを大きめで聴くのが良いですね。
また個人的には「Netflix」などの動画サービスをスマートフォン等の2ch化された環境で試聴する場合には結構重宝します。このような動画サービスなどで「final E500」を使用すると、「シアターモード」なイヤホンやヘッドフォンと比べてちょっと臨場感が足りない、と感じる方も多いかもしれませんが、個人的にはSRSなどに代表される少し定位を下げて低域を響かせるタイプのバーチャルサラウンドが好きではないので、バイノーラルレンダリングされた立体音響でなければ本来の定位ではないかもしれませんが、これくらいの音場感でちょうど良いかなと思ったりしています。とりあえず最初に買うべきfinalのイヤホンではないですが、色々イヤホンを楽しんでいる方なら持ってて当然レベルのアイテムではありますね(^^)。
「final E1000」
「E2000」「E3000」をリリースし、さらに上位モデルの「E4000」「E5000」とグレードアップした後に、さらなるエントリーとして登場したのがこの「final E1000」です。音質傾向はシリーズの中で最もオールラウンダーなチューニングで、いわゆる「80点主義のイヤホン」という感じです。つまり最初から100点を狙わない代わりに、普段はあまりオーディオに興味の無い方から、ゴリゴリのマニアまで、より多くの層に「良い音のイヤホン」と感じてもらえるなチューニングをしている、というわけです。これは簡単そうで結構難しい。もともと「E Series」はどれも高域が柔らかく刺さり等の刺激はほぼ無いイヤホンですが、高域にもある程度の明瞭感と抜けの良さを持たせないと緩すぎたり籠もった印象になる場合があります。またドンシャリ傾向はサウンドにメリハリが生まれますが、曲の種類にもさまざまなジャンルの趣味嗜好がありますので「ちょうど良いバランス」はそれぞれです。その点、「final E1000」はこの価格帯のイヤホンとしてはかなり上手くまとめていると思います。
「final E1000」も「E500」同様にしっかり鳴らすためにはある程度駆動力が必要です。しかしスマートフォンで鳴らしても「それなり」には聴けますし、しっかり分離しつつ厚みのある低域と音場の広さを実感できるため、まったくオーディオに興味の無い方でも臨場感のある「良い音」に感じるはずです。また駆動力の少ない環境では多少平坦になるのですが、それでもボーカルなどはしっかり前に出て聴きやすく、むしろこのような層には聴き疲れしにくくBGMなどで長時間のリスニングに向いている、と感じるかもしれませんね。
いっぽうDAPやアンプ等でしっかり聴くと細かいところはやはり他のモデルと比べて価格なりの部分も感じます。ボーカル帯域をメインとしたチューニングで、全体のバランスとしては非常に優れていますが、中高域などは輪郭の緩さを感じますし、伸びは今ひとつで天井も高くありません。低域も分離は良いものの重低音の沈み込みは浅く高域同様に締まりもそれなりで、中音域を下支えしてる低音という印象です。雰囲気重視でまとまりの良さを楽しむのが正しい聴き方という感じのイヤホンでしょう。私の場合、別のところでも書いているとおり、マニアではない人に2000円くらいのイヤホンを勧めたりプレゼントする場合、「KZ ZSN Pro」を挙げることが多いのですが、「final E1000」と比べると、全体的なサウンドバランスは「final E1000」のほうが圧倒的に優れているものの、聴いたときに「おっ、これは安物イヤホンとは違うな」と感じさせる「演出」(鮮やかさ、メリハリ、音場感など)は「KZ ZSN Pro」が上手いなと思います。これは良し悪しと言うよりfinalの「生真面目さ」が表現されている、というところかも知れませんね(まあ、それに比べてKZの音はぶっちゃけ「下品」ですからね。良い意味で)。
「final E2000」
マニア受けという意味では「E3000」がやはりベストですし、個人的にも「E3000」のサウンドが好きですが、おそらくこの4種類のイヤホンを購入されるターゲット層で、聴き比べた際に最も好感されるのは「final E2000」ではないかと思います。まあ、それはそうですよね。「E3000」がフラット方向でチューニングされたイヤホンだとすると、「final E2000」は心地良いドンシャリ傾向のサウンドです。とはいえ中華イヤホンのような派手さはなく、適度に伸び、適度に沈む、そしてボーカル帯域はスッキリとした印象で表現する、という要所を押さえた音作りに好感が持てます。
アルミ製ハウジングによる抜けの良いサウンドが印象的で、キレのあるサウンドは疾走感のある曲との相性の良さを感じます。また刺さり等の刺激はないものの、高域がしっかり伸び、前に出るボーカル帯域と合せて明るく鮮やかさのある「final E2000」のサウンドはポップスやアニソンなどと抜群の相性があります。また中高域がスッキリした印象のため、ミッドバスを中心に低域の力強さがより引き立ち、心地よさが一層引き立ちます。
まあ、ネット上にある多くのレビューを見てもだいたい同様の事が記載されているのでは、と思いますが、発売から3年近くが経ってもまったく遜色が無く、むしろ最近のイヤホンの音作りの傾向に非常に近いところを高いレベルで実現できているのは流石ですね。ちょっと本格的に良い音で、ということで最初に選ぶイヤホンとしてはやはり「鉄板」の選択だと思います。「とりあえずコレ買って置いたら良いよ」と勧めておいても外さないイヤホンですね。かつてはイヤホン沼に落ちるきっかけと言えばShureの「SE215SPE」というパターンが「あるある」でしたが、最近では「final E2000」や「final E3000」だったという方も少なくないのかも知れません。ちなみに、「final E2000」で沼に落ちた(笑)としても、そこから何故か「E4000」には行かないのは興味深いところですね。
「final E3000」
そして、今回の4モデルの中でもまさに「代表選手」と呼べる、巷でもっとも「高音質」という評価を受けているイヤホンが「final E3000」です。多くのレビューでも書かれているとおり、間違いなく良いイヤホンなのですが、元々マニア受けなサウンドなうえ、上位モデルの「E5000」が登場した後からは扱いがちょっとだけ微妙になってしまった存在かも知れません。本気を出すためには結構駆動力のある再生環境が必要で、かつ「E Series」の中でも最も正統派なサウンドのイヤホンだと思います。印象としてはフラット寄りでニュートラルなサウンドながら適度な鮮やかさと圧倒的な滑らかさを感じます。このクラスとしては十分な解像感と、適度に広い音場感、「E2000」より少なめながら十分な厚みがありより重低音の表現にも優れた低域。4種類を聴き比べるとひとつひとつの表現が非常に自然な印象であることを実感します。「E2000」がポップスやアニソンなどの「イマドキのサウンド」との相性の良さを感じるのに対して「final E3000」はアコースティックなサウンドで大きく実力を発揮します。ボーカル曲はもちろんインストゥルメンタルも良い。ジャズなどは流石、という印象。またバラード曲なども気持ちよいですね。
ただ、「E2000」と比べて「final E3000」は良さを実感するためにはある程度の駆動力のある再生環境が必要で、よりメリハリのある「E2000」に対して非常に自然なバランスではあるものの、さまざまなイヤホンを聴いているマニア向けの製品という印象も感じます。そのうえで、マニアからすると、抜けの良さや音場の広がり、より精緻な定位感など、「もう少しここが良くなれば」みたいな欲をつい感じてしまうイヤホンでもあります。とはいえ、この価格帯のイヤホンとしては3年経った今でも十分に高いレベルを維持しています。
なお、「final E3000」を聴いて感じた「もう少しこうなれば」については、その後、まさに需要を満たす形でリケーブルに対応した「マニア向け」の上位モデル「E5000」 が登場することでひとつの回答を得てしまいました。「E5000」は約3万円程度と、「final E3000」の5~6倍近い価格設定ながらマニアの感心が一気にそちらに流れたのは「必然」だったような気もします。いっぽうで、3万円近い「E5000」があるからこそ、改めて「final E3000」のコストパフォーマンスの高さを実感できる、とも言えるわけで、マニア向けの製品としてはかなり「入りやすい」イヤホンであるのは間違いないでしょう。興味のある多くの方に体感して欲しいイヤホンだと思いますね。
■ 今後も「棚からレビュー」は「中華イヤホンじゃない」定番イヤホン・ヘッドフォンで。
というわけで、「final E Series」低価格モデルの「棚からレビュー」でした。実は相当以前に書いた部分もあったのですが、なんとか再構成してまとめました。当初は通常のレビューと同じ形式で書いていたのですが、やはり「今さら」感がえげつなかったので(^^;)、ざっくり割愛しました。このような感じで、お蔵入りした「書きかけレビュー」、主に「中華イヤホンじゃない定番のイヤホンやヘッドフォンのネタで、今後も気が向いたときに掲載したいと思います。
なお、余談ですが、finalのサイトでは耳道にぐっと入れてフィットさせ最も良く聴くことができるポジションを探す、という装着方法が掲載されています。付属の「final Eタイプ」イヤーピースは耳道に合せて装着時に曲がるためベストポジションを掴みやすい仕様になっていますね。
ちなみに、私の場合、某メーカーのカスタムIEMを耳型採取の時点で断念した経験のあるほど耳の大きさに対して耳穴がとにかく細く、「final Eタイプ」のSSサイズでもしっかり入りません(汗)。まあ耳掛け式で使用すればなんとかベストポジションで固定できるので今回はその方向でまとめました。
余談ですが、このような理由のため普段は別メーカーのトリプルフランジのイヤーピースを使い、さながらER-4S状態で使っていたりします(^^;)。トリプルフランジを使用すると遮音性が向上し、よりダイレクトに音が入ってくる印象になるため、メーカーによっては音がキツめに感じる事がありますが、もともと耳馴染みの良い「E Series」の場合はどのモデルでも大きく変化すること無く快適に利用できます。装着性や遮音性を向上させたい場合には良い方法かもしれませんよ(^^)。