Smabat AT-20

こんにちは。今回は「Smabat AT-20」の紹介です。中国のイヤホンブランド「Smabat」は特に独自のハウジング構造による高音質を実現したインナーイヤー(イントラコンカ型)イヤホンが印象的なブランドですが、今回はスポーツタイプのワイヤレス製品になります。
「MUSIC」「LIVE」「CINEMA」の3つのサウンドモードを持っており、おそらく真ん中の「LIVE」モードが同価格帯の他メーカーのワイヤレスイヤホンを意識した設定だと思いますが、どのモードも低域を中心に「Smabat」らしい強いこだわりを感じる仕上がりになっています。個人的にはやはり「MUSIC」モードがやはり最も好印象で、最近の邦楽ポップスやアニソンなどではわりと普通ですが、古めのロックやジャズなどでは「驚くほどの本領」を発揮し、(良い意味で)かなりヤバい印象をもったイヤホンでした。
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Smabat AT-20」はスポーツでの利用にも最適なワイヤレスイヤホンで、Bluetooth 5.0に対応、チップセットにはQualcomm製「QCC3003」を搭載します。コーデックには標準のSBC以外にAACにも対応し、iPhoneやAndroid端末で高音質での利用が可能。最長8時間のバッテリ稼働時間とIPX6の防水性能で屋外での利用にも最適です。また音声通話ではQualcommのCVC技術によるクリアな通話が可能になっています。
Smabat AT-20Smabat AT-20
内部的には超軽量アルミニウム合金製のハウジングに、8mmのチタニウム振動板ダイナミックドライバーをシングルで搭載。バランスの取れた低域および高域を実現しているとのことです。「Smabat」というとインナーイヤー型の「ST-10」ではバックロードホーンスピーカーのようなハウジング設計で独特の低域表現を実現しており、同様の技術をよりコンパクトにまとめた「M1 Pro」も非常に印象的でした。今回の「Smabat AT-20」も内部構造は不明なものの、「M1 Pro」を彷彿とさせる独特のハウジング形状と側面のスリット状のベントが気になりますね。おのずと低域の表現力はとても気になります。
→ 過去記事(一覧): Smabatブランドのイヤホン(レビュー) 

Smabat AT-20Smabat AT-20
そして「Smabat AT-20」の最も特徴的な機能が3種類のサウンドモードが選択できる点。
本体背面がタッチセンサーになっており、タップするごとに「MUSIC」、「LIVE」、「CINEMA」 の各モードに切り替わり、それぞれの用途に最適なサウンドを楽しむことができます。またセンサーを長押しすることでSiriなどのボイスアシスタントを起動することもできます。
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Smabat AT-20」の購入はアマゾンの「WTSUN Audio」にて。価格は 3,599円 です。
※現在購入時に 699円 OFFのクーポンを配付中です。そのため実質 2,900円 で購入が可能です。
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): Smabat AT-20


■ 同社のインナーイヤー型製品を彷彿とさせる円形デザイン。イヤーピースは要交換。

Smabat AT-20」のパッケージは同社のインナーイヤー型製品と同様なコンパクトな化粧箱ですが製品画像をプリントし、より一般向けのターゲットを意識したデザインになっています。
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パッケージ内容は、イヤホン本体、充電用USBケーブル、イヤーピース(S/M/Lサイズ)、イヤーフック(3サイズ)、説明書。本体のケーブル部分はシリンダーで調整できるようになっています。
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今回はカナル型ですが、円形のハウジングはインナーイヤー型の「M1 Pro」に比較的近くやや大きめ。そのため耳の小さい方はイヤーピースとイヤーフックを使って最適な位置に固定できるように調整を行う必要があります。
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また、イヤーピースは付属のものはあまりフィット感が高く無いため、市販のものに交換した方が良いでしょう。私は今回、七福神商事の丸七イヤーピースを使用しましたが、他に「RHAイヤーピース」や
Acoustune「AET08」などを組み合わせるのも良いと思います。

初回ペアリングは再生ボタン(電源ボタン)を電源OFF状態から長押しを続けることでペアリングモードに移行して行う方式。Bluetoothデバイスとのペアリングは比較的スムーズで最初からAACコーデックでペアリングされました。またAACコーデックでの遅延などは個人的には全く気にならないレベルですが、ゲームなどでは他の同クラスのワイヤレスイヤホン並と考えた方が良いでしょう。部屋の中での接続性は良好で10mの利用範囲はほぼスペック通りという印象です。またレビュー掲載時の状況的に屋外(特に混雑状況下)での接続テストはできないため、その辺のテストは行っておりません。

■ 3つのモードで大きく印象の異なるサウンド。「MUSIC」モードは個性的な中低域が魅力的

Smabat AT-20」の音質傾向は聴きやすいドンシャリですが、「MUSIC」「LIVE」「CINEMA」の3つのモードでかなり印象が異なります。開封後最初にペアリングして聴いたときは「LIVE」モードでしたが、もしかすると無意識でタッチセンサーを触っていた可能性もあるため初期値は定かではありません。各モードはタッチセンサーを触る順に「MUSIC」→「LIVE」→「CINEMA」と変わり、さらにタッチすると「MUSIC」に戻ります。各モードは

 ・「MUSIC」: 最も中高域が強く、低域が少なめのモード
 ・「LIVE」: 高域はやや控えめ、低音が強い低音ドンシャリのモード
 ・「CINEMA」: 中低域にややエコーのあるような響きがあるモード


と、かなり傾向がハッキリしていますので今聴いているのがどのモードかは分りやすいと思います。

Smabat AT-20Smabat AT-20」の「MUSIC」モードのサウンドは「思いっきりクセがある」ものの、個人的には「結構好み」な鳴り方をします。ロックやポップス(特に80年代以前のちょっと古い洋楽)がとても気持ちよく、思わず「ちょっと走ってこようかな」という気分にさせてくれる高揚感のあるサウンドです。またジャズなどの相性も抜群で、明瞭な中に絶妙な空気感やグルーヴを感じさせます。このような鳴り方をするワイヤレスイヤホンはかなり珍しく、Smabatらしい「こだわり」を強く感じさせます。いっぽう最近のポップスやEDM、アニソンなどは悪くはないものの「価格相応」のわりと普通のドンシャリで「らしさ」という要素は少ないかもしれませんね。

「MUSIC」モードの高域は他のモードと比べてより鮮やかで明瞭感のある音を鳴らします。全体としては非常に自然な定位ですが、電子音などでは他の音域寄りやや後方で鳴るため、もう少しメリハリが欲しいと感じる場合もあります。いっぽうでバンドサウンドではパワフルな中音域に隠れること無くしっかり分離し、非常にハイハットなどのシンバル音も非常に綺麗で余韻も自然に抜けていく印象です。他のモードに比べるとスッキリした主張がありますが刺さり等の刺激は少ないでしょう。ある程度の温かさもあるため電子音よりアコースティックなサウンドのほうが映える印象です。

同じくこのモードの中音域では最も前方で定位し、かなり明瞭で力強いを鳴らします。ボーカル帯域はしっかりとした主張があります。女性ボーカルの高音にもう少し抜けの良さが欲しい場合がありますが、全体的に伸びの良い音です。男性ボーカルの低音は余韻も含め深みが有り心地良く感じます。正直ジャンルは選びますが、古めの音源などでは3千円程度のワイヤレスイヤホンであることを忘れさせるほどの自然な解像感と分離の良さが有り、特にアコースティックな演奏は艶があり余韻もグルーヴを感じさせる聴き応えのある音を鳴らします。

Smabat AT-20低域は、3つのモードのなかでは「MUSIC」モードが量的には最も少ないものの、このクラスのワイヤレスイヤホンとしては驚くほど質の高い低音を鳴らします。中高域としっかり分離しスッキリとした印象のミッドベースに対して重低音は非常に重く深く、キレのあるアタックが印象的です。特に低価格なイヤホンではミッドバスを膨らませたり響きを持たせたりすることで臨場感のある分りやすい低音を感じさせるいっぽうで重低音は結構おざなりにされることが多いのですが、「Smabat AT-20」では、このような臨場感は「LIVE」や「CINEMA」など他のモードで中低域を持ち上げることで対応し、最もピュアな「MUSIC」モードではしっかり低音のキレや解像感にこだわっている点に好感が持てます。
この価格帯のワイヤレスイヤホンを購入する層からするとかなり「異質」なサウンドではありますが、口径の大きいスピーカーで聴いているような「鳴り」の良さで、すこし古めの音源をちょっと音量を上げて聴くのには最適なイヤホンだと思います。

また「LIVE」モードは、高域をやや下げて、ミッドバスをぐっと持ち上げた「低音イヤホン」のドンシャリサウンドです。おそらく多くのワイヤレスイヤホンが採用するバランスに寄せており、「MUSIC」モードがマニア向けだとすると「LIVE」モードは一般受けを考慮した設定だろうと思います。このモードだと「低音がけっこうヤバいワイヤレスイヤホン」という感じになりますね。個人的には「うーん」という感じですが、価格帯を考えるとこういう分りやすい音もセール素性必要なのかな、という印象です(個人的には使わないです)。
そして「CINEMA」モードはラウドネス効果を効かせて小音量でも中低域が聴きやすくしたうえで、わかりやすく中高域の定位を下げ低音を響かせる、いわゆる「SRSサラウンド風」のモードです。アクション映画などで臨場感を確実に得ることができますので、スマートフォンやタブレット等で映画を観ることが多い方にはとても重宝しそうなモードでしょう(個人的にはこういうエフェクトはどうしても「風呂場サウンド」に思えてしまうので結構苦手です)。

Smabat AT-20このようにベースとなる「MUSIC」モードのポテンシャルが非常に高いため、「LIVE」および「CINEMA」の各モードでかなり盛大に傾向を変えてもそれなりに成立したサウンドが楽しめます。しかし、ちょっと残念なのはタッチセンサーの操作性でしょう。まず反応が敏感で位置合わせや一時的に外した場合などに簡単にモードが変わってしまうこと。またモード変更をしようと思ったら長押しと判断させてボイスアシスタントが起動する、という誤操作も時々あります。また現在どのモードなのかが聴いてみないと分らない、というのもやはり使いにくさがあります。せめて電源投入時に現在のモードをアナウンスしてくれると良いのですが。実際は慣れればそれほど気にはならない部分ですけどね。あと、製品のビルドクオリティは「価格なり」に感じる部分も多少有ります。

というわけで、「Smabat AT-20」は3千円程度のスポーツタイプのワイヤレスイヤホン、というわりとポピュラーな価格帯およびターゲットの製品にもかかわらず、かなり個性的な音質傾向をもった製品でした。おそらく「Smabat」らしい音作りに全振りして他の色々な部分は製品価格の枠内でなんとか収めた、という印象も含めてやはりマニアックな製品ですね。万人受けの製品ではありませんが、個人的には結構気に入っており、同様に興味を持たれた方は是非ともチャレンジしてみては、と思いますよ(^^)。