Shure 「SE846/SE535LTD/SE425/SE315/SE215SPE」

こんにちは。今回は書きかけレビュー復活企画「棚からレビュー」の第6弾です。前回の低価格「final E」シリーズ編が思いのほか好評でしたので、それなら以前思いつきで書いてペンディングしていた「Shure SEシリーズまとめ」を復活させるのも、と思っていました。そんななか新モデルの「AONIC」シリーズが一斉に発表となり、あわてて仕上げることにしたわけです(^^;)。
というわけで、文字通り「棚から出した」手持ちの「SE215 SPE」「SE315」「SE425」「SE535 LTD」「SE846」各モデルを紹介しながら、今後順次モデルチェンジされていくだろう「Shure SE」シリーズを振り返りたいと思います。なにしろ「これでイヤホン沼にはまった」方も数多いシリーズですし、10年選手もいるお馴染みの「大ベテラン」の方々ですので細かいことは結構割愛しております。

■  Shureの新シリーズ「AONIC 3」「AONIC 4」「AONIC 5」

2020年4月25日発売(4月の発売は日本と中国のみ)でShureの新しい主力モデルが発表になりました。すでにワイヤレスモデルで販売してる「AONIC」シリーズで3モデルがリリースされ、それぞれ「AONIC 3」(1BA)、「AONIC 4」(1BA+1DD)、「AONIC 5」(3BA)となります。
既に販売終了している「SE315」の後継となるシングルBAタイプの「AONIC 3」はストレートタイプのコンパクトなハウジング形状にデザインを一新。ちょっと昔の「E4c」を思い出すなぁ、と思ったら本当に「E3c」の後継機という意図だったみたいです。ただ付属ケーブルは「Shure掛け」(耳掛け式)を想定したケーブルのようですね。
AONIC 3」の市場価格は21,780円です。 Amazon.co.jp: Shure AONIC 3

Shure AONIC 3Shure AONIC 4

また、ナンバリングや価格的には「SE425」をリプレースすると考えられるのが「AONIC 4」ですが、こちらはShureとしては初めて「1BA+1DD」のハイブリッド構成を採用。「SE425」の2BA構成から一新しました。相当に試行錯誤を重ねて生み出された製品のようですが、2BA仕様の「SE425」はトータルバランスで人気の高かったモデルだけに「AONIC 4」がどのようなサウンドに仕上がっているか、大変興味深いところですね。
AONIC 4」の市場価格は36,080円です。 Amazon.co.jp: Shure AONIC 4

Shure AONIC 5Shure AONIC 5
そして「SE535」をブラッシュアップして生まれた、とされる3BAモデルが「AONIC 5」です。「SE535」は「Shure SEシリーズ」の中でも特に超定番の「主力機種」のですので、「AONIC 5」も今回の3モデルの中でも特に気合いの入ったモデルだろうと予測されます。ただ「SE535」がプロフェッショナルサウンドモニター、つまり業務用途の位置づけだったのに対して、「AONIC 5」のリリースをみるとリスニング面の強化を行っているような印象も受けます。またフラグシップの「SE846」で採用されているノズル内のフィルターを交換できる仕組みを採用しています。標準の「バランス」フィルターでは「SE535」的な位置づけ、「ブライト」フィルターで「SE535LTD」的なチューニングという感じですが、さらに「ウォーム」ではどうでしょう。さらに「SE535」のベースである「E500PTH」(「SE530」)から14年にわたって採用されてきたドライバーまわりのチューニングについても、「AONIC 5」でどのようにブラッシュアップしているのか期待されます。
AONIC 5」の市場価格は60,280円です。 Amazon.co.jp: Shure AONIC 5

Shureとしては新しい「AONIC」シリーズを「リスニング製品ポートフォリオの次世代製品」、つまり現在のリスニング製品である「Shure SEシリーズ」をリプレースする存在と位置づけているようです。
とりあえず「AONIC 3/4/5」は日本と中国市場へ先行して投入されるようですので、今後グローバル展開が完了するくらまいでは従来のSEシリーズも併売されると思いますが(既に廃盤になっている「SE315」を除く)、2010年の発売から10年が経過する「SE425」と「SE535」(および「SE535LTD」)は今後廃盤になる可能性が高いですね。ただし現在の「SEシリーズ」のカタログでも元々の「CL」型番のクリアモデルは「プロフェッショナルライン」(業務用モデル)として別枠になっていますので、こちらの「SE215-CL-A」「SE425-CL-A」「SE535-CL-A」は「SE846」(SE846-CL-A)同様にそのまま残りそうな気もします。
Shure AONIC シリーズまた現時点では完全ワイヤレス(TWS)タイプの製品として販売されている「AONIC215」のベースになっている「SE215」についても「AONIC」系へ名称変更またはマイナーチェンジが行われるかも知れません。
なおフラグシップモデルの「SE846」については特にアナウンスはありませんでしたが、「AONIC 5」が「SE846」の交換式ノズルフィルターを採用したことで、数年以内に「AONIC」シリーズで全く新しい後継モデルが登場する可能性は当然考えられそうです(ちなみに「SE846」は2013年発売)。


■ というわけで「Shure SEシリーズ」を一斉に振り返り。

残念ながら、これらの新モデルの発売日になっても、新型コロナウイルスの関係で店舗が休業しているため早速試聴に、というわけにもいきませんね。新しい製品のサウンドは、購入検討するかどうかも含め、後日の楽しみとしていったん保留し、手持ちの従来モデルを振り返ってみたいと思います。


【 SE215 / SE215SPE(Special Edition) 】 (1DD)  12,980円 (SE215/SE215SPE)

言わずと知れた、オーディオマニアにはあまりにお馴染みすぎるShureのエントリーモデルです。現在のSEシリーズでは唯一、BAではなくシングルのダイナミックドライバーを搭載したモデルとなります。私のブログをご覧になっている中にも「SE215で沼に落ちた」という方は少なくないかもしれません。こちらも発売されてから随分と経つモデルですが、特に当時「ミク色」と言われたクリアブルーの「SE215 Special Edition」(SE215SPE)が発売されてからは、8年以上が経過した現在でも常にトップクラスの人気を保ち続けるイヤホンとなりました。白色も選べるようになった「SE215SPE」は、最近はゲーミング用途での人気もかなり高いようです。
Shure SE215 SPEもともと「Shure SE」シリーズはプロフェッショナル向けブランドのShureらしく、リスニング向けだけでなく実際の「サウンドモニター」用途を強く意識してリリースされた製品で、エントリーモデルの(無印)「SE215」でも傾向としては低域寄りの弱ドンシャリですが、ステージやDTM向け用途でもある程度実用的な性能を持っています。例えば耳コピのような場合でも使いやすい分離性と定位感があり、またSEシリーズ共通の優れた装着性および遮音性も現場では重要な機能でしょう。さらにリスニング向けにドンシャリ感がアップした「SE215SPE」は、ハードなゲーミングの用途でも分離性と定位感により正確な判断をサポートし、高い遮音性による没入感と、臨場感のあるサウンド、そして購入しやすい価格とまさに「うってつけ」だったのだと想像します。中古価格も安定していますし、今後名称変更などのマイナーチェンジはあるかもですが、まだまだ現役で活躍しそうなモデルですね。
Amazon.co.jp: Shure SE215 / SE215SPE (RMCE-UNIケーブル版) 新パッケージ
Amazon.co.jp: Shure SE215-CL-ASE215SPE-A (ストレートケーブル版)


【 SE315 】 (1BA)  25,800円 (SE315-CL-A)

SEシリーズの中で既に販売終了となっているのがシングルBAモデルの「SE315」です。発売時期は2013年で後発のモデルですが、音質傾向よりポジショニング的に不人気だったのかもしれませんね。中古は旧パッケージ版はSE215とさほど変わらない程度になっていますね。
シングルBAは final の「heaven」シリーズをはじめ上位モデルに至るまでのハイグレードなリスニング製品や、Etymotic Research 「ER4SR」などの優れたサウンドモニターなど数多くの「名機」が生まれているいっぽう、「SE315」をはじめとして、マルチBAやハイブリッド製品をフラグシップに持つ主要なブランドでは「エントリー」的な位置づけでリリースしているケースも多く、ちょっと扱いが難しい分野です。実際には前者の個性的な「プレミアム製品」がマニアやプロフェッショナルの間で高く評価されるいっぽうで、「SE315」のような製品はラインナップのなかでのポジショニングが曖昧になったのは仕方ないところでしょう。本来補聴器向けなどで使用されていたバランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーは音声などを非常に高い解像度で明瞭に再生できる反面、構造的にダイナミックドライバーより音域が狭く、1基のBAのみではすべての可聴域をカバーできないとされています。そのためプレミアムモデルでは様々なアプローチによりこの問題に対処しており、それが製品ごとの個性的なサウンドにつながります。いっぽうで「SE315」などの製品では限られた音域を最大限に活用し、ミッドレンジを中心に敢えて聴かせどころにフォーカスする音作りをおこなっています。
Shure SE315SE315」のサウンドは「SE215」よりフラットで、曲によっては中音域寄りのややカマボコな印象になります。いかにもシングルBAらしい音作りともいえますが、全体的にスッキリとしてつながりの良いニュートラルなサウンドはそのメリットも十分に享受できていると感じます。ボーカルやギターなどが聴きやすく、ありのままの音をありのままに楽しめる感じは価格以上といえるでしょう。また、ボーカル帯域を中心としたサウンドバランスは最近のイヤホンの音作りの傾向にも多少似ているため一周回って「イマドキの音」なのかも、という気がします。新製品の「AONIC 3」では往年の「E4c」辺りを思い出すようなコンパクトなハウジングが新たに採用されましたが、「SE315」と比べてどのようにサウンドが変化しているか、または変わっていないのか、興味深いところです。
Amazon.co.jp: Shure SE315 (新パッケージ/旧パッケージ)


【 SE425 】 (2BA)  31,680円 (SE425-CL-A)

「AONIC 4」がハイブリッド化することが発表され、もしかしたら今後貴重になるかもしれない、「2BA」仕様のモデルが「SE425」です。次の「SE535」が人気に比例して(?)好き嫌いが壮絶に分かれる(笑)のに対して、安定して評価が高く、「コレ買っておけば間違いない」といわれる種類のイヤホンだと思います(もちろん「SE846」は別格として)。こちらも中古もそれほど値崩れはしていませんが、旧パッケージの頃のものは比較的手頃な価格で購入できます。
Shure SE425「シングルBAイヤホンには個性的な製品が多い」のに対し、「2BA構成のイヤホンにはハズレが少ない」とう話があります。ツィーターとウーファーの2種類のドライバーで全体をカバーすることでバランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーの音域の制限を解消しつつ、最小のクロスオーバーでチューニングできる2BAイヤホンは、コンパクトなブックシェルフスピーカーのような安定感があります。しかし実際はウーファー部分にダイナミックドライバーを使用する「1BA+1DD構成」のハイブリッドのほうが製品としては作りやすく音作りも柔軟なため、低価格からハイグレードまで多くの製品で採用されていることはご存じ通り。そのため「SE425」のような2BAイヤホンは技術力のある一部のメーカーに限られることも「ハズレが少ない」理由になっているのかも知れません。
SE425」のサウンドはありのままを表現するニュートラルな印象で、非常に使いやすいサウンドモニターだと思います。「SE315」同様に中音域メインの傾向ながらよりフラットで上から下まで綺麗に鳴ります。極端に反応が強すぎることも無いため再生環境も選びやすく、ずば抜けた特徴こそないものの、モニターにもリスニングも使えるレベルの高いオールラウンダーですね。新発売の「AONIC 4」では1BA+1DDのハイブリッド構成になるため、よりリスニング傾向の強い派手めのチューニングの可能性もあります。そうなると、「SE425」の2BAならではのサウンドは貴重な存在となるかもしれませんね。
Amazon.co.jp: Shure SE425 (シルバー/RMCE-UNIケーブル版)※新パッケージ
Amazon.co.jp: Shure SE425-CL-A (クリアー/ストレートケーブル版)


【 SE535 / SE535 LTD(Limited Edition) 】 (3BA)  51,200円 / 59,000円(LTD)

Shure SE535 LTDShure SEシリーズを代表するモデルと言えばやはり3BA仕様の「SE535」および「SE535 LTD」ですね。Shure好きの必携アイテムともいえるイヤホンです。長年業務用で活躍してきたサウンドモニターとしての伝統と実力は現在も顕在で、さすがに「SE846」には及ばないものの優れた解像感と分離感があり、またSEシリーズ共通の低域の描写の質の高さを感じます。中音域が近くで明瞭に鳴ることでボーカル帯域をしっかり楽しめるのも良いところでしょう。全体的にフラットなバランスなものの若干高域が抑え気味の「SE535」に対して、どこまでも伸びる高域がより刺激的に感じる「派手め」サウンドの「SE535 LTD」といった印象ですね。
私の場合、かつて「UE900」で軽く沼に脚をつっこんだ後、この「SE535 LTD」に手を出したおかげでいい感じに深みにはまり、発売すぐのAK300を定価で買ったり、ちょっと派手めの音が好きになったりと、まあロクな目にあってないです(褒め言葉)。

閑話休題、Shueの「5」系統はまさに同社イヤホンの「主力」で、2013年に「SE846」が登場するまでは「SE535」がフラグシップの位置づけでした。その伝統は古く、アメリカのプロミュージシャン向けのスタジオモニターとして作られた2003年リリースの2BAモデル「E5c」から、2006年に3BAモデルとしてグレードアップした「E500PTH」(後に付属品を変更して「SE530」に改名)が登場し、MMCXコネクタによるリケーブルに対応した2010年発売の「SE535」へと続きます。「SE535」と同時発売の「SE425」もそうですが、既に10年選手なんですね(さらにドライバー仕様でいえば14年・・・)。

Shure SE535このように「SE535」は当初から「プロフェッショナルモニター」として位置づられ、業務用の現場で従来モデルと同様の利用を想定したモデルであったため、「SE425」と比べ、かなり反応が敏感なイヤホンになっています。
それもで比較的高額な「SE535」はターゲットが異なるためそれほど問題はなかったのですが、もともと日本限定として2011年に登場したスペシャルエディションの「SE535 LTD」で状況が一変します(「SE535 LTD」は現在もアジア圏限定)。「SE535 LTD」は私自身も実質的に沼に落とされたイヤホンですが(笑)、この価格帯の製品としては驚くほどの大ヒットになりました。
しかし、同時に大量のアンチと、ついでに様々な「パチモノ」まで生まれる、より多くの人にとって「Shureを代表するイヤホン」になってしまいました(ぉぃ)。
最近では低価格DAPでもノイズアイソレーションが高度化し普通に聴くことができますが、かつてのDAPやポータブルアンプの多くでは、「SE425」から「SE535 LTD」と続けて試聴すると、「SE535 LTD」は極端に反応が良すぎるため音量が「爆音」になり、高域が刺さりまくるという「違いの大きさ」に驚くことが多かったようです。また当時の再生環境の多くでは反応の良すぎる「SE535 LTD」では盛大にホワイトノイズが発生したため、それだけで結構萎えてしまったケースもあったかもしれませんね。
ただ、個人的には「SE535 LTD」が「一番ヤバかった」のはやっぱりあの「赤色」だと思います(あ、言っちゃった)。だって仕方ないじゃないですか。「SE535 LTD」のレッドのハウジングは従来のどのShure製イヤホンはもちろん、当時の同クラスの製品と比べても「圧倒的にカッコイイ」のですから。そのくせ中身は業務用の再生環境を選ぶ仕様に加えて、さらにより過激めなチューニングを施されているという。たぶん見た目だけで近寄ると「なんだコレは」となるケースも少なくなかっただろうとは想像できます。
Shure SE535 LTD実際のところ、「SE535 LTD」のほうが僅かにドンシャリ寄りで高域がクリアになっており、「SE535」よりさらに「ピーキーさを増した」チューニングになっています(この辺もバランス重視の「SE535」より批判される理由かもしれません)。ただ、その違いはあくまで好みの範疇かなという印象です。現在では低価格DAPでも「SE535」でホワイトノイズを感じないS/Nの高い製品も非常に多くなっており選択肢も多様化していますので、「SE535 LTD」でもちょっと派手めのフラット寄りのイヤホンという程度の印象になるのではないかと思います。また「SE535」も同様に多少再生環境を選ぶもののバランスの良いモニターとして非常に音が取りやすく使いやすい製品として現在でも十分に評価できると思います。
というわけで、今なら価格がこなれてきている中古を狙うのもアリですね。また販売数に応じて常に在庫が潤沢にある(笑)「SE535 LTD」も、おそらくは「AONIC 5」は全く異なるチューニングになると思いますので安いときに掴んでおくのも良いのではと思いますよ(中古価格は結構変動します)。
Amazon.co.jp: Shure SE535 / SE535 LTD (RMCE-UNIケーブル版)※新パッケージ
Amazon.co.jp: Shure SE535-CL-ASE535LTD-A (ストレートケーブル版)


【 SE846 】 (4BA)  109,780円 (SE846-CL-A)

そして最後は、現在のフラグシップの4BAイヤホン「SE846」です。2013年の発売以降、さまざまな賞を総ナメにして「ハイグレードイヤホンの代名詞」的ポジションを獲得した製品ですが、幾度かのリニューアルを経て現在も値崩れすること無く現役バリバリで活躍しているのは凄いことです。ただかつては「高嶺の花」的な存在だったのですが、気付けば10万円オーバーのイヤホンは各社からゴロゴロ発売され、20万円クラスの人気モデルも複数登場し、さらにそれ以上の価格の・・・と、この世界のインフレーションは凄まじく、相対的に「SE846」は「ちょっと高めの定番モデル」くらいの位置づけになっていますね。私も「SE846」より高価なイヤホンを何種類も買うことになるとは数年前までは全く思っていなかったですね。ほんと、沼って恐ろしい(汗)。ちなみに中古品は状態の良し悪しや付属品(特にノズルフィルターの有無などに注意が必要ですが結構幅広い価格で販売されています。
Shure SE846それはさておき、「SE846」のサウンドはフラットベースでマルチBAながらクロスオーバーに違和感は一切無く、そのサウンドバランスの質の高さは掛け値無しで現在のハイグレード製品と比較しても十分に上位にくるものです。まあ以降の製品が比較の基準とするような「リファレンス」的なポジションに早い段階からなっている、という理由もありそうですが、「SE846」のサウンドはあらゆるニーズに正面から挑むような「王道」的な印象で、多くのハイグレード製品がそれぞれのキャラクターを出しつつ高音質化しているのとは対照的です。そしてShureのイヤホン全般に言えますが、特に「SE846」は多くのハイグレード製品が登場している現在でも様々なジャンルの曲で全く古さを感じないところは素晴らしいですね。
SE846」の最大の特徴は2基のウーファーユニットの出力を制御する金属製のローパスフィルター。ツィーターとミッドレンジのBAユニットが電気的に制御されているのに対し、ウーファーの出力のみ複数の金属プレートで作られたローパスフィルターを音が経由することで制御され、「SE846」の特徴的な低域を生み出しています。さらにステンレス製のノズル部分には交換可能なフィルターが内蔵されており、「バランス」(青色)、「ブライト」(白色、+2.5dB/1kHz~8kHz)、「ウォーム」(黒色、-2.5dB/1kHz~8kHz)の3種類のノズルフィルターを選択できる仕様となっています。金属製ノズルを取り外し工具をクリクリと回して取り外す仕組みは今見ても結構斬新ではあります。この2種類の特徴的な仕組みを持った「SE846」のサウンドは、他のSEシリーズのモニターサウンドとは異なるリスニング的なエッセンスが十二分に詰め込まれています。
Shure SE846Shure SE846

まずローパスフィルターが生み出す厚みと深さのある低域は、全体のバランスと重なり、広く開放的な音場感を作り出します。そのため自然な距離感で定位し、中高域もしっかりとした輪郭と粒立ちの良さを感じさせつつ、生音に近い非常に自然な鳴り方をします。ボーカル帯域は「SE535」より少し下がりますが、ありのままの音を忠実に再現しており、同時に生々しくリアリティを感じます。私は普段「バランス」(青色)のフィルターを使い、純銀線ケーブルの「丸七銀龍」を組み合わせていますが、付属ケーブルだと「ブライト」の高域のほうが良く感じるかもしれませんね。それぞれの特徴を挙げるとより優れたハイグレード製品も現在は多くなっていますが、全体のバランスと完成度の高さではやはり一級品のイヤホンだと思いますよ。
Amazon.co.jp: SE846 (ストレートケーブル+RMCE-UNIケーブル+RMCE-BT2ケーブル版)
Amazon.co.jp: SE846-CL-A (ストレートケーブル版)


Shure 「SE846/SE535LTD/SE425/SE315/SE215SPE」といわけで、書きかけのまま放置していた過去記事もかき集めつつ、改めてShure SEシリーズの「振り返り」をやってみました(イヤホンごとに書き方や視点が微妙に異なるのはそのためです。ご了承くださいませ)。こうやって通して見てみると私自身が「相当にShureのイヤホン好きだよなぁ」と再認識しました(笑)。こうなると新しい「AONIC」シリーズも集め出すのは時間の問題のような・・・おっと。余計なことを考えるのはよしましょう。とりあえずは新モデルを試聴できたら現時点で推測で書いている部分を確認したいところです。本記事も必要に応じて修正なども加えるかも知れませんね。まずは、「AONIC」シリーズとの比較やお手頃価格になりそうな中古狙いの参考にでもなれば幸いでございます(^^;)。