Smabat ST-10s

こんにちは。今回は「Smabat ST10s」(または「ST-10s」)の紹介です。中国のイヤホンブランド「Smabat」(「スメイバ」と発音するらしいです)は特に独自のハウジング構造による高音質を実現したインナーイヤー(イントラコンカ型)イヤホンが印象的なメーカーで、同社の代表的モデル「ST10」(ST-10)は独自の音響トンネルをハウジング内に設けることで非常に質の高い低域を実現し、全体としても解像度の高いフラット寄りのサウンドバランスで好評を博した製品でした。
→ 「smabat ST-10」(ST10) 抜けの良いフラット感と低域の量感に癒やされる、クラストップレベルの高音質イントラコンカ(インナーイヤー)イヤホン【レビュー】
今回の「Smabat ST10s」(ST-10s)はこの「ST10」のアップグレードバージョンで、様々な改良が加えられた第2世代モデルに位置づけられています。また今回は仕様の異なる「ブラック&ゴールド」と「ブラック&シルバー」の2モデルが同時にリリースされている点も特徴ですね。

Smabat ST10sSmabat ST10s

Smabat ST10s」(ST-10s)が「ST10」から継承されている最大の特徴はハウジングの背面部分に実装された特許技術の「迷路型の音響トンネル(Maze-shaped acoustic cavity)」で、コンパクトなインナーイヤー型イヤホンでバックロードホーン型スピーカーと同様の音響効果を実現しています。「Smabat ST10s」(ST-10s)では既存の「ST10」より軌道が延長され、よりパワフルな低域とクリアな高域を実現しているそうです。

Smabat ST10sSmabat ST10s

ハウジングの基本構造は定評のある「ST10」のデザインを継承しつつ、軽量なアルミ合金製のハウジングはより一体感のあるデザインになりました。ドライバー部分も「ST10」と同様に三層構造のPEEK/PUチタニウム振動板を採用した15.4mmの大口径ダイナミックドライバーを搭載しています。
Smabat ST10sSmabat ST10s

しかし、「Smabat ST10s」(ST-10s)では「ブラック&シルバー」(インピーダンス 40Ω、感度115dB/mW、再生周波数 10~20,000Hz)、「ブラック&ゴールド」(インピーダンス 150Ω、感度 115dB/mW、再生周波数 10~25,000Hz)と2種類のグレードが設定されました。なお、既存の「ST10」はインピーダンス 45Ωと「ブラック&シルバー」に近い仕様ですが再生周波数 10~22,000Hzとなっており、仕様からも多少チューニングが異なっていることが伺えますね。
Smabat ST10s (Black & Gold)Smabat ST10s (Silver)
Smabat ST10s」(ST-10s)の購入はAliExpressの「Easy Earphones」またはアマゾンの「WTSUN Audio」にて。
AliExpress(Easy Earphones): Smabat ST10s

インナーイヤー型イヤホンとしては異例の人気商品と言うこともあって、ブログ掲載時点では最初に入荷したアマゾン在庫分は早々に完売し、現在は中国からの発送となっているようです。現在日本へは中国からの物流が大幅に遅れているため、到着までに以前より多少日数がかかると思われますが、万が一の時にアマゾン経由でのサポートが受けられる点はメリットでしょう。アマゾンでの価格は「ブラック&シルバー」(40Ω)が 10,550円、「ブラック&ゴールド」(150Ω)が 17,500円 となっています。
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): Smabat ST10s(ブラック&シルバー)
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): Smabat ST10s(ブラック&ゴールド)

また、WTSUN Audioより 5% OFFのプロモーションコード「 YBOAD94X 」(2020年9月30日まで有効)の提供をいただきました。現在アマゾンの商品ページに掲載されている5% OFF クーポンとの併用も可能ですので、「実質10% OFF」での購入が可能になります。よろしければご活用ください。


■ 全体的にグレードアップしたデザイン。モデルによってケーブルも異なるタイプが付属。

Smabat ST10s」(ST-10s)のパッケージは「ブラック&ゴールド」および「ブラック&シルバー」とも同じサイズのボックスで、パッケージからは裏面の記載でのみ違いを確認できる程度です。
Smabat ST-10sSmabat ST-10s

パッケージ内容は本体、ケーブル(モデルによって異なる)、イヤーパッド(シリコンタイプ、ドーナツ型とパッド型のスポンジタイプ)、レザーポーチ、説明書です。
Smabat ST-10sSmabat ST-10s
本体形状はどちらのモデルも同じですが、カラーリングだけで無く表明仕上げも多少異なっており、またそれぞれタイプの異なるケーブルが付属します。

まず「Smabat ST10s」(ブラック&ゴールド)は光沢のある淡いゴールドの表面仕上げでとても落ち着いた高級感を感じる仕上がりになっています。付属ケーブルはゴールドカラーとシルバーカラーの撚り線タイプで線材はミックス。コネクタもL字タイプになっています。また最初から耳掛け加工が施されています。
Smabat ST-10sSmabat ST-10s

これに対し「Smabat ST10s」(ブラック&シルバー)のほうはつや消しのシルバーカラーの仕上がりで渋めの印象。付属ケーブルは透明な樹脂被膜の銀メッキ線ケーブルで「Smabat M1 Pro」に付属のケーブルと同様のタイプです。こちらは耳掛け加工されてないため垂らす方式での装着も出来ますがタッチノイズが出やすいため耳掛け式での装着のほうが良さそうです。
Smabat ST-10sSmabat ST-10s

ゴールドおよびシルバーの「Smabat ST10s」と既存の「ST10」を比較すると、より一体化させたハウジング形状となっていて、シーリング材と樹脂パネルが上から貼られているのがわかります。全体的によりコストをかけた仕上がりですね。
Smabat ST-10sSmabat ST-10s
アルミ合金製のハウジング形状だけでなく、MMCXコネクタなど個々の部品についてもグレードアップが行われており、より高級感を増した印象になっていますね。ハウジングの音響トンネルから音が抜けるベント(空気孔)についても同じ位置、サイズで、音漏れなども従来の「ST10」同様、それなりにあります。また遮音性についてはイヤーパッドの有無で多少変化するものの、カナル型イヤホンよりは良くないと思っておいた方がよいですね。つまり音漏れが気になる場所や、逆に環境ノイズが多い街中などでの利用はあまり得意ではないと思われます。
Smabat ST-10sSmabat ST10s
どちらのモデルも「ST10」同様イヤーパッドの有無および種類により低域の量感は大幅に変化します。イヤーパッド無しがもっともスッキリした印象で、量的には最も少なくなりますが普段カナル型のイヤホンしか使わない方でも違和感なく利用できそうです。またシリコンタイプは中高域の印象を維持したまま低域が増加します。ハウジングが分厚くなるため耳の小さな方は装着できないかもしれませんが低域の量感を増やしたい時には良いでしょう。さらにスポンジタイプはドーナツ型、パッド型の純でさらに低域の量感が増し、インナーイヤーらしい分厚い響きを感じるようになります。
 

■ 「ST10」の特徴を活かしつつ、「より深く」または「より使いやすく」アップグレード

「ブラック&シルバー」および「ブラック&ゴールド」の2種類の「Smabat ST10s」(ST-10s)は既存の「ST10」のサウンドを踏襲しつつ、それぞれ異なったサウンドデザインが行われています。
Smabat ST-10sハイグレード設定の「ブラック&ゴールド」は「インピーダンス 150Ω」という仕様もあって「本気を出す」にはある程度の再生環境を必要とするものの、あらゆる点で「ST10」より「質の向上」を実現しています。
いっぽう40Ωの「ブラック&シルバー」はよりタイトさを増しており、ロックやポップスなどのボーカル曲向けのチューニング。「ST10」に「Smabat M1 Pro」のエッセンスを加えていいとこ取りをしたような印象のチューニングです。どちらのサウンドも完成度は非常に高く、インナーイヤー型のマニアはもちろん、普段はカナル型のイヤホンを利用している方も違和感なく利用できる製品だと思います。


【 Smabat ST10s (ブラック&ゴールド) 】

ゴールドの「Smabat ST10s」は、まさに「ST10」を徹底的に「深化」させたイヤホンですね。155ドル、1万7千円台と、インナーイヤー型イヤホンとしては高価な製品になりましたが、特にマニア向けに、「ST10」で感じられたいくつかのウィークポイントを改善し、さらに全体的に質を向上させているのがポイントでしょう。
Smabat ST10s」(ブラック&ゴールド)では、耳掛け加工されたミックス線仕様のケーブルが付属し、柔らかく取り回しの良さから装着性も向上しました。とはいえ、装着位置で印象はかなり変化するため、イヤーパッドの有無にかかわらず、しっかり耳にフィットする最適な位置を確認した方がよいでしょう。イヤーパッドは無しでも十分に低域の量感を感じることができますが、より低域に厚みが欲しい場合はシリコンタイプなどを組み合わせるのが良さそうです。いっぽうスポンジタイプは中高域が多少曇る印象もあるようです。
Smabat ST10s (Black & Gold)またインピーダンス 150Ωと駆動力を必要とする仕様になっていますが、リケーブルなしでも十分な情報量が得られます。インピーダンスは大幅に大きくなっているものの音量の取りやすさ自体は「ST10」とさほど変わりません。しかし、DAPやポータブルアンプなどで駆動力に余裕のある再生環境ではより違いを実感できると思います。
Smabat ST10s」(ブラック&ゴールド)は全体的により「音が濃くなった」印象で、「ST10」のモニター的なフラットさを持ちながらも、上質なモニターヘッドフォンのようなサウンドに感じられます。特に「ST10」でも最も特徴的だった低域についてはより深く厚みのあるサウンドを楽しめるようになりました。低域の量感は増していますがメリハリが強くなることはなく、あくまで自然な印象を保っている点も好感できます。

Smabat ST10s」(ブラック&ゴールド)の高域は、明瞭で抜けの良さを感じる音。「ST10」と比べてより分離感が向上し、見通しの良さが向上した印象です。自然な主張でひとつひとつの音の質の良さを感じるバランスはしっかり維持されています。イヤーパッド無しおよびシリコンタイプでは比較的スッキリしていますが、ドーナツ型およびパッド型のスポンジタイプでは多少高域が減衰するのがわかります。スポンジタイプは使わず、パッド無しか、付属または社外品のシリコンタイプのパッドを使用した方が良いと思います。
中音域は一聴するともともと質の高い「ST10」とさほど違いを感じない部分ですが、音抜けがさらに良くなり、一音一音の解像感が向上した印象です。余裕を持った再生環境で鳴らすことで全体的に密度が増した「濃い音」を楽しむことができます。女性ボーカルも綺麗に鳴り、ハイトーンの伸びは「ST10」より少し良くなったように感じます。また低域とのつながりも向上しており、男性ボーカルもよりしっかり楽しめる印象です。
Smabat ST10s (Black & Gold)低域は自然で耳当たりの良い自然な主張ながら非常にタイトでレスポンスの良かった「ST10」の印象をしっかり継承し、より量感と深みのあるサウンドになりました。あくまで自然な印象の範囲内でミッドバスが強化され、さらに深く重くなった重低音によりイヤホンとは思えないような低域を実現しています。「ST10」でも非常に質の高い低域だったものの「Smabat ST10s」(ブラック&ゴールド)ではさらに良くなった印象です。また「ST10」ではパッド無しではインナーイヤー型としてはもう少し量感が欲しいと感じていた方でも、より満足度が向上するのでは、と思います。

基本的に同じ傾向を維持しながら質を向上させたサウンドですので、軽く聴いた印象では「Smabat ST10s」(ブラック&ゴールド)と従来の「ST10」の違いはそれほど多くは無いかも知れませんし、再生環境にも多少依存するためユーザーは選ぶかもしれません。しかしマニア向けという点ではしっかりとしたグレードアップが行われており、十分に価格差に見合う製品に仕上がっていると思います。


【 Smabat ST10s (ブラック&シルバー) 】

Smabat ST10s (Silver)いっぽう、「Smabat ST10s」(ブラック&シルバー)は、より使いやすく(鳴らしやすく)、ロックやポップス、アニソンなどのボーカル曲を楽しめるチューニングとなっています。全体的に硬質かつタイトな印象ですが、「ST10」より中音域へのフォーカスが強く、高域の伸びは僅かに控えめになっています。また相対的に低域もイヤーパッド無しではさらに少なめに感じるかもしれません。いっぽうでボーカル帯域の解像感は高く、より「カナル型っぽく」感じるチューニングなっています。方向性としては多少「Smabat M1 Pro」に寄せたサウンドで、さらに「ST10」の「まろやかさ」がプラスされ質感が向上した印象です。価格設定的にも「Smabat ST10s」(ブラック&シルバー)は「M1 Pro」からのアップグレードを想定した位置づけなのかもしれませんね。
そういった意味で既存の「ST10」より分りやすく、気軽に使えるサウンドに仕上がっていると思います。

Smabat ST10s」(ブラック&シルバー)の高域は「ST10」同様に明瞭でスッキリした印象ですが、僅かに減衰は早く、刺激を抑えたチューニングになっています。解像感の良さを感じますが、「ST10」およびゴールドの「ST10s」と比べるとすこしウォームさがあります。ボーカル帯域を中心に考えるとよりニュートラルなバランスで聴きやすいと思いますので、この点は良し悪しというよりアプローチの違いと考えた方が良いでしょう。
中音域は相対的に主張が増しボーカル帯域を中心に聴きやすいバランスになりました。より近くで定位し、しっかり前に出て鳴っている印象で、普段からカナル型のイヤホンのみを使っている方でも全く違和感のないサウンドだと思います。スッキリハッキリしたサウンドですのでスピード感のある曲と相性の良さを感じるいっぽうで、バラード曲などではもう少し余韻が欲しいと感じる場合があります。
Smabat ST10s (Silver)低域はイヤーパッドの有無でさらに印象が全く異なります。イヤーパッド無しでは聴きやすいものの軽く控えめな印象になります。「Smabat ST10s」(ブラック&シルバー)ではドーナツ型のイヤーパッドや、社外品のシリコン製などを組み合わせるのが良いと思います。パッドなどを工夫してフィット感を向上させることで多少タイトさは無くなりますが量感とともにまろやかな印象になり、同時にしっかりと沈む重低音とスピード感のあるミッドバスを実感できます。
ちなみに、「Smabat ST10s」(ブラック&シルバー)には「M1 Pro」と同様の銀メッキ線ケーブルが付属しますが、やや被膜が硬く耳掛け式の装着には今ひとつ向かないことに加え、情報量にも差があるため、「リケーブルは前提」とあらかじめ考えておいた方がよさそうです。全体的に明瞭感が向上しよりスッキリした印象になる16芯銀メッキ線ケーブルや、傾向を維持したまま厚みを増す8芯ケーブルなど、ケーブルによる変化で自分好みのアレンジする上では「Smabat ST10s」(ブラック&シルバー)のほうがチューニングしやすいイヤホンかもしれませんね。


というわけで、「Smabat ST10s」は同じモデルながら2種類のグレードの違いにより方向性の違いが想像以上にハッキリとしたイヤホンでした。やはりマニア人気はゴールドのモデルに集中しているようですが、シルバーも手頃な価格で実際には使いやすく非常に良い製品だと思います。100ドルクラスのインナーイヤー型ではほぼ定番化しているようにも感じる「ST10」ですが、アップグレードした「Smabat ST10s」により、さらにその印象は強くなった気がしますね(^^)。