こんにちは。今回は「AK4499EQ」搭載のハイグレードUSB-DAC「SMSL M400」(または「S.M.S.L M400」)の紹介です。久しぶりの据え置き機器ですね。中国のオーディオメーカー「S.M.S.L(SMSL Audio)」のDAC製品の最新モデルとなります。個人的には同時期に発売されていた「SMSL M200」(AK4497搭載、約280ドル)を購入するつもりだったのですが、最近東京の部屋を引っ越した際に「せっかくなら」ということで「つい」衝動買いをしてしまいました(^^;)。
「SMSL M400」の最大の特徴は前述の通りAKMのハイグレードDACチップ「AK4499」を搭載している、という点でしょう。SMSLではESSの「ES3098PRO」を搭載したフラグシップモデルの「D1」(約1300ドル)を筆頭に、同じく「ES3098PRO」を搭載しヘッドフォンアンプを加えたコンパクトモデル「M500」(約400ドル)がありますが、「SMSL M400」は800ドルを超える価格設定と、実質的に「D1」に次ぐグレードの製品となっています。
そのため、MQAの完全デコード対応をはじめ、「XMOS XU216」USBインターフェースチップによる32bit/768kHz、DSD512対応といった高いDAC性能を持っており、さらに随所に高性能・高品質な部品を採用。「THD+N 0.000058%(-124dB)」という超低歪みと高ダイナミックレンジと、131dBの非常に高いS/N比を実現したハイスペック仕様になっています。
またインターフェースもRCA出力のほかXLRバランス出力にも当然対応し、入力側ではUSB、SPDIF(OPT、COAX)のほか、HDMI形式のコネクタを使用するLVDSレベルのIIS接続をサポートしています。他にもBluetooth 5.0レシーバー機能も搭載しており、UAT、LDAC、aptX HDといったハイレゾコーデックにも対応しています。
「SMSL M400」の購入はアマゾンまたはAliExpressのオフィシャルストアにて。
価格はアマゾンが 86,900円、AliExpressが 809.99ドル です。アマゾンは国内在庫があればプライム扱いですぐに届きますね。
AliExpress(SMSL Offical Store): SMSL M400
Amazon.co.jp(S.M.S.L-Audio): S.M.S.L M400
■ シンプルながら高級感のあるデザインと分りやすい操作性
「SMSL M400」のパッケージは少し大きめで白い化粧箱にはいったシンプルなデザイン。本体もM200などよりひとまわり大きいこともありなかなかの存在感があります。
パッケージ内容は本体、Bluetooth用アンテナ、リモコン、USBケーブル、電源ケーブル、説明書、保証書。電源内蔵型ですのでACアダプタは無く、電源ケーブルはアース付きの3極タイプです。リモコンはSMSL製品に付属するものと同じですが「SMSL M400」用のアサインとなっており、他のSMSL製品を使用していても誤動作することはありません。ボタンの割当ては「FN」がBluetoothで、「A」「B」「C」ボタンは「C」のみ割当てがあります。
本体は金属製で天板部分のみ樹脂製。重量感のある作りとなっていて、天板はピアノブラックの光沢仕上げとなっています。サイズは同社の既存モデル「SU-8」と同じく少し大きめです。
前面は中央にコントロールボタンを配置したダイヤルと液晶パネルのみ。コントロールボタンを押すとパワーが入り、ダイヤルはボリュームコントロールとなります。この状態でボタンの長押しで電源OFFとなります。また電源ONの状態でボタンを押すとメニュー画面になり、ダイヤルでメニュー移動、ボタンで確定、ボタン長押しで戻る(またはキャンセル)となります。非常にシンプルな操作ですのでリモコンを使わなくてもそれほど操作に迷うことはないでしょう。
背面には入力としてUSB、OPT、COAX、IIS(HDMI形式)、出力にRCAとXLRバランスが配置されています。BluetoothはBluetooth 5.0対応で、コーデックはSBCやAACはもちろん、ハイレゾ対応としてLDAC(24bit/96kHz)、aptX HD(24bit/48kHz)に加えてUAT(24bit/192kHz)に対応しています。ただし現時点ではUAT対応デバイスはまだ非常に少ないですし、日本では技適の適用状況が不明のため、とりあえずは参考程度に留めておきます。
また私の手元に届いた「SMSL M400」は掲載時点で最新の「2.06」より以前のファームウェアでしたのでバージョンアップが必要でした。これ以前のファームウェアでは24bitでの再生しかできず、ほかにもいくつかの修正が行われています。とりあえず公式サイトで最新のファームウェアを入手し、アップデートは必ず行った方が良いでしょう。
→ S.M.S.L公式サイト:最新ファームウェア
ファームウェアのアップデートにはWindows環境が必要です。ダウンロードしたZIPファイルを解凍すると、最新のWindows用ドライバーとファームウェア、アップデートツールが入っています。ファームウェアの更新のためにはあらかじめ最新のWindows用ドライバーをインストール(またはアップデート)し、一度「SMSL M400」の電源を入れ直してから「DFU Tool」を起動します。あとは最新ファームウェアを読み込み、「Start」を実行するだけです。
バージョン2.06以降のファームウェア、バージョン4.67.0以降のドライバーをインストールすることで、32bitでの再生が可能になります。
■ ノイズが少なく素直で高解像度なサウンド。ファームウェア&ドライバは発展途上かも。
私は「SMSL M400」を同社の「SMSL SP200」ヘッドフォンアンプにXLRで接続しヘッドフォンやイヤホンを中心に利用しています。そのためスピーカー出力は非常にお手軽でRCA出力から「TOPPING TP60」デジタルアンプに接続し、ECLIPSEの「TD307MK2A」でのデスクトップ利用としています。しかし、今回レビューにあたって、リビングに設置してある「B&W 685」と「DALI ZENSOR1」でも聴いてみました(アンプはマランツ「M-CR610」を使用)。
「SMSL SP200」はS.M.S.Lの新しいバランス入出力に対応したヘッドフォンアンプで「M200」と組み合わせるつもりであらかじめ購入していたものです。しかし、XLRバランス接続で「SMSL M400」との組み合わせでも結構満足のいくものでした。再生にはMac/Windows用の「Audirvana 3.5」、またWindows用の「foobar2000」を使用しています。
ファームウェアを2.06にアップデートすることで「Audirvana 3.5」でのアップサンプリングを最大限に設定した場合32bit/768kHzでの再生が可能になります。Audirbanaではアップサンプリングを有効にした方が確実に音が良くなるのですが、384kHzと768kHzでどの程度差があるかはちょっと微妙です。そのため個人的にはアップサンプリングは2倍/4倍といった等倍に設定し、最大値も192kHzまたは384kHzにしてMac/PC側の負荷をかけない利用方法をしています。それよりファームウェアのアップデートによる24bitから32bitのアップサンプリングのほうが効果は実感できました。
「SMSL M400」の特徴はやはりノイズの少なさによる見通しの良さで、音質的には全く癖のない非常に素直な鳴り方をします。XLRコネクタからバランス接続した「SMSL SP200」との組み合わせでは非常に解像度が高く歪みのないサウンドを実感できます。味付けの無いかなりあっさりした音なので、多少淡泊に感じる場合もありますが、アンプやスピーカー、ヘッドフォンなどの出力環境をより活かす音だとも言えます。個人的には様々なヘッドフォンやイヤホンを聴き分ける使い方が多いため、「SMSL M400」と「SMSL SP200」の組み合わせによるサウンドはとても好都合です。あと液晶パネルの表示はとても高精細で、上位モデルを使用してるという実感がわきますね。
またMQAについては手持ちのMQA音源で試した限りではAudirvanaのソフトウェアデコードとの大きな違いは感じませんでした。ただTIDALなどMQAベースのサービスを利用されている方はより効果を実感しやすいかもしれませんね。
いっぽうRCAコネクタを経由したスピーカー出力はコンパクトなECLIPSE「TD307MK2A」をデスクトップで聴く上ではそれほど感じませんでしたが、「B&W 685」および「DALI ZENSOR1」ではちょっと物足りなさを感じました。こちらも非常に繊細さを感じる音で、解像度の高さやノイズの少なさはRCA出力においても非常に優れています。しかしもともとあっさりとしたサウンドがより淡泊な印象となり、また音源によっては中高域の抜けが今ひとつでちょっと籠もりのようにも感じました。この辺は使用するアンプによっても変わりそうですし、XLR経由の出力でも変わる可能性もあります。
そこで、XLRからRCAに変換するケーブルで改めてつなぎ直してみました。XLRのバランス接続より確実に音質が低下するため普段はあまり使わない方法ですが、「SMSL M400」の場合、RCAコネクタから接続する場合と比べて、より解像感が向上し中高域の表現も含め音質面の向上を確認できました。よりハイグレードな環境だとさらに明確に実感できるかもしれませんね。今後のファームウェアのバージョンアップでも音質が変わる可能性もありますし、今後も色々試してみようと思います。
というわけで、「SMSL M400」は新しい製品と言うこともあり、ファームウェアなどにはまだまだ改良および発展の余地がありそう、という気はしますが、癖のないとても素直なサウンドは好感しました。しかし、このグレードの製品ともなると単純にスペックだけでは語れない部分も多く、用途によっては合う/合わないがあるのも事実ですね。幸いヘッドフォンアンプを組み合わせる私自身の利用方法では購入して良かったと思えるものでした。ただ、いちどこの価格帯に手を出すと、「TOPPING D90」など、同様な他の機種も気になってしまうのは悪い癖ですね(^^;)。