TINHIFI T2 PLUS

こんにちは。今回は「TINHIFI T2 PLUS」 です。中国のイヤホンブランド「TINHIFI」の最新モデルで、ポジショニング的には同社がマニアの間で幅広く認知されるようになった「TIN Audo T2」および「T2 Pro」をリプレースするモデルとなります。名称こそ「PLUS」ですが、旧モデルに対しての付加的要素は無く、シェルデザインから全く新しくデザインされた新モデルですね。またドライバー構成も「T2」「T2 Pro」が2DDだったのに対し、「TINHIFI T2 PLUS」 では10mmサイズのシングルダイナミックドライバー構成となっています。音質的にも従来の「T2」「T2 Pro」がかなりマニアックだったのに対し、「TINHIFI T2 PLUS」 は非常にニュートラルで聴きやすく見通しの良いサウンドに仕上がっています。マニア向けではなくなりましたが、多くの人が好感しやすいイヤホンになっていると思います。

TINHIFI T2 PLUSTINHIFI T2 PLUS

なお、「TINHIFI」および前身の「TIN Audio」も個人的には好きなブランドですので、「T2」以降の各モデルについて私のブログでも全てのモデルで紹介しています。
過去記事(一覧): 「TINHIFI」(「TIN Audio」)のイヤホンレビュー

もともとOEM/ODMを中心としたファクトリーだった同社が2017年に自社ブランドで本格的に中華イヤホン市場に参入してリリースした「TIN Audio T2」は、発売当初はびっくりするほどの不人気で、たぶん日本で最初に購入した私がテキトーに撮ってツイートした写真が当時同社サイトでいつのまにか使われてたりしました(笑)。その後アマゾンでの取扱いなどを経てマニア層を中心に人気が広がり、高域強化モデルの「TIN Audio T2 Pro」で個性的な中華イヤホンブランドとしての認知を確立します。
ただこの当時の「T2」「T2 Pro」は個性的に振ったサウンドで結構「好き嫌い」が分かれる製品でした(私は「変態イヤホン」と紹介しています)。その後1BA+1DDハイブリッド構成の「TINHIFI T3」、カーボンナノチューブ(CNT)ドライバーの「TINHIFI T4」と順調にグレードアップするなかで特徴的な中高域の表現力を残しつつ、よりニュートラルなサウンドに進化し、面白みには欠けるものの非常に質の高い、同価格帯ではトップレベルに完成されたイヤホンを作る人気ブランドのひとつに成長しました。
TINHIFI (TIN Audio)

そして今回登場した「TINHIFI T2 PLUS」は、より幅広いターゲット向けに「普及モデル」として新しく作られたイヤホンと考えられます。かつてマニアを引きつけた個性的な「T2」「T2 Pro」とは真逆の、すでに「TINHIFI T4」などのモデル確立された「TINHIFI」ブランドの元で「より購入しやすいT2ポジションの製品」というわけです。そのため全く新しいシェルデザインなど同社の並々ならぬ意気込みを感じますし、実際マーケティング的にも初期のTIN Audioからは想像もつかないような気合いの入り方ですね(今回はHCKからのサンプル提供ですが、それ以外にも時間差で複数のセラーから依頼をいただきました。私の場合、従来のTシリーズについてはほとんどのモデルが依頼ではなく購入レビューでした)。

TINHIFI T2 PLUSTINHIFI T2 PLUS
TINHIFI T2 PLUS」は新しく開発された10mmサイズのダイナミックドライバーをシングルで搭載。振動版には高純度のニッケル亜鉛合金をナノレベルで定着させており、自然かつ明瞭な中音域と解像度の高い低域を実現しているとのこと。また全く新しくデザインされたハウジングにはCNC加工されたアルミニウム合金を使用しています。

TINHIFI T2 PLUS」の購入はAliExpressまたはアマゾンにて。価格はAliExpressが59ドル、アマゾンが 6,380円 です。AliExpress(HCK Earphones)での購入方法はこちらを参照ください。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): TINHIFI T2 PLUS  ※現在HCKでは47.20ドルで購入可能。


■ 美しくミニマルなデザインで新しく生まれ変わったハウジング。装着性も大きく向上。

TINHIFI T2 PLUS」のパッケージは「T2」「T2 Pro」同様の白い外箱に納めされたダークブルーの化粧箱にコンパクトにまとまっています。パッケージ内容はイヤホン本体、MMCX仕様の銀メッキ線ケーブル、シリコンイヤーピース(装着済みMサイズを含め、S/M/Lが各2セット)、ウレタンイヤーピース(1ペア)、説明書、保証書。.
TINHIFI T2 PLUSTINHIFI T2 PLUS
TINHIFI T2 PLUSTINHIFI T2 PLUS

CNC加工されたアルミニウム合金製のハウジングは従来の円筒型からより耳にフィットする形状に一新。とはいえ模様などのない、極めてシンプルなデザインは健在で、側面にプリントされた「TINHIFI」のロゴが唯一、同社の製品であることをアピールしています。「T2」時代からそうですがビルドクオリティは相変わらず非常に高く、美しくミニマルなスタイルはむしろ個性的ですらあります。
TINHIFI T2 PLUSTINHIFI T2 PLUS
シングルダイナミック構成となったことでハウジングのサイズはコンパクトになっており、装着性も大きく向上しています。特に「T2」「T2 Pro」はコネクタ位置がちょっと変で、むしろ左右を交換して装着した方が良いのでは、と思わせるものでした。「T3」「T4」では左右反対の形状になったことからも同じ感想を持った方は多かったのかもしれませんね(^^;)。
TINHIFI T2 PLUSTINHIFI T2 PLUS
ケーブルは銀メッキ銅線の4芯ケーブルを採用。太さ、柔らかさともに他のモデルより使いやすく、取り回しの良いものが付属しています。イヤーピースはシリコンタイプが各サイズ2セットずつ付属しますが、例のよって定番のJVCの「スパイラルドット」やAcoustuneの「AET07」、AZLA「SednaEarfit Light」など開口部の大きいイヤーピースを合せてより装着感を向上させるのも良いと思います。


■ ボーカル曲に大きく寄せた、「TINHIFI T4の下位モデル」としての聴きやすいサウンド。

TINHIFI T2 PLUSTINHIFI T2 PLUS」の音質傾向は、TINHIFIのイヤホンにはちょっと珍しく緩やかな弱ドンシャリといった感じです。シェルデザインの変更により、中高域寄りだった「T2」「T2 Pro」より低域が強化されているため、このようなバランスになった、という感じですね。最近は3種類のDAPと場合によっては据置きヘッドフォンアンプを使って駆動力の違いによる鳴り方を比べていますが、「TINHIFI T2 PLUS」は従来の機種より特に中音域の感じ方にかなり差があります。例えば「Shanling M6 Pro」くらい駆動力があるとフラットとまではいかないもののかなりニュートラルな印象になります。そのためリケーブルの効果も特に情報量の多いケーブルとの組み合わせで実感しやすくなりますね。できるだけ駆動力のある再生環境を使うか、リケーブルによるバランス接続などがお勧めです。

全体としての印象はTINHIFIのイヤホンらしく明瞭で見通しの良いサウンドが特徴的です。従来モデルよりコントロールされているものの高域は明瞭で、いっぽうで低域はサブベースを中心に厚みが増しており存在感を感じやすいチューニングになっています。そして中音域は非常にニュートラルながらボーカル帯域を中心とした主張を感じられます。男性ボーカル、女性ボーカルともに聴きやすく、ポップスやロックなどのボーカル曲に寄せた、いわゆる「売れ線」のチューニングといえるでしょう。上位モデルの「TINHIFI T4」と今回の「TINHIFI T2 PLUS」は、例えるなら「Moondrop KXXS」と「Starfield」ののアプローチの違いに近いものがあるかもしれませんね。

TINHIFI T2 PLUS」の高域は「T2」および高域強調モデルの「T2 Pro」に比べるとかなり控えめな印象ですが全体としては結構明瞭でしっかりとした主張があります。KZのような中華ハイブリッドの硬質な音とは異なりますが適度な煌めきと伸びの良さがあります。ただ当初「Shanling M6 Pro」で聴いていたときは気がつかなかったのですが、再生環境によってはそれなりに音量を上げる必要があり、これによりシンバル音が刺さりやすく感じたり歪みを感じたりする場合があります。これはリケーブルにより情報量を向上することでほぼ対応できると思います。

TINHIFI T2 PLUS中音域は最近の「TINHFI T3」「TINHIFI T4」同様にニュートラルな印象。メリハリのあるサウンドを好まれる方には多少淡泊に感じる場合もありそうですが、「TINHIFI T2 PLUS」ではボーカル帯域に厚みがあり、前方で存在感のある鳴り方をします。そのため音場は一般的な広さはあるものの、従来モデルよりは抑えられた印象。ただボーカルが演奏より強調された鳴り方をするため曲によっては奥行きがあります。分離は良く心地良く明瞭感のあるサウンドですが、このような傾向から定位感や解像感は一般的で「TINHIFI T4」と比べると価格相応の差を感じるかもしれません。
女性ボーカルは適度にウェットで質感があり、男性ボーカルも適度な厚みのある心地良い印象です。ただしこちらも再生環境で印象が結構変化しますので、より駆動力の高いDAPやアンプ、またはリケーブルによる変化を試してみるのも良いと思います。

低域はこのクラスのイヤホンとしては解像度が高くスピード感を感じます。だた「T2」「T2 Pro」と比べてミッドベースを中心に量感がアップしたこともありキレの良さは少し抑えられた印象。その分多少ウォームさを感じる広がりがあり、ポップスなどでは心地良い響きを感じる事ができるでしょう。重低音の再現性も良くしっかりとした沈み込みがあります。シングルダイナミックとなったことで各音域のつながりは非常にスムーズで、かつ籠もることなく綺麗に鳴ります。

どのジャンルの曲もこのクラスのイヤホンとしては十分に鳴らしてくれますが、やはり相性が良いのはボーカル曲全般、いっぽうで良くないのはインスト曲全般、という、ある意味方向性がとても分りやすいイヤホンではあります。リケーブルは「NICEHCK C16-1」など情報量の多い16芯ケーブルや、「NICEHCK C4-1」のように中高域の明瞭感をアップさせるタイプと相性が良いと思います。

おそらく多くの方にとって「TINHIFI T2 PLUS」は「TIN Audio T2」または「T2 Plus」より格段に聴きやすく、良い音のイヤホンと感じると思います。これまでの「T2」「T2 Plus」が万人向けではないマニアックなチューニングであることを除いても「TINHIFI T2 PLUS」は様々な要素で大きな進化を遂げており、50ドル程度の低価格イヤホンとしては間違いなく非常に良い仕上がりになっていると思います。
TINHIFI T2 PLUSまた上位モデルの「TINHIFI T4」との違いを考えると、「TINHIFI T2 PLUS」は明らかに「普及モデル」として全方位に力を入れられない分、ボーカル帯域に重点を置いた作られている、という印象が際立ってしまいます。そのため既に「TINHIFI T4」を既に持っている、あるいは購入を検討している方は「TINHIFI T2 PLUS」はわざわざ買うまでもない製品となるかもしれませんね。むしろ「TINHIFI T4」のレビューでも同様のことを記載しましたが、「TINHIFI T4」をメインとして捉えるなら、変わり種として「T2」や「T2 Pro」を押さえておいた方が楽しいのではと思います(今後販売終了となる可能性が高いため今のうちに買ったほうが良いかもですね)。そういった意味では「TINHIFI T2 PLUS」はマニア向けではないかもしれません。
いっぽうで、低価格イヤホンの範囲内で、KZなど中華系ハイブリッドの寒色系ドンシャリ傾向にちょっと食傷気味な方には「TINHIFI T2 PLUS」の自然で適度に見通しの良いサウンドは抜群の選択肢のひとつになると思います。従来の「T2」「T2 Pro」とは全く異なるアプローチで生まれた「TINHIFI T2 PLUS」ですので、そのターゲットを考慮すると今回も非常に完成度の高い製品だと感じました。