こんにちは。今回は「KZ ZSTX」です。低価格中華イヤホンを代表するブランドともいえる「KZ」製イヤホンは私のブログでもずっと取りあげてきたネタですが、「KZ ZSTX」はそんな「KZ」の出世モデルともいうべき「KZ ZST」のメジャーバージョンアップ版です。
「KZ ZSTX」も「KZ ZST」同様のプラスチック製のシェル形状と1BA+1DDのハイブリッド構成を踏襲しながら、サウンド的には発売以降4年間でKZが蓄積してきた経験やノウハウを見事に反映させた「超進化バージョン」とも言える仕上がりになっています。また付属ケーブルも銀メッキ戦タイプとなり、さらに新しいカラーも加わるなど、今後も低価格中華イヤホンの定番として活躍していきそうな意気込みを感じます。
ちなみに、今でこそ中華イヤホンの「コストパフォーマンスの高さ」を代表するKZですが、かつての「中華イヤホン」という言葉で連想された「キワモノ感」を凄まじい勢いで放出しつつ、価格的には10ドル以下、または前後の「激安イヤホン」を主戦場としていました。そんな「KZ」がグレードアップを狙ってちょっと上の15ドル~20ドルの価格帯で2016年にリリースしたのが同社初のハイブリッドモデルでもあった「KZ ZST」です。1DDの「ZS1」、2DDの「ZS2」と進化し、1DD構成で初めてリケーブル仕様を採用した「ZS3」とほぼ同じタイミングでリリースされた「KZ ZST」は、10mmダイナミックドライバーと高域用バランスド・アーマチュア型ドライバーを組み合わせた製品でした。
→ 過去記事: 「KZ ED9」「ZS3」「ZST」レビュー(2017年)
→ 過去記事: 「KZ ZST」のロット違い検証レビュー(2017年)
ちなみに2016年に発売された初期の「KZ ZST」はサウンドチューニングが不十分でかなり評判も悪かったのですが、2016年後半に「パープル」色のカラバリが追加されたあたりから搭載BAの仕様が変わり、その後もロットごとの改良を加えることで2017年頃には「低価格中華イヤホンの定番」と呼ばれるまでに進化します。
以降、「KZ ZST」は多くのマニアに認知され、また中華イヤホンで「ハイブリッド構成」のイヤホンが主流になる方向性を作った製品だと言えるでしょう。そして「KZ ZSTX」により後を継ぐ形で4年ぶりにフルモデルチェンジを果たしました。
「KZ ZSTX」は1BA+1DDのシンプルなハイブリッド構成で中音域と低音域を担当する「10mm 二重磁気ダイナミックドライバー」と高域を担当する「KZ 30095」バランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーが搭載されています。それぞれのドライバーは「KZ ZST」の頃から進化しており、特にダイナミックドライバーは現在KZでもっとの人気の高い5BA+1DDハイブリッド「KZ ZSX」で採用された最新型を異なるチューニングで搭載しています。KZはこれまで数多くの製品をリリースする過程で新しいドライバーを自社開発してきたノウハウをフィードバックし、従来と同じポリマー製振動版を使用しながらも格段に音質を向上したドライバーに進化しています。
またKZ製ハイブリッドでは定番の「KZ 30095」も最初に登場した2017年頃からは劇的な進化を遂げています。これまで数々のKZ製イヤホンに搭載され、そのリリースに合せロットごとに改良を加えられてきたことで、現在では大幅に音質が向上し、より歪みの少ない高域を実現した高品質なツィーターに進化しています。
現在、「KZ ZSTX」のカラーバリエーションは「KZ ZST」と同じ「パープル」と新色の「グリーン」が購入できます。またAliExpressの一部ショップで「ブラック」が先行販売されており、今後同様にアマゾン等でも追加されるのではと思います。
「KZ ZSTX」の購入はAliExpressの「Easy Earphones」またはアマゾンの「WTSUN Audio」にて。
価格はAliExpressが15.09ドル~、アマゾンが2,480円となっています。なおAliExpress(Easy Earphones)ではフォロワー向けの値引きで12.99ドルで購入可能です。AliExpressでの購入方法や値引きの方法はこちらを参照ください。アマゾンは掲載時点では国内在庫があり、プライム扱いで購入が可能でした。
AliExpress(Easy Earphones): KZ ZSTX 15.09ドル~
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): KZ ZSTX
Amazon.co.jp(CCA Offical Store): KZ ZSTX
Amazon.co.jp(GK Offical Shop): KZ ZSTX
Amazon.co.jp(LuckLZ Audio Store): KZ ZSTX
Amazon.co.jp(L.S オーディオ): KZ ZSTX
Amazon.co.jp(シンセンオーディオ): KZ ZSTX
■ 「KZ ZST」を踏襲したデザインとアップグレードケーブル。新たなカラーも魅力的。
「KZ ZSTX」のパッケージはやはり売れ筋モデルということもあり各カラーリングごとのカラーイラストのパッケージ。パッケージ内容はいつもと同じ、本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/L)、説明書ほか。
「KZ ZSTX」では付属ケーブルが従来のブラウンの銅線タイプからこれまで別売りされていた「KZ 銀メッキ銅線ケーブル(KZ タイプB)」になりました。Mサイズのイヤーピースは本体に装着済み。イヤーピースはこれまでのZSTなどKZ製品に付属するのと同じものです。
「KZ ZSTX」のシェルは「KZ ZST」と同じ形状の透明なプラスチック製。「KZ ZSN」以降のモデルで採用されているアルミ合金製ステムノズルもタイプCコネクタも採用せず、特に「パープル」色のモデルでは同色の「KZ ZST」との違いはフェイス部分の「ZSTX」デザインと側面のモデル表記、そしてステム部分のメッシュパーツのみで、見た目だけでは「マイナーチェンジ」版にしか見えない感じです。
いっぽう新たに追加されたグリーンは透明な単色仕上げでシンプルな構成の「KZ ZSTX」にとてもよく似合っています。以前から中華イヤホンを楽しんでいらっしゃる方のほとんどは「KZ ZST」を既に持っている事もあって、「KZ ZSTX」ではどうしても新色の「グリーン」のほうを買いがちですが(^^;)、実際普段使いでも違和感のないカラーリングで、ネット上でも人気が集中しているようです。
ちなみに元々の「KZ ZST」のシェル形状は「TFZ SERIES 1」、ハイブリッド構成とリケーブル仕様は「SENFER UEs」をがっつりパ○っていて、カラーリングについても、最初に出た「カーボン柄のブラック」は「SENFER UEs」より、そして「パープル」は「TFZ SERIES 1S My Love」のほぼそのままパ○リです(笑)。しかし4年間にわたり圧倒的多数の「KZ ZST」を販売してきたKZが特に「パープル」については完全に本家取りをしてしまった感もあります。いやぁ、中華イヤホンてやっぱり熾烈ですねぇ(遠い目)。まあそんなマニアにしか分らない話はさておき、「パープル」もカラフルで「KZ ZST」時代からプレゼントなどにはとても好評だったりします(個人調べ)。
そして本レビュー掲載段階では先行販売の段階でAliExpressでも一部のセラーのみでの扱いですが、「KZ ZSTX」の「ブラック」も追加になりました。こちらは「KZ ZST」で「パープル」に比べると人気の低かったカーボン柄ではなく、グリーン同様に単色のクリアカラーデザインとなりました。こちらも非常にシンプルかつ落ち着いたカラーリングで、アマゾン等でも購入できるようになるとグリーン同様に人気が出そうですね。
前述の通り「KZ ZSTX」のシェル形状は「KZ ZST」と同一です。「KZ ZST」も4年間も販売された製品ですので、その間に頻繁な改良を加えていますが、シェル形状自体は変わっていません。そしてその形状を「KZ ZSTX」はそのまま踏襲してるわけです。いっぽう「KZ ZSN」「KZ ZSN Pro」は僅かに大きく金属製ステムも太いことがわかりますね。
そして「KZ ZSTX」は最近のKZが採用している「タイプC」ではなく従来の「タイプB」を「KZ ZST」同様に採用しており、リケーブルの際も通常の「中華2pin」または「CIEM 2pin」の2pinタイプが使用できます。とはいえ付属ケーブルがアップグレード仕様の銀メッキ線タイプになったことで、付属ケーブルのままでも十分に完成度の高いサウンドを楽しめるようになりました。
ただイヤーピースは以前から変わっていないため、こちらはできればよりフィット感の良いものに交換したいところ。とはいえ最近はイヤーピースも「高性能品」の登場によりインフレーションが進んでおり、せっかく低価格なイヤホンなのにイヤピの方が高い、みたいなことも起きかねない雰囲気もあります。この辺も考慮すると開口部の大きいタイプでは定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustuneの「AET07」、オリジナルに近い形状のものでは「RHA シリコンイヤーピース」、またより柔らかくフィット感のよいものでは七福神商事の「長楽」などが価格も比較的手頃でお勧めです。
■ 質の高い低域とスッキリした高域、バランスの良いボーカル。次元に進化した新定番のサウンド。
「KZ ZSTX」の音質傾向は寒色系の弱ドンシャリ。かつての「KZ ZST」の分りやすい重い低音とちょっと限界が近く刺激的に伸びた高域を思い出すと、「KZ ZSTX」の10ドル台の低価格イヤホンとしては驚くほどバランスの取れた、破綻を感じさせないサウンドは隔世の感があります。
2016年の発売当時は、高域が弱く低域ドコドコな音だった10mmダイナミックドライバーを補うためめに、高域用のBAドライバーを追加し、特にネットワーク回路なども無く強引にドンシャリ化しただけだったのが初期の「KZ ZST」でした。最近の銅線ケーブルが付属する最終型の「KZ ZST」ではこの頃と比べてもかなり改善されているようでしたが、この「最終型」から、これまでのノウハウの蓄積を元に「満を持して」入念なサウンドチューニングが行われた「KZ ZSTX」が別次元の完成度になるのは当然かも知れませんね。チューニングの方向性は5BA+1DD構成の上位モデル「KZ ZSX」などに見られる全体を弱ドンシャリでまとめつつ、中音域、特にボーカル帯域の存在感をしっかり感じさせるアプローチです。
過去のレビューでも書いているとおり、KZは2017年頃には既に当時のダイナミックドライバーのパワフルだが籠もりやすい低域と、BAドライバーの一定のゲインをかけると歪みが発生しやすくなる高域を以下にコントロールするかという改良をそれこそ同じ製品のロット単位で行っていた形跡があります。そのため頻繁にチューニング変更が行われた「KZ ZST」はもちろん、その後の「KZ ZS5」や「KZ ZS6」も前期と後期で仕様が異なるなど、どうにかして同社の「派手なドンシャリ」傾向を馴染みやすいサウンドに変えていこうとしていた努力が伺えます。いっぽうでZS6以降の「派手なドンシャリ」傾向はKZの代名詞ともなり、これはこれで「KZ ZSN Pro」や「KZ ZS10 Pro」などのモデルで派生させていくわけですが・・・(それはまた次回)。
「KZ ZSTX」の高域はある意味「KZらしい」硬質で煌めきのある音。「ある意味」と表現したのは、かつてのKZのように主張は強いけど歪みやすいとか、解像感はあるけどシャリ付きが強く刺さりまくるとかいったネガティブな要素は綺麗に払拭されていて、KZの代名詞ともいえる「寒色系ドンシャリ」らしいキレのあるスッキリした印象をより感じやすくなっています。
「KZ ZSTX」ではシングルのBAが鳴らす多少アッサリした高音がよりキレと鋭さを感じさせつつ、以前より高いところまでまっすぐ伸びるため「低価格イヤホンだな」と思わせる限界も感じにくくなっています。改めて同じ「KZ 30095」でも最新のロットでは別次元に良いツィーターユニットに進化してるなと思いますし、ダイナミックドライバーもそれなりに下支えをしているのがわかります。また同じドライバーを搭載しているよりドライバー数の多いモデル同様に刺さりやすい帯域は聞きやすくコントロールされており、ある程度駆動力のある再生環境でも刺激はかなり抑えられています。
中音域はボーカル帯域を中心に主張を増しており、気持ちよい「抜け感」がある見通しの良い音です。確かに解像感などは5BA+1DD構成の「KZ ZSX」のほうが高くスペックなりの違いはありますが、「KZ ZSTX」は清潔さを感じる中高域と分離の良い中低域のおかげでより前面に出て明瞭に鳴る印象です。特にボーカルはとても心地良く、「KZ ZST」の多少凹む印象と比べると「KZ ZSTX」は格段の違いを感じる部分だと思います。全体的にKZらしい硬質な寒色系の音ですが、僅かに温かみがあり、より派手さを感じる「KZ ZSN Pro」や「KZ ZS10 Pro」より自然な印象で鳴ります。音場は一般的な広さですが、ボーカルを中心とした奥行きがあり、定位はこのクラスのイヤホンとしてはかなり捉えやすい方だと思います。
低域は想像以上に密度があり、非常に深く、締まりのある音です。とはいえメリハリの強い「KZ ZSN Pro」と比べると抜けは良く、響きも控えめなため、ややスッキリした印象に感じます。10ドル台、2千円台のイヤホンとしては驚くほど質感が良く、ミッドベースを中心とした密度の高さと、重低音の締まりの良さは特筆すべきレベルでしょう。キレやスピード感は他のドンシャリ傾向がより強いモデルのほうが高い印象ですが、いっぽうで中高域との分離も非常に良く、ボーカル帯域をマスクすること無く音数の多い曲でも綺麗に鳴らしてくれます。ポップスなどのボーカル曲だけでなく、ハードロックやEDMなどの低域の情報量の多い曲なども心地良く再生してくれるでしょう。また全体のバランスに優れてスッキリした印象のサウンドですのでインストゥルメンタルも心地よさがあります。
いっぽうでクラシックのオーケストラサウンドのような音源はより重厚な低域をもったイヤホンのほうが音場感や迫力を得やすいですし、ジャズなどももう少し艶が欲しいと感じるかもしれません。この辺は好みのレベルですが、少なくともエントリークラスの価格帯の製品としては間違いなくトップベレルにお勧めできるイヤホンだと思います。
リケーブルについては、もともとの付属ケーブルでも十分にバランスの良いサウンドを実現していますので、あまり極端な傾向のケーブルは避けた方が良いでしょう。イヤホンの傾向を活かしつつ情報量をアップする、自然な印象のケーブルと相性が良いですね。前回レビューしたKBEARの「KBX4905」ミックスケーブルはブラウン系のカラーリングに好みが分かれる可能性もありますが、相性は非常に良いと思います。他には「TRN T4」高純度単結晶銅線ケーブルなども良いでしょう。
これに対し中華16芯の銀メッキ線ケーブルは再生環境によってはちょっと派手めに変化しキツく感じる可能性がありますし、逆に「NICEHCK LitzPS」純銀線ケーブルなどは中高域は綺麗に出ますが低域がやや細る印象になります。実はちょっと以前の(販売終了しそうな頃の)8芯ミックス線や銀メッキ線ケーブルなどが結構相性が良かったりするのでセールなどのタイミングで抑えておくのもお勧めですよ。
というわけで、次回インターミッション的な記事をはさんでもうひとつの新しい「X」、「KZ ZSN Pro X」を紹介する予定です。こちらは「ZSTX」ほどの大幅な変化では無いものの、「ZSN Pro」で妥協していたと感じた部分が払拭され、こちらは「いかにもKZ」なサウンドをよりブラッシュアップしていますよ(^^)。
ちなみに、今でこそ中華イヤホンの「コストパフォーマンスの高さ」を代表するKZですが、かつての「中華イヤホン」という言葉で連想された「キワモノ感」を凄まじい勢いで放出しつつ、価格的には10ドル以下、または前後の「激安イヤホン」を主戦場としていました。そんな「KZ」がグレードアップを狙ってちょっと上の15ドル~20ドルの価格帯で2016年にリリースしたのが同社初のハイブリッドモデルでもあった「KZ ZST」です。1DDの「ZS1」、2DDの「ZS2」と進化し、1DD構成で初めてリケーブル仕様を採用した「ZS3」とほぼ同じタイミングでリリースされた「KZ ZST」は、10mmダイナミックドライバーと高域用バランスド・アーマチュア型ドライバーを組み合わせた製品でした。
→ 過去記事: 「KZ ED9」「ZS3」「ZST」レビュー(2017年)
→ 過去記事: 「KZ ZST」のロット違い検証レビュー(2017年)
ちなみに2016年に発売された初期の「KZ ZST」はサウンドチューニングが不十分でかなり評判も悪かったのですが、2016年後半に「パープル」色のカラバリが追加されたあたりから搭載BAの仕様が変わり、その後もロットごとの改良を加えることで2017年頃には「低価格中華イヤホンの定番」と呼ばれるまでに進化します。
以降、「KZ ZST」は多くのマニアに認知され、また中華イヤホンで「ハイブリッド構成」のイヤホンが主流になる方向性を作った製品だと言えるでしょう。そして「KZ ZSTX」により後を継ぐ形で4年ぶりにフルモデルチェンジを果たしました。
「KZ ZSTX」は1BA+1DDのシンプルなハイブリッド構成で中音域と低音域を担当する「10mm 二重磁気ダイナミックドライバー」と高域を担当する「KZ 30095」バランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーが搭載されています。それぞれのドライバーは「KZ ZST」の頃から進化しており、特にダイナミックドライバーは現在KZでもっとの人気の高い5BA+1DDハイブリッド「KZ ZSX」で採用された最新型を異なるチューニングで搭載しています。KZはこれまで数多くの製品をリリースする過程で新しいドライバーを自社開発してきたノウハウをフィードバックし、従来と同じポリマー製振動版を使用しながらも格段に音質を向上したドライバーに進化しています。
またKZ製ハイブリッドでは定番の「KZ 30095」も最初に登場した2017年頃からは劇的な進化を遂げています。これまで数々のKZ製イヤホンに搭載され、そのリリースに合せロットごとに改良を加えられてきたことで、現在では大幅に音質が向上し、より歪みの少ない高域を実現した高品質なツィーターに進化しています。
現在、「KZ ZSTX」のカラーバリエーションは「KZ ZST」と同じ「パープル」と新色の「グリーン」が購入できます。またAliExpressの一部ショップで「ブラック」が先行販売されており、今後同様にアマゾン等でも追加されるのではと思います。
「KZ ZSTX」の購入はAliExpressの「Easy Earphones」またはアマゾンの「WTSUN Audio」にて。
価格はAliExpressが15.09ドル~、アマゾンが2,480円となっています。なおAliExpress(Easy Earphones)ではフォロワー向けの値引きで12.99ドルで購入可能です。AliExpressでの購入方法や値引きの方法はこちらを参照ください。アマゾンは掲載時点では国内在庫があり、プライム扱いで購入が可能でした。
AliExpress(Easy Earphones): KZ ZSTX 15.09ドル~
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): KZ ZSTX
Amazon.co.jp(CCA Offical Store): KZ ZSTX
Amazon.co.jp(GK Offical Shop): KZ ZSTX
Amazon.co.jp(LuckLZ Audio Store): KZ ZSTX
Amazon.co.jp(L.S オーディオ): KZ ZSTX
Amazon.co.jp(シンセンオーディオ): KZ ZSTX
■ 「KZ ZST」を踏襲したデザインとアップグレードケーブル。新たなカラーも魅力的。
「KZ ZSTX」のパッケージはやはり売れ筋モデルということもあり各カラーリングごとのカラーイラストのパッケージ。パッケージ内容はいつもと同じ、本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/L)、説明書ほか。
「KZ ZSTX」では付属ケーブルが従来のブラウンの銅線タイプからこれまで別売りされていた「KZ 銀メッキ銅線ケーブル(KZ タイプB)」になりました。Mサイズのイヤーピースは本体に装着済み。イヤーピースはこれまでのZSTなどKZ製品に付属するのと同じものです。
「KZ ZSTX」のシェルは「KZ ZST」と同じ形状の透明なプラスチック製。「KZ ZSN」以降のモデルで採用されているアルミ合金製ステムノズルもタイプCコネクタも採用せず、特に「パープル」色のモデルでは同色の「KZ ZST」との違いはフェイス部分の「ZSTX」デザインと側面のモデル表記、そしてステム部分のメッシュパーツのみで、見た目だけでは「マイナーチェンジ」版にしか見えない感じです。
いっぽう新たに追加されたグリーンは透明な単色仕上げでシンプルな構成の「KZ ZSTX」にとてもよく似合っています。以前から中華イヤホンを楽しんでいらっしゃる方のほとんどは「KZ ZST」を既に持っている事もあって、「KZ ZSTX」ではどうしても新色の「グリーン」のほうを買いがちですが(^^;)、実際普段使いでも違和感のないカラーリングで、ネット上でも人気が集中しているようです。
ちなみに元々の「KZ ZST」のシェル形状は「TFZ SERIES 1」、ハイブリッド構成とリケーブル仕様は「SENFER UEs」をがっつりパ○っていて、カラーリングについても、最初に出た「カーボン柄のブラック」は「SENFER UEs」より、そして「パープル」は「TFZ SERIES 1S My Love」のほぼそのままパ○リです(笑)。しかし4年間にわたり圧倒的多数の「KZ ZST」を販売してきたKZが特に「パープル」については完全に本家取りをしてしまった感もあります。いやぁ、中華イヤホンてやっぱり熾烈ですねぇ(遠い目)。まあそんなマニアにしか分らない話はさておき、「パープル」もカラフルで「KZ ZST」時代からプレゼントなどにはとても好評だったりします(個人調べ)。
そして本レビュー掲載段階では先行販売の段階でAliExpressでも一部のセラーのみでの扱いですが、「KZ ZSTX」の「ブラック」も追加になりました。こちらは「KZ ZST」で「パープル」に比べると人気の低かったカーボン柄ではなく、グリーン同様に単色のクリアカラーデザインとなりました。こちらも非常にシンプルかつ落ち着いたカラーリングで、アマゾン等でも購入できるようになるとグリーン同様に人気が出そうですね。
前述の通り「KZ ZSTX」のシェル形状は「KZ ZST」と同一です。「KZ ZST」も4年間も販売された製品ですので、その間に頻繁な改良を加えていますが、シェル形状自体は変わっていません。そしてその形状を「KZ ZSTX」はそのまま踏襲してるわけです。いっぽう「KZ ZSN」「KZ ZSN Pro」は僅かに大きく金属製ステムも太いことがわかりますね。
そして「KZ ZSTX」は最近のKZが採用している「タイプC」ではなく従来の「タイプB」を「KZ ZST」同様に採用しており、リケーブルの際も通常の「中華2pin」または「CIEM 2pin」の2pinタイプが使用できます。とはいえ付属ケーブルがアップグレード仕様の銀メッキ線タイプになったことで、付属ケーブルのままでも十分に完成度の高いサウンドを楽しめるようになりました。
ただイヤーピースは以前から変わっていないため、こちらはできればよりフィット感の良いものに交換したいところ。とはいえ最近はイヤーピースも「高性能品」の登場によりインフレーションが進んでおり、せっかく低価格なイヤホンなのにイヤピの方が高い、みたいなことも起きかねない雰囲気もあります。この辺も考慮すると開口部の大きいタイプでは定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustuneの「AET07」、オリジナルに近い形状のものでは「RHA シリコンイヤーピース」、またより柔らかくフィット感のよいものでは七福神商事の「長楽」などが価格も比較的手頃でお勧めです。
■ 質の高い低域とスッキリした高域、バランスの良いボーカル。次元に進化した新定番のサウンド。
「KZ ZSTX」の音質傾向は寒色系の弱ドンシャリ。かつての「KZ ZST」の分りやすい重い低音とちょっと限界が近く刺激的に伸びた高域を思い出すと、「KZ ZSTX」の10ドル台の低価格イヤホンとしては驚くほどバランスの取れた、破綻を感じさせないサウンドは隔世の感があります。
2016年の発売当時は、高域が弱く低域ドコドコな音だった10mmダイナミックドライバーを補うためめに、高域用のBAドライバーを追加し、特にネットワーク回路なども無く強引にドンシャリ化しただけだったのが初期の「KZ ZST」でした。最近の銅線ケーブルが付属する最終型の「KZ ZST」ではこの頃と比べてもかなり改善されているようでしたが、この「最終型」から、これまでのノウハウの蓄積を元に「満を持して」入念なサウンドチューニングが行われた「KZ ZSTX」が別次元の完成度になるのは当然かも知れませんね。チューニングの方向性は5BA+1DD構成の上位モデル「KZ ZSX」などに見られる全体を弱ドンシャリでまとめつつ、中音域、特にボーカル帯域の存在感をしっかり感じさせるアプローチです。
過去のレビューでも書いているとおり、KZは2017年頃には既に当時のダイナミックドライバーのパワフルだが籠もりやすい低域と、BAドライバーの一定のゲインをかけると歪みが発生しやすくなる高域を以下にコントロールするかという改良をそれこそ同じ製品のロット単位で行っていた形跡があります。そのため頻繁にチューニング変更が行われた「KZ ZST」はもちろん、その後の「KZ ZS5」や「KZ ZS6」も前期と後期で仕様が異なるなど、どうにかして同社の「派手なドンシャリ」傾向を馴染みやすいサウンドに変えていこうとしていた努力が伺えます。いっぽうでZS6以降の「派手なドンシャリ」傾向はKZの代名詞ともなり、これはこれで「KZ ZSN Pro」や「KZ ZS10 Pro」などのモデルで派生させていくわけですが・・・(それはまた次回)。
「KZ ZSTX」の高域はある意味「KZらしい」硬質で煌めきのある音。「ある意味」と表現したのは、かつてのKZのように主張は強いけど歪みやすいとか、解像感はあるけどシャリ付きが強く刺さりまくるとかいったネガティブな要素は綺麗に払拭されていて、KZの代名詞ともいえる「寒色系ドンシャリ」らしいキレのあるスッキリした印象をより感じやすくなっています。
「KZ ZSTX」ではシングルのBAが鳴らす多少アッサリした高音がよりキレと鋭さを感じさせつつ、以前より高いところまでまっすぐ伸びるため「低価格イヤホンだな」と思わせる限界も感じにくくなっています。改めて同じ「KZ 30095」でも最新のロットでは別次元に良いツィーターユニットに進化してるなと思いますし、ダイナミックドライバーもそれなりに下支えをしているのがわかります。また同じドライバーを搭載しているよりドライバー数の多いモデル同様に刺さりやすい帯域は聞きやすくコントロールされており、ある程度駆動力のある再生環境でも刺激はかなり抑えられています。
中音域はボーカル帯域を中心に主張を増しており、気持ちよい「抜け感」がある見通しの良い音です。確かに解像感などは5BA+1DD構成の「KZ ZSX」のほうが高くスペックなりの違いはありますが、「KZ ZSTX」は清潔さを感じる中高域と分離の良い中低域のおかげでより前面に出て明瞭に鳴る印象です。特にボーカルはとても心地良く、「KZ ZST」の多少凹む印象と比べると「KZ ZSTX」は格段の違いを感じる部分だと思います。全体的にKZらしい硬質な寒色系の音ですが、僅かに温かみがあり、より派手さを感じる「KZ ZSN Pro」や「KZ ZS10 Pro」より自然な印象で鳴ります。音場は一般的な広さですが、ボーカルを中心とした奥行きがあり、定位はこのクラスのイヤホンとしてはかなり捉えやすい方だと思います。
低域は想像以上に密度があり、非常に深く、締まりのある音です。とはいえメリハリの強い「KZ ZSN Pro」と比べると抜けは良く、響きも控えめなため、ややスッキリした印象に感じます。10ドル台、2千円台のイヤホンとしては驚くほど質感が良く、ミッドベースを中心とした密度の高さと、重低音の締まりの良さは特筆すべきレベルでしょう。キレやスピード感は他のドンシャリ傾向がより強いモデルのほうが高い印象ですが、いっぽうで中高域との分離も非常に良く、ボーカル帯域をマスクすること無く音数の多い曲でも綺麗に鳴らしてくれます。ポップスなどのボーカル曲だけでなく、ハードロックやEDMなどの低域の情報量の多い曲なども心地良く再生してくれるでしょう。また全体のバランスに優れてスッキリした印象のサウンドですのでインストゥルメンタルも心地よさがあります。
いっぽうでクラシックのオーケストラサウンドのような音源はより重厚な低域をもったイヤホンのほうが音場感や迫力を得やすいですし、ジャズなどももう少し艶が欲しいと感じるかもしれません。この辺は好みのレベルですが、少なくともエントリークラスの価格帯の製品としては間違いなくトップベレルにお勧めできるイヤホンだと思います。
リケーブルについては、もともとの付属ケーブルでも十分にバランスの良いサウンドを実現していますので、あまり極端な傾向のケーブルは避けた方が良いでしょう。イヤホンの傾向を活かしつつ情報量をアップする、自然な印象のケーブルと相性が良いですね。前回レビューしたKBEARの「KBX4905」ミックスケーブルはブラウン系のカラーリングに好みが分かれる可能性もありますが、相性は非常に良いと思います。他には「TRN T4」高純度単結晶銅線ケーブルなども良いでしょう。
これに対し中華16芯の銀メッキ線ケーブルは再生環境によってはちょっと派手めに変化しキツく感じる可能性がありますし、逆に「NICEHCK LitzPS」純銀線ケーブルなどは中高域は綺麗に出ますが低域がやや細る印象になります。実はちょっと以前の(販売終了しそうな頃の)8芯ミックス線や銀メッキ線ケーブルなどが結構相性が良かったりするのでセールなどのタイミングで抑えておくのもお勧めですよ。
というわけで、次回インターミッション的な記事をはさんでもうひとつの新しい「X」、「KZ ZSN Pro X」を紹介する予定です。こちらは「ZSTX」ほどの大幅な変化では無いものの、「ZSN Pro」で妥協していたと感じた部分が払拭され、こちらは「いかにもKZ」なサウンドをよりブラッシュアップしていますよ(^^)。
ZSTXの評判がなかなか良いようなのですが、実際のところ(値段差はかなりありますが)同じ1BA1DDのAONIC4と比べると、どのくらい差があるように感じますか?
格安中華が従来の欧米メーカーにどのくらい肉薄するのか気になります。