こんにちは。今回は「KZ ZSN Pro X」です。(インターバルをはさみ)前回紹介した「KZ ZSTX」に次いでKZがリリースした新シリーズの「X」モデルで、今回はKZのもうひとつの定番低価格イヤホン「KZ ZSN Pro」をブラッシュアップした製品になります。私のブログでは「KZ ZSN Pro」はある意味もっともKZらしい「派手なドンシャリ」方向のエントリーモデル的な位置づけとして紹介してきました。上位には派手系KZの代表選手「KZ ZS10 Pro」がいる流れですね。
また私が特に「マニアではない普通の」知人・友人達にプレゼントしてきた数々のイヤホンの中でも最もウケが良かった製品も「KZ ZSN Pro」だったりもします。「ウケが良い」最大の理由は、もともとオーディオやイヤホンに興味の無い人でも「あ、コレは違うな、凄いな」と感じさせる「分りやすさ」(迫力、臨場感、音場の広がり)と、リスニングイヤホンとしての「聴きやすさ」(聴きたい音をちゃんと聴けて、聴き疲れもしにくい)だと思っています。
今回の「KZ ZSN Pro X」もそういったポイントはしっかり押さえつつ、前レビューでは「リケーブル必須」と記載した中音域の緩さが大幅に改善され、ライトユーザーだけでなく、マニアの使用にも十分に耐えうる完成度を実現したアップグレードモデルだと思います。
ちなみに、もともとの「KZ ZSN Pro」は、2019年の3月頃にリリースされた製品で、KZが「タイプC」コネクタを初めて採用した「ZSN」(2018年10月頃)の後継/上位モデルにあたります。前回の「KZ ZSTX」のレビューでも触れましたが、KZは最初期の「ZST」のバランス度外視の派手な高音・低音といったサウンドから中音域をより聴きやすく、全体的にも質を向上しバランスを高めるアプローチを進めてきました。その結果「寒色系弱ドンシャリ」のバランスでさらにボーカル帯域に厚みを持つ「KZ ZSX」のようなサウンドに進化し、そのフィードバックが「KZ ZSTX」にも反映されています。
いっぽうで、マルチドライバー化の「足し算」でサウンドをコントロールしようとした「ZS5」や「ZS6」あたりから「派手なドンシャリ方向」も「分りやすいサウンド」としてかなりの人気があり、KZの代名詞的な音質傾向になっていることが見えてきました。「ZSN」および「ZSN Pro」、そして「KZ ZS10 Pro」につながる流れはこのようなニーズを反映した製品ではないかと思っています。つまり、よりリスニング志向の「本流」の次世代機である「KZ ZSTX」に対して、分りやすく楽しめる「主流」の次世代機が「KZ ZSN Pro X」である、と考えると、同じ時期に同じ価格帯の2種類の後継モデルがリリースされていることも頷けますね。
→ 過去記事: KZ ZSN Proのレビュー(前編) / レビュー(後編・リケーブル編)
「KZ ZSN Pro X」のドライバー構成は1BA+1DDのハイブリッドで、使用するドライバーも高域用の「KZ 30095」バランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーおよび「10mm 二重磁気回路ダイナミックドライバー」で、基本的な内部構成は「KZ ZSTX」と同様です。「KZ 30095」BAも世代を重ねてより歪みが少なく質の良い高域を出力できるように進化してきましたし、採用されるダイナミックドライバーも最新の同社のノウハウを反映した新しい世代のものに変わっています。とはいえ約4年の進化を反映した「KZ ZSTX」に比べると、「KZ ZSN Pro」の時点である程度完成された仕上がりだったこともあり、「KZ ZSN Pro X」では最新のドライバーによるブラッシュアップが中心となりますね。
「KZ ZSN Pro X」のカラーバリエーションは現在「ゴールド」と「ブラック」の2色が選択できます。またAliExpressの一部セラーでは「ロイヤルブルー」の先行販売が開始されており、今後アマゾン等でも追加される可能性もありますね。
「KZ ZSN Pro X」の購入はAliExpressの「Easy Earphones」またはアマゾンの「WTSUN Audio」および「HiFiHear」にて。価格はAliExpressが20.00ドル~、アマゾンが2,980円となっています。なおAliExpress(Easy Earphones)ではフォロワー向けの値引きで17.00ドルで購入可能です。AliExpressでの購入方法や値引きの方法はこちらを参照ください。
AliExpress(Easy Earphones): KZ ZSN Pro X 20.00ドル~ → 17.00ドル~
また、アマゾンは掲載時点では国内在庫があり、プライム扱いで購入が可能でした。
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): KZ ZSN Pro X 2,980円
Amazon.co.jp(HiFiHear Audio): KZ ZSN Pro X 2,980円
■ 高級感のアップしたフェイスプレート。銀メッキ線のアップグレードも付属。
「KZ ZSN Pro X」もモデルカラーごとのイラストパッケージになっています。パッケージ内容はいつもと同じ、本体、ケーブル、イヤーピース(本体装着済み別タイプのMサイズ、および通常タイプのS/M/L)、説明書ほか。
新しい「ゴールド」および「ブラック」のカラーリングが与えられた「KZ ZSN Pro X」はさらに高級感がアップし、いよいよ本当に20ドル台、2千円台の製品には到底見えない仕上がりになってきました。表面処理はつや消しで厚みのある亜鉛合金製のフェイスプレートは重量感があります。アルミ合金製のステムノズルもフェイスプレートと同じカラーリングとなっています。
従来の「KZ ZSN Pro」と比較するとシェル形状、ステム、コネクタなど外観上はまったく同じで異なるのはカラーリングと側面のモデル名のシルクスクリーンくらいです。そのため「KZ ZSTX」と比較するとフェイス部分は若干大きく、逆に厚みは僅かに抑えられています。ステムノズルが金属製で太くなっている分、耳穴の小さい方は装着性は若干下がっているかも知れませんね。
そして新たに付属するケーブルはKZ純正アップグレードケーブル(Cタイプ)として販売されていたCタイプコネクタの銀メッキ線ケーブルとなります。「KZ ZSN Pro」で付属した銅線ケーブルは本体のサウンドバランスもあってリケーブルを強く推奨していましたが、「KZ ZSN Pro X」ではこの付属ケーブルのままでも十分に優れたサウンドを実現しています。
またイヤーピースについては「ZSN」「ZSN Pro」どうように評判の良くないKZ製イヤーピースとは別のタイプのMサイズイヤーピースが元々装着済みでしたが、これは今回の「KZ ZSN Pro X」でも同様です。サイズ的に問題が無ければこのまま使うのも良いと思います。さらに定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustuneの「AET07」、AZLA「SednaEarfit Light」「SednaEarfit Light Short」など開口部が広く、耳にフィットするタイプのイヤーピースに交換するのもお勧めです。
■ よりパワフルで濃密さを感じるサウンド。中音域を中心にクオリティを向上。
「KZ ZSN Pro X」の音質傾向は中低域寄りのドンシャリ。前述の通り「KZらしい派手さ」を引き継ぐメリハリのあるサウンドで、特にパワフルな低域は「KZ ZSN Pro」の印象をそのまま踏襲し、さらに質の向上が行われています。
「ZSN」以降のKZ製イヤホンは中音域、特にボーカル帯域へのアプローチが強くなっており、高域などは刺激を抑え聴きやすくする傾向があります。「KZ ZSN Pro X」や「KZ ZSTX」もその方向性自体は変わっていませんが、高域はBAドライバーの改良により硬質な煌びやかを維持したまま歪みを抑え、相対的に刺さりやすい帯域をコントロールしている印象があります。
そして中音域についてはバランスが良くスッキリとした抜け感が印象的な「KZ ZSTX」に対して、濃密さと音場感を意識した「KZ ZSN Pro X」、といった感じで、両者のキャラクターの違いが明確になっていますね。
「KZ ZSN Pro X」の高域は前回の「KZ ZSTX」同様に非常に煌めきを感じる音ながら伸びの良いスッキリとした音を鳴らしつつ、より強めの主張を感じます。手持ちの「KZ ZSN Pro」より高域の限界は高くよち綺麗に伸びる印象。搭載される最新ロットの「KZ 30095」BAの以前より進化した高域を実感します。キレと鋭さを感じさせつつ、以前より高出力でも歪みは少なく見通しの良い印象です。シンバル音など刺さりやすい音は刺激を感じにくいレベルにコントロールされているため、明瞭ながら聴きやすい高音になっています。また新しく付属する銀メッキ線ケーブルは「ZSN Pro」の銅線より高域の印象に多少好印象を与えているようです。しかし、高域の明瞭感はリケーブルでもかなり変化しますので、より高域の品質を向上させたい場合は8芯銀メッキ線やミックス線などのリケーブルがお勧めです。
中音域は「KZ ZSN Pro」と比較し最もクオリティの向上を感じるポイントです。もともと派手な低域と高域を感じつつもボーカル帯域もしっかりとした主張がありましたが、密度の高さに対して表現力が追いついていないような描写の緩さを感じる部分がありました。しかし「KZ ZSN Pro X」ではより分離が進み、中音域の解像感が大幅に向上したことで、濃さを感じる音ながらより明瞭感を感じる印象になりました。
ボーカル帯域は近くで定位するものの過度に膨らむことは無く、適度な光沢を感じる伸びやかさがあります。中高域の抜け感はよりスッキリした印象の「KZ ZSTX」のほうが高いものの、濃密な音を籠もること無く鳴ります。
音場は広めで定位もつかみやすい印象です。中音域については長時間エージングでも多少変化しますが、高域同様にリケーブルの効果は大きく、明瞭感に加えて音場感がかなり大きく向上します。
そして低域は「KZ ZSN Pro」の力強さを踏襲していて、さらに解像感やアタックの早さなど質の向上を感じます。量感とともに重低音の沈み込みの深さなどは「KZ ZSTX」同様、2千円台のイヤホンとしては特筆すべき質の高さだと思います。ミッドベースは厚みがありますが、キレは良く音数の多い曲でもしっかりとした表現を実感できます。ハードロックやEDMなどでもこのクラスとしては十分な分離性があり、重量感と迫力のある低音を要所要所で聴かせてくるのは心地良いですね。いっぽうで過度な響きや広がりは無く、中高域に被るようなことも一切ありません。
もともと濃いめのドンシャリ傾向でバランスの良かった「KZ ZSN Pro」から、さらにポイントを置いた改良により全体の品質が大きく向上しており、「KZ ZSN Pro X」は「元気で濃密なサウンド」を楽しむイヤホンとしては低価格イヤホンのなかでは最良の選択肢になったように思います。いっぽうでリケーブルでの効果も大きく、品質の向上した付属の銀メッキ線ケーブルだけでなく、より情報量の多いケーブルへアップグレードするのもお勧めしたいアプローチです。
リケーブルはKZ Cタイプ(「TRN T3s」や「TRN T4s」など)およびqdcコネクタのものが使用できます(もちろん中華2pinでもカバーはありませんが使用はできます)。付属ケーブルでも良いバランスで鳴ってくれますが、「KZ ZSTX」でも紹介したKBEAR「KBX4905」ミックスケーブルは「KZ ZSN Pro X」の傾向を維持しながらより情報量が多くより広い音場感と明瞭感のあるサウンドを実感できます。
他にもHiFiHearの「HiF4900」8芯銀メッキ線ケーブル等では中高域のキレが増す変化を実感します。比較的変化のわかりやすい8芯ケーブルだと低域の力強さを維持したまま締まりが向上し、スッキリした印象を楽しめそうです。同様の印象はYinyoo「YYX4865」16芯銀メッキ線ケーブルでもありますが、16芯ケーブルになるとイヤホン本体よりケーブルのほうが高額になってしまう点はネックですね。
相性としてはロック、ポップス、アニソンなどを「とにかく楽しく」聴きたいというのに最適です。また低域の厚みがありつつ、ボーカル帯域に多少ウォームさもあるため、バラード曲なども付属ケーブルでは結構良いですね。ただノリや雰囲気よりリスニングを楽しみたいという場合には「KZ ZSTX」のほうが向いているでしょう。同様にインストゥルメンタルもちょっと脚色が強すぎるように感じるかもしれません。リケーブル後はキレやメリハリが向上するため、よりスピード感のある曲も楽しめます。
また、「KZ ZSN Pro」もそうでしたが、「KZ ZSN Pro X」については音楽のリスニング用途以外に「ゲーミング」および「動画視聴」との相性も抜群に良いイヤホンです。冒頭に書いた知人や友人へのプレゼントで最も評判が良かった理由も実はコレで、迫力と臨場感のあるサウンドはとてもテンションが高まりますが、同時に定位も優れておりNetflixで映画を観る際の空間表現や、ゲーム中の正確な判断を損なわない再現性があります。さらに「KZ ZSN Pro X」では中音域の表現力が向上し、より繊細な音も捉えられるようになったことで、よりシビアな要望にも対応できるのではと思います。「KZ ZSN Pro X」はマイク付きモデルも選択できますのでプレイ中の対話も問題ないですね。
というわけで、「KZ ZSTX」および「KZ ZS10 Pro X」というふたつのリニューアルモデルを相次いで紹介しましたが、改めてKZの進化を実感するとともに、同社のイヤホンづくりにおける一貫性を感じました。すでに中華イヤホンのブランドとしてマニアの間では定着した感のあるKZですので、人気のある製品を今回のように最新の技術やノウハウでブラッシュアップしていくのは良い手法だと思います。そうすることで従来の中華イヤホンのマニア層にとどまらず、より広いマーケット、より広いユーザー層に訴えかけられるメーカーに発展していくかもしれませんね(^^)。
ちなみに、もともとの「KZ ZSN Pro」は、2019年の3月頃にリリースされた製品で、KZが「タイプC」コネクタを初めて採用した「ZSN」(2018年10月頃)の後継/上位モデルにあたります。前回の「KZ ZSTX」のレビューでも触れましたが、KZは最初期の「ZST」のバランス度外視の派手な高音・低音といったサウンドから中音域をより聴きやすく、全体的にも質を向上しバランスを高めるアプローチを進めてきました。その結果「寒色系弱ドンシャリ」のバランスでさらにボーカル帯域に厚みを持つ「KZ ZSX」のようなサウンドに進化し、そのフィードバックが「KZ ZSTX」にも反映されています。
いっぽうで、マルチドライバー化の「足し算」でサウンドをコントロールしようとした「ZS5」や「ZS6」あたりから「派手なドンシャリ方向」も「分りやすいサウンド」としてかなりの人気があり、KZの代名詞的な音質傾向になっていることが見えてきました。「ZSN」および「ZSN Pro」、そして「KZ ZS10 Pro」につながる流れはこのようなニーズを反映した製品ではないかと思っています。つまり、よりリスニング志向の「本流」の次世代機である「KZ ZSTX」に対して、分りやすく楽しめる「主流」の次世代機が「KZ ZSN Pro X」である、と考えると、同じ時期に同じ価格帯の2種類の後継モデルがリリースされていることも頷けますね。
→ 過去記事: KZ ZSN Proのレビュー(前編) / レビュー(後編・リケーブル編)
「KZ ZSN Pro X」のドライバー構成は1BA+1DDのハイブリッドで、使用するドライバーも高域用の「KZ 30095」バランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーおよび「10mm 二重磁気回路ダイナミックドライバー」で、基本的な内部構成は「KZ ZSTX」と同様です。「KZ 30095」BAも世代を重ねてより歪みが少なく質の良い高域を出力できるように進化してきましたし、採用されるダイナミックドライバーも最新の同社のノウハウを反映した新しい世代のものに変わっています。とはいえ約4年の進化を反映した「KZ ZSTX」に比べると、「KZ ZSN Pro」の時点である程度完成された仕上がりだったこともあり、「KZ ZSN Pro X」では最新のドライバーによるブラッシュアップが中心となりますね。
「KZ ZSN Pro X」のカラーバリエーションは現在「ゴールド」と「ブラック」の2色が選択できます。またAliExpressの一部セラーでは「ロイヤルブルー」の先行販売が開始されており、今後アマゾン等でも追加される可能性もありますね。
「KZ ZSN Pro X」の購入はAliExpressの「Easy Earphones」またはアマゾンの「WTSUN Audio」および「HiFiHear」にて。価格はAliExpressが20.00ドル~、アマゾンが2,980円となっています。なおAliExpress(Easy Earphones)ではフォロワー向けの値引きで17.00ドルで購入可能です。AliExpressでの購入方法や値引きの方法はこちらを参照ください。
AliExpress(Easy Earphones): KZ ZSN Pro X 20.00ドル~ → 17.00ドル~
また、アマゾンは掲載時点では国内在庫があり、プライム扱いで購入が可能でした。
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): KZ ZSN Pro X 2,980円
Amazon.co.jp(HiFiHear Audio): KZ ZSN Pro X 2,980円
■ 高級感のアップしたフェイスプレート。銀メッキ線のアップグレードも付属。
「KZ ZSN Pro X」もモデルカラーごとのイラストパッケージになっています。パッケージ内容はいつもと同じ、本体、ケーブル、イヤーピース(本体装着済み別タイプのMサイズ、および通常タイプのS/M/L)、説明書ほか。
新しい「ゴールド」および「ブラック」のカラーリングが与えられた「KZ ZSN Pro X」はさらに高級感がアップし、いよいよ本当に20ドル台、2千円台の製品には到底見えない仕上がりになってきました。表面処理はつや消しで厚みのある亜鉛合金製のフェイスプレートは重量感があります。アルミ合金製のステムノズルもフェイスプレートと同じカラーリングとなっています。
従来の「KZ ZSN Pro」と比較するとシェル形状、ステム、コネクタなど外観上はまったく同じで異なるのはカラーリングと側面のモデル名のシルクスクリーンくらいです。そのため「KZ ZSTX」と比較するとフェイス部分は若干大きく、逆に厚みは僅かに抑えられています。ステムノズルが金属製で太くなっている分、耳穴の小さい方は装着性は若干下がっているかも知れませんね。
そして新たに付属するケーブルはKZ純正アップグレードケーブル(Cタイプ)として販売されていたCタイプコネクタの銀メッキ線ケーブルとなります。「KZ ZSN Pro」で付属した銅線ケーブルは本体のサウンドバランスもあってリケーブルを強く推奨していましたが、「KZ ZSN Pro X」ではこの付属ケーブルのままでも十分に優れたサウンドを実現しています。
またイヤーピースについては「ZSN」「ZSN Pro」どうように評判の良くないKZ製イヤーピースとは別のタイプのMサイズイヤーピースが元々装着済みでしたが、これは今回の「KZ ZSN Pro X」でも同様です。サイズ的に問題が無ければこのまま使うのも良いと思います。さらに定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustuneの「AET07」、AZLA「SednaEarfit Light」「SednaEarfit Light Short」など開口部が広く、耳にフィットするタイプのイヤーピースに交換するのもお勧めです。
■ よりパワフルで濃密さを感じるサウンド。中音域を中心にクオリティを向上。
「KZ ZSN Pro X」の音質傾向は中低域寄りのドンシャリ。前述の通り「KZらしい派手さ」を引き継ぐメリハリのあるサウンドで、特にパワフルな低域は「KZ ZSN Pro」の印象をそのまま踏襲し、さらに質の向上が行われています。
「ZSN」以降のKZ製イヤホンは中音域、特にボーカル帯域へのアプローチが強くなっており、高域などは刺激を抑え聴きやすくする傾向があります。「KZ ZSN Pro X」や「KZ ZSTX」もその方向性自体は変わっていませんが、高域はBAドライバーの改良により硬質な煌びやかを維持したまま歪みを抑え、相対的に刺さりやすい帯域をコントロールしている印象があります。
そして中音域についてはバランスが良くスッキリとした抜け感が印象的な「KZ ZSTX」に対して、濃密さと音場感を意識した「KZ ZSN Pro X」、といった感じで、両者のキャラクターの違いが明確になっていますね。
「KZ ZSN Pro X」の高域は前回の「KZ ZSTX」同様に非常に煌めきを感じる音ながら伸びの良いスッキリとした音を鳴らしつつ、より強めの主張を感じます。手持ちの「KZ ZSN Pro」より高域の限界は高くよち綺麗に伸びる印象。搭載される最新ロットの「KZ 30095」BAの以前より進化した高域を実感します。キレと鋭さを感じさせつつ、以前より高出力でも歪みは少なく見通しの良い印象です。シンバル音など刺さりやすい音は刺激を感じにくいレベルにコントロールされているため、明瞭ながら聴きやすい高音になっています。また新しく付属する銀メッキ線ケーブルは「ZSN Pro」の銅線より高域の印象に多少好印象を与えているようです。しかし、高域の明瞭感はリケーブルでもかなり変化しますので、より高域の品質を向上させたい場合は8芯銀メッキ線やミックス線などのリケーブルがお勧めです。
中音域は「KZ ZSN Pro」と比較し最もクオリティの向上を感じるポイントです。もともと派手な低域と高域を感じつつもボーカル帯域もしっかりとした主張がありましたが、密度の高さに対して表現力が追いついていないような描写の緩さを感じる部分がありました。しかし「KZ ZSN Pro X」ではより分離が進み、中音域の解像感が大幅に向上したことで、濃さを感じる音ながらより明瞭感を感じる印象になりました。
ボーカル帯域は近くで定位するものの過度に膨らむことは無く、適度な光沢を感じる伸びやかさがあります。中高域の抜け感はよりスッキリした印象の「KZ ZSTX」のほうが高いものの、濃密な音を籠もること無く鳴ります。
音場は広めで定位もつかみやすい印象です。中音域については長時間エージングでも多少変化しますが、高域同様にリケーブルの効果は大きく、明瞭感に加えて音場感がかなり大きく向上します。
そして低域は「KZ ZSN Pro」の力強さを踏襲していて、さらに解像感やアタックの早さなど質の向上を感じます。量感とともに重低音の沈み込みの深さなどは「KZ ZSTX」同様、2千円台のイヤホンとしては特筆すべき質の高さだと思います。ミッドベースは厚みがありますが、キレは良く音数の多い曲でもしっかりとした表現を実感できます。ハードロックやEDMなどでもこのクラスとしては十分な分離性があり、重量感と迫力のある低音を要所要所で聴かせてくるのは心地良いですね。いっぽうで過度な響きや広がりは無く、中高域に被るようなことも一切ありません。
もともと濃いめのドンシャリ傾向でバランスの良かった「KZ ZSN Pro」から、さらにポイントを置いた改良により全体の品質が大きく向上しており、「KZ ZSN Pro X」は「元気で濃密なサウンド」を楽しむイヤホンとしては低価格イヤホンのなかでは最良の選択肢になったように思います。いっぽうでリケーブルでの効果も大きく、品質の向上した付属の銀メッキ線ケーブルだけでなく、より情報量の多いケーブルへアップグレードするのもお勧めしたいアプローチです。
リケーブルはKZ Cタイプ(「TRN T3s」や「TRN T4s」など)およびqdcコネクタのものが使用できます(もちろん中華2pinでもカバーはありませんが使用はできます)。付属ケーブルでも良いバランスで鳴ってくれますが、「KZ ZSTX」でも紹介したKBEAR「KBX4905」ミックスケーブルは「KZ ZSN Pro X」の傾向を維持しながらより情報量が多くより広い音場感と明瞭感のあるサウンドを実感できます。
他にもHiFiHearの「HiF4900」8芯銀メッキ線ケーブル等では中高域のキレが増す変化を実感します。比較的変化のわかりやすい8芯ケーブルだと低域の力強さを維持したまま締まりが向上し、スッキリした印象を楽しめそうです。同様の印象はYinyoo「YYX4865」16芯銀メッキ線ケーブルでもありますが、16芯ケーブルになるとイヤホン本体よりケーブルのほうが高額になってしまう点はネックですね。
相性としてはロック、ポップス、アニソンなどを「とにかく楽しく」聴きたいというのに最適です。また低域の厚みがありつつ、ボーカル帯域に多少ウォームさもあるため、バラード曲なども付属ケーブルでは結構良いですね。ただノリや雰囲気よりリスニングを楽しみたいという場合には「KZ ZSTX」のほうが向いているでしょう。同様にインストゥルメンタルもちょっと脚色が強すぎるように感じるかもしれません。リケーブル後はキレやメリハリが向上するため、よりスピード感のある曲も楽しめます。
また、「KZ ZSN Pro」もそうでしたが、「KZ ZSN Pro X」については音楽のリスニング用途以外に「ゲーミング」および「動画視聴」との相性も抜群に良いイヤホンです。冒頭に書いた知人や友人へのプレゼントで最も評判が良かった理由も実はコレで、迫力と臨場感のあるサウンドはとてもテンションが高まりますが、同時に定位も優れておりNetflixで映画を観る際の空間表現や、ゲーム中の正確な判断を損なわない再現性があります。さらに「KZ ZSN Pro X」では中音域の表現力が向上し、より繊細な音も捉えられるようになったことで、よりシビアな要望にも対応できるのではと思います。「KZ ZSN Pro X」はマイク付きモデルも選択できますのでプレイ中の対話も問題ないですね。
というわけで、「KZ ZSTX」および「KZ ZS10 Pro X」というふたつのリニューアルモデルを相次いで紹介しましたが、改めてKZの進化を実感するとともに、同社のイヤホンづくりにおける一貫性を感じました。すでに中華イヤホンのブランドとしてマニアの間では定着した感のあるKZですので、人気のある製品を今回のように最新の技術やノウハウでブラッシュアップしていくのは良い手法だと思います。そうすることで従来の中華イヤホンのマニア層にとどまらず、より広いマーケット、より広いユーザー層に訴えかけられるメーカーに発展していくかもしれませんね(^^)。