TRN M10

こんにちは。今回は「TRN M10」です。購入したのが6月くらいだったと思いますので、結構長いこと書きかけまま放置していたネタですね(^^;)。中国のイヤホンブランド「TRN」の1BA+1DD構成の低価格ハイブリッドイヤホンです。「TRN」の製品もさまざまなデザインのモデルがありましたが、「TRN M10」のようなストレートタイプのイヤホンは「ありそうでなかった」ですね。ある意味、満を持して出した感もあり、10ドル程度の低価格ながら金属製ハウジングにハイブリッド構成のドライバーを搭載し、さらにリケーブルにも対応するなど、普段使いとして遜色ない製品に仕上がっています。
TRN M10TRN M10
カラーはブルーとブラックが発売され、その後追加色でクローム処理されたシルバーが追加されました。音質的にもTRNらしさを感じつつ使いやすいバランスにまとめられており、アマゾンでも2千円ほどで購入できることもあり、マニア以外の方にも幅広くお勧めしやすいイヤホンだと思います。
TRN M10TRN M10
TRN M10」のドライバー構成は、8mmサイズのダイナミックドライバーと高域用の「30095」バランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーによるハイブリッド構成。この2種類のドライバーを直列に配置するレイアウトとなっています。またハウジング部分の長さは2cmほどと非常にコンパクトにまとまっています。
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本体はCNC加工によるアルミニウム削り出しによる軽量な金属製ハウジングを採用。コネクタはカバー形状がqdcコネクタと互換性のある「タイプC」と同じ形状の 0.75mm 2pinコネクタを採用。この価格帯のストレートタイプのイヤホンでリケーブルに対応する製品というのはかなり珍しいですが、通常の「タイプC」コネクタとは左右で極性が異なり、逆層となるためケーブルを流用することはできないようです。
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TRN M10」のカラーバリエーションは「ブルー」「ブラック」「シルバー」の3色。購入はAliExpressの各セラー、あるいはアマゾンの「HiFiHear Audio」など。価格はAliExpressが11.80ドル~、アマゾンが2,280円~となっています。
AliExpress(TRN Offical Store): TRN M10
Amazon.co.jp(HiFiHear Audio): TRN M10


■ 軽量でコンパクトなメタルシェル。ケーブルの装着方向は要注意。

TRN M10」のパッケージはラインアートが載った白箱タイプ。内容はパッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/Lサイズ)、説明書、保証書ほか。付属ケーブルはタイプCコネクタのカバー部分がまっすぐになったタイプ。従来のTRN製イヤホンとは異なる形状となっています。
TRN M10TRN M10
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アルミ製のハウジングはそうそう以上にコンパクトかつ軽量で驚かされます。シンプルな円筒形のデザインながら質感は良好です。ダイナミックドライバー用のベント(空気孔)はコネクタ横とステム部分の2カ所で非常に小さく、音漏れの心配も無さそうな仕様です。
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コネクタ部分は最近のTRN製イヤホンでも幅広く採用されている「タイプC」コネクタと同じ形状で、qdcコネクタとカバー形状に互換性があります。ただ、「TRN M10」のコネクタには「向き」を示すマーキングが無く、またイヤホンの形状的にもどのようにどちら向きにケーブルを付けるのが正解なのかわかりません。製品画像などを見る限りではケーブル側コネクタカバーに小さく刻印された「R」「L」の文字がイヤホン後方の向きに来るように取付けるのが正解みたいですね。
※なお、極性については「タイプC」とは異なり左右で極性が異なるため、通常のqdcケーブルやタイプCコネクタのケーブルでリケーブルすると逆相になります。どうしてもリケーブルしたい場合はqdcコネクタではなく、通常の2pinで耳掛け加工の無いケーブルで左右で極性を逆にして装着するのがよいと思います(qdcコネクタの場合大抵はコネクタ自体がL字なので同様に使うと変な感じになりますから・・・)。
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非常にコンパクトなイヤホンですので装着性は良いと思いますが、しっかり耳奥まで装着できるイヤーピースを選択した方がよいでしょう。装着位置が浅いと抜けたような印象の音に感じる事があります。イヤピースは付属品以外にはAcoustuneの「AET07」、RHAの「RHAイヤーピース」、JVC「スパイラルドット」などがお勧めです。また耳穴が小さくこれらのイヤーピースが入りにくい方はRHA「ダブルフランジイヤーピース」やAcoustuneの「AET06」などのダブルフランジ仕様のものや、七福神商事の「長楽」イヤーピースやソニーの「ハイブリッドイヤーピース」など柔らかいタイプも良さそうです。


■ 明瞭さを感じる中高域寄りのサウンド。アルミハウジングの硬質な解像感が楽しい。

TRN M10」の音質傾向は、いかにもTRNらしい、やや硬質でメリハリのある「寒色系ドンシャリ」傾向。TRNやKZ/CCAなどの低価格中華ハイブリッドイヤホンを聴いてこられた方には違和感なく聴けるサウンドで、さらにコンパクトな金属製ハウジングでキレの良さやレスポンスの早さがより際立った印象に仕上がっています。
TRN M10いっぽう、オーディオのマニア以外の方で、家電量販店などで千円くらいで販売されている一般的なカナル型イヤホンからいきなり「TRN M10」のサウンドを触れると、明らかに解像度が高く、明瞭感のあるサウンドでちょっと驚きを持たれるかも知れませんね。マニア以外の方に聴かせる最初の中華イヤホンとしては、「KZ ZSN Pro」や最新の「KZ ZSN Pro X」が明瞭な中高域に加え厚みのある低域と臨場感で分りやすくインパクトを与えられる、という「ネタ」はこれまでも繰り返し書いていますが、「TRN M10」はオーソドックスでシンプルなデザインのなかに、中高域のキレの良さで驚かせるタイプのイヤホンかもしれませんね。
10ドル程度のイヤホンとしては中高域の解像度も高く音場も十分な広さがあり、相対して低域はやや軽めの割り切ったチューニングながら重低音もしっかり表現しており、最近のTRNの「外さなくなった」音作りを実感します。

TRN M10」の高域は硬質で明瞭感のある音を鳴らします。シンバル音などはシャープでくっきりとした印象で、明るく伸びの良さも感じます。明るく煌めきのある高音で、曲によっては多少のシャリ付きと鋭さは感じるものの、刺さりやすい帯域は不快に感じない程度にコントロールされているようです。低価格中華ハイブリッドですっかりお馴染みのBAドライバー「30095」ツィーターユニットは、繰り返しの改良により初期のような歪みは相当に改善され、シャリ付きも比較的抑えられるようになりました。「TRN M10」でも同様の傾向ではあるものの、全体的に中高域寄りのチューニングということもあり、最近のKZやCCAのイヤホンと比べると多少強めの主張を感じます。ただ歯擦音は無く強めの主張が心地良い高音だと思います。

TRN M10中低域はわかりやすいドンシャリ傾向と言うこともあり曲によっては少し凹みます。全体的に聴きやすい音ですが結構サッパリした印象で、「濃い音」が好みの方には多少物足りないかも。ただ中高域寄りのドンシャリ傾向の場合わりと派手さが強い製品が多い中で、「TRN M10」は比較的ありのままの音を素直にならしている印象があり、ハウジングからの硬質な響きも過度に人工的にならず、全体的に聴きやすい音にまとまっています。音場はやや広くアルミハウジングによる硬質で多少ドライな響きが心地良く感じます。ただ開封直後は多少高域の刺激が強く、音場に関してはエージングにより広がった印象です。ボーカル帯域は女性ボーカルのハイトーンが綺麗で、高域成分の多いアニソンなどは良さそうです。また癖のない音で演奏も気持ちよく、インストゥルメンタル曲も気持ちよいと思います。

低域は中高域と比べると量的には少なく、やや軽めの印象を受けます。ただ重低音の沈み込みは深く、8mmダイナミッドライバーの表現力の高さを感じます。これに対しミッドベースはやや浅く中高域同様に全体としてはサッパリしており、分離が良く小気味よい低音が楽しめます。低域の量感についてはイヤーピースを変えることで多少変化を持たせることができます。
リケーブルについては通常の「qdcコネクタ」またはTRN純正の「タイプC」のケーブルは逆層となるため利用できません。いっぽう耳掛け加工のないタイプの中華2pinケーブルなどは極性を合せることで一応使用可能です。中華2pinの16芯ケーブルなど利用可能なものは種類としては限られますが、実際にリケーブルを行うと音質変化は比較的大きい印象でした。

というわけで、「TRN M10」はどなたでも使いやすいタイプの低価格イヤホンながら音質面ではしっかり差別化されており、マニア以外の方にも楽しめるイヤホンだと思いました。また、明瞭感のあるサウンドは会話音声も聞き取り安いので、マイク付きを購入してビデオ会議などに使ってみるのもよいかもしれませんね。