CCA CX10

こんにちは。前回に引き続きCCAの完全ワイヤレス(TWS)イヤホン「CCA CX10」 です。TWSとしては異例の「4BA+1DD」のハイブリッド構成を搭載しつつ50ドル台、7千円台の低価格を実現しています。リリースのタイミングは前回の「CCA CX4」より若干先行しており、すでに日本でも購入した型も多いのではと思います。私はAliExpressとアマゾンで色違いをそれぞれオーダーしました。
CCA CX10CCA CX10

「CCA」は中華イヤホンの代表的メーカー「KZ」の姉妹ブランドとして、KZのラインナップを補完し、あるいは「別のアプローチ」を示す形で興味深い製品をリリースし続けていることでマニアの間ではすっかりお馴染みの存在ですね。そして、「4BA+1DD」構成の完全ワイヤレス(TWS)というと、そのKZがTWSに本格的に参入するうえで苦い経験となった「KZ E10」の存在を思い出さずにはいられないでしょう。
2019年当時、Bluetoothケーブルといったオプション製品や、低価格のネックバンド型ワイヤレスイヤホンは手がけていたものの、TWS製品は未参入だったKZは、ドライバー以外の主要部品および製造をmifo社に委託した実験的モデル「KZ T1」を経て、いきなり4BA+1DD構成の「KZ E10」で本格的にTWSに参入します。しかし有線イヤホンの「KZ ZS10 Pro」のドライバー部分をほぼそのまま実装するなど、外観からも無理無茶が明らかな製品でまともに街中で使用できないくらいワイヤレス製品としては散々な仕上がりでした。それでも「とにかくドライバー部分は妥協したくない」という執念すら感じる同社はワイヤレス機構を現在の「AACコーデックまででバッテリ稼働時間も短いけど低コストで安定して稼働する」独自のワイヤレス機構を「KZ S1」「KZ S1D」から採用し、以降のモデルでも一貫して搭載しています。

CCA CX10CCA CX10
そしてブランドは「CCA」にしたものの、実質的に「KZ E10」のリベンジ第1弾、ともいえる今回の「CCA CX10」は、同じ4BA+1DD構成ながら、KZ/CCAのこれまでのTWS製品での経験と最新のドライバーを組み合わせた内容に進化しています。まず低域部分のダイナミックドライバーは1BA+1DD構成のTWS「KZ S2」および前回レビューした「CCA CX4」で採用された「7mm 二重磁気回路ダイナミックドライバー」を搭載。有線モデルで幅広く採用されている10mmサイズのドライバーより大幅に小型化しつつ、非常にパワフルで解像感のあるサウンドを実現しており、7BA+1DD構成の有線ハイグレードモデル「CCA CA16」でも採用されるなど、今後の同社の主力ドライバーのひとつです。そして4基のバランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーは、KZ/CCAでは定番の高域用ユニット「30095」を2基に加えて、ミッドレンジには最新のデュアルドライバー(2BA)ユニット「50024」を搭載。こちらもKZの7BA+1DD構成のハイグレードモデル「KZ ZAX」でも搭載されているBAドライバーです。たとえ低価格ワイヤレスイヤホンでもドライバーまわりは全く妥協しない同社の姿勢というか、一種のアイデンティティを強く感じます。

搭載ドライバー4BA(30024 + 30095x2)
+ 7mm二重磁気DD
Bluetooth5.0
コーデックAAC / SBC
再生モード通常 / ゲームモード
バッテリ容量400mAh (ケース)
充電回数充電ケースにて10回程度可能
接続距離~20m
充電コネクタmicro USB
重量(片側) 4.9g、(ケース) 50g
CCA CX10」のワイヤレス部分の仕様は、Bluetooth 5.0対応、コーデックはSBC/AAC、といった基本的な仕様は従来モデルと同様で、低遅延の「ゲームモード」を搭載する点も従来同様のポイント。そして充電ケースは「KZ Z1」および「CCA CX4」と同様の形状の400mAhの大容量タイプを採用しています。いっぽうでイヤホン本体側はバッテリ容量および連続稼働時間の記載が無い、という、かなりのワイルド仕様だったりします(汗)。ただ、充電ケースで10回チャージ可能、という記載があり、本体側の容量は40mAh、たぶん「CCA CX4」と同じだろう、という推測ができます。

CCA CX10CCA CX10

CCA CX10」のカラーバリエーションは「ブラック」と「グリーン」の2色。「CCA CX10」の購入はAliExpressの「Easy Earphones」またはアマゾンのWTSUN Audioにて。
価格はAliExpressで52.2ドル、アマゾンで8,160円です。
AliExpress(Easy Earphones): CCA CX10

Amazon.co.jp(WTSUN Audio): CCA CX10(ブラック)
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): CCA CX10(グリーン)


■ KZ製TWSのノウハウを踏襲し、新たに構成されたマルチドライバー仕様

CCA CX10」のパッケージは「KZ Z1」などから採用されている白箱タイプで有線イヤホンの「CCA CA16」より少し大きめのサイズ。説明書は紙のケースに入っており、珍しく日本語での説明もあります。パッケージ内容はイヤホン本体、充電ケース、イヤーピース(S/M/Lサイズ、本体装着済みMサイズ)、充電ケーブル(micro USB)、説明書、保証書など。
CCA CX10CCA CX10
CCA CX10CCA CX10

今回ブラックおよびグリーンの両方の「CCA CX10」をオーダーしました。ブラックは「CCA CA16」などの有線イヤホンや「KZ S2」のと同じ半光沢のピアノブラックで、グリーンも結構濃い色のカラーリングです。ステム部分はKZ製TWS同様の細いタイプの金属製。ハウジングサイズは「KZ S1」「KZ Z1」より大きく「KZ S2」よりやや小さめ。耳にフィットしやすい緩やかなカーブのある形状です。
CCA CX10CCA CX10

CCA CX10」のハウジング形状は前回レビューした「CCA CX4」と全く同じで、外観上の違いは本体のカラーリングおよびCCAロゴの色、そして側面の記載のみです。いっぽう同様のステムノズルを採用している有線イヤホンの「CCA CA16」はよく似た形状ですが実際に比べてみるとひとまわり大きく、背面もかなり独特の形状をしているのが分りますね。
CCA CX10 / CCA CX4CCA CX10

CCA CX10」のフェイス部分のタッチセンサーの操作も従来のKZ製TWSおよび「CCA CX4」と同様で、「再生/停止」(シングルタップ)や「曲送り」(右側2回タップ)/「曲戻し」(左側2回タップ)といった内容。タッチセンサーで音量操作はできず、プレーヤー側で行う必要があります。そして従来モデル同様に「CCA CX10」にも低遅延モード(ゲームモード)が搭載されており、「左右どちらかを3回タップ」すると「High-performance Mode」というボイスアナウンスが入ります。逆にこのモードでもう一度3回タップすると「Standard Mode」というボイスアナウンスとともに標準のモードに戻ります。「ゲームモード」ではよりゲームに適した低遅延での再生が可能ですがバッテリ消費はある程度早くなるようです(音質的な違いはほぼありません)。

再生/停止1回タッチ(左右どちらか)
曲戻し左側 2回タッチ
曲送り右側 2回タッチ
受話・終話着信時1回タッチ(左右どちらか) 
着信拒否着信時長押し(左右どちらか)
音声アシスタント左右どちらかを2秒長押し 
ゲームモード3回タッチ(左右どちらか)
手動オン/オフ3秒(ON) / 6秒(OFF) 長押し
電源オン/オフ充電ケースから出す/戻す 
iPhoneおよびAndroidデバイスのどちらでもペアリングはスムーズでAACコーデックで接続できました。Bluetooth 5.0による電波強度も十分でノイズ等も十分に実用的な印象。またタッチセンサーの反応は適度な印象で特に操作しづらく感じる事はありませんでした。装着感は十分に耳にフィットしやすくしっかりとホールドできる印象。ただイヤーピースに関してはステムノズル部分が細いことと、充電ケース側の空洞部分が小さいことも有り付属イヤーピース以外はよく確かめてから使った方が良さそうです。

CCA CX10 / CCA CX4また、前回の「CCA CX4」同様に「CCA CX10」でも実際に連続再生を行い、実効の稼働時間を測定したところ、電波環境の良好な屋内での利用で1時間35分程度で「Low Battery」のアナウンスが流れはじめ、1時間45分くらいでバッテリー切れになりました。「CCA CX10」のほうが「CCA CX4」より25%くらい短い印象です。充電ケースでは5分程度の充電で再び使用できるようになります。充電ケース込みの総再生時間は16時間~17時間程度、といった感じですね。
やはりドライバーまわりに妥協しないこととバッテリー稼働時間は完全にトレードオフになっていますが、「KZ S2」はより大きなハウジングでバッテリーを大型化し、稼働時間を多少ですが伸ばすアプローチも試みているため、この辺は今後のモデルで折り合いを付けていく課題といったところですね。


■ 従来のKZとは一線を画す、ややウォームな印象。臨場感のある雰囲気重視の音作り

CCA CX10CCA CX10」の音質傾向は、マルチドライバーらしい各音域の強めの主張を感じる中低域寄りのドンシャリですが、従来のKZのようなスッキリした印象とはかなり異なり、臨場感や響きなどの「雰囲気重視」のサウンドになっています。前回の「CCA CX4」では「CCAというより、そのままKZで出した方がしっくりくるサウンドだな」と思ったのですが、ベースになった「CCA CX10」のサウンドを確認して「あ、なるほど。これは確かにKZではないわな」という感想を持ちました。明瞭でスッキリしたサウンドを好まれる方には「ちょっと籠もった感じ」に思う可能性もあり、「CCA CX4」のほうが好感が持てるのではと思います。
従来のKZのサウンドと比較すると好みの分かれそうなところですが、KZ/CCAらしい硬質で煌めきのある高域やパワフルな低域などは健在で、解像感についても同価格帯の低価格TWSは段違いです。そのためリスニングはもちろん、ゲームや動画などで臨場感のあるサウンドを楽しむという上では「かなり楽しい」イヤホンだといえるでしょう。

CCA CX10」の高域はKZらしい寒色系のサウンドで、硬質で煌めきのある音で曲によっては「30095」BAらしい多少シャリ付きのある印象ですが、刺激はかなり抑えられた聴きやすいバランスになっています。最近のKZおよびCCAの有線イヤホンと比べると伸びも抜け感も今ひとつな印象はありますが、一般的なTWSと比べて解像度はかなり高く、普通に聴く分には十分にクリーンなサウンドだろうとは思います。

CCA CX10中音域は「KZ ZAX」や「CCA CA16」で2基(合計4BA)使われているデュアルユニット「30024」が採用されていますが、これら7BA+1DD構成のイヤホンとは全く異なる印象です。ボーカル帯域を中心に前に出て鳴り、演奏は後方で広がるような響きがあります。そのため広めの空間表現を演出していますが定位は正確では無く、2BAによる解像感に対して分離がいまひとつ追いついていない印象です。そのため臨場感はありますが、音場はすこし平坦です。ただボーカルは従来のKZ/CCAより若干ウォームで聴きやすさを感じます。ただ、それなりに解像感はあるため、聴き疲れしないかというとそうでもない、という個人的にはちょっと微妙なサウンドです。ただ「雰囲気重視」と捉えて正確性をある程度無視すれば、迫力のある臨場感が楽しめ、ポップスやアニソンなどのボーカル曲に加えて動画やゲームでも非常に楽しいサウンドだと思います。

低音域は「KZ S2」および「CCA CX4」同様に非常にパワフルで重量感のある音を鳴らします。ただ中高域の主張もかなり強いため、多少派手めの鳴り方をします。上記のようなゲームや動画では臨場感のある中高域をズッシリ重い低音で下支えする印象です。やや籠もり気味の中高域に対して低域はタイトで締まりが良く、重低音も沈み込みも感じます。


CCA CX10というわけで、「CCA CX10」は、4BA+1DDという完全ワイヤレスイヤホンとしては相当に「異常」なスペックを搭載しつつ50ドル台の低価格にまとめた製品として、かつての「KZ E10」の数々のウィークポイントを解消し、とりあえずは実用的な製品に仕上げることに成功しました。ただ「本来のKZとはかなり方向性の異なるサウンドチューニング」でまずはCCAブランドで投入した流れを考慮しても、おそらく今後「リベンジ第2弾」ともよべるマルチドライバー仕様のTWS製品がKZから登場するのだろうな、というのは想像が付きます。実際、近日発売の製品として「KZ SKS」と「KZ SA08」という新しいデザインのTWSが予告されています。有線イヤホンのほうも、今年後半にはいって一気に新製品ラッシュが続いていますが、ワイヤレスの方も目が離せない感じですね。