Smabat M2 Pro

こんにちは。今回は「Smabat M2 Pro」 です。「Smabat」(スメイバ)のイヤホンはこれまでもいくつかのモデルを取りあげてきましたが、最近ではミドルグレード以上のインナーイヤー(イントラコンカ)型としてはすっかり「定番」ブランドになった感がありますね。同社の特徴としてはドライバー背面のハウジング空間を利用したサウンドコントロールで、バックロードホーン・スピーカーのイヤホン版という例えもよく用いられます。
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そして今回の「Smabat M2 Pro」は以前レビューした「Smabat M1 Pro」の後継モデル的な位置づけの製品ですが、もともとAliExpressのSmabatショップSmabatの直販サイトで販売されていた「M2 Module」キット(要ハンダ付け)の「製品版」という位置づけでもあります。その特殊な製品としての名残で「Smabat M2 Pro」ではインナーイヤー型としては非常に珍しい「フィルターモジュール交換」タイプを採用。ハンダ付けこそ不要なものの、本体を分解してフィルターモジュールを交換するという、なかなかハードな仕様となっています(^^;)。

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同社のハイグレードモデルの「ST10」シリーズでも採用されている、PEEK/PU/チタニウムの三層構造複合振動板を採用した15.4mmダイナミックドライバーを搭載。「M1 Pro」の14.2mmサイズより大型化しています。さらに、同社特有のドライバー背面のアコースティックローパスフィルターをモジュール化し、交換可能な構造を採用しました。
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交換可能なフィルターモジュールは、ドライバー背面部分に装着されています。とはいえその交換方式はイヤホンを壊しそうな「トンデモ仕様」で、本体を分解し、付属ピンで取り外すことで交換が可能です。日本で販売されれている製品の感覚だと「本当にこんなんでいいの?」と思ってしまわずにいられなかったりもします。

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Smabat M2 Pro」 の購入はAliExpressにて。価格はAliExpressの「NiceHCK Audio Store」で 62.72ドル です。AliExpressでの購入方法はこちらを参照ください。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): Smabat M2 Pro


■ もともとDIYキットだっただけに、フィルター交換は注意が必要

Smabat M2 Pro」のパッケージはシンプルなデザインのコンパクトな白箱タイプ。パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、交換用フィルター、交換用ピン、シリコン製イヤーパッド、説明書。
Smabat M2 ProSmabat M2 Pro
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イヤホン本体は15.4mmサイズの大口径ドライバーを搭載しつつも、従来の「Smabat M1 Pro」(14.2mmドライバー)と同じくらいのコンパクトなサイズ感にまとめられています。側面にスリット上のベント(空気孔)があるのも同社の他の製品と同様です。
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また、ドライバーの大口径化に伴い、側面のシルエットなどはより曲線的なデザインになっているのがわかります。デザイン的にはより高級感がアップした印象ですね。ケーブルは従来通りMMCXコネクタを採用しており、「Smabat M2 Pro」では4芯 単結晶銅線ミックスケーブルを採用。従来の「M1 Pro」の銀メッキ線ケーブルと比べて太さや取り回しの面でもかなりグレードが向上しているのがわかります。
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そして「Smabat M2 Pro」の最大の特徴である交換式フィルターモジュールは本体配分部を取り外すことで交換が可能です。本体はネジ状になっており軽く回すと外すことができます。ただ、ドライバー部分とフィルターモジュールの入ったハウジング部分はMMCXコネクタへの配線で繋がれており、この線が露出しているため誤って切断しないようにある程度慎重に取り扱う必要があります。
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フィルターモジュールはインナーイヤー型らしい中低域の響きをもつ「TYPE0」(フィルター色の薄いほう)と、よりニュートラルなサウンドの「TYPE1」(フィルター色の濃いほう/背面に区別用の窪みあり)の2種類が付属します。標準では色の濃い方の「TYPE1」が取付けられています。

Smabat M2 ProSmabat M2 Pro」では付属ケーブルが耳掛け加工されたタイプとなったため、「M1 Pro」にあったイヤーフックなどは付属しなくなりました。またイヤーパッドもシリコンタイプのみになっています。耳掛け式になったことに加えてもともとコンパクトで軽量なアルミ製ハウジングということもあり、重量で耳から落ちる心配はありませんが、「M1 Pro」より大口径のドライバーを搭載しているため周囲の黒いリング部分が若干太くなっており、耳の小さい方の場合は多少きつく感じるかもしれませんね。遮音性はシリコン製イヤーパッドを使用することで若干向上しますが、一般的なインナーイヤー型並で、カナル型に比べると高くはありません。また大きめのベントにより若干の音漏れはありますが一般的な利用ではそれほど気にならないと思います。


■ 「M1 Pro」に「ST10s」を足したサウンド? フィルターで全く違うサウンドが楽しめる

Smabat M2 ProSmabat M2 Pro」のサウンドはフィルターモジュールの違いにより想像以上に大きな印象の変化があります。標準で装着されている「TYPE1」モジュール(背面に窪みのある方)はより中高域の主張が強くボーカルの綺麗に伸び、低域の締まりの良好なサウンド。同じドライバーを搭載している「Smabat ST10s(シルバー)」の傾向を踏襲しつつ柔らかさと濃厚さを加えたような印象です。いっぽう、色の濃い「TYPE0」モジュールでは中音域の響きが増し厚みのある印象に感じました。どちらも良いサウンドですが個人的には「TYPE1」モジュールのほうが好みでした。
「TYPE1」モジュールではよりダイレクトなサウンドで明瞭な中高域が印象的です。これに対して「TYPE0」モジュールでは低域に重点を置いた印象ですが、中音域の凹みが大きく、より距離感と響きを感じやすくなるようです。ある意味「TYPE0」モジュールはいかにもインナーイヤー型らしいサウンド、「TYPE1」モジュールは多少カナル型に近い「Smabat」らしい傾向とも言えるでしょう。

Smabat M2 Pro」の高域は派手さを抑えつつも明瞭感のある印象で、鮮やかさを感じつつ自然な音を鳴らします。「ST10s」より多少柔らかい印象でこの辺は「M1 Pro」と「ST10s」の中間といった印象。明瞭さを感じつつも僅かに温かさがあり、刺激はコントロールされているため聴きやすい印象です。

中音域はニュートラルで癖のない明瞭な音を鳴らしつつ適度に柔らかく、「ST10s」と比べるとややウォームで濃厚さと艶があります。解像感は「M1 Pro」と同程度ですが、主張の強さや音場感は2種類のフィルターモジュールで大きく変化し、まるで全く異なるイヤホンを聴いているような印象を受けます。
Smabat M2 Pro「TYPE1」モジュールはより中音域の主張が強くダイレクトな印象を受けます。特にボーカルは「TYPE1」モジュールのほうがしっかり前に出て再生されます。適度な広さがあり、特に膨らむような味付けの無い素直な音で鳴ってくれます。抜けが良い音のため女性のハイトーンやピアノの高音など適度に刺激のある音も綺麗に鳴らしてくれる印象です。ボーカル曲をメインに聴く場合は「TYPE1」モジュールのほうが向いている印象です。これに対し「TYPE0」モジュールでは中音域は多少凹みがあり、少し距離を置いて鳴っているような印象になります。全体的に中低域の響きが良くなり広がりのある音場感があります。いわゆるインナーイヤー型らしい厚みのある鳴り方を好まれる方はこちらのモジュールのほうが好印象でしょう。

低域は量感があり、比較的タイトな音を鳴らします。大口径ドライバーの採用により「M1 Pro」と比べて力強さがありますが、「ST10s」のようなスピード感やキレの良さは若干控えめで自然な印象。ミッドベースに多少膨らみがあり、存在感をがあります。重低音の沈み込みは良く、解像感は一般的ながら締まりの良さがあります。低域については2種類のフィルターモジュールで大きな変化はないものの中低域の印象が大きく変化するため、相対的に「TYPE1」モジュールでは分離の良さと明瞭感が引き立ち、TYPE0」モジュールでは厚みや濃厚さが際立ちます。


Smabat M2 Pro印象として、アンダー100ドルクラスのインナーイヤー型としては非常にバランスが良く、低価格モデルと比べて表現力の高さや明瞭感で明確な違いを表現しつつ、100ドルオーバーのモデルより気軽に使える使いやすさもあります。また頻繁に交換する部分ではないものの、付属する2種類のフィルターモジュールにより好みの音に合わせたチューニングが可能な点は、「買ってみて好みと違う」というリスクを回避できる可能性が高まるという点で、試聴ができない中華イヤホンではより敷居が下がるポイントとなるでしょう。手ごろな価格でちょっと良いインナーイヤー型を探している方には最適な選択肢のひとつではないかと思います。