こんにちは。今回は「NF Audio NM2+」です。購入したのは2ヶ月ほど前ですが、書きかけのまま気付いたら結構経ってしまいました。どうも国内版も近々販売されそうですので、このタイミングで掲載することにしました。「NF Audio NM2+」は、モニター系のフラット傾向の「NM2」を大幅にグレードアップした製品で、より明るく明瞭なサウンドが印象的です。音質的にも個人的にトップクラスに好みのイヤホンですね。
「NF Audio」は中国国内ではCIEMメーカーとしても知られる、2014年設立の古株の中華イヤホンのブランドのひとつとです。私のブログでも今年に入ってリリースされた「NF Audio NM2」を購入レビューしています。
→ 過去記事:「NF Audio NM2」 精緻で質の高いモニターサウンド。シンプルながら美しさも感じるデザインも魅力的な高音質中華イヤホン【レビュー】
「NF Audio NM2」は中高域寄りの非常に明瞭なモニターサウンドのイヤホンで、1音1音を捉えやすい精緻な表現力はこの価格帯のイヤホンとしてはかなり良いと感じました。そして、その「NM2」のアップグレードモデルとしてリリースされたのが今回紹介する「NF Audio NM2+」となります。個人的に「NM2」がとても気に入ったこともあって、「NF Audio NM2+」の発売開始とほぼ同時にオーダーして購入しました。
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「NF Audio NM2」は中高域寄りの非常に明瞭なモニターサウンドのイヤホンで、1音1音を捉えやすい精緻な表現力はこの価格帯のイヤホンとしてはかなり良いと感じました。そして、その「NM2」のアップグレードモデルとしてリリースされたのが今回紹介する「NF Audio NM2+」となります。個人的に「NM2」がとても気に入ったこともあって、「NF Audio NM2+」の発売開始とほぼ同時にオーダーして購入しました。
「NF Audio NM2+」はベースとなった「NM2」を元に、ハウジングがアルミニウム製となり(「NM2」はポリカーボネート製)、ドライバーについても「MC2L-10 II」にアップグレードされました(「NM2」は「MC2L-10」を搭載)。
「NF Audio NM2+」にシングルで搭載される10mmサイズの「MC2L-10II Double Cavity Dynamic Driver」は、NF Audio独自の厚さ5μmのポリマー複合振動版をテスラレベルの二重磁気回路とリアのダブルキャビティ構造により高い出力特性と制振性を持っています。さらに「MC2L-10 II」では「NM2」「NA2」が搭載する「MC2L-10」と比べてより安定性と信頼性が向上しており、さらなる高音質を実現するため、総合的にチューニング制度を向上したネットワーク回路(PCB)を使用しているようです。
また「NF Audio NM2+」では、「NM2」「NA2」がポリカーボネート製の樹脂製ハウジングだったのに対し、5軸CNC加工で削り出された総アルミニウム製にアップグレード。材質には航空機用アルミニウムを使用しており、軽量かつ高い剛性を持っており、より正確で解像度の高いサウンドを実現しています。さらに付属ケーブルもリッツ構造の280コア 5N OFC(無酸素銅)銀メッキケーブへ大幅なアップグレードがされており、より低インピーダンスでノイズ特性に優れた仕様となっています。
「NF Audio NM2+」の海外版の価格は 169ドル です。私は中国のSHENZHENAUDIOにて購入しました。
他にもAliExpressでも複数のセラーより販売されています(セール価格で141ドル程度で買えるようです)。
SHENZHENAUDIO: NF Audio NM2+
AliExpress: NF Audio NM2+ / NF Audio NM2+
※2020年11月27日より国内版も発売されましたね。国内正規品の価格は 19,800円です。
Amazon.co.jp(国内正規品): NF Audio NM2+
楽天市場(国内正規品): NF Audio NM2+
■ 美しく高級感のあるアルミニウム削り出しのハウジング。ケーブルも大幅にグレードアップ。
「NF Audio NM2+」は「NF Audio」の他の製品同様にパッケージにも相当力が入っています。個人的にはロゴタイプ(タイポグラフィ)は結構好きなので、その辺に明確なこだわりを感じる同社のデザインは好感が持てます。要するに、カッコイイですよね(^^)。
パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピースがバランスタイプと低域タイプの2タイプ(各S/M/Lサイズ)、6.3mmプラグへの変換コネクタ、ケース、説明書。
「NF Audio NM2+」のアルミニウム削り出しのハウジングは、ポリカーボネート製の「NM2」と同じサイズ、形状ですが非常に格好良く高級感があります。側面のロゴマークとモデル名の刻印はプリントではなく彫り込みになっていて、ロゴの窪みにはダークブルーの塗料が施されアクセントになっています。
金属製ハウジングなので、「NM2」より重量感はありますが、もともと10mmドライバーを搭載しているイヤホンとしては比較的コンパクトなサイズのため、装着しても耳から落ちることはなく、耳の小さい方でもしっかりとしたホールド感があります。遮音性は一般的なレベルです。
ケースは「NA2」「NM2」と同じ、布張りのハードケース。イヤーピースは白色のバランスタイプと黒色の低域を強調させるタイプの2種類が選択できます。個人的にはバランスタイプのほうがフィット感が良く好みでした。またバランスタイプは形状や質感などもAcoustuneの「AET07」とほぼ同じ印象です。それ以外には同様に定番の定番のJVC「スパイラルドット」やAZLA「SednaEarfit Light」「SednaEarfit Light Short」など開口部が広く、耳にフィットするタイプのイヤーピースに交換するのも良いでしょう。
付属ケーブルは太さのあるシルバーメッキ線ケーブルで、「NA2」「NM2」より大幅にグレードアップしています。太さはありますがしなやかな手触りで取り回しも良く、使い勝手の良い印象。また情報量が向上しており音質的にもグレードアップしています。
■ さらに磨きがかかったモニターサウンド。クラスを超える完成度の高いサウンドに驚く。
「NF Audio NM2+」の音質傾向はフラットなモニターサウンドで、ベースとなった「NM2」よりさらに明瞭感が向上し、高域および中音域のキレの良さをより実感できるサウンドになっています。もともとの「NM2」も100ドル以下の価格設定ながら非常に質の高いモニターサウンドに驚かされましたが、「NF Audio NM2+」ではさらに磨きがかかっており、癖のないニュートラルなサウンドのなかに非常に明るく鮮やかな表現力があり、非常に高い解像度と分離性で1音1音を精緻に表現する印象はとても好感がもてます。個人的には100ドル台のイヤホンのなかで現時点で最も好みに合った製品だと思っています。
非常に高いところまで伸び解像度の高い高域、音場が広くありのままの音をしっかり表現する中音域、そして非常にスピード感があり、深いところまでタイトに鳴る低域と、100ドル台で購入できるモニター系のイヤホンとしては抜き出た良さが有り、おそらく2倍以上の価格の製品でも(フラット傾向、モニター系サウンドで)このレベルに達している製品は多くはないでしょう。ドンシャリ傾向のイヤホンとは方向性が異なるため好みの上ではいろいろ意見が分かれると思いますが、フラット傾向、モニター系サウンドで質の良いイヤホンというと選択肢がどうしても限られますね。そういった意味で「NF Audio NM2+」は「NM2」とともに、かなり貴重な存在といえるでしょう。
「NF Audio NM2+」の高域は、非常に明るく非常に見通しの良い伸びやかな音を鳴らします。適度な鋭さは感じるものの、刺さる音をうまくコントロールしており結構音量を上げて聴いても比較的聴きやすい印象です。金属ハウジングの影響もあってか「NM2」よりややドライで硬質な印象を受けますが、いっぽうで一層スピード感が増しており、高い解像感と分離の良さを実感します。耳障りな歯擦音も、中華イヤホンにありがちな特定の周波数帯の不自然に派手な音も無く、音源のありのままの音を高い精度で表現しておりとても好感が持てます。100ドル台のイヤホンの高域としては驚くほどに質の高く完成された印象です。ただ「NM2」よりさらに高域を強く感じやすいため、強い高域が苦手な方にはそれなりに刺激を感じる場合もあります。
中音域も「NM2」同様にニュートラルで伸びやかな音を鳴らしますが、中高域を中心により主張を感じやすい印象になります。女性ボーカルやピアノの高音などは「NM2」よりエネルギッシュに感じます。また透明度の高さからギターやバイオリンなどはより鮮明で立体的な空気感があります。
音場は広さおよび奥行きがあり、演奏とボーカルが自然に定位して奏でられているのを実感します。ボーカル帯域は演奏に合わせて自然な距離感で定位するものの、より主張と存在感があります。1音1音を精緻に表現しつつ、適度に艶があり、余韻や息遣いをしっかり感じられる表現力があります。高域同様、金属製ハウジングの影響か「NM2」より曲によっては僅かにドライな印象もありますが、演奏も非常に正確で、高い解像度と分離により、輪郭のはっきりした詳細なサウンドを実感できます。いっぽうで、自然な印象を損なわない程度に僅かな温かさがあり、男性ボーカルの低音などを心地良く自然に鳴らす滑らかさもあります。全体的には分析的なモニターサウンドながらリスニングイヤホンとして完成度の高さを感じるチューニングといえるでしょう。
低域はニュートラルで癖のない印象で、非常に高い解像感と分離により明瞭に鳴らします。また中低域から重低音の深いところまで直線的でバランスも非常に優れており、質感の高い低音を十分な量感で鮮明に鳴らす印象です。ミッドベースも特定の帯域が過度に膨らむことは無くタイトで、重低音の沈み込みも正確で、深いところまでしっかりと再現しているのがわかります。またアタックはスピード感があり、ややドライですが音数の多い曲の分離も良く、微妙なニュアンスもかなり詳細に捉えてくれるようです。ドンシャリ傾向のイヤホンと比べると多少腰高に感じるかもしれませんし、臨場感や迫力などを楽しむサウンドとは一線を画していますが、「NF Audio NM2+」の低域の正確性については同価格帯の他のイヤホンと比べてもレベルの違いを感じるものだと思います。
また「NF Audio NM2+」は最初から質の高いケーブルが付属しますのでリケーブルは基本的に不要ですが、リケーブルする場合、qdcコネクタ仕様のものが利用できます。極性はKZ/CCAのタイプCと同じCIEM極性ですがピンの太さが0.78mmという仕様です(最近の「SIMGOT」など同じコネクタ仕様の製品は多少ありますね)。
「NF Audio NM2+」と「NM2」の比較では、「NF Audio NM2+」のほうがより明るく中高域にスピード感がある印象です。例えるならShureの「SE846」や「AONIC 5」の「バランス」フィルターが「NM2」だとすれば「NF Audio NM2+」は同じく「ブライト」フィルターに変えたような違いがあります。高域および中高域はよりハッキリとした印象で正確かつ透明感のあるサウンドを鳴らします。また金属ハウジングの採用やドライバーのアップグレードにより解像感も確実に向上しているのを実感します。いっぽうでやや高域が強く感じるため、再生環境や曲によっては「NM2」のほうが聴きやすく、また中低域の音場感を感じやすいかもしれませんね。
また、あえて「NF Audio NM2+」のウィークポイントを挙げるとするなら、穏やかなリスニングを好まれる方には解像度が高すぎて聴き疲れしやすい印象を受けるかもしれません。そういった点で「NF Audio NM2+」はの高域は「NM2」よりキツめに感じる可能性もあります。低域はキレがあり非常に明瞭ですが、パワフルな響きや臨場感を好まれる方向けのサウンドではないでしょう。またそもそもとして多くの中華イヤホンのドンシャリ傾向に対して、「NF Audio NM2+」および「NM2」のフラット傾向という違いがあるため、この比較は好みの問題となるでしょう(まあ、これは当然のことですが、今でもこの手のご質問は多くいただきますので、あえて記載しました)。
一部のマルチBA機を除き低価格~普及価格帯の中華イヤホンの多くが派手めのドンシャリ傾向なのに対して、「NM2」や今回の「NF Audio NM2+」のフラット傾向、モニター系サウンドは、同価格帯の中華イヤホンとしては異色の存在かもしれません。特に中華ハイブリッドに慣れている方には多少好みが分かれる可能性もありますが、「NM2」のレビューでも記載した通り、AKG(K712やK275など)やbeyerdynamicのヘッドフォンのサウンドが好きな方には好感が持てる傾向だと思います。
というわけで、「NF Audio NM2+」は非常に質の高いモニターサウンドで、個人的にも「絶讃」したいレベルのイヤホンだと思います。ロック、ポップスなどのボーカル曲はもちろん、クラシックやジャズなどジャンルを問わず質の高いサウンドを堪能できると思います。ベースとなった「NM2」から個人的には非常に気に入っており、グレードアップした「NF Audio NM2+」は同価格帯で特に好みのイヤホンだと感じました。そのためレビューが全般的に前のめり感のあるものになってしまいましたね。
「NF Audio NM2+」も近日中に日本でも販売されるようですが、そうなれば店頭での試聴も可能になりそうですね。NF Audioの製品は日本ではまだまだマイナーな存在ですが、興味がありましたら是非聴いてみてほしいと思います。また本レビュー掲載直後に中国最大のセール「11.11」がやってきますが、「NF Audio NM2+」もかなりディスカウントされるようです。マニアの方であればこの機会に挑戦いただくのも良いと思います。個人的には「イチオシ」ですよ(^^)。
良い記事、ありがとうございました。