水月雨 Moondrop KXXX

こんにちは。手持ちイヤホンの振り返りネタ「棚からレビュー」より「Moondrop KXXX」です。例によって昨年から書きかけのままになっていましたが、久々に「Drop」で購入可能となったため、このタイミングで急いで仕上げました(^^;)。もし検討されている方がいらっしゃれば参考にしていただくと幸いです。
中国のイヤホンブランド「水月雨(Moondrop)」の代表的モデルのひとつ「Moondrop KXXS」をベースにした、米国共同購入サイト「Drop」仕様のコラボバージョンで、ほかのDrop(またはMassdrop)コラボ製品同様にブラックのみのシンプルなカラーリングでミニマル感があり、「KXXS」より少し割安な価格設定も魅力です。しかも「Moondrop KXXX」は「KXXS」とは異なるケーブルが付属し、本体のチューニングも少し変えていることで「KXXSより好み」という意見もちらほら。というわけで、「KXXS」と比較しながら紹介していきたいと思います。
→過去記事:水月雨 「Moondrop KXXS」 透き通るような明瞭感と柔らかく自然なサウンドに癒やされる。デザインも印象的な「美音系」中華イヤホン【レビュー】

Moondrop KXXXMoondrop KXXX

また「Moondrop KXXX」および「KXXS」は個人的にもとても好みのイヤホンで、2020年11月に掲載した「ミドルグレード中華イヤホン(100~200ドル)好みランキング」では第2位の製品としてあげています。
→過去記事:【ミドルグレード中華イヤホン】 「個人的な好みランキング」 TOP 20(販売価格 100ドル前後~200ドル) ※2020年11月編

Moondrop KXXX」および「KXXS」は、亜鉛・アルミニウム合金の金属ハウジングに、「DLC(Diamond-Like Carbon)」による表面処理を施された振動膜を採用した独自の10mmダイナミックドライバーをシングルで搭載しており、優れた応答速度、ダンピング、およびディテールを実現しているとのこと。また「Moondrop KXXX」は音質面においても「KXXS」をベースに微調整を行っており、限定のブラックカラーと併せて「Drop」でしか購入できない独自仕様となっています。
Moondrop KXXXMoondrop KXXX

Moondrop KXXX」のレビュー掲載時点での募集価格は169ドル。日本への発送ももちろん大丈夫で送料無料で購入可能です。今回は4月30日くらいまでの募集ですので興味のある方はこの期間に検討してみてください。
また、募集期間が終了すると次回の募集まで購入は出来ませんが、その場合はDropサイトで「REQUEST」をしておくことをお勧めします(ユーザー登録しリクエストしておくと募集開始時にメールで案内されます)。
Drop: Moondrop KXXX IEM




■ マットブラックのミニマルなデザイン。付属ケーブルの質感および音質向上は大きなポイント

Moondrop KXXX」のパッケージアートは「KXXX」用の独自仕様になっています。ちゃんと「KXXS」は別に作っているのは良いですね。価格のわりに大きめのボックスに充実した付属品はとても満足感のある内容となっています。
Moondrop KXXSMoondrop KXXS

パッケージ構成は基本的に「KXXS」と同様でイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/Lサイズがそれぞれ2ペア)。交換用メッシュパーツ、交換用ピンセット、航空機用変換コネクタ、布製ポーチ、レザーケース、説明書・保証書などのカード類など。
Moondrop KXXS水月雨 Moondrop KXXX

Moondrop KXXX」のイヤホン本体は基本的に「KXXS」の”色違い”で、同じ材質およに同じ形状です。クロームメッキ仕様の「KXXS」に対して「Moondrop KXXX」はつや消しのブラック塗装が行われており、「KXXX」というモデル名の刻印などは全くありません。いっぽう付属ケーブルは黒い布張りタイプに変更されており、見た目や質感もむしろかなり向上している印象です。このケーブルも音質的な両者の違いに多少影響しているようですね。
Moondrop KXXSMoondrop KXXS
シェル形状はやや大きいサイズですが耳に合せやすいデザインで装着性自体は良好です。ただ亜鉛・アルミニウム合金製のハウジングは多少重量感がありますので、イヤーピースでしっかりホールドできるものを選んだ方が良いでしょう。Moondropのちょっと残念な点はイヤーピースがたくさん付属しているもののフィット感が今ひとつなところ。できれば最初から耳に合うものを用意して交換した方がよいでしょう。具体的には定番のJVC「スパイラルドット」または上位の「スパイラルドット++」、Acoustune「AET07」、「AZLA SednaEarfit XELASTEC」など開口部が大きめのタイプで、自分の耳に合う最適なイヤピースを選択するのが良いですね。


■ KXXSを踏襲しつつ低域の主張が増し全体的によりリスニング性が向上したバランスに。

水月雨 Moondrop KXXXMoondrop KXXX」の音質傾向は、「KXXS」同様に非常にナチュラルで透明感のあるサウンドが特徴。全体としてはニュートラルなサウンドバランスです。しかし、僅かですが低域の主張と存在感を増したチューニングとすることで、フラット方向ながらやや中高域の印象が強い「KXXS」に対して、「Moondrop KXXX」はよりリスニングイヤホンとしてバランスの良い楽しいサウンドに仕上がっていると思います。どちらのモデルも共通しているのは、明瞭な解像度の高さDLCドライバーらしいレスポンスの早さを感じつつ、自然な柔らかさを持つ中高域と締まりの良い低域を楽しむことができ、さらに広がりのある優れた音場表現を実感できると思います。開封直後からスッキリとした印象で非常に綺麗なサウンドを楽しめますが、Moondrop製品はメーカー自身が「100時間以上のエージング」を強く推奨しており、実際じっくりと鳴らし込むことでサウンドバランスがさらに向上し、より完成度の高い音に変化します。

Moondrop KXXX」のサウンドは基本的に「KXXS」と大きく変化するものではありませんが、低域の主張が変化することで相対的に高域は「KXXS」より僅かに抑えられたバランスになります。とはいえ高域の透明感のある伸びやかさをそのまま反映しています。解像度が高く見通しの良い明るい音ですが、中華ハイブリッドのような硬質感は無く、適度に柔らかく自然な音がスッキリと伸びていく感じはとても心地良い印象です。なお「KXXS」はエージング前は多少強めの主張を感じる場合もありますが、若干のバランスの変化により「Moondrop KXXX」は開封直後から耳障りに感じる刺激は十分にコントロールされた印象になります。

水月雨 Moondrop KXXX中音域は透明感が高く明瞭なサウンドを実感できます。「Moondrop KXXX」および「KXXS」は比較的フラット方向のニュートラルなサウンドのため、同社の製品のなかでも下位グレードにあたる「Starfield」および最近リリースされた2021年版「Aria」のよりメリハリのあるサウンドとは明確な違いがあります。また「Moondrop KXXX」および「KXXS」ではボーカル帯域の主張より広く自然な音場を意識したサウンドを実感できると思います。ただ「KXXS」との比較では「Moondrop KXXX」のほうが若干中低域寄りのサウンドバランスで、中音域も高域同様に相対的に若干下がった定位となります。音場は広く前後に奥行きを感じ、左右にスッと広がっていく空間表現を楽しめます。非常に解像度が高く、1音1音の描写は精緻ですが、人工的な印象は皆無で、非常にナチュラルで柔らかい印象の鳴り方をします。

低域は「KXXS」との違いをもっとも感じる部分で、「Moondrop KXXX」では開封直後から「KXXS」より存在感があり、ニュートラルながらより主張が増した音を鳴らします。締まりの良くスピード感のある印象で、いっぽうで重低音の沈み込みも深く、重量感があります。「KXXS」同様に僅かに感じる余韻により、明瞭で鮮やかながら柔らかさも感じる絶妙な低音になっている印象です。また付属ケーブルの情報量が増加することで全体の見通しが向上し、低域もより細ること無くしっかり表現できていることも印象の変化に影響しているようです。逆に言えば「KXXS」もOHFC線や高純度のOCC線のケーブルなどにリケーブルによりある程度「KXXX」に近い印象に変化するわけですが、付属ケーブルのままでバランスの良さを実感できるほうがもちろん良いですよね。


水月雨 Moondrop KXXXというわけで、「Moondrop KXXX」は「KXXS」の「Drop」カラーバージョン、というだけでなく、様々な点で「改良型」と呼べるモデルです。まあ「KXXS」のクロームメッキ仕様は見た目の美しさがあり、それと比べると非常にミニマルな「Moondrop KXXX」は「わかるひとにはわかる渋さ」ともいえますが、やはり多少地味ですよね。
また価格的にも以前と比べて円安傾向のため「KXXS」より割安感はほぼ無い(むしろ割高になるのかも)ですが、現時点では「Drop」で募集時にしか購入できない限定アイテムという側面もあります。興味のある方は募集期間中に購入しても十分にお勧めできる製品だと思いますよ(^^)。