TFZ LIVE 3

こんにちは。今回は「TFZ LIVE 3」です。中国のイヤホンブランドTFZ(The Fragrant Zither)の新しい「LIVE」シリーズの2モデル目の製品で、先日レビューした「LIVE 1」の上位グレードになります。「TFZ LIVE 1」が「TFZ T2G(T2 Galaxy)」などで使用されているグラフェンコート振動版の第2世代ドライバーを搭載したモデルだったのに対し、「TFZ LIVE 3」は「TFZ NO.3」などのダイヤモンドライクナノ振動版を使用した「第3世代ドライバー」を採用している点がポイント。サウンド的には「TFZ LIVE 1」が元気さを感じる中高域寄りだったのに対し、「TFZ LIVE 3」では包み込むような音場感を活かした中低域寄りのチューニングと、傾向的にも差別化が行われています。過去のTFZ製品の傾向からみて、今回の「TFZ LIVE 3」はミドルグレードのポジションで、今後さらに第4世代ドライバー搭載モデルなどバリエーションの拡充が期待されますね。
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TFZ製品については私のブログがおそらく日本で最も多くのモデルをレビューしている気もしますが、ここ数年は複数のモデル名が混在しラインナップが非常に分りにくくなっていました(過去記事でTFZのラインナップについては3回に分けて「まとめ」を行っています)。「LIVE」シリーズにより改めてラインナップが分りやすくなるのは良いことですね。
→ 過去記事: 「TFZ LIVE 1」 明瞭かつ濃厚なサウンドが魅力の最新エントリーモデル。「SERIES2」「T2G」を踏襲したTFZの新シリーズ第1弾イヤホン 【購入レビュー】
→ 過去記事: 【メーカー別まとめ】TFZイヤホン編 その① (前編) / その② (中編) / その③ (後編)

またTFZ製イヤホンのラインナップについては私のブログにて独自に作成した価格帯マトリクスを公開しており、随時更新をしています。よろしければ併せて参照ください。
・【メーカー別まとめ】 「TFZ」イヤホン編 / 最新版・価格別マトリクスチャート ※随時更新

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TFZ LIVE 3」は「TFZ NO.3」以降、「TFZ KING EDITION」などの上位モデルも含め最近の製品で幅広く採用されている「第3世代ドライバー」を採用。第3世代の特徴である「ナノレベルのダイヤモンドライク振動版」を採用し、TFZ独自の「デュアル磁気回路」で構成された(advanced dual magnetic circuit and the nano-level diamond-like diaphragm)、11.4mmサイズの大口径ダイナミックドライバーをシングルで搭載します。「TFZ LIVE 3」ではこのドライバーの特徴を活かし繊細なディテールに加え、広く豊かな音場感により、さまざまな利用シーンで没入感のあるサウンドを実現しているようです。
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ハウジングは樹脂製でTFZの伝統的なシェルデザインを踏襲。フェイスプレートは大理石調の加工によりひとつひとつ模様の異なるデザインを採用しています。カラーリングは「レッド(Allure Red)」、「ブルー(Dream Blue)」、「ブラック(Elegant Black)」、「ホワイト(Neutral White)」、「イエロー(Trendy Yellow)」の5色。このうち日本国内版では、「ホワイト(Neutral White)」、「イエロー(Trendy Yellow)」の2色は直販のみでの販売となるようです。

価格は海外版が 69ドル(実売 66.24ドル~程度)、日本国内版が税込み 10,800円程度となっています。海外版はAliExprerssのオフィシャルストアなどにて。国内版は2020年11月27日より専門店などで販売されるようです。またアマゾンでは掲載時点では中国発送で送料が別途かかるものの、TFZのオフィシャルストアも出店を開始したみたいですね。
AliExpress(The Fragrant Zither Official Store): TFZ LIVE 3 66.24ドル~
Amazon.co.jp(TFZオフィシャルストア): TFZ LIVE 3 7,010円+送料700円

Amazon.co.jp(国内正規品):  TFZ LIVE 3 10,800円(税込み)


■ 従来のシェル形状を踏襲しつつ大理石調のデザインを採用。付属ケーブルもグレードアップ。

TFZ LIVE 3」のパッケージは「LIVE 1」から採用された新バージョンのボックスになっています。TFZ Offical Storeより期間限定のプレオーダーで「ホワイト」と「イエロー」を購入しました。実際に届いてみると思ったより似た色だったので、1個は濃い色でオーダーしておけばよかったですね。
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パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル(NO.3以降のTFZではお馴染みの銀メッキ線タイプ)、イヤーピース(2種類、それぞれS/M/Lサイズと本体付属のMサイズ)、ケーブルフック、説明書。従来のTFZで付属していた布製ポーチは今回も付属していません。なお、私の場合はまた初期購入特典でコンパクトなレザーケースがオマケで付属していました(現在は付属しません)。
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TFZ LIVE 3」のシェル形状は「TFZ LIVE 1」や「TFZ MY LOVE II」と共通の樹脂製ですが、フェイスプレートが大理石模様の平面デザインとなっているため、多少膨らみのある「TFZ LIVE 1」などとは少し違った印象になりますね。フェイスパネルに小さなベント(空気孔)が3カ所まとまって有るのが「TFZ LIVE 3」の特徴的な部分です。フェイスパネル自体も樹脂製なのですが、成形時に塗料を流し込む方法(?)なのか、固体ごとに模様が異なっています。白色モデルは本当に大理石みたいですね。他のモデルにみられるTFZのロゴマークなどのプリントは無く、「TFZ LIVE 3」の刻印とゴールドの流し込み塗装が小さくあるのみです。
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ハウジング自体は従来のTFZと同じ形状のため、装着感も従来モデルと同様です。多少大きなサイズのため耳の小さな方は合わない場合もありますが、装着感自体は悪くありません。また「KZ ZAX」あたりと比べてみるとほぼ同じサイズ感ですね。もともと「KZ ZST」が初代「MY LOVE」(TFZ SERIES 1S My Love Edition)のパ○リデザインだった頃からの名残ともいえるでしょう。
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そして「TFZ LIVE 3」では付属ケーブルがグレードアップしました。「LIVE 1」では「NO.3」以降のモデルで同梱されていた銀メッキ線タイプがそのまま踏襲されていましたが、今回はより質の高い柔らかいリッツ線タイプになっており、取り回しなども向上しています。
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イヤーピースは今回も付属の開口部の大きい方(原音忠実)と小さい方(やや低域がアップ)が付属しています。他にも定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustuneの「AET07」、AZLA「SednaEarfit Light」「SednaEarfit Light Short」など開口部が広く、耳にフィットするタイプのイヤーピースがお勧めです。他にもダブルフランジタイプの「AET06」や「RHA ダブルフランジイヤーピース」を組み合わせるのも良いと思います。


■ 低価格イヤホン随一のアグレッシブな低域が魅力的。TFZらしさのなかに感じる個性的サウンド。

TFZ LIVE 3TFZ LIVE 3」の音質傾向は中低域寄りのドンシャリ。「TFZ LIVE 1」が比較的中高域にフォーカスした元気系サウンドだったのに比べて重厚感のある中低域が印象的と、分りやすいキャラクターの違いを出しています。TFZの第3世代ドライバー搭載モデルと比較すると、「TFZ LIVE 3」のサウンドは「TFZ NO.3」の包み込むような音場感を表現しつつ、同様に中低域寄りの「TxBEAR MONICA」にも近い力強い低域を加えた印象。かつてのTFZを彷彿とさせるパンチのある低域に加えて、広い音場が生み出す臨場感が非常に心地良いサウンドです。
「TFZ LIVE 1」の元気推しの印象もそうでしたが、どうも「LIVE」シリーズでは今のところバランスの良さというかオールマイティな印象より、個性のはっきりした「キャラの強さ」を前面に出す傾向があるのかもしれません。あるいは「第4世代」ドライバーのお披露目になる可能性が高い次のモデル(どうも「LIVE X」というモ名称らしいですね)をニュートラルなサウンドにする「伏線」なのかもしれませんね(^^;)。ともあれ、「TFZ LIVE 3」は万人受けのサウンドではありませんが、ボーカル帯域から低域を楽しみたい方にはうってつけのイヤホンだと思います。

TFZ LIVE 3TFZ LIVE 3」の高域は、明瞭かつ煌びやかさを感じるTFZらしい音を鳴らします。開封直後はやや控えめな印象もありましたがしばらく鳴らすことで本来の鮮やかさが現れてきました。再生環境によってより低域が強く若干下がり気味に感じる場合もありますが、しっかりとした駆動力のあるDAPやアンプを経由することでTFZらしい多少鋭さもある硬質な高域を感じる事ができます。曲によっては若干シャリ付きを感じる場合もありますが、刺さるか刺さらないか程度の刺激にコントロールされています。全体的に中低域にフォーカスしたバランスですが高域も籠もること無くスッキリとした印象で光沢のある印象です。

中音域は特に凹むことなく鳴ります。かなり分りやすいドンシャリ傾向ですが、ボーカル帯域には存在感があります。「TFZ NO.3」のような包み込むような広い音場感があり、いっぽうで「TFZ LIVE 3」のほうが僅かにボーカルが前に出て主張する印象です。TFZらしい力強さやキレの良さを「ある程度」維持したまま適度に広がり綺麗な余韻を感じさせる音を鳴らします。第3世代ドライバー搭載機では「KING III」が付属ケーブルでは中高域の抜けが今ひとつでしたが、「TFZ LIVE 3」はより明瞭さがあり、女性ボーカルの高音なども比較的綺麗に抜けます。また中低域は重厚な存在感とともに解像感もこのクラスのイヤホンのなかでもかなり高い印象。シングルダイナミックらしいつながりの良さとともに、自然なロングトーンの美しさと粒立ちの良さを両立しています。

TFZ LIVE 3低域は重みのある非常にパワフルな音を鳴らします。というか、たぶんTFZに限らずこの価格帯のイヤホンでは最もアグレッシブな低域と言って良いかもしれません。第3世代ドライバー搭載モデルで低域の強いイヤホンというと「TxBEAR MONICA」がありますが、「TFZ LIVE 3」では同様の力強さととともに解像感があり、より広い音場で定位している印象を感じさせます。重低音の沈み込みも非常に重く深く、しっかり響く音を鳴らします。また分離も良く広さとともに密度感があり、ハードロックなどの音源でも低価格イヤホンの範疇を超えたクオリティの低音を楽しめます。低音をガンガン鳴らす曲ではちょっとやみつきになりそうな過激さすら感じる印象です。

TFZ LIVE 3」は全体としては中低域寄りでまとめられたイヤホンとしてバランスも決して悪くはないのですが、最近の「優等生」タイプが多いなかではかなり「特徴のある」サウンドといえるかもしれません。「TFZ LIVE 3」もTFZらしい明瞭で鮮やかさのある中高域を持っていますが、ハイトーンより低域を思い切り楽しみたいタイプのイヤホンです。そのため女性ボーカルのポップスやアニソンなども悪くありませんが、低域の心地良い男性ボーカル曲、あるいは熱量の多いロックやハードロック、低域の情報量の多いEDMなどで魅力的な音を鳴らしてくれると思います。
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また、この特徴のあるサウンドを楽しむうえでは改良された付属ケーブルはこのままでも結構「正解」です。ただ、再生環境で中高域が下がり気味に感じる場合は「TR4908」や「HiF4900」などの銀メッキ線ケーブルへのリケーブルは良い選択肢でしょう。また全体的により濃さを増したい場合は「NICEHCK LitzOCC」のようなイヤホンの傾向を踏襲しつつ質を向上させるタイプのケーブルも良いですね。

というわけで、「TFZ LIVE 3」は「LIVE 1」とは全く異なるキャラクターで非常に楽しいイヤホンでした。「万能型」のサウンドではないため、多少好みは分かれると思いますが、色々なイヤホンを集めていて「もっとアグレッシブなイヤホンも欲しい」と思われているマニアの方や、聴く音楽ジャンル的に低域のパワフルさを求められている方には良い選択肢でしょう。個人的にはTFZの新シリーズがバリエーション豊かに展開していきそう、ということで今後もとても楽しみにしています(^^)。