
こんにちは。今回は「KZ ASF」です。片側に5基のバランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーを搭載した5BAモデルのイヤホンで、中華イヤホンの代表的ブランド「KZ」(KZ Acoustic)の最新モデルとして前回レビューした「KZ ASX」と同時にリリースされました。ただし、片側10BAの「KZ ASX」に比べるとちょっと印象が薄く、さらにあまり万人受けしなさそうなサウンドバランスもあって、リリース直後の販売数も結構差があるみたいですね。
「KZ」はもともとシングルダイナミック構成で10ドル以下の低価格イヤホンからスタートして、「KZ ZST」でハイブリッド構成に着手後、まさに「恐竜的進化」によりドライバー数を増やし、低価格イヤホンのスペックモンスターとして圧倒的な地位を獲得してきました。そんななかで初めて市場に投入したマルチBAモデルが今回と同じ5BA構成の「KZ AS10」と「KZ BA10」の2モデルでした。つまりKZにとって5BA構成はマルチBAモデルの「原点」ともいえるわけですね。しかし、その後KZブランドとしては5BAモデルは今回の「KZ ASF」までリリースしておらず、代わりに姉妹ブランドの「CCA」から販売された「CCA A10」と、その派生モデルでODM製品の「TRIPOWIN TP10」と「KBEAR KB10」が存在します。KZからは「CCA A10」から内容を変更し6BA構成とした「KZ AS12」がリリースされています。
このような流れから、5BA構成の「KZ ASF」は、いちおう「KZ AS10」の「フルアップグレード版」モデル、という触れ込みになっていますが、実際の「KZ ASF」のポジションとしては、「CCA A10」または「TRIPOWIN TP10」や「KBEAR KB10」の後継機種であり、アップグレード版と捉えた方が、内容的にも音質傾向的にもしっくり来ますね。


「KZ ASF」は、高域に「30095s」、高域/中高域にデュアルBAの「31736s」、中音域に「29689s」、低域に「22955s」、という構成になっています。「KZ ASX」同様に各BAドライバーは従来モデルで搭載しているものより性能がアップしたタイプでモデル名の後ろに「s」が付いています。「31736s」「29689s」「22955s」の3種類は「KZ ASX」と共通ですが、「KZ ASF」ではKZの高域用ツイーターとして多くのハイブリッドモデルに搭載される「30095」のアップグレード版が新たに搭載されている点はポイントですね。


またKZのマルチBAモデルの特徴として、低域の「22955s」(および既存モデルの「22955」)BAドライバーは筐体の背面にベント(空気孔)があり、通常の密閉型BAより音場感のある低域を実現しています。この特徴を前面に出した製品が「KZ BA10」で、大きめの金属製ハウジングの反響音により独特の響きのある低域を持つ意欲作でした。「KZ ASF」ではそこまで極端なアプローチではないものの、「KZ ASX」とはフェイスプレートの材質を変えるなど(「KZ ASX」はアルミ合金製で「KZ ASF」は亜鉛合金製)、ハイブリッドモデル同様にハウジングとの反響を低域のサウンドコントロールに活用しているようですね。


「KZ ASF」のカラーバリエーションはシルバーのフェイスプレートの「ブルー」と、「ブラック」の2色が設定されています。「KZ ASF」の購入はAliExpressおよびアマゾンの主要セラーにて。価格はKZ Offical Storeの価格で58.12ドル程度。アマゾンでは6,360円~6,800円程度で販売されています。AliExpressでの購入方法はこちらをご覧ください。
■ ASX同様の巨大なハウジング。フェイスパネルは亜鉛合金製で質感の違いも特徴的
「KZ ASF」のパッケージは「KZ ASX」同様にハイグレード仕様の黒箱タイプ。パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/Lサイズ)、説明書と従来通り最小限となっています。付属ケーブルは「KZ ZSN Pro X」や「KZ ZAX」などと同じ銀メッキ線タイプです。ステム部分が「KZ ASX」同様に細い金属ノズルとなっているため、付属イヤーピースもこれらの製品と同じ小型タイプになります。


「KZ ASF」のハウジングも「KZ ASX」の同様の形状をそのまま採用しており5BAイヤホンとしてはかなり巨大です。厚みのあるフェイスプレートからタイプC 2pinコネクタがフェイスプレート部分の側面から出ているのも同様ですが、「KZ ASF」のフェイスプレートは亜鉛合金製で「KZ ASX」とは材質が異なります。細いタイプのステムノズルはブラックカラーではゴールドのカラーリングになります。またイヤーピースも「KZ ASX」同様により耳奥に装着する小さめのタイプが付属します。


シェルデザインが共通のため装着性についても「KZ ASX」と同様ですが、この大きさのわりに実は結構しっかりホールドできます。私の場合、耳掛けタイプのイヤホンではケーブルを耳に掛けてからイヤホンを奥まで装着する、という付け方をすることが多いのですが、「KZ ASF」の場合は、上部の突起部分を耳穴の上の部分にぐっと差し込むようにいれてイヤホン自体を奥までホールドし、その後にケーブルを耳に掛ける、という付け方のほうが確実に装着できました。


「KZ ASF」は耳奥まで装着するタイプの形状のため、イヤーピースは小さく、柔らかくコシがあまり無いタイプのものが付属します。そのため、サイズ的に合わない方や、コシの弱さでフィット感がいまひとつに感じる場合も結構あるのではと思います。結構音質傾向にも影響するため、合わない場合はイヤーピースの交換は必須でしょう。具体的には「RHAイヤーピース」や「final Eタイプ」イヤーピースなどがお勧めです。また付属のケーブルは銀メッキ線タイプでこれはこれれ聴きやすいという場合もあるのですが、イヤホンのポテンシャルを引き出すためにはリケーブルは検討したほうがよいでしょう。
■ メリハリ重視の派手なドンシャリ傾向。かなり好みの分かれる変態系イヤホン?
「KZ ASF」の音質傾向はかなりハッキリとした寒色系のドンシャリで、いわゆる「派手な音」のイヤホンです。見た目こそ同じ形状のハウジングを使用していますが、「KZ ASX」のダウングレードと考えたら大間違いで、かなり方向性に違いが見られます。以前からのKZのサウンド、それこそ「KZ ZS6」あたりの流れを組む傾向といってもいいかも。KZ(CCA)は以前のマルチBAモデルでも、「CCA A10」が高域過剰ぎみの仕様で、その後ODM製品の「KBEAR KB10」でドライバーのチューニングを改善して中高域寄りの派手めのサウンドで落ち着いた、ということもありましたね。今回の「KZ ASF」でも同様にマルチBAモデルながら「派手なサウンド」を踏襲しつつ、さらにメリハリを強めたバランスの製品という感じです。そのため、「KZ ASX」と「KZ ASF」の2モデルは見た目の類似とは裏腹に、実際は全く違うアプローチの製品という印象ですね。
印象としては「KZ ASX」と「KZ ASF」の2モデルで「最近のKZで人気のある方向性」と、「かつてKZが人気ブランドになった頃の方向性」という、異なる「KZらしさ」をそれぞれのモデルで表現しているのかもしれませんね。言うまでもなく「KZ ASX」のサウンドは「最近のKZで人気のある方向性」で、「KZ ZSX」「KZ ZAX」同様に、ボーカル帯域にフォーカスした弱ドンシャリのバランスですね。
これに対して「KZ ASF」は「KZ ZS5」「ZS6」あたりで音のつながりやバランスより各音域の解像感やキレの良さを重視したような、とにかくエッジの効いた、メリハリのある派手なサウンドの方向性を継承しています。マルチBAモデルでは「KBEAR KB10」あたりのサウンドが好みの方には、よりメリハリが強く情報量の多いサウンドとして好感されるのではと思います。ただし、「KZ ASX」のレビューでも記載しましたが、マルチBAの「多ドラ」イヤホンがドンシャリ傾向ということ自体に違和感を持つ方も少なくはないでしょう。そういった意味では「KZ ASF」のサウンドはかなり意見の分かれるイヤホンだと思います。
「KZ ASF」の高域は、キレのあるかなり派手めの音を鳴らします。使用しているBAドライバーに相違はありますが、中高域用のデュアルBAをツイーターBAで補う構成は「KZ ZAX」の高域と同じアプローチで、KZらしい金属質の煌めきのある高音です。イヤーピースなどがしっかり合った状態では「KZ ASX」より多少粗さは感じるものの、刺さらない程度の鋭さのある印象です。
ちなみに本レビューを記載する前に海外のレビューを少し見てみたのですが、どれもなかなかの酷評で特に高域が暗く出ていないような記述に思えました。しかし、少なくとも手元にある「KZ ASF」の高域は明瞭に鳴っていて、駆動力のある再生環境ではより派手さも感じました。この原因はどうやらイヤーピースにあるのでは、という気がしています。私は耳穴が細いため付属のイヤーピースで問題なかったのですが、どうも私のようなパターンのほうが少数派で、普通の方はこの柔らかいイヤーピースが合わないのではと思います。前述の通り、フィット感の良いものへの交換は必須と考えた方がよいでしょうね。
中音域は明確なドンシャリ傾向もあり多少凹みます。ハイブリッドモデルより離れて定位します。そのため再生環境によっては多少ウォームに感じる場合があります。駆動力のある再生環境ではボーカル帯域を中心により鮮明な主張が現れますが、輪郭のシャープさに注力されているため、つながりやバランスを重視する方には、人工的なエッジの立ち方や正確さをあまり感じない音場感を不快に思うかもしれません。いっぽうでシャープな出音や、エネルギッシュな中高域はとても元気なサウンドを演出しており、メリハリのある傾向を好まれる方には好感されそうです。
低域はとてもパワフルに鳴ります。アタックは非常に強力でキレとスピード感があります。ミッドベースは膨らむこと無く鳴りますが、多少ブーストされた印象もあります。ただ非常に力感のあるミッドベースに対して、重低音は重量感はあるもののやや浅く感じる印象で、中音域とあわせて音場感に奥行きをあまり感じません。中低域のドライバー構成は「KZ ASX」と「KZ ASF」で違いがないのですが、低域の印象が結構異なるのは意外でした。全体を過剰に派手にしたことでバランスに影響が出ている気がしますね。
また、「KZ ASF」は、前述のイヤーピースのほか、再生環境の違いでも印象がかなり大きく変化します。同様にリケーブルでの変化も大きく違いがあります。これはKZのマルチBAモデルでは割と多いパターンなのですが、「KZ ASF」および「KZ ASX」は再生環境による変化がより顕著に出る印象です。一般的にマルチBAイヤホンはカスタムIEMなどのように反応が非常に敏感なものが多く、複数のドライバーに安定した(より歪みの少ない)電力を供給でき、ノイズの少ない(=S/Nの高い)プレーヤーが必要になります。しかし、KZ/CCAおよび競合するTRNのマルチBAイヤホンはスマートフォン直挿しでも再生できるように再生側で通常の音量に近いところに反応を調整されています。この調整が原因で、結果的に、同じ音量でも再生環境による出力やノイズ特性の違いがより音質傾向の変化に反映されやすくなるものと考えられます。
というわけで、「KZ ASF」はなかなか手放しではお勧めできない評価になりました。イヤーピースを耳に合うものに変更する、必要に応じてリケーブルする、といった変更は「KZ ASX」と同様として、マルチBAイヤホンとしては極端すぎるバランスはやはりかなり好みを選ぶでしょう。KZが「狙った」ところにマッチした方にはかなり興味深い製品だと思いますが、多くの場合、「KZ ZAX」や「KZ ZSX」といったハイブリッドモデルより評価が上回ることは無いかも知れませんね。ほぼ同価格の「KBEAR KB10」との比較は微妙で、より中高域寄りのキレを重視するなら「KBEAR KB10」、パワフルな低域も含めたメリハリを取るなら「KZ ASF」といったところでしょう。個人的には同価格帯ならば少し割高ですが、よりバランスに優れた「KZ AS12」をお勧めしたいところです。
このような流れから、5BA構成の「KZ ASF」は、いちおう「KZ AS10」の「フルアップグレード版」モデル、という触れ込みになっていますが、実際の「KZ ASF」のポジションとしては、「CCA A10」または「TRIPOWIN TP10」や「KBEAR KB10」の後継機種であり、アップグレード版と捉えた方が、内容的にも音質傾向的にもしっくり来ますね。


「KZ ASF」は、高域に「30095s」、高域/中高域にデュアルBAの「31736s」、中音域に「29689s」、低域に「22955s」、という構成になっています。「KZ ASX」同様に各BAドライバーは従来モデルで搭載しているものより性能がアップしたタイプでモデル名の後ろに「s」が付いています。「31736s」「29689s」「22955s」の3種類は「KZ ASX」と共通ですが、「KZ ASF」ではKZの高域用ツイーターとして多くのハイブリッドモデルに搭載される「30095」のアップグレード版が新たに搭載されている点はポイントですね。


KZ ASX(10BA): 「22955s」×1 + 「29689s」×1 + 「31736s (2BA)」×2 + 「30017s (2BA)」×2
KZ ASF(5BA): 「22955s」×1 + 「29689s」×1 + 「31736s (2BA)」×1 + 「30095s」×1
KZ AS10(5BA): 「22955」×1 + 「29689」×1 + 「31005」×1 + 「30095」×2
CCA A10(5BA): 「22955」×1 + 「29689」×2 + 「30095」×2
KZ AS12(6BA): 「22955」×2 + 「29689」×2 + 「30012」×2


「KZ ASF」のカラーバリエーションはシルバーのフェイスプレートの「ブルー」と、「ブラック」の2色が設定されています。「KZ ASF」の購入はAliExpressおよびアマゾンの主要セラーにて。価格はKZ Offical Storeの価格で58.12ドル程度。アマゾンでは6,360円~6,800円程度で販売されています。AliExpressでの購入方法はこちらをご覧ください。
AliExpress(Easy Earphones): KZ ASF 58.00ドル~
AliExpress(KZ Offical Store): KZ ASF 58.12ドル~
Amazon.co.jp(HiFiHear Audio): KZ ASF 6,800円
Amazon.co.jp(KZ Offical Shop): KZ ASF 6,360円AliExpress(KZ Offical Store): KZ ASF 58.12ドル~
Amazon.co.jp(HiFiHear Audio): KZ ASF 6,800円
■ ASX同様の巨大なハウジング。フェイスパネルは亜鉛合金製で質感の違いも特徴的
「KZ ASF」のパッケージは「KZ ASX」同様にハイグレード仕様の黒箱タイプ。パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/Lサイズ)、説明書と従来通り最小限となっています。付属ケーブルは「KZ ZSN Pro X」や「KZ ZAX」などと同じ銀メッキ線タイプです。ステム部分が「KZ ASX」同様に細い金属ノズルとなっているため、付属イヤーピースもこれらの製品と同じ小型タイプになります。


「KZ ASF」のハウジングも「KZ ASX」の同様の形状をそのまま採用しており5BAイヤホンとしてはかなり巨大です。厚みのあるフェイスプレートからタイプC 2pinコネクタがフェイスプレート部分の側面から出ているのも同様ですが、「KZ ASF」のフェイスプレートは亜鉛合金製で「KZ ASX」とは材質が異なります。細いタイプのステムノズルはブラックカラーではゴールドのカラーリングになります。またイヤーピースも「KZ ASX」同様により耳奥に装着する小さめのタイプが付属します。


シェルデザインが共通のため装着性についても「KZ ASX」と同様ですが、この大きさのわりに実は結構しっかりホールドできます。私の場合、耳掛けタイプのイヤホンではケーブルを耳に掛けてからイヤホンを奥まで装着する、という付け方をすることが多いのですが、「KZ ASF」の場合は、上部の突起部分を耳穴の上の部分にぐっと差し込むようにいれてイヤホン自体を奥までホールドし、その後にケーブルを耳に掛ける、という付け方のほうが確実に装着できました。


「KZ ASF」は耳奥まで装着するタイプの形状のため、イヤーピースは小さく、柔らかくコシがあまり無いタイプのものが付属します。そのため、サイズ的に合わない方や、コシの弱さでフィット感がいまひとつに感じる場合も結構あるのではと思います。結構音質傾向にも影響するため、合わない場合はイヤーピースの交換は必須でしょう。具体的には「RHAイヤーピース」や「final Eタイプ」イヤーピースなどがお勧めです。また付属のケーブルは銀メッキ線タイプでこれはこれれ聴きやすいという場合もあるのですが、イヤホンのポテンシャルを引き出すためにはリケーブルは検討したほうがよいでしょう。
■ メリハリ重視の派手なドンシャリ傾向。かなり好みの分かれる変態系イヤホン?
「KZ ASF」の音質傾向はかなりハッキリとした寒色系のドンシャリで、いわゆる「派手な音」のイヤホンです。見た目こそ同じ形状のハウジングを使用していますが、「KZ ASX」のダウングレードと考えたら大間違いで、かなり方向性に違いが見られます。以前からのKZのサウンド、それこそ「KZ ZS6」あたりの流れを組む傾向といってもいいかも。KZ(CCA)は以前のマルチBAモデルでも、「CCA A10」が高域過剰ぎみの仕様で、その後ODM製品の「KBEAR KB10」でドライバーのチューニングを改善して中高域寄りの派手めのサウンドで落ち着いた、ということもありましたね。今回の「KZ ASF」でも同様にマルチBAモデルながら「派手なサウンド」を踏襲しつつ、さらにメリハリを強めたバランスの製品という感じです。そのため、「KZ ASX」と「KZ ASF」の2モデルは見た目の類似とは裏腹に、実際は全く違うアプローチの製品という印象ですね。印象としては「KZ ASX」と「KZ ASF」の2モデルで「最近のKZで人気のある方向性」と、「かつてKZが人気ブランドになった頃の方向性」という、異なる「KZらしさ」をそれぞれのモデルで表現しているのかもしれませんね。言うまでもなく「KZ ASX」のサウンドは「最近のKZで人気のある方向性」で、「KZ ZSX」「KZ ZAX」同様に、ボーカル帯域にフォーカスした弱ドンシャリのバランスですね。
これに対して「KZ ASF」は「KZ ZS5」「ZS6」あたりで音のつながりやバランスより各音域の解像感やキレの良さを重視したような、とにかくエッジの効いた、メリハリのある派手なサウンドの方向性を継承しています。マルチBAモデルでは「KBEAR KB10」あたりのサウンドが好みの方には、よりメリハリが強く情報量の多いサウンドとして好感されるのではと思います。ただし、「KZ ASX」のレビューでも記載しましたが、マルチBAの「多ドラ」イヤホンがドンシャリ傾向ということ自体に違和感を持つ方も少なくはないでしょう。そういった意味では「KZ ASF」のサウンドはかなり意見の分かれるイヤホンだと思います。
「KZ ASF」の高域は、キレのあるかなり派手めの音を鳴らします。使用しているBAドライバーに相違はありますが、中高域用のデュアルBAをツイーターBAで補う構成は「KZ ZAX」の高域と同じアプローチで、KZらしい金属質の煌めきのある高音です。イヤーピースなどがしっかり合った状態では「KZ ASX」より多少粗さは感じるものの、刺さらない程度の鋭さのある印象です。ちなみに本レビューを記載する前に海外のレビューを少し見てみたのですが、どれもなかなかの酷評で特に高域が暗く出ていないような記述に思えました。しかし、少なくとも手元にある「KZ ASF」の高域は明瞭に鳴っていて、駆動力のある再生環境ではより派手さも感じました。この原因はどうやらイヤーピースにあるのでは、という気がしています。私は耳穴が細いため付属のイヤーピースで問題なかったのですが、どうも私のようなパターンのほうが少数派で、普通の方はこの柔らかいイヤーピースが合わないのではと思います。前述の通り、フィット感の良いものへの交換は必須と考えた方がよいでしょうね。
中音域は明確なドンシャリ傾向もあり多少凹みます。ハイブリッドモデルより離れて定位します。そのため再生環境によっては多少ウォームに感じる場合があります。駆動力のある再生環境ではボーカル帯域を中心により鮮明な主張が現れますが、輪郭のシャープさに注力されているため、つながりやバランスを重視する方には、人工的なエッジの立ち方や正確さをあまり感じない音場感を不快に思うかもしれません。いっぽうでシャープな出音や、エネルギッシュな中高域はとても元気なサウンドを演出しており、メリハリのある傾向を好まれる方には好感されそうです。
低域はとてもパワフルに鳴ります。アタックは非常に強力でキレとスピード感があります。ミッドベースは膨らむこと無く鳴りますが、多少ブーストされた印象もあります。ただ非常に力感のあるミッドベースに対して、重低音は重量感はあるもののやや浅く感じる印象で、中音域とあわせて音場感に奥行きをあまり感じません。中低域のドライバー構成は「KZ ASX」と「KZ ASF」で違いがないのですが、低域の印象が結構異なるのは意外でした。全体を過剰に派手にしたことでバランスに影響が出ている気がしますね。
また、「KZ ASF」は、前述のイヤーピースのほか、再生環境の違いでも印象がかなり大きく変化します。同様にリケーブルでの変化も大きく違いがあります。これはKZのマルチBAモデルでは割と多いパターンなのですが、「KZ ASF」および「KZ ASX」は再生環境による変化がより顕著に出る印象です。一般的にマルチBAイヤホンはカスタムIEMなどのように反応が非常に敏感なものが多く、複数のドライバーに安定した(より歪みの少ない)電力を供給でき、ノイズの少ない(=S/Nの高い)プレーヤーが必要になります。しかし、KZ/CCAおよび競合するTRNのマルチBAイヤホンはスマートフォン直挿しでも再生できるように再生側で通常の音量に近いところに反応を調整されています。この調整が原因で、結果的に、同じ音量でも再生環境による出力やノイズ特性の違いがより音質傾向の変化に反映されやすくなるものと考えられます。というわけで、「KZ ASF」はなかなか手放しではお勧めできない評価になりました。イヤーピースを耳に合うものに変更する、必要に応じてリケーブルする、といった変更は「KZ ASX」と同様として、マルチBAイヤホンとしては極端すぎるバランスはやはりかなり好みを選ぶでしょう。KZが「狙った」ところにマッチした方にはかなり興味深い製品だと思いますが、多くの場合、「KZ ZAX」や「KZ ZSX」といったハイブリッドモデルより評価が上回ることは無いかも知れませんね。ほぼ同価格の「KBEAR KB10」との比較は微妙で、より中高域寄りのキレを重視するなら「KBEAR KB10」、パワフルな低域も含めたメリハリを取るなら「KZ ASF」といったところでしょう。個人的には同価格帯ならば少し割高ですが、よりバランスに優れた「KZ AS12」をお勧めしたいところです。








