SONCOZ LA-QXD1

こんにちは。今回は、据置型USB-DAC「SONCOZ LA-QXD1」です。
2万円程度の価格設定ながらXLRバランス出力にも対応する製品で、低価格ながら質の高いサウンドと利用範囲の広さが魅力的な製品です。音質的にはESSチップ搭載DACらしいハッキリ目の傾向ながら同様にESSチップを搭載した同価格帯のUSB-DAC製品と比べて、より癖がなく自然な印象で、見通しの良いサウンドが楽しめます。またXLRコネクタのバランス出力を低価格で搭載していることから、例えば「LOXJIE P20」のようなバランス出力対応の低価格ヘッドフォンアンプとの組み合わせにも最適な製品といえるでしょう。
SONCOZ Audio」は中国発のデスクトップオーディオ製品メーカー。現在同社サイトには今回紹介する「SONCOZ LA-QXD1」と上位モデルの「SGD1」の2モデルが掲載されています。オンラインでは「HiFiGO」が販売元となるようですね。今回は「HiFiGO」からのサンプル提供をいただいています。

SONCOZ LA-QXD1SONCOZ LA-QXD1

SONCOZ LA-QXD1」はDACチップにESSの「ES9038Q2M」、USBレシーバーにXMOS「XU208」を搭載し、最大32bit/768kHz PCMおよびDSD512に対応します。入出力系統で入力にUSBおよびSPDIFでTosLink(光ポート)およびCOAX、出力がRCAアンバランス、XLRバランス、SPDIF(COAX)と、より上位グレード並のインターフェースを搭載しているのが特徴です(SPDIFは入出力とも24bit/192kHzまで対応)。
本体はCNC加工されたアルミニウム製で、フロントボタンのみのシンプルなデザインが特徴的です。放熱は底面のスリットから行われます。サイズは149mm×84mm×37mmと据置きながらコンパクトなサイズ感にまとめられています。
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SONCOZ LA-QXD1」は「ブラック」「グレー」「シルバー」のカラーバリエーションが用意されています(シルバーカラーはHiFiGO直販サイトでのみ選択可能)。購入はグルーバルでオーディオ製品を販売する「HiFiGO」にて。HiFiGO直販サイトに加え、アマゾンにも出店を開始しました。
価格は直販サイトで219ドル、アマゾンでは20,800円です。何故かアマゾンの価格のほうが逆転していますので今ならアマゾンで買った方がお買得みたいですね。
HiFiGO(直販サイト): SONCOZ LA-QXD1 
Amazon.co.jp(HiFiGO): SONCOZ LA-QXD1


■ シンプルなデザインながら充実したインターフェース

SONCOZ LA-QXD1」は「HiFiGO」から厳重に梱包され送られてきました。パッケージはシンプルな化粧箱でコンパクトに付属品がまとめられています。
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パッケージ内容は、本体、接続用USBケーブル(Type-A → Type-B)、給電用USBケーブル(Type-C y → Type-A)、説明書ほか。本体はバスパワーでは無く給電が必要で、電源コネクタはUSB Type-C仕様で給電ケーブル以外に電源プラグは用意されておらず、PCまたはUSB給電ができるタップや電源アダプタが必要となります。なお電源にスマホ用のモバイルバッテリーを接続しても使用可能です。
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SONCOZ LA-QXD1」のアルミ筐体の本体はそれなりの重量感があり、しっかり据え置くことができる印象。サイズ的にはデスクトップに置くのは手頃なコンパクトさですが、たとえばXLRのバランス接続で「LOXJIE P20」と組み合わせたい場合は下に置いて積み重ねることはできないサイズ感ですね。

SONCOZ LA-QXD1本体のモード変更などはフロントのボタン操作によって行います。一番左側の歯車のボタンが設定ボタンで、1回ずつ押すことで入力モードがUSB→TOS→COAXと切り替えられます。中央の「-」「+」はボリュームで一番右側がミュートボタンとなります。ただPCM音源の再生時に「ミュート」ボタンを2秒間長押しするとフィルターモードとなり、同様に2秒間押し続けることでモード変更が可能となります。フィルターモードは7種類のモードが選択でき、デフォルトではAPOD(Apodizing fast roll-off filter)となっているようです。


■ スマートデバイスを含めたさまざまな再生環境に対応

SONCOZ LA-QXD1」は多くのUSB-DACで採用されているXMOSのUSBレシーバーチップを採用していますので、Macやラズパイオーディオ、ASUSTOR NASなどUSB Audio Class 2.0(UAC2.0)対応のオーディオシステムではドライバー不要で接続可能です。またバスパワーではない仕様のため、iPhone(カメラアダプタ使用)やAndroid(OTG対応機種)、USBトランスポート対応のDAPでの利用も可能です。
SONCOZ DriverWindows環境ではWindows 10でUAC2.0に対応しているものの、ASIOに対応したネイティブドライバーは別途インストールが必要です。「SONCOZ LA-QXD1」もXMOS搭載USB-DACではお馴染みのThesycon製カスタムドライバーを使用します。ドライバーはメーカーサイトのダウンロードページから「THESYCON DRIVER」のリンクをダウンロードします。
なお、毎回書いているThesycon製ドライバーのお約束ですが、iFI-Audio、SMSLやTOPPINGなど多くのメーカーのUSB-DACが同様に採用している関係上、同時にこれらのDACを接続する場合、メーカーごとのカスタム部分以外のインストールファイルは最後にインストールしたドライバーで「上書き」されます。そのため、例えば「SONCOZ LA-QXD1」を接続後に、他のメーカーの古い機種を追加で接続する場合は必ず最新版のドライバーを入手してインストールを行わないと、もともと接続されていたDACも正常に動作しなくなることがあるので注意が必要です。

Windows環境(ASIO)で接続後、「Audirvana」で設定を確認します。32bit/768kHzまでのPCMおよびネイティブモードでのDSD512までの対応を確認できました。同様に「foobar2000」でも「foo_dsd_asio」を選択し、ドライバーで「SONCOZ USB Audio Device」を選択することで問題なくDSDのネイティブ再生ができました。
Audirvana Win / SONCOZ LA-QXD1foobar2000 / SONCOZ LA-QXD1

また前述の7種類のフィルターモードは以下の7種類で、初期設定では「APOD」になっています。
 ・「APOD」 Apodizing fast roll-off filter 
 ・「BRIC」 Brick wall filter
 ・「FAM」 Minimum phase fast roll-off filter
 ・「FAL」 Linear phase fast roll-off filter
 ・「HYPER」 Hybrid fast roll-off filter
 ・「SLM」 Minimum phase slow roll-off filter
 ・「SLL」 Linear phase slow roll-off filter

ミュートボタンを長押しすることで点灯するLEDが変わり、長押しすることにモードが変わります。各モードの対応表は以下の通りです。ただ、それぞれのモードでの違いは結構微妙で、ほとんどの場合は初期設定のフィルターのままで問題ないのではと思いました。
SONCOZ LA-QXD1SONCOZ LA-QXD1

また再生時、アナログ出力では音量ボタンによる音量の変更が可能です(出力時の音量固定のモードはありません)。ボリュームは1回押すごとに2dBごと変化します。初期ボリュームは「-60dB」で最大音量(0dB)に比べるとやや小さめの出力になっていますね。出力するアンプの特性に合わせて「SONCOZ LA-QXD1」のほうの音量はあらかじめ調整しておくのが良いでしょう。


■ 癖がなく適度な明瞭さと締まりのあるデスクトップオーディオに最適な音質傾向

SONCOZ LA-QXD1」の音質的にはESSチップ搭載DACらしいハッキリ目の傾向ながら癖のないサウンドです。より派手さを抑えた自然な印象で、この価格帯の製品としては非常に歪みの少ない自然な鳴り方をします。また見通しも良く広さや奥行きにも低価格製品にありがちな平面的で窮屈に感じる事はないようです。例えば「TOPPING D10s」など、同じ「ES9038Q2M」DACチップを搭載した低価格モデルと比較しても明らかなグレードの違いがありますね。いっぽうで適度に締まりのある音質傾向は、大型スピーカーで大音量で鳴らすというよりはデスクトップなどのニアフィールドでのスピーカーやヘッドホンでの利用に最適なサウンドといえるでしょう。

SONCOZ LA-QXD1SONCOZ LA-QXD1
また「SONCOZ LA-QXD1」はこの価格帯の製品としては珍しく、バランス出力(XLR)にも対応しています。バランス入出力に対応したヘッドフォンアンプ「SMSL SP200」にXLRケーブルとRCAケーブルの両方で接続し、XLRとRCAを切り替えて聴いてみると(「SONCOZ LA-QXD1」は両方のコネクタから同じ音量で同時に出力されます)、バランス出力(XLR)のほうがアンバランス(RCA)と比較してより輪郭がハッキリした解像感のある音で描写されます。また「SONCOZ LA-QXD1」はXLRのほうがRCAと比べて出力電圧とインピーダンスがちょうど2倍の仕様のため、切り替えると音圧もぐっと変化するのがわかります。どちらの出力でも据置き仕様のUSB-DACとしての実力は高く、ヘッドホンアンプでもプリメインアンプなどからスピーカー出力する場合でも実用的な音質だと感じました。

また、「SONCOZ LA-QXD1」より少し上の価格帯の「SMSL M200」および「TOPPING D50」と比較してもキャラクターの違いはあるものの十分な実力を実感できました。

SONCOZ LA-QXD1」VS「SMSL M200」(接続アンプ「SMSL SP200」、XLR出力)

SONCOZ LA-QXD1SMSL M200」もいちおう200ドル台のUSB-DACですがアマゾンで3万円オーバーでBluetooth機能も搭載するなど実質的にはひとつ上のグレードの製品ですね。また「SMSL M200」はDACチップに「AK4497」を搭載します。印象としては「SMSL M200」のほうが音の輪郭は自然な鳴り方ですが、高域は「SMSL M200」のほうが多少スッキリしています。いっぽうで「SONCOZ LA-QXD1」はより明瞭感がありより引き締まった印象です。この辺はDACチップ自体の傾向の差とも近く、出力やノイズ等はどちらも同等の実力があります。どちらも優れたUSB-DACですが、「SONCOZ LA-QXD1」のほうが価格的に多少お得感があるかもしれませんね。

SONCOZ LA-QXD1」VS「TOPPING D50」(接続アンプ「TOPPING A50s」、RCA出力)

SONCOZ LA-QXD1現在はBluetooth機能を追加した「D50s」となっていますが、どちらもDACチップに「SONCOZ LA-QXD1」と同じ「ES9038Q2M」を、こちらはデュアルで搭載します。印象としては「TOPPING D50」のほうがやや音に厚みが有り中低域の広がりに深さを感じます。いっぽうで「SONCOZ LA-QXD1」のほうが多少シャープで解像感のある音で僅かにソリッドさを感じるサウンドですね。自然さという視点では「TOPPING D50」>「SONCOZ LA-QXD1」>>「TOPPING D10s」という印象です。もちろんスペックの違いもありますが、この辺は良し悪しと言うより製品のキャラクターの違いかなと思いました。

SONCOZ LA-QXD1」+接続アンプ「LOXJIE P20」、XLR出力

SONCOZ LA-QXD1 / LOXJIE P20また「SONCOZ LA-QXD1」は約2万円の低価格でバランス出力に対応するということもあり、中華ヘッドホンアンプとして非常に人気の高い「LOXJIE P20」との組み合わせにも最適です。約1万の「LOXJIE P20」にあまりコストをかけずに質の高いUSB-DACをバランス接続したい方にはうってつけでしょう。適度な明瞭感と締まりがありつつ癖のないサウンドの「SONCOZ LA-QXD1」は「LOXJIE P20」との相性も良好です。また、XLR接続でヘッドホンアンプに接続する場合も、RCA端子からも同様に出力されますので、こちらは手頃な中華D級アンプにつないでお手軽なデスクトップオーディオ環境を構築するのも良いのではと思います。


というわけで、「SONCOZ LA-QXD1」は比較的手頃なUSB-DAC製品ながら利用範囲は広く、これまでSMSLやTOPPINGなどのメーカーが目立つ印象だった中華DAC製品のなかで「ちょうど良い」価格帯の新たな定番商品が登場した印象です。もし据置型の手頃なUSB-DACを探している方は十分に検討対象になる製品だと感じました。