Moondrop Illumination-光 & 秋月ケーブル

こんにちは。今回は昨年末に購入した「Moondrop Illumination-光」(「秋月」ケーブル との組み合わせ)です。中国のイヤホンブランド水月雨(Moondrop)のシングルダイナミックのフラグシップにあたるモデルで、日本でも昨年末にリリースされました。美しいゴールドのメタルハウジングに高級感を感じますが、海外では同じ時期に発売されていたオプションのゴールドメッキケーブル「秋月」との組み合わせで、見た目にも音質面でもさらに「覚醒」します。そのサウンドは10万円クラスのハイグレードイヤホンのなかでもトップクラスの質の高さだと思います。
Moondrop Illumination-光日本では「Moondrop Illumination-光」の発売時予約で先着10名に「秋月(Autumn Moon)」ケーブルがバンドルされるキャンペーンを実施していましたが、私は予約のタイミングが少し遅く、10名の枠に入ることはできませんでした。しかし、ネット上では入手に成功した方々が、このケーブルを使うか使わないかで印象がまるで違う、という内容のツイートをしていたことで、私も急いで海外のショップよりオーダーして入手した次第です。現在は3.5mmステレオプラグ仕様のみですが日本でも「秋月(Autumn Moon)」ケーブルが発売されましたので、「Moondrop Illumination-光」を入手される際には一緒に購入することを強くお勧めします。それくらい、印象が大きく異なります。まあ元々10万円近いイヤホンですので、ここで約1万円のケーブルが増えても大差ないですよね(汗

中国のイヤホンブランド「水月雨」(Moondrop)は、ミドルグレードおよびハイグレードの製品でもインナーイヤー型の「CHACONNE」や「Liebesleid」、マルチBAの「S8」「A8」、ハイブリッドの「Blessing2」シリーズなど、様々なラインナップを加えてきました。そしてセールス的に最も人気の高い「KXXS」などのカナル型シングルダイナミック製品は同ブランドの知名度を一気に高めたといえるでしょう。今回の「Moondrop Illumination-光」は、「水月雨」(Moondrop)のフラグシップ製品として、同社の独自ドライバーやハウジングの技術を投入した、まさに渾身のモデルといえるでしょう。
Moondrop Illumination-光」は5軸CNC加工されたTC4チタン合金製のハウジングを採用しており、TiNメッキ(窒化チタン)コーティングによる美しいゴールドの表面は非常に硬く、光沢を維持します。
Moondrop Illumination-光Moondrop Illumination-光

Moondrop Illumination-光」は特許取得済みの11mm高性能ダイナミックドライバーをシングルで搭載し、振動版は液晶ポリマードーム+高制動PEEKサスペンション(Liquid Crystal polymer dome + soft high damping factor PEEK suspension)で構成され、低域最大10Hz、高域最大50kHzの超広帯域の周波数帯域を実現します(1/4Inchフリーフィールドマイクでの測定結果)。
Moondrop Illumination-光Moondrop Illumination-光
また、強力なN52磁石、CNC加工された伝導回路と独立したチャンバーなどドライバー同様に特許技術のドライバー設計により共振を抑え、特殊な圧力緩和構造により定在波を緩和しながら優れたレスポンスと音域特性を実現しています。
Moondrop Illumination-光Moondrop Illumination-光
Moondrop Illumination-光」は標準では6N OCC高純度単結晶銅線のSPC(銀メッキコート)ケーブルが付属します。このケーブルはプラグ部分を独自コネクタにより交換可能で、3.5mmステレオのほか、2.5mm/4極、4.4mm/5極のバランス接続にも対応します。

Moondrop Illumination-光」の価格は 89,820円(レビュー掲載時点、アマゾンの表示価格)です。海外での価格が799ドル(レビュー時点の為替手数料込み84,000~85,000円程度)のため、保証なども考慮すると妥当なところですね。通常は国内で購入した方が良いでしょう。
Amazon.co.jp(国内正規品): Moondrop Illumination-光

秋月(Moondrop Autumn Moon)秋月(Moondrop Autumn Moon)
また、「Moondrop Illumination-光」専用ではないものの、同製品との組み合わせを前提に発売されたオプションのアップグレードケーブル「秋月(Moondrop Autumn Moon)金メッキOOCケーブルも一緒に入手したいところです。金メッキ処理を行った6N OCC(高純度単結晶銅)ケーブルで、1芯あたり22本の24AWG(外経約0.51mm)線材を束ねた4芯ケーブルで、特に「Moondrop Illumination-光」のと組み合わせで最適なサウンドを実現します。
価格は国内正規品が13,230円(3.5mmステレオのみ)、HiFiGOやSHENZHENENAUDIOなど日本でも購入可能な海外セラーの価格が 89.99ドル2.5mmまたは4.4mmバランスプラグ選択可能)となっています。
HiFiGO : Moondrop Autumn Moon 「秋月」金メッキOCCアップグレードケーブル
SHENZHENENAUDIO : Moondrop Autumn Moon 「秋月」金メッキOCCアップグレードケーブル


■ コンパクトなチタン合金製ハウジング。付属品も多彩な豪華パッケージ。

Moondrop Illumination-光」のパッケージは細長い箱ですが、これ、写真でみるより、「相当デカい」です(汗)。ついでに結構重量感もあります。予約購入で届いた梱包のでかさに「このデカさはきっと特典ケーブルも同梱されているに違いない!」といらぬ期待をしてしまったのは完全に余談です(^^;)。まあ高級イヤホンらしい豪華さだということはお伝えしましょう。
Moondrop Illumination-光Moondrop Illumination-光

Moondropのイヤホンは低価格モデルを除き付属品が充実していることが特徴のひとつですが、当然「Moondrop Illumination-光」にも様々な付属品がつきます。イヤホン本体のほか、ケーブル、ケーブルの交換用プラグ(2.5mm、4.4mm)、航空機用変換プラグ、シリコンイヤーピース(2種類、それぞれS/M/Lサイズ)、ウレタンイヤーピース(S/M/Lサイズ)、交換用ノズルスポンジ(5ペア)、交換用ピンセット、イヤホンケース、説明書、保証書など。
レザー製のハードケースは交換用プラグなどの収納も考慮してか従来より結構大きめのものが付属しているのも有り難いですね。
Moondrop Illumination-光Moondrop Illumination-光

Moondrop Illumination-光」の本体はとてもコンパクトなシェルデザインです。チタン合金製ということもあり想像以上に軽量で、重さで耳から落ちる心配もなさそうです。背面にはやや大きめのベント(空気孔)があり、多少の音漏れはあります。また遮音性も「KXXS」よりは低いようです。まあ10万円クラス、20万円クラスといった製品はその価格からも街中で聴くというよりは静かな部屋でじっくり楽しむ使い方が一般的ですので、遮音性はそれほど考慮されていない製品が多い傾向にあります。それでも開放型のヘッドホンに比べれば、といったところでしょう。
Moondrop Illumination-光Moondrop Illumination-光

シェルサイズを「Moondrop KXXS」と比べると大きさの違いは一目瞭然ですね。一見すると似たデザインにも見えますが、実際は大きさも形状も全く異なるのがわかります。ただ付属するシリコンイヤーピースは「KXXS」も「Moondrop Illumination-光」も大差無く、残念ながらその実力を発揮するにはどれも不十分なものです。イヤーピース交換は必須で、定番のJVC「スパイラルドット」または上位の「スパイラルドット++」、AZLA「AZLA SednaEarfit Light」や「AZLA SednaEarfit XELASTEC」、Acoustune「AET07」など自分の耳に合う最適なイヤピースを選択するのが良いですね。
Moondrop Illumination-光Moondrop Illumination-光
付属の6N OCC線SPC(高純度単結晶銅線銀メッキコート)ケーブルは「KXXS」付属のケーブルより太さとしなやかさがある線材で、見た目にも高級感があります。また交換可能なプラグはとても便利ですね。後述の通り、個人的には「Moondrop Illumination-光」との相性は今ひとつで「秋月」ケーブルの方を使用しますが、ケーブル自体は悪くないので、0.78mm 2pin仕様の他のイヤホンで利用するもの良さそうです。

秋月(Moondrop Autumn Moon)秋月(Moondrop Autumn Moon)
そして、後からオーダーした「Moondrop Autumn Moon(秋月)金メッキOOCケーブルですか、こちらは缶ケースに入って届きました。ケーブルのほか大きめの布製ポーチも付属します。こちらは金メッキの4芯線で少し弾力のある透明な樹脂被膜に覆われた線材を使用しています。太すぎず、取り回しのよいケーブルです。またソリッドな形状のプラグ部分の意匠も高級感があります。


■ ハイグレードイヤホンならではの表現力の高さ。「秋月」ケーブルで本領を発揮。

Moondrop Illumination-光」の音質傾向は、中高域寄りのフラット方向のバランスで、インピーダンス25Ω、感度125dB/mWと鳴らしやすく、高い明瞭感と解像感のある音を鳴らします。同社の代表的なモデルのひとつである「Moondrop KXXS」は非常に柔らかくバランスの良い音が特徴でしたが、「Moondrop Illumination-光」ではまた全く違う印象で、比べるなら「凛としたサウンド」といった感じでしょうか。特許技術の集合体であるドライバーとハウジングから繰り出されるサウンドは、真っ直ぐに伸びる直線的な明瞭さで、それ故に高域から低域までのダイナミックレンジがより広く、非常に詳細に音像を捉えることができます。
Moondrop Illumination-光例えば、20万円クラスの「HIFIMAN RE2000」は独自の振動版の技術でダイナミックドライバーが構造的に持つ歪みを極限まで廃した設計が特徴でした。「Moondrop Illumination-光」は「RE2000」の半分以下の価格ですが、この歪みの少なさという点では同様にかなり高いレベルを実現しています。もちろん、イヤホンの音作りの「正解」はひとつではなく、耳馴染みの良いV字カーブを突き詰めるアプローチも良いですし、優れたマルチBAイヤホンでしか作れない音もあります。ただ「Moondrop Illumination-光」については、高性能ドライバーやデザインを突き詰めたハイグレードイヤホンだからできる音の表現が実在し、その質の高さはより上の価格帯の製品とも渡り合える実力を持っていることは間違いないと思います。

ただ、ひとつ残念なのは「Moondrop Illumination-光」に付属する銀メッキ線ケーブルが相性的に今ひとつであること。既に多くのツイートやレビューで書かれているとおり、特に付属ケーブルでの高域の「粗さ」というか「暴れかた」については大きなウィークポイントです。しかし、ここで「秋月(Autumn Moon)金メッキOOCケーブルを組み合わせることで高域の印象は「激変」します。店頭などではこのケーブルを組み合わせた試聴ができないことが多いと考えられますが、それで「Moondrop Illumination-光」の良さを知る機会を喪失しているとしたら、とても勿体ないことですね。個人的にも想像以上の変化でしたので、購入を検討されている方は迷わずに一緒に入手することを強くお勧めします。また付属ケーブルも「Moondrop Illumination-光」との相性が今ひとつなだけで、それ自体は良いケーブルだと思いますので、他のイヤホンで転用するのも良いかもしれませんね。

Moondrop Illumination-光 & 秋月ケーブルMoondrop Illumination-光」の高域は、「秋月」ケーブルに交換することで、非常に滑らかに伸びる綺麗な音を鳴らします。明るく鮮やかさがあり解像度の高い描写ですが、硬質になりすぎず、適度に聴きやすい刺さりのない音を鳴らします。Moondoropらしい適度な温かさや余韻を感じさせつつ、歪みを一切感じさせない滑らかさや美しさがあります。そのため、非常に解像度の高い音ですが聴き疲れすることの無い快適さは特筆すべきものです。
いっぽう、これが付属のケーブルの場合、高域が過度に持ち上げられ、粗さが増したキツめの音に感じる事が増えます。もしかしたらこのチューニングで合う再生環境が存在するのかもしれませんが、この価格帯のイヤホンを購入される方が使用するクラスのDAPやアンプなどの環境では、付属ケーブルではせっかくの素晴らしい高域が台無しになってしまうようです。

中音域も癖のない非常に自然な音を、驚くほど真っ直ぐな見通しの良さで鳴らします。特許技術に支えられた独自ドライバーからのサウンドをありのままに捉え、アルミ合金や亜鉛合金、ステンレスなどと比べて軽量ながら非常に高い硬度と制振性を持つチタン合金製のハウジングは、「KXXS」の柔らかさとは異なる、凛とした伸びやかさがあるサウンドを奏でます。ドライバー同様に特許技術のチャンバーなどこだわりぬいた設計により、驚くほど自然かつ広大な音場で、それでいて「とにかく美しい」と感じるサウンドを演出します。ボーカル帯域はもちろん、演奏における楽器ひとつひとつの音に聴き応えがあり、良い音源であればあるほど、その表現力の高さに魅了されることでしょう。

低域は中高域の表現力の高さから、相対的に少なめに感じます。しかし、低域においても表現力は非常に高く、ダナミックレンジの広さを改めて実感します。ミッドベースはパワフルかつ締まりがあり、非常に精緻で解像度の高い音を鳴らします。分離も非常に良く、スピード感のある曲や、低域の音数の多い曲でも不満を感じることはありません。また重低音も非常に深く、同様に解像感に優れているため、ハードロックはもちろん、EDMなどの打ち込み系においても高い実力を発揮します。
Moondrop Illumination-光 & 秋月ケーブルMoondrop Illumination-光 & 秋月ケーブル

というわけで、「Moondrop Illumination-光」+「秋月(Autumn Moon)」ケーブルのコンビネーションは、利用範囲の広いハイグレードイヤホンとして非常に満足度の高い買い物でした。前述の通り、「価格に見合うサウンド」というのは人それぞれの価値観や好みがあり、一概に良し悪しを決めることは難しいかも知れません。私の場合、この価格帯のイヤホンを数種類使い分けており、それぞれがそれぞれに全く違った個性を持っているため、どれも甲乙付けがたい部分は確かにあります。それでも、ハイグレードな製品を使ってみたいと考えている方にとって、有効な選択肢のひとつになるだろう、という点については間違いないと思っています。