CCA CKX

こんにちは。今回は「CCA CKX」、前回に引き続き「CCA」の新モデルです。非常にコンパクトな金属製ハウジングに10mmドライバーと6基のBAを搭載するという思わず二度見しちゃうような仕様の6BA+1DDハイブリッドですね。その特徴的な外観に加えて音質面も従来のCCAの方向性とは少し異なり、まるで「ちょっと前のKZのドンシャリサウンド」をグレードアップさせ完成度を高めた印象なのも特徴的やイヤホンです。
中華イヤホンを代表するメーカーのひとつ「KZ」の姉妹ブランドとして、「CCA」のイヤホンも数多くの製品を紹介してきました。最近では7BA+1DDの「CCA CA16」や前回紹介した8BAモデルの「CCA CS16」といった「多ドラ」モデルも増えていますが、今回の「CCA CKX」は6BA+1DDという同様にドライバー数の多いハイブリッド製品ながらネーミングルールも従来のパターンを踏襲しておらず、また色々な面で既存モデルとは少しだけ毛色が違う印象もありますね。
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CCA CKX」は5軸CNC加工された亜鉛合金製のコンパクトな金属製シェルを採用。従来とは異なる構成の6BA+1DD構成の7ドライバーを搭載し、高い解像感と詳細なディテール感を実現しています。
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CCA CKX」のドライバー構成は高域用の「30095」をステム部と本体部に1基ずつ(2BA)、中高域用にデュアルBAユニットの「30017」を2基(4BA)に10mmサイズの複合振動板ダイナミックドライバーを組み合わせた6BA+1DDのハイブリッド構成となっています。中高域用のBAユニットに前回レビューした「CCA CS16」の高域用で使用されていたデュアルBA「30017」を2基使用し、中低域をダイナミックでカバーするなど「CCA CA16」辺りとは全く異なるアプローチで構成されているのが興味深いですね。

CCA CS16:  (ステム部) なし   (ハウジング部) [30017(2BA)]+[31736(2BA)]×2+[29689]+[22955]
CCA CKX:   (ステム部) [30095]  (ハウジング部) [30095]×1 + [30017 (2BA)]×2 + 10mmDD
CCA CA16:  (ステム部) なし   (ハウジング部) [30095]×3 + [50024 (2BA)]×2 + 7mmDD  
KZ ZAX:     (ステム部) [30095]  (ハウジング部) [30019]×2 + [50024 (2BA)]×2 + 10mmDD 
KZ ZS10 Pro:(ステム部) [30095]  (ハウジング部) [30095]×1  +  [50060]×2 + 10mmDD

またハウジング内でのドライバー配置についてはKZ/CCAでもドンシャリ傾向強めの「KZ ZS10 Pro」と似ている部分もあり、「CCA CKX」のサウンドデザインの方向性が伺えますね。
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CCA CKX」のカラーバリエーションは「シルバー」と「ブラック」の2色。購入はAliExpressおよびアマゾンの各ストアにて。AliExpressでの一般的な価格69.90ドル~、アマゾンでは8,180円~程度です。またさらに値引きをしているストアがある場合もあります。AliExpressでの購入方法はこちらを参照ください。
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■ 6BA+1DDとは思えない驚くほどコンパクトな金属シェル

CCA CKX」のパッケージは「CS16」「CA16」等と同じ少し大きいタイプの白箱になっています。箱の正面はCCAのロゴだけで、側面に製品製説明が記載されているのが最近の特徴です。パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/Lサイズ)、説明書と従来通りの最小構成。付属ケーブルは銀メッキ線タイプです。
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CCA CKX」のハウジングは想像以上にコンパクトな金属製。サイズ感は以前の「KZ ZSA」(1BA+1DD)あたりを思い出すもので、この大きさで6BA+1DDのドライバーが入っているというのは驚きです。亜鉛合金のため少し重量感がありますがサイズが小さいため重さで耳から落ちることはなさそうです。
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最近のKZ/CCAのイヤホンはステムノズルでTWSと共通の細いタイプが採用されることが増えていますが、「CCA CKX」はハウジングと一体形成で従来モデル同様の太いタイプです。そのため、イヤーピースも従来タイプの形状で「KZ EDX(白色および透明)」で付属している白色タイプと同じでした。
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コンパクトなシェルのため装着性は良く耳にすっぽり収まる印象です。ただ付属イヤーピースはフィット感が今ひとつのため遮音性のうえでも交換が必要でしょう。定番のJVC「スパイラルドット」または上位の「スパイラルドット++」、Acoustune「AET07」、あるいはAZLA「AZLA SednaEarfit Light」など自分の耳に合う最適なイヤピースを選択するのが良いですね。


■ 6基の高域BAと従来より密閉感が増した10mmダイナミックによる明瞭系サウンド。

CCA CKXCCA CKX」の音質傾向はスッキリした明瞭感と分離の良さ楽しめる寒色系弱ドンシャリ。販売サイトに掲載の周波数特性グラフはかなり派手な傾向だったようにも思いますが、実際はボーカル帯域および中高域付近を中心に癖のないニュートラルなサウンドにまとめられています。従来のKZのような明瞭さも感じつつも、つながりの良さなどは格段にレベルアップした印象のサウンドです。またコンパクトな金属ハウジングの効果もあるのか、締まり重視で分離感の良いカチッとしたサウンドに仕上がっています。
反面、付属ケーブルでは低域がやや抑えぎみで臨場感が少なく感じますが、そこは同価格帯で7BA+1DD構成の「CCA CA16」があるため、意図的にキャラクターを分けていると捉えるのが妥当でしょう。サウンドチューニングとしてはやや中低域寄りで腰高感の無い傾向ですが全体的にスッキリしており低域も響きや臨場感よりキレを重視した印象です。リケーブルや駆動力のある再生環境により十分存在感のある深い低域を実感でき、個人的には好きなバランスにまとまっていると思います。ただ、「CCA CKX」は比較的鳴らしやすいイヤホンですが、後述の通り実際には「CCA CA16」以上に駆動力を必要とします。同様にリケーブルも「必須」のイヤホンのようです。

CCA CKX」の高域は、明るくスッキリとした明瞭で伸びの良い音を鳴らします。印象としては「KZ ZS10 Pro」の頃の多少派手さを感じつつ聴きやすくまとめられたKZの高域を思い出しますね。ドライバーの配置が「KZ ZS10 Pro」に似ていると記載しましたが、その辺の影響もあるのかも知れませんね。中華ハイブリッドらしい硬質な音ですがスッキリした鳴り方で同社特有の金属質なギラつきはほとんど感じない印象。減衰はやや早めですが綺麗に伸びシンバル音も明瞭さがあります。また刺さりやすい帯域もコントロールされており、聴きやすくまとめられています。
CCA CKXある意味「CCA CKX」の高域はCCAというより、かつてのKZを彷彿とさせるものです。もともとCCAブランドのイヤホンは発売当時KZでは異色とされた無印「KZ ZS10」あたりをルーツに持つ、音の響きや厚みを強調した(機種によっては多少ウォームに感じる場合もある)方向でまとめられていましたが、市場的にボーカル帯域を中心とした傾向に人気が高まると、「KZ ZSX」以降はKZ自身も比較的この傾向のサウンドに向かい、結果的にCCAとの差別化が微妙になる、という状況になりました。現在は「CCAらしさ」というよりはKZ/CCAの音の引き出しをいろいろやってみるブランド、という感じなのだと思います。

中音域は解像感があり、癖のない、明瞭な輪郭が印象的です。比較的ニュートラルな出音で高域同様スッキリしており1音1音の明瞭さを感じます。特に女性ボーカルが非常に美しく中高域の抜けの良さも感じます。いっぽう金属質でドライな印象もあるため、光沢感や艶のある音を好まれる方には好みが分かれそうです。比較的近くで定位し音場は普通かやや狭い印象ですが、分離の良さから個々の演奏は捉えやすく、多少モニターライクな「耳コピしやすい音」だと思います。また、リケーブルや再生環境の違いなどによりボーカル帯域を中心に主張が増しメリハリのあるサウンドを実感できます。

低域は比較的再生環境に影響されやすく、従来のKZ/CCAに比べるとかなり異なる印象ですが、十分に量感のある力強くキレのある音を鳴らします。KZ/CCAのイヤホンでの10mmドライバーの塊感みたいなものを感じるミッドベースと比べると非常にタイトで真っ直ぐ鳴る印象ですが、音数の多い曲でも比較的捉えやすくスピード感のある曲も結構対応できる印象です。重低音もやや軽く感じるものの十分に深さがあり、量的にも不足も感じる事はありません。従来のKZおよびCCAのイヤホンは樹脂ハウジングが多く、金属ハウジングでもZS6/ZS7/ZSAのように大きめのベントがあり、ハウジングを使ったドライバーの反響を活かす設計をしていましたが、「CCA CKX」ではコンパクトな金属ハウジングにドライバーをすき間なくびっしりと埋めることで、意図的にカチッとした低音を作ろうとしているのではと感じます。
Speaker例えるなら、付録雑誌として販売している8cmフルレンジスピーカーユニット(私も以前は毎年購入してました)を、普通の木製ブックシェルフサイズではなくコンパクトな金属製エンクロージャを使ってカチッとした音のスピーカーに仕上げるような、そんな感じを思い出しました。「CCA CKX」の販売ページでも冒頭で「New architecture」と記載されていますが、KZ/CCAの音作りでこういう引き出しもあったのね、と驚かされます。

CCA CKX」は、ポップスやアニソン、またはEDMなどのボーカル曲と相性が良く、スピード感があり音数の多い曲、刺さりやすい曲なども楽しさがあります。具体的な例でいうと「最近のKZ/CCAのイヤホンのなかで最もfripSideが気持ちよく聴けるイヤホン」という印象です(笑)。
また、「CCA CKX」は非常にまとまりのある音なのですが、しっかり鳴らすためにはある意味「CCA CA16」より駆動力が必要です。「CCA CA16」はちょっと鳴らしにくさがあるため、最初からそのつもりでリケーブルや再生環境を用意すると思うのですが(私のブログでもこの点はわりと強調していますね)、「CCA CKX」は22Ω、115dB/mWと比較的鳴らしやすいイヤホンに見えます。
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しかし駆動力が足りないとやや大人しすぎる印象となり、情報量の多いケーブルにリケーブルして駆動力のある環境で鳴らした場合には前回の「CCA CS16」のように音が暴れることなくむしろ自然なバランスに変化します。また元々スッキリした傾向なのでバランス接続とも相性が良く、分離感が強くなることも好印象に感じました。「CCA CKX」は明瞭感と中低域の厚みを維持できる、情報量の多い銀メッキ線ケーブルへのリケーブルは必須で、駆動力のある再生環境、できればバランス接続も推奨という印象です。具体的には低価格の銀メッキ線ケーブルなら「JSHiFi Hi8」または「NICEHCK C8s」シリーズなどが手頃でしょう。また「KBX4878(KB4878)」「NICEHCK C16-1」などの16芯銀メッキ線ケーブルとの組み合わせも良いと思います。

CCA CKXというわけで、「CCA CKX」は6BA+1DDのマルチドライバー系中華ハイブリッドというKZ/CCAらしい方向性を保ちつつ、若干割高ながら名称だけでなく外観も音作りもキャラクターの違う方向性を提示したとても意欲的なイヤホンだと感じました。従来のKZ/CCAのサウンドを気に入っている方には多少違和感を持つかもしれませんが(多分それも織り込み済み作られていると思います)、個人的にはとても使いやすく楽しイヤホンだと感じました。3DDの「KZ DQ6」もそうでしたが、現状に臆すること無く新しい試みも手を抜かない同社の姿勢はとても好感が持てます。そういえば対抗するTRNも「TRN TA1」でまた新しい方向性を提示していますし、まだまだ低価格中華イヤホンも目が離せないですね。