NICEHCK EBX21

こんにちは。今回は「NICEHCK EBX21」です。私のブログでもお馴染みとなっている中国のイヤホンセラー「HCK Earphones」が展開する「NICEHCK」ブランドのイヤホンも数多く紹介してきました。なかでもインナーイヤー型(イントラコンカ型)イヤホンはHCKが得意とするジャンルのひとつで、マニアの間では主要ブランドのひとつとして認知されています。
今回の「NICEHCK EBX21」は「NICEHCK」のインナーイヤー型では初めて200ドルを超える価格帯となるハイエンドモデルで、2017年下旬にリリースされた「EBX」のさらに上位グレードの製品となります。インナーイヤー型では「Moondrop」の大人気モデル「Liebesleid」および「CHACONNE」以降、「DQSM」「K's Earphone」といった主要ブランドから200ドルオーバーの優れたフラグシップ製品がリリースされているようで、「NICEHCK」からも満を持しての登場となりますね。

NICEHCK EBX21NICEHCK EBX21

NICEHCK EBX21」は5軸CNC加工されたアルミニウム合金製のソリッドデザインのハウジングに、CCAWボイスコイルとN52強磁力ネオジムマグネットを採用し、日本製のLCP樹脂(液晶ポリマー)振動版による14.2mmの大口径ダイナミックドライバーを搭載。LCP樹脂を使用した振動版はソニーなどのメーカーのイヤホンやヘッドホンで採用されていることがよく知られていますね。LCP樹脂は成形時の高分子配列が揃った状態となるため収縮や反りが少なく、一般的なPET樹脂の振動版より高い弾性率があり内部損失が少なく、より歪みを抑えたクリアなサウンドを実現できるようです。
NICEHCK EBX21NICEHCK EBX21

また、「NICEHCK EBX21」はMMCXコネクタによるリケーブルに対応し、銀メッキ高純度単結晶銅(OCC)線を銀メッキ銅箔でシールドした線材を使用し布張り加工された高品質な専用ケーブルが付属します。マグネットタイプのケーブルタイなど付属品も充実しています。このケーブルは通常の3.5mmステレオのほか、2.5mm/4極または4.4mm/5極バランス接続用プラグが選択可能で、購入時にプラグタイプを選択できるほか、オプションで他のタイプのケーブルのみを購入することも可能です。
NICEHCK EBX21NICEHCK EBX21

NICEHCK EBX21」の購入はAliExpressの「NiceHCK Audio Store」またはアマゾンの「NICEHCK」にて。価格はAliExpressが 219ドル~、アマゾンが24,250円 です。またオプションケーブルはアマゾンにて11,050円で購入できます。通常はアマゾンで購入した方がすぐに届きますし、万が一のときにアマゾン経由で返品などのサポートが受けられるので良いかもしれませんね。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): NICEHCK EBX21
Amazon.co.jp(NICEHCK): NICEHCK EBX21


■ 高級感のあるアルミ合金製ハウジング&ケーブル。低域が増すシリコンリングも付属。

NICEHCK EBX21」のパッケージは「NICEHCK NX7 MK3」と同様の豪華版パッケージ。同様にサイズの大きい布張りのハードケースも付属します。今回私は2.5mm/4極バランス接続仕様でオーダーしました。
NICEHCK EBX21NICEHCK EBX21
パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、マグネットタイプのケーブルタイ、スポンジイヤーパッド(通常タイプ2ペア、ドーナツタイプ2ペア)、シリコンリング(大/小、1ペアずつ)、ハードケース、説明書・保証書など。2種類のスポンジイヤーパッドのほか、低域の量感をアップさせるシリコンリングは耳の大きさにあわせた大小2種類を選べるなど装着性や好みに合わせて細かく選べるのは良いですね。
NICEHCK EBX21NICEHCK EBX21

NICEHCK EBX21」の本体は渋いガンメタルな表面処理が施されたアルミニウム合金製。シンプルでソリッドなデザインは高級感がありつつ自然に使えるのが良いですね。コネクタ部付近にゴールド塗装された三角の削り込みがありデザイン上のワンポイントになっています。
NICEHCK EBX21NICEHCK EBX21
削り出しの金属製ですが軽量なアルミニウム合金のため、そのまま装着しても耳から落ちる心配はそれほどありませんが、耳掛け式での装着のほうがよりしっかり装着できるようです。耳掛け式の場合は細長いコネクタ部分を耳に沿わせて上に向けるように装着すると違和感なくしっかりと固定できます。
NICEHCK EBX21NICEHCK EBX21
またイヤーパッドについては無しで装着する方法がもっとも明瞭な印象になりますが、大口径ドライバーを搭載しているモデルとしては比較的コンパクトな装着部分のため、特に耳掛け式で装着の場合、耳の大きさによってはしっかり密着せず低域が抜けたようになる場合もあります。そのときはドーナツ型のスポンジイヤーパッドで固定するのが良いですね。通常のイヤーパッドは高域を多少抑えたい場合に選択します。また中高域を維持したまま、低域の量感を増し力強さを感じる印象に変化させたい場合はシリコンリングを使用します。こちらも耳の大きさに合わせて大小を選ぶと良いでしょう。
NICEHCK EBX21NICEHCK EBX21
付属のケーブルは布張りで高級感のあるケーブルです。非常にしなやかで取り回しも良く、耳から垂らす場合も耳掛け式の場合もしっかり装着できます。イヤーパッドやシリコンリングを使用しない場合は耳から垂らす装着方法の場合タッチノイズが結構大きく感じるため、耳掛け式の装着をしたほうがよいでしょう。ハードケースは「NICEHCK NX7 MK3」に付属していたものと同じ布張りの大きいサイズのもので、イヤホン本体はもちろんイヤーパッドなどの付属品をまとめて収納できます。


■ ダイレクト感のある明瞭サウンド。低域はインナーイヤー型としては好みが分かれるかも

NICEHCK EBX21NICEHCK EBX21」の音質傾向はフラット寄りでダイレクト感があり、良い意味でインナーイヤー型らしくない明瞭なサウンドです。寒色系のドライな音を真っ直ぐに鳴らす印象で、中高域は強調すること無く非常にニュートラルな印象で明瞭に鳴り、低域はスピード感がありタイトです。いっぽうで聴きやすく疲れにくい音で、「NICEHCK EBX」のカナル型イヤホンのようなメリハリのあった印象ともかなり異なりますね。インナーイヤー型らしい低域の存在感のある厚みや響きのある広がりを期待される方には多少タイトすぎる印象を持つかもしれません。ただ、付属のシリコンリングを付けて装着すると低域の量感が一気に増加し、タイトさは変わらないものの重量感とキレのあるサウンドを楽しめます。イヤーパッド無しの状態が「NICEHCK EBX21」の特徴を最も引き出していて好感しましたが、私の場合、耳の大きさの関係で落ちてしまうことがあったため、ドーナツ型のスポンジイヤーパッドを装着し、耳掛け式で装着することで近い状態でしっかり固定することができました。

NICEHCK EBX21」の高域は明瞭ながら聴きやすく、自然で見通しの良い音を鳴らします。特に高域の主張が強い印象はないものの、1音1音を綺麗に鳴らしている印象で、細かい描写も捉えることができる解像感があります。全体的にドライな印象のため、多少明るめに鳴りますが刺激は無く、聴き疲れはしにくい印象です。価格帯の差はあると思いますが、他のインナーイヤー型イヤホンと比べても非常に質の良い高域で、HCKのフラグシップとして十分な実力を感じます。
 
NICEHCK EBX21中音域は癖のない音でバランス良く再生されます。音場は広く奥行きも自然で、ニュートラルで見通しの良いサウンドを鳴らします。高域同様にドライであっさりした印象はあるものの、明瞭かつ自然な描写で、「NICEHCK EBX21」の質の高さを実感します。またボーカル帯域は非常にクリーンで綺麗に鳴ります。楽器との分離も良く多少クールになるものの解像感に優れ音色も明瞭です。しかし、最近の中華イヤホンのようにボーカル帯域をやや強調するような主張はなく、あくまで音源をありのままに鳴らしている感じです。またインナーイヤー型らしい響きや音の厚みは無く、ダイレクト感のある「真っ直ぐな音」という印象です。
このように非常に癖の無い音のため、「これは本当にインナーイヤー型かな?」という気分になるかもしれません。例えるなら、イヤホンとヘッドフォンの違いはあるものの「AKG K712 Pro」あたりを聴いている感覚に近いかもしれませんね。中音域も高域以上に非常に質が高く、個人的には好きな仕上がりです。

低域は一般的なインナーイヤー型と比べても明らかにスピード感重視のタイトな音で、解像感や分離感は高く、より音をしっかり捉えるうえでは最適なチューニングだと思います。ミッドベースは直線的で響きや膨らみは少なく、スピード感や締まりの良さを感じます。重低音は深いところまで鳴りますし、量的にはイヤホン単体では少ないもののシリコンリングを付けることで十分に増しますが、質感は低域重視のイヤホンと比べると今ひとつかもしれません。
NICEHCK EBX21例えば「Smabat ST10シリーズ」など、多くのインナーイヤー型がリスニングの上での低域の質感を高めるアプローチをしている事を考えると「NICEHCK EBX21」のモニターヘッドフォンのような低域はかなり異色です。インナーイヤー型としては好みがはっきり分かれそうですし、リスニングイヤホンとしては低域の厚みや響きの少なさに不満を感じるかもしれません。また「MX500タイプ」などトラディショナルなインナーイヤー型のサウンドに親しみのある方には不満を感じる低域のため、同じクラスでも他の製品を選んだ方が良いかもしれません。個人的にはシリコンリングを付けず、中高域に合せたフラットでスピード感のあるバランスがとても良いと思います。


というわけで、「NICEHCK EBX21」はインナーイヤー型としてはかなり異色な方向性ながら、サウンドクオリティは非常に高く、個人的にはとても気に入った製品となりました。インナーイヤー型ならではの自然な音色や空間表現を感じつつ、他には無いタイトでスピード感のあるサウンドを楽しみたい方には、十分に価格に見合った製品だと思います。これまで数々の「変態イヤホン」をリリースし、「マニア御用達」ブランドとして定着した感もある「NICEHCK」らしく、フラグシップのインナーイヤー型も、高いレベルでありながら一筋縄ではいかないところが好感できますね。
余談ですが、個人的にはインナーイヤー型が「NICEHCK EBX21」に合せて、何故か同様なレベルの他の製品も押さえておきたい気分になりました(笑)。「NICEHCK EBX21」以外の200ドルオーバーのインナーイヤー型のイヤホンということで、一度は装着性で断念した「Moondrop CHACONNE」を改めて購入しようかしらん、と思い始めていたりもします(^^;)。