HIFIMAN TWS800

こんにちは。今回は「HIFIMAN TWS800」です。ハイグレード製品も数多くリリースしているヘッドホンおよびイヤホンブランドの「HIFIMAN」の完全ワイヤレス(TWS)で、同社の「TWS600」の上位グレードにあたる製品です。HIFIMAN独自の「トポロジーダイヤフラム」を採用した独自ダイナミックドライバーを搭載。さらに、このドライバーを鳴らすための「ヘッドホンアンプ」モジュールをワイヤレスチップセットとは別に搭載するなど、ワイヤレスイヤホンながらオーディオ性能にこだわった仕様が特徴です。
ただし、いかにも「HIFIMAN」というか、ちょっと音へのこだわりが強すぎて、本体デザインほかワイヤレスイヤホンとしての基本性能部分はちょっと斜め方向かもしれない、個人的にはちょっと愛しみすら感じるイヤホンです(^^;)。

HIFIMAN TWS800HIFIMAN TWS800

HIFIMAN TWS800」はBluetooth 5.0およびAAC/SBCコーデックに対応するワイヤレス機能を搭載し、IPX4の防水性能、パッシブタイプの通話ノイキャンなどの完全ワイヤレス(TWS)イヤホンとしての基本性能を押さえています。またイヤホン本体で4.5時間、充電ケースと合計で31.5時間の再生が可能です。単体の連続再生時間が4.5時間というは用途によってはちょっと不満を持つ方もいらっしゃるかもしれませんね。ただ、この製品については後述の通りあまり気にならない可能性が大きいです。
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そして、最大の特徴である搭載ドライバーには、「RE2000」などの高級イヤホンでも採用されているHIFIMAN独自の振動版「トポロジーダイヤフラム」を採用したダイナミックドライバーを搭載。「トポロジーダイヤフラム」は特殊なナノ粒子コーティングを施した振動版で高い解像度と歪みを抑えた自然な周波数特性を実現します。
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HIFIMAN TWS800」ではこの「トポロジーダイヤフラム」に加えて磁気回路やボイスコイルを最適化されたダイナミックドライバーを搭載。ワイヤレスイヤホンの搭載ドライバーとしては異例の150Ωの高インピーダンスの仕様になっています。このドライバーを駆動させるため、ワイヤレスチップセットとは別にヘッドホンアンプ用のモジュールを別途搭載。必要十分なワイヤレス性能を実現しつつ、有線オーディオ製品に相当するスペックをコンパクトな本体に搭載している点で、HIFIMANらしいこだわりのつまった、他の完全ワイヤレス(TWS)イヤホンとはかなり異色の製品といえるでしょう。

HIFIMAN TWS800」の購入は専門店およびアマゾンなどの直営店にて。価格は 33,000円(税別30,000円)です。
Amazon.co.jp(HIFIMAN JAPAN): HIFIMAN TWS800


■ とにかく大きく、まず装着に悩む。「普通」って何?なデザインや仕様。これもHIFIMANらしい?

今回はHIFIMAN JAPAN様から届いた試聴機でのレビューとなります。そのため開封済み、エージング済みの状態ですね。「HIFIMAN TWS800」のパッケージ内容はイヤホン本体、充電ケース、充電用USBケーブル、イヤーピースが8ペア(シングルフランジ・S/M/L各サイズ、ダブルフランジ・3タイプ、トリプルフランジ・1タイプ、ウレタン・1タイプ)など。
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HIFIMAN TWS800」の本体はTWS製品としても「かなり巨大」です。本体重量は6.9gと一般的なTWS製品よりやや重いといった程度ですが高インピーダンスのダイナミックドライバーとアンプモジュールを搭載しているのは本来サイズにかなり影響しているようですね。
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正直なところ耳の大きさにかかわらず耳に収まるサイズ感ではとてもないのですが、HIFIMANの有線イヤホン同様にバリエーション豊富なイヤーピースが付属しており、さらにTWS用ではなく一般的な市販イヤーピースが使用できるのは良いですね。ちなみに、幅の広い方を下にして装着します。社員の印象では幅の広い方を上に逆三角形の感じで装着するイメージがあるため、最初どようにう付ければよいのかひとしきり悩んでしまいしました。
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実はファイスプレート下方の出っ張り部分がタッチコントロールセンサーになっていて、この部分をタッチすることによって操作することが出来る仕様でした。マイク位置なども考慮したデザインなのだと思いますが、装着感はかなりクセがあるためいろいろなイヤーピースを試してしっかり合せたほうが良いでしょう。
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ちなみに、「HIFIMAN TWS800」は3万円の価格設定ながらAACコーデックまでの対応で、aptXなどには未対応ですが、少なくともこの機種に関してはそれほど気になる要素では無いかもしれません。Bluetoothイヤホンは接続する電波環境でビットレートが可変しますが、aptXは電波状況が多少悪くても音質劣化が比較的少なく高音質を維持できる点がポイントです。しかし、転送時の圧縮による音像の変化がより大きく、この点を指摘される方も少なくありませんね(いかに聴覚的に音質劣化を感じさせずに効率的に圧縮・転送するかを重点に開発されたのが「aptX」ですので、「音像の変化」自体は決してネガティブではありません)。これに対してAACコーデックの場合は、最も低圧縮なSBC同様に、電波環境の良い高ビットレート時には再生時音源により近いニュートラルなサウンドになります。「HIFIMAN TWS800」はその形状・サイズ感からも個人的には移動中は使用する気にはならず、外出先でもあくまで屋内用という印象です。このような屋内の利用環境であれば(明らかに高音質なLDACなどを採用してなければ)どのみち大差は無い、という意味で、aptXが未対応なことや、ついでに単体の連続再生時間がちょっと短めなことはそれほどウィークポイントにはならないだろうと考えています。


■ TWSとしての「スペック」を色々割り切った先にある、HIFIMANらしい唯一無二のサウンド。

HIFIMAN TWS800」の音質傾向は高域および低域に適度なメリハリを持ちつつ、ニュートラルでフラット感のある中音域が印象的なサウンドです。全体のバランスは非常に良く、見通しの良いスッキリ目のサウンドが楽しめます。同社のトポロジーダイヤフラムによる音像表現も含めてHIFIMANらしい完全ワイヤレスといえるでしょう。高インピーダンスのドライバーとアンプによる表現力は通常の完全ワイヤレスのサウンドとは次元が異なり、有線イヤホンと比較しても十分に高水準な印象です。少なくとも音質面での完成度の高さは特筆すべきものです。

HIFIMAN TWS800なお、今回は試聴機のため十分にエージングが行われた状態と考えられますので、開封直後の印象は不明です。また耳から大きくはみ出す装着感から、移動中に使って駅のホームでも落としたら怖い、というのもあり、電波状況での変化はあまり確認していません。aptXに対応してないことも含め「だったら電波状況の良い場所で使えばいいじゃん」とイヤホンが主張しているようにも感じましたし・・・。
まあTWSでは珍しいですが、ピュアオーディオ界隈ではユーザーに利用環境を強要してくるような製品のほうが「普通」なので、「音が良ければ多少のことは我慢する」という気概がこの製品にも「ちょっとだけ」必要なんでしょうね(^^;)。

HIFIMAN TWS800」の高域は、滑らかで明瞭感のある音を鳴らします。同価格帯の完全ワイヤレス製品と比較しても十分に明瞭感があり、広く見通しの良い音場でスッキリと鳴る印象があります。シンバル音は適度な煌めきがあり、ディテールの表現も良好です。いっぽうで多くのユーザーが不快に感じる周波数帯のピークは無く、聴きやすい印象にまとめられています。ただし高域についてはコーデックに起因するものか、ある程度仕様に沿ったチューニングも見受けられます(ちょうどHIFIMANのローエンドのヘッドホンでも感じた製品のグレードに合せて、その仕様でもバランス良く聴こえるような音作りをしている)。もし今後LDACなどに対応した製品を作ったらどの程度変化が得られるのか期待したくなる部分も感じられました。

HIFIMAN TWS800中音域はトポロジーダイヤフラムの特徴を活かし、とても明瞭かつ自然なサウンドが印象的です。癖のないニュートラルな音で、解像感がありつつ人工的なエッジは感じない鳴り方です。中高域の伸びも自然なため派手さはありませんが聴きやすい印象になります。音場は広く立体的な奥行きがあります。また分離も完全ワイヤレス製品としては非常に良く、演奏の定位感も良好です。ボーカル帯域も直線的で淡々と鳴る印象のため、もう少し濃いめの主張が欲しいと感じる方もありそうですが、フラットでディテール感の豊富な描写と深みのある表現力により音源の良さをじっくり堪能できると思います。

低域は適度な厚みがありますが、特に誇張すること無く鳴り、自然な滑らかさがあります。高インピーダンスとそれをしっかり鳴らすアンプは、深い重低音を適切に表現し、軽くなることも逆に過度にボワ付くこともありません。ミッドベースも良くコントロールされており、十分な質感とともに膨らむこと無く綺麗になります。中高域同様に淡々と鳴る印象もあるため、ビートの早いエネルギッシュな曲では少し物足りないかもしれません。個人的にはフラット方向のスムーズなサウンドはとても聴きやすく好感を持っています。全体的な音質傾向が気に入れば、ロック、ポップスからクラシックやジャズまで幅広い音源で楽しめる、「質の高いサウンドの完全ワイヤレスイヤホン」だと思います。


というわけで、「HIFIMAN TWS800」については、まず「試聴するなら確実に耳にあうイヤーピースでしっかり装着して聴こう」という点が挙げられます。同じ事ですがサイズ感、装着性などいろいろな要素を犠牲にし、さらにAACなどコーデックの対応なども了承の上で、「HIFIMANらしい、通常のTWSとはひと味違ったサウンド」を堪能できるイヤホンだと思います。
HIFIMAN TWS800おそらく、高インピーダンスの「トポロジーダイヤフラム」ドライバーや内蔵アンプによる音作りの「こだわり」を評価できれば、3万円の価格は十分に見合うものでしょう。逆に言うと、そのために、この価格帯のTWS製品が普通に出来ていること、やっていることを全て後回しにしちゃってる感がある製品ですので「他と比べて」みたいに考える方には向かない製品ともいえます。個人的にはヘッドホンしかり、イヤホンしかり、DAPしかり、と、こーゆーちょっとネジがひとつ飛んじゃってるような「こだわり感」こそがHIFIMANらしいと思いますし、「HIFIMAN TWS800」もまた間違いなくHIFIMANにしか作れないワイヤレスイヤホンだと思いました。貴方の「マニアっぷり」を示す製品として、音質的には間違いなく、お勧めですよ(^^)。