Ausounds AU-Frequency ANC

こんにちは。今回は「Ausounds AU-Frequency ANC」です。ワイヤレスイヤホンのカテゴリーでは比較的ハイグレードな製品をリリースしている米国のオーディオブランド「Ausounds」の新製品で、ANC(アクティブノイズキャンセリング)を搭載した高機能タイプの完全ワイヤレス(TWS)イヤホンです。新しいタイプのドライバーを搭載し、一新した本体デザインとともに音質面の強化が行われています。
Ausounds AU-Frequency ANCAusounds AU-Frequency ANC

Ausounds AU-Frequency ANC」はドライバーに「AU PEEK + PU」フィルムコンポジッド振動版を採用した10mmダイナミックドライバーを搭載。同社の13mmチタニウムドライバーを搭載した「AU-Stream ANC」よりコンパクトで装着性を向上したデザインを採用しつつ、同様のアクティブ・ノイズ・キャンセリング(ANC)機能を搭載しています。セカンドマイクで外音を取込み、その逆位相の音により環境ノイズを相殺する、動的なノイキャン技術としてANCはハイグレードのワイヤレスイヤホンやヘッドフォンではスタンダードな機能になりつつありますね。「Ausounds」のANC機能についてはネックバンド型のハイエンドモデル「AU-Flex ANC」をレビューした際にも記載しましたが、積極的にONにして使うというより、サウンドに集中したいときいや電車内など環境音が特に気になるときに的にONにして使うタイプで、ON/OFFが比較的容易なのもポイント。「Ausounds AU-Frequency ANC」でもその特徴は継承されています。

ドライバーAU PEEK + PU振動版
10mm ダイナミックドライバー
性能インピーダンス:32Ω、SPL:100dB
周波数帯域20Hz - 20kHz
Bluetooth5.0
コーデックAAC/SBC
連続駆動時間5時間 (充電ケース込み 20時間)
ANC対応(深度-25dB)
その他防水 IPX4 / 通話NC(ENC)対応
充電コネクタUSB Type-C
重量
本体 5.5g、ケース込み 38g
ワイヤレス性能についてはBluetooth 5.0でコーデックはAACまで。他社も含めANC対応TWSイヤホン、特にオーディオ的にハイグレードな製品の多くがAACまでの対応なのは後述の通り搭載するチップセットなどの影響という側面も大きいようです。また電波環境の良い場所ではAACのほうがより本来のサウンドに近い波形で圧縮されるなど、オーディオ的にはデメリットというわけでもないようですね。

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また、連続再生時間は本体で5時間が可能で、IPX4の防水性能やタッチセンサーによる基本操作など音質面を優先しつつ、実用性においても十分な性能を実現しています。
Ausounds AU-Frequency ANC」の価格は15,840円(税込み、直販サイト価格)です。
直販サイト(SUPER KOPEK): Ausounds AU-Frequency ANC
Amazon.co.jp(公式サイト): Ausounds AU-Frequency ANC


■ 耳全体で優しく固定するフィット感。AACコーデックながら実用的なワイヤレス性能

Ausounds AU-Frequency ANC」のパッケージは日本使用で裏面の機能表示についても分りやすく日本語での記載が確認できます。パッケージ内容はイヤホン本体、充電ケース、イヤーピース(本体装着済みMサイズ+S/Lサイズ)、充電用USB Type-Cケーブル、説明書、クイックスタートガイド、保証書となっています。
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イヤホン本体は樹脂製で、いわゆるAirPodsなどの「うどん型」タイプ。ハウジング部分は耳にフィットしやすい形状でイヤーピースで固定するというより本体で優しくフィットさせる印象。イヤーピースは楕円形で浅く、あまり耳穴奥にいれるタイプではありません。そのためカナル型と言うよりAirPodsなどのインナーイヤーに近い装着感があります。そのためANC OFF時の遮音性はそれほど高くなく(やはりインナーイヤーなみ)、音楽再生をしていなければ会話もそれなりに出来るレベルです。

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この辺はしっかり耳奥まで装着したい方には多少好みが分かれるかもしれませんが、長時間の利用も考慮するとソフトな装着感は良いと思いますし、ANCをONにすることで無音化までは行かないものの、ある程度環境音を消すことができるため、実用性のバランスを考慮した設計といえますね。ただ個人的にはもう少しイヤーピースのバリエーションは増やして欲しかったと思います。私は外耳道が特に細いこともあり、付属のサイズでは十分なフィット感は得られませんでした。同時にもっと大きいサイズを希望される場合もあるでしょう。私は楕円形のイヤーピースが大量に付属するとある有線イヤホンのイヤーピースを流用しましたが、市販の円形のTWS用イヤーピースなどもサイズによっては利用出来そうですね。
再生/停止1回タップ(左右どちらか)
曲送り右側 2回タップ
ANC ON/OFF右どちらかを3秒長押し
音声アシスタント3回タップ(左右どちらか)
受話着信時1回タップ(左右どちらか)
着信拒否/終話左右どちらかを2秒長押し
タッチセンサーは比較的反応が良いため、装着角度に合せているときに触ってしまうこともしばしば。まあ慣れればそれほど違和感はないでしょう。センサーで操作できる機能は基本的なものに絞られており、操作に戸惑うことはほとんどないでしょう。

充電ケースはコンパクトで薄型のため持ち運びはもちろん、ジーンズのポケットに入れておいても邪魔にならないサイズ感です。イヤホン本体のマイクアンテナ部分を差し込むように収納するため、取り出す、というよりは差し込む/引き抜くという感じです。
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そして、接続品質は十分な実用性を持っています。Bluetooth範囲が32mと電波強度は強く、一般的なマンション程度の広さならスマホやプレーヤーをリビングに置いたまま部屋中を移動してもまったく不便はなさそうです。また屋外でも実際に東京都23区内で使用した印象ではソニーの「WF-1000XM3」あたりとの比較であれば「Ausounds AU-Frequency ANC」のほうが十分に安定した接続性を持っていましたし、多くの「aptX」コーデック対応のTWSと比較しても遜色ない印象でした。最近都心ではワイヤレスイヤホンを利用している方が急増していますし、公衆Wi-FiをはじめBluetoothと競合する「2.4GHz帯」の電波がより大量に飛び交っていることもあり、一部の地下鉄路線ではかなり電波強度の高いイヤホンでも駅に着く度に途切れる、といったケースも増えてきました。とはいえ、「Ausounds AU-Frequency ANC」はかなり良い方の接続性を確保できており、音質面も含めコーデックによる差異はほとんど無視できるレベルになっているのではと感じました。


■ ソフトな装着感と相性の良いANC機能と音質に重点を置きつつバランスに配慮した設計

Ausounds AU-Frequency ANC」の「ANC機能」(アクティブ・ノイズ・キャンセリング)は完全に無音化ではなく、不快な環境ノイズを軽減させる効果が期待できます。実感としてはもともとそれほど遮音性の高いイヤホンではないため、個人的にはオフィス等の屋内利用でも「一般的なカナル型イヤホンレベルの遮音性」に変化するくらいの効果を感じました。これ、一見すると「最初からもっと遮音性のあるイヤホン使えばANC要らなくない?」と思われそうですが、仕事中など、外からの呼びかけに気付く程度の感じでBGMとして音楽を聴きたい場合と、まわりの音を気にせず集中したいときにモードを切り替えられる、と解釈するとなかなか便利そうです。また「Ausounds」のANC機能は非常に質が高く、ONにした際も元々の音質特性がほとんど変化しないため、同様に高いクオリティのサウンドの楽しめることもメリットです。そして、屋外では街中ではあまり違いは感じないものの、駅のプラットフォームや電車内の電車の強い音はかなり効果的に消してくれるため、私は基本的にはANCは使用せず(当然ですが静かな部屋では無駄なノイズが増えて逆効果です)、適時ON/OFF(3秒間長押し)を切り替えて使っています。切替はビープ音のみですが、慣れれば支障なく操作できると思います。

Ausounds AU-Frequency ANCちなみに、「Ausounds AU-Frequency ANC」の対応コーデックは前述の通りSBCおよびAACで、aptXなどは未対応です。また「TWS+」のように左右独立してペアリングする仕様では無いなど、ワイヤレス関係のスペック的に目新しさはありません。これはいくつかの理由が考えられますが、特に独自性のあるドライバーを採用し、「オーディオ的に」音質面のこだわりが強いメーカーの場合、高機能TWSでは高性能な総合チップセットを逆に採用しづらいという側面もあるかもしれませんね。「aptX」や「TWS+」といった技術を所有するQualcommなどの総合チップセットは、1チップでワイヤレス機能からD/A、アンプといったオーディオ機能を搭載しており、スペース面や消費電力の制約の大きいTWS製品では非常に重宝するものです。しかし、一方で音質面の調整もチップセットの仕様や特性の制約を大きく受けてしまうという見方もできます。またANCなどメーカー独自の機能を追加するうえで総合チップセットは使いにくい存在のため、特にANC搭載のハイグレード製品では「音質面のチューニングが可能」で「ANCなどの独自性のある機能を追加しやすい」チップを選択することになります。「Ausounds」に限らず、ANC搭載イヤホンやハイグレードなオーディオメーカーの製品がワイヤレス系のスペックが「それなり」なのは「音質へのこだわり」とのトレードオフの関係にあると考えられますね。


■ 複合ドライバーが作りだす質の高いサウンド。好みが合えば唯一無二の製品となるかも。

Ausounds AU-Frequency ANCAusounds AU-Frequency ANC」の音質傾向は中低域寄りでバランスの良い緩やかなドンシャリ傾向です。巷にあふれる数多くの完全ワイヤレスで想像されるダイナミックレンジの少ないメリハリ重視の音ではなく、オーディオ的に良くチューニングされたサウンドに好感が持てます。32Ω、100dB/mWとTWSとしてはやや鳴りにくい印象で、iPhoneとペアリングした場合、中央より多少音量を上に上げるくらいでちょうど良い印象になります。いっぽうでペアリングするデバイスによっては多少高域が派手に鳴り、音量を下げると逆に低域が強く高域が曇りがちに感じやすくなる場合もあるようです。詳細な出力コントロールができるDAP(デジタルオーディオプレーヤー)などとペアリングする場合は特に問題はありませんが、スマートフォンでこのような印象に感じた場合はイコライザアプリなどを併用する必要があるかもしれません。

Ausounds AU-Frequency ANC」のドライバーは2種類のフィルム素材を使用した、TWSとしては大口径の複合振動版を採用することで、シングルダイナミックながらハイブリッドのような各音域の特性を持ち、同時にハイブリッドでは得られないつながりの良さを実現しています。全体的に明瞭感があり、パワフルかつ深く重い低域と適度な鋭さがある高域、癖のない音でつながりの良い中音域と、完全ワイヤレスであることを除いても十分にバランスの良いサウンドといえるでしょう。さまざまなジャンルの音源で幅広く楽しめる印象で、ボーカル曲はもちろん、インストゥルメンタルでも聴き応えがあります。ただ、一般的なワイヤレスイヤホンと比べて情報量が多く、曲によってはやや聴き疲れしやすい傾向でもあります。

Ausounds AU-Frequency ANCAusounds AU-Frequency ANC」の高域は明瞭感かつ伸びの良い音を鳴らします。適度な鋭さが有りキレがある印象ですが刺さる少し手前でコントロールされています。高域成分の多い曲では多少聴き疲れしやすい印象もありますが、全体としては自然なまとまりを感じる印象です。
中音域は特に凹むこと無く癖のない音を鳴らします。適度な主張があり女性ボーカルやピアノの高音の抜けは良くやや派手めに鳴り、男性ボーカルも低域の厚みもあり量感があります。解像感や分離は完全ワイヤレスとしては高く、演奏も良さがあります。ボーカルは適度な距離があり定位を捉えやすく感じます。音場はやや広めで定位は比較的ニュートラルですが、やや奥行きが強調された印象。ライブ音源や動画視聴での臨場感も楽しめそうです。
低域は重低音の重さと厚みが印象的な鳴り方をします。ミッドベースは力強さがあり、過度に膨らむことはないものの存在感のある鳴り方をします。重低音は多少ブースト気味ながら非常に深く重い音を鳴らします。曲によっては地響きのように底から突き上げる印象もあるため多少強すぎると感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、多くの場合はパワフルなビートを心地良く感じるのではと思います。

Ausounds AU-Frequency ANC」は、正直スペック面ではなかなか差別要素を見つけにくいですし、サウンドも分析的に捉えれば決してベストではないものの、試聴が可能な場合、好みが合えばこのサウンドだけで十分に価格に見合う、購入を即決できるのでは、と思える質の高さを持った製品だと思います。より完全ワイヤレスでもグレードの高い製品では「どの機能を満たしているか」ではなく、「目指している音質を実現しているか」がまず重要でしょう。そのうえで、「実際に使う上での実用性」をどの程度確保できているか、という順番で完成度を考慮すべきなのだと思います。
そういった意味では「Ausounds AU-Frequency ANC」はかなり「いい線を行っている」製品だと思います。ハイグレード製品としての音作りと実用性のバランスが「ちょうど良く」、普段それなりのグレードの有線イヤホンを使っているマニアにも違和感のない音質と、ワイヤレス製品として普段使いに十分に耐えうる機能を実現しています。また、価格的にも決して安価ではありませんが、このクラスの競合製品よりはお手頃にまとめられています。個人的にはドンシャリ傾向で中華イヤホンなどにありがちな過度な派手さではなく、バランスの良い傾向のなかにしっかりとした高域と低域を感じたい方には最適なイヤホンだと思いますよ(^^)。