TFZ MY LOVE Edition 2021

こんにちは。今回は「TFZ MY LOVE Edition 2021」です。中国のイヤホンブランド「TFZ(The Fragrant Zither)」の国内未発売モデルで、2019年に発売された「MY LOVE EDITION(2019)」、通称の「MLE」の後継モデルになりますね。

※TFZ製イヤホンのラインナップについては私のブログにて独自に作成した価格帯マトリクスを公開しており、随時更新をしています。よろしければ併せて参照ください。
・【メーカー別まとめ】 「TFZ」イヤホン編 / 最新版・価格別マトリクスチャート ※随時更新

「MLE」は私のブログでも「好みランキング」で常に上位に設定するなど個人的にも低価格中華イヤホンのなかではかなり好みの製品ですが、今回の2021年モデルではまず1色のみでのリリースとなり、音質的にもマイナーチェンジながらブラッシュアップが行われています。
TFZ MY LOVE Edition 2021TFZ MY LOVE Edition 2021

TFZの「MY LOVE」シリーズはブランドが誕生してからほぼ毎年リリースされているスペシャルモデルで、2016年に500個限定で販売されたコラボモデル「SERIES 1S My Love」が最初の製品でした。その後、2017年に同時リリースの「SERIES 4」をベースに第2世代ドライバーを搭載した「MY LOVE II」が、2018年には「SECRET GARDEN」同様の第2.5世代ドライバーと3Dプリンタによるレジンシェルを採用した「MY LOVE III」が発売されました。これらの製品は同時期の上位モデルをベースに多少低価格でキャラクターの異なるサウンドに仕上げた派生モデルという感じでしたね。ただ比較的販売数のあった「MY LOVE II」(当時73ドル)に対し、「MY LOVE III」(同169ドル)は価格の高さや低域寄りのサウンドチューニングがいまいち不評だったようです。
「SERIES 1S My Love」「MY LOVE II」「MY LOVE III」「MY LOVE EDITION」
そのため、翌年の2019年は従来の流れを変えて、高評価の人気モデルながら既に販売を終了していた「KING PRO」のドライバーをそのまま「MY LOVE II」の樹脂シェルに載せ替えた低価格モデル「MY LOVE EDITION(2019)」(以降「MLE 2019」と表記。59ドル)をリリース。かつての人気モデル「SERIES 2」を踏襲した豊富なカラーバリエーションと価格設定により大人気モデルとなりました。しかし昨年2020年は新型コロナの影響もあってか新しい「MY LOVE」のリリースはありませんでした。

そして、「MLE 2019」がセラーの在庫限りとなった状況で今年登場したのが「TFZ MY LOVE Edition 2021」となります。このモデルは「MLE 2019」を踏襲し、ドライバーユニットに「KING PRO」と同じ「第2.5世代 二重磁気回路ダイナミックドライバー」をシングルで搭載。プロフェッショナルステージモニターとしての優れたチューニングを踏襲しています。
TFZ MY LOVE Edition 2021TFZ MY LOVE Edition 2021
さらに2021年版のアップグレードとして、より広いサウンドステージで臨場感のあるサウンドを楽しめるようチューニングを実施。シェルはパープルカラーのクリアシェルを採用しています。
TFZ MY LOVE Edition 2021」の価格は59ドル。購入はAliExpressの取扱いセラーにて。AliExpressでの購入方法はこちらを参照ください。


■ MLE 2019のシェルデザインを踏襲し、新たなシェルカラーを採用。

「TFZ ESSENCE」のパッケージは「TFZ LIVE」シリーズ以降の白箱タイプ。パッケージの裏面を見るとパープル以外にホワイトのフェイスパネルの「選択肢」が記載されており、今後追加でリリースされる可能性がありますね。パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピースは白色の通常タイプがS/M/Lサイズ、黒色タイプはS/M/Lサイズと装着済みMサイズ、説明書。
TFZ MY LOVE EDITION 2021TFZ MY LOVE EDITION 2021
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TFZ MY LOVE Edition 2021」のシェル形状は「MLE 2019」と同じく「MY LOVE II」のシェル形状を踏襲したお馴染みのデザイン。フェイスパネルは下部にラインストーンがあしらわれたデザインも同様ですが、「MY LOVE II」および「LIVE 1」と異なり、ラインストーンの上に小さなベント(空気孔)があります(「MLE 2019」と同じ)。
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このフェイス部分のベントは同じドライバーを使用している金属シェルの「KING PRO」には存在しませんが「MLE 2019」で樹脂シェルを採用したときにチューニングのうえで必要だったものと思われます。こうみると「TFZ MY LOVE Edition 2021」の外観上は「MLE 2019」と色違い、フェイスにプリントされたシルクスクリーンのロゴ違い、といった程度の相違点のみのようですね。
TFZ MY LOVE Edition 2021TFZ MYLOVE SERIES
また、従来のTFZと同じ形状のため、装着感も従来モデルと同様です。多少大きなハウジングのため耳の小さな方は合わない場合もありますが、装着感自体は悪くありません。イヤーピースは付属の開口部の大きい方(原音忠実)と小さい方(やや低域がアップ)のほか、定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustuneの「AET07」、AZLA「SednaEarfit Light」など開口部が広く、耳にフィットするタイプのイヤーピースがお勧めです。他にもダブルフランジタイプの「AET06」や「RHA ダブルフランジイヤーピース」を組み合わせるのも良いと思います。


■ KING PROのフラットサウンドを踏襲。より広い音場感と中音域の質感が向上。

TFZ MY LOVE EDITION 2021TFZ MY LOVE Edition 2021」の音質傾向は「MLE 2019」同様にフラット寄りのサウンドバランス。TFZのなかでは特にモニターライクな印象の強い「KING PRO」の傾向をしっかり踏襲しています。ちなみに、第2.5世代ドライバーのなかでも「KING PRO」と同じユニットを採用しているため、「TFZ MY LOVE Edition 2021」もインピーダンス55Ω、感度108dB/mWとTFZ製イヤホンのなかでも特に駆動力が必要とされる仕様となっています。既存の「MLE 2019」は「KING PRO」に近いサウンドバランスを維持しつつも、樹脂製ハウジングの採用などにより少し輪郭が緩めになり、かわりに僅かに軽快さや元気さを感じさせるチューニングになっていました。
今回の「TFZ MY LOVE Edition 2021」も「MLE 2019」と非常に近く、その違いは僅かですが、より中音域の分離性が向上し、見通しの良さが向上しています。もともと「MLE 2019」の音場が広かったこともあって今回もそれほど大きな変化はありませんが、より定位を捉えやすくなったことで音の広がりや空間表現を感じやすくなったようです。いっぽう中音域の厚みが増したことで低域は若干軽めになりました。方向性としてはよりフラットに、ニュートラルで聴き応えのあるサウンドに進化した印象です。

TFZ MY LOVE Edition 2021」の高域はTFZらしい明瞭でキレの良い音を鳴らします。見通しが良く、刺激のある音もある程度コントロールさせつつ、しっかりと煌びやかでエッジの聴いたサウンドを聴かせてくれます。「KING PRO」とも非常に近い印象ですが、比較すると高高域の伸びは緩やかな印象もあります。

TFZ MY LOVE Edition 2021中音域は癖のないニュートラルなサウンドで、明瞭ながら自然で伸びやかな音を鳴らします。「MLE 2019」からの進化をもっとも感じる音域で、高い解像感に加えて分離性が向上し、より見通しの良さを感じます。音場は広く、定位は比較的近いものの自然な距離感で演奏もしっかり堪能できるチューニングです。「KING PRO」同様、多少モニターライクにありのままの音を鳴らす印象もあり、ボーカル帯域は多少淡泊な印象を受けるかも知れませんが、1音1音の描写が明瞭で物足りなさを感じることは少ないでしょう。もちろん「KING PRO」とは相応の違いがありますが、この価格帯のイヤホンとしては非常に質の高いサウンドであること間違いが無いでしょう。

低音域は締まりのあるカチッとした音で明瞭に鳴ります。解像度の高さを実感しつつも極端にエッジを強調しすぎない印象です。沈み込みも良く重低音も膨らむことはありませんが存在感のある音を鳴らします。僅かながら量感は「MLE 2019」より控えめになっていますが、しっかりとした存在感があり、全体としてはよりフラットさが増した印象ともいえます。他のTFZ製イヤホンのような派手さやパワフルさはありませんが、個人的にはどの音域も綺麗に鳴ってくれるチューニングは好感が持てます。また「KING PRO」よりやや響きが柔らかくなることでリスニング的な音場感を感じられる点はMLE系の特徴と言えるでしょう。

TFZ MY LOVE Edition 2021なお、「TFZ MY LOVE Edition 2021」も「MLE 2019」同様に「NO.3」以降の硬めの樹脂被膜のケーブルが付属します。このケーブルは今ひとつ本体のポテンシャルを引き出せない印象もあり、できればリケーブルを検討するのも良いでしょう。個人的には「LIVE 3」あたりに付いている銀メッキ線ケーブルが付属してくれれば文句なかったのに、と思っていますが・・・。中華2pinタイプのほか、最近はTFZ仕様のコネクタが選択できるケーブルも増えていますね。本体カラーとの相性を考慮すると「NICEHCK C8s-2」あたりは真っ先に思い浮かぶ候補でしょう。やや派手めに変化する8芯銀メッキ線のため、リケーブル後は高域のスッキリ感が増したドンシャリ方向に味付けされます。またより中低域の厚みを感じる方向へ音を濃くしたい場合は「NICEHCK LitzOCC」も良い選択肢だと思います。

というわけで、マイナーチェンジして引き続き販売されることになった「TFZ MY LOVE Edition 2021」ですが、購入できるセラーが限られていること、カラバリがいまのところ1種類しかないことを除けば、今回も幅広くお勧めできるイヤホンだと思います。個人的にはパッケージ裏面に記載の「ホワイト」も早く出てくれないかなぁと心待ちにしています(^^)。