こんにちは。今回は「TRN BA15」です。私のブログではもうお馴染みの「低価格中華イヤホン」ブランドの「TRN Audio」が投入した、驚きの「片側15BA」搭載モデルです。そのドライバー数もさることながら明らかに「変態的な構成」の画像で発表時から結構ネタとなっていたイヤホンですね。一体いくらになるのかというのも注目されましたが、200ドル台、2万円台の価格設定となり、いよいよ「低価格イヤホン」の範疇は大きく超えてしまいましたね。それでも片側15BAというドライバー構成でこの価格で購入できるイヤホンは他には存在しませんし、マニアならば思わず食指が動きそうになる(かもしれない)絶妙な価格設定ではあるなと思います。
また印象として「TRN BA15」は音質的にも想像以上にちゃんとしたバランスで「普通に良い」イヤホンに仕上がっていると思います。おそらく200ドル台の製品としては類を見ない、結構インパクトのあるドライバー構成を持つ「超キワモノ」製品ながら、マルチBAイヤホンらしい解像感をもちつつ、多ドライヤホンにありがちなゴチャついた印象は無く、良い意味でドライバーの多さを感じさせない、まとまりのあるリスニングサウンドです。
もちろん250ドル近い製品ですので同価格帯で音質的により高評価の製品は他にもいくつか挙げられる内容ではあります。それでも唯一無二ともいえる「変態的なドライバー構成」(笑)なのに「マルチBAらしくないサウンド」という点も含めて考慮すれば、「相応のマニアが、諸々分った上で購入するイヤホン」として十分にお勧めできる製品だと思います。
「TRN BA15」は左右それぞれ15基のバランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーを搭載している点が最大の特徴です。本体は8BAモデルの「TRN BA8」同様にCNC加工されたマグネシウム合金による金属製ハウジングを採用しています。搭載する15基のBAドライバーはすべてTRNブランドのユニットを使用しており(実際はBellsing等の中華BAメーカーのOEM/ODMと思われます)、その構成は高域・超高域用の「30095」が7基、中音域は「50060」が4基、中低域に「60040」が3基、そして低域は「22955」が1基で構成されます。従来モデルと比較すると、搭載しているドライバー数の多さを改めて実感できますね。また「60040」は「TRN BA15」で初めて登場した型番のようです。
TRN BA15(15BA): 「22955」 + 「60040」×3 + 「50060」×4 + 「30095」×7
TRN BA8 (8BA) : 「22955」 + 「29689」×2 + 「50060」×2 + 「30095」×3
KZ ASX(10BA): 「22955s」+「29689s」 + 「31736s (2BA)」×2 + 「30017s (2BA)」×2
一見すると中高域のドライバー数に対して低域が1基のみというのはバランス的にどうか、とも思えますが、実際は中低域を担う3基の「60040」が低域についてもある程度カバーしていて、「22955」は重低音などより深い帯域を担当しているものと思われます。興味深いのは、画像を見ると「60040」と思われるドライバーは2BAユニットと1BAだけのユニットがあり、その2種類を組み合わせて3基分となっているらしい点ですね。発売前にフライングで「16BAと記載された広告」がAliExpressで出たことも有りますし、当初は2BAユニット×2(全体で16BA)の仕様で開発されていたのかも知れませんね。
さらに、特徴のひとつとして「3way Crossover Design」というのも挙げられており、これは電気的に出力制御された「60040」ユニットが「50060」ユニットと一体となることで、「TRN BA8」や「KZ ASX」のような4種類のBAユニット=「4way」ではなく、中音域から中低域の広いレンジに高域と低域を加えた「擬似的な3way」(?)でクロスオーバーを処理している、という意味だと解釈しました。この辺が「TRN BA15」の音質面での大きなポイントとなりそうです。
そして、「TRN BA15」が15基のBAドライバーを画像のようにかなりインパクトのある配置で搭載している理由のひとつは「音導管の無い内部構造」によるものと考えられます。この構造自体は8BAモデルの「TRN BA8」でも同様に使われた手法ですが、びっしり並べられた2倍近いドライバー数で金属製ハウジングの内面を通りそのままステムノズルから出力される仕組みは異様でもありますね。まるで低価格ハイブリッドのような設計により多くのBAユニットに音導管を通すコストが削減され、ハウジングの内部形状やマグネシウム合金の材質による反響や振動吸収性も音質的にかなり影響しているものと思われます。「TRN BA15」の開発段階において8BAの上位モデルを考えたとき、おそらく「10でも12でもなく片側15BA」というドライバー数が狙った音質を実現するために必要だったのかもしれません。
どちらにせよ、このインパクトのある内部画像は発売前からマニアの間で大きな話題となりました(私のツイートもネタ的に反響いただきましたね^^;)。その仕組みを考慮すればやむを得ないとはいえ、個人的には金属製ハウジング採用でレジンシェルのように外側から実際にこの「変態ドライバー構成」を見ることが出来ないのが少し残念ではありますね(^^;)。
「TRN BA15」の購入はHiFiGO、AliExpressの主要セラーまたはアマゾンにて。カラーバリエーションはクロームメッキ仕様の鏡面処理された「シルバー(Diamond silver)」と特徴的な迷彩柄の「レッド(Meteorite fire)」の2種類。さらにケーブルのプラグ種類を「3.5mm」「2.5mm」「4.4mm」の3種類から選択できます。
価格はHiFiGO直営サイトおよびAliExpressなどが 245.10ドル~、アマゾンが26,914円~です。アマゾンは「HiFiGO」マーケットプレイスの価格で、海外の直営店の円建て価格とほぼ同じ価格設定になっています。万が一のことを考慮するとセール時以外はアマゾンで買った方がよいかもしれませんね。
AliExpress(TRN Offical Store): TRN BA15
HiFiGO: TRN BA15 ※優先配送便の送料無料でより早く届きます。
Amazon.co.jp(HiFiGO): TRN BA15
■ 15BAが入っているとは思えない想像以上に軽量コンパクトな外観。今回は付属品も充実。
今回はリリース開始直後にAliExpressの「TRN Offical Store」にて「シルバー」を購入。プレセールス値引きと「TRN T3」ケーブルをオマケしてもらいました(^^)。「TRN BA15」のパッケージは従来のTRNの低価格製品とは明に異なる大きさのあるパッケージです。パッケージデザインは「TRN TA1」から採用されている新しい横向きのデザインですね。
パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル(「TRN T6」ケーブル)、イヤーピースは装着済みMサイズ、白色タイプおよび黒色タイプがそれぞれS/M/Lサイズ、ウレタンイヤーピース1ペア、6.3mmステレオジャック変換プラグ、航空機用変換プラグ、金属製ハードケース、説明書、保証書など。なお、購入時に「2.5mm」または「4.4mm」のケーブルを指定すると付属する「TRN T6」ケーブルがそれぞれのプラグ仕様になりますが、付属する6.3mmおよび航空機用の変換プラグは3.5mm用のままです。まあ当然といえば当然ですし、特に不満はありませんが、何らかの目的を持ってというより、この価格帯のイヤホンということで付属品を少しでも多くしたほうが良いだろうという意図も垣間見えますね。
「TRN BA15」のイヤホン本体は、ハイブリッドモデルの「TRN VX」とフェイス部分の意匠は異なるもののステム角度や背面の形状などは酷似したものになっています。ただしBAが2基収納されているステムノズル部分はより太い金属製となりました。重量は片側 7g 程度と樹脂製のイヤホンとさほどかわらず金属製の見た目の印象よりかなり軽量です。正直この中に15基ものBAが入っているのかとちょっと疑いたくなるほどかも。フェイス部分は同社の「TRN V90S」以降でみられるロゴマークを中央に配置したデザインになっています。
AliExpress(TRN Offical Store): TRN BA15
HiFiGO: TRN BA15 ※優先配送便の送料無料でより早く届きます。
Amazon.co.jp(HiFiGO): TRN BA15
■ 15BAが入っているとは思えない想像以上に軽量コンパクトな外観。今回は付属品も充実。
今回はリリース開始直後にAliExpressの「TRN Offical Store」にて「シルバー」を購入。プレセールス値引きと「TRN T3」ケーブルをオマケしてもらいました(^^)。「TRN BA15」のパッケージは従来のTRNの低価格製品とは明に異なる大きさのあるパッケージです。パッケージデザインは「TRN TA1」から採用されている新しい横向きのデザインですね。
パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル(「TRN T6」ケーブル)、イヤーピースは装着済みMサイズ、白色タイプおよび黒色タイプがそれぞれS/M/Lサイズ、ウレタンイヤーピース1ペア、6.3mmステレオジャック変換プラグ、航空機用変換プラグ、金属製ハードケース、説明書、保証書など。なお、購入時に「2.5mm」または「4.4mm」のケーブルを指定すると付属する「TRN T6」ケーブルがそれぞれのプラグ仕様になりますが、付属する6.3mmおよび航空機用の変換プラグは3.5mm用のままです。まあ当然といえば当然ですし、特に不満はありませんが、何らかの目的を持ってというより、この価格帯のイヤホンということで付属品を少しでも多くしたほうが良いだろうという意図も垣間見えますね。
「TRN BA15」のイヤホン本体は、ハイブリッドモデルの「TRN VX」とフェイス部分の意匠は異なるもののステム角度や背面の形状などは酷似したものになっています。ただしBAが2基収納されているステムノズル部分はより太い金属製となりました。重量は片側 7g 程度と樹脂製のイヤホンとさほどかわらず金属製の見た目の印象よりかなり軽量です。正直この中に15基ものBAが入っているのかとちょっと疑いたくなるほどかも。フェイス部分は同社の「TRN V90S」以降でみられるロゴマークを中央に配置したデザインになっています。
既存の8BAモデル「TRN BA8」と比較するとひとまわり大きく見えますが、15BAを搭載しているイヤホンとしてはコンパクトにまとまっていると思います。もともと「BA8」も8BAモデルとしてはかなりコンパクトだったため、比較してみるとお馴染みの「KZ ZSTX」などの製品より厚さではむしろ小さめのサイズ感です。特に大きすぎるという印象は無く、軽量なこともあって装着性は良好です。
ケーブルは前回レビューしたTRNの16芯OCC銀メッキ線ケーブル「TRN T6」が付属します。単品で4.4mmタイプを購入したため、今回付属のものは2.5mmサイズを選びました。通常は3.5mmステレオコネクタが一般的な選択肢になるでしょう。また「レッド」カラーを選択した場合は付属の「TRN T6」ケーブルは「ブラック&シルバー」カラーが付属するようですね。
イヤーピースは標準で数種類のイヤーピースが付属しており、装着感に合せて選択することができます。いちおう、白色がバランスタイプ、黒色が低域強調タイプで、もっとも低域が強く感じるのがウレタンタイプとなるようです。ただ、個人的には付属のイヤーピースは今ひとつの印象で、開口部が大きく、フィット感の良いイヤーピースへの交換を推奨したいところです。定番のJVC「スパイラルドット」「スパイラルドット++」、Acoustune「AET07」、より密着感の強いタイプではSpinFit「CP100+」、AZLA「SednaEarfit XELASTEC」など自分の耳に合う最適なイヤピースを選択するのも良いと思います。
■ マルチドライバーをつながりの良さに全振り?したような、驚くほど「普通に良い」サウンド
「TRN BA15」の音質傾向は、TRNのイヤホンとしては結構珍しいフラット寄りのバランスで非常に癖のないニュートラルな音を鳴らします。派手めのTRNのサウンドをイメージして聴いてみるとやや拍子抜けするのではと思います。解像度は高めですが、各音域にウォームさがあり聴きやすいサウンド。200ドルオーバーの製品として考えると「解像感や分離よりサウンドバランス重視のイヤホン」という印象です。
「TRN BA15」ではあえてマルチドライバーならではの音質を追求するのではなく、低コストBAを積み重ねる自社のノウハウを使って(自社では作れない)ハイグレードのシングルダイナミック構成のようなサウンドに仕上げたいのかな、と感じる音作りです。びっしり敷き詰められたドライバーも、音導管を使わない構造も、4wayではなく3wayになるように電気的にクロスオーバーを調整してる点も、すべて各音域のつながりを滑らかにすることに重点を置いたアプローチだろうと感じます。そのこだわり自体はおそらく成功しており、「TRN BA15」はそのドライバー数からは想像できないほど滑らかで普通に整ったサウンドを奏でます。やはり最初から15BAのイヤホンを作ろうとしたのではなく、自社BAを使って滑らかさを突き詰めてるうちに15BA構成になってしまった、みたいな感じだったのではと思えてきますね。この製品を見ると「BA8」あたりのモデルも「通過点」だったのかなと思えてきます。
とはいえ、やはり質の高いシングルダイナミックのサウンドと比べると「TRN BA15」はマルチBAらしさもあり明らかに異質ですし、逆に「TRN BA15」よりドライバー数が少ない同価格帯以上のマルチBAイヤホンと比較しても解像感や分離性、密度感など違いを感じる要素もいろいろ出てくると思います。そういった意味で音質的に「ずば抜けて良い」というまでには至らないものの、同価格帯でも「かなり良い」レベルにはまとまっています。いっぽうで「TRN BA15」はその音質を実現するための「手法が変態すぎる」(笑)という意味では他の追随を許さず、「極めて個性的なイヤホン」であることは間違いありません。この点がどの程度響くかによって「TRN BA15」の価格を買いと判断できるかどうかのひとつのポイントになるかもしれませんね。個人的には「そうまでしてやるのか」という音作りに向き合う姿勢はとても興味深く、好感が持てます。
「TRN BA15」の高域は見通しの良さを感じつつ派手さを抑えた印象の聴きやすい音を鳴らします。TRNはもちろん中華ハイブリッドではお馴染みの高域用BA「30095」ユニットを過去最高の7基も並べ電気的なコントロールにより1基あたりの出力を抑制することで、適度な主張をもちつつ、特有の金属質なギラつきは完全に抑制されています。刺さりなどの刺激も無く非常に聴きやすい印象です。7基の高域用BAを滑らかさに振ったチューニングは従来の硬質なエッジ感を丸められた印象もあり、僅かにウォームさも感じます。そのためキレ重視の高域を好まれる方には物足りなさを感じるかもしれません。ただイヤホン全体として鮮やかさや高域の伸びは維持されており、聴きやすくまとまりを感じるバランスで鳴ってくれます。
中音域は特に凹むこと無く鳴ります。3wayクロスオーバーデザインにより、2種類合計7基のBAが一体となって中音域およびミッドベースを中心とした低域を鳴らします。小人さんがたくさん合体して大人になるみたいな「TRNの変態的な発想」により生み出したサウンド(笑)は、ボーカル帯域も含め癖のない自然な音を埋もれること無く鳴らします。音のつながりは非常に滑らかでマルチドライバーな印象をほとんど感じさせない仕上がりで、TRNのアプローチは成功しているように思います。それでもシングルダイナミックのサウンドとは明らかに異質で、広めの音場に描写される音像にはマルチBA特有の印象もあり、粒立ちは良いもののボーカルの伸びや余韻などの繊細な表現は多少物足りなさを感じるかもしれません。いっぽうで明るく鮮やかさがあり、ボーカルの響きは豊かで、演奏も気持ちよいストリングスを楽しめるなど、200ドルオーバーの製品らしい楽しさも感じさせる仕上がりです。
低域は全体のバランスとしてはやや控えめな印象ですが、ある程度のエージングにより十分な存在感のある印象。ミッドベースは中音域とあわせて4+3基のBAユニットによって一体となって奏でられており、つながりの良さを持ちつつ中高域を曇らせること無く鳴らします。マルチBAらしく情報量は非常に多く密度感を感じる印象で、量的な主張の少なさを質感でカバーしている印象もありますね。また低域用BAユニットがウーファーとして重低音を下支えしており深さと重みのある音をしっかり鳴らしてくれるのも好印象ですね。
このように「TRN BA15」は全体的なサウンドバランスやつながりの滑らかさ重視のチューニングでよく練られていますが、やはり高域がウォームでもう少し明瞭さや抜けの良さが欲しいと感じたり、低域の密度感に対して相対的に中音域が淡泊に感じる場合もあり、リスニングイヤホンとしては熱量のバランスもより考慮してほしかったところもあります。ただ、この辺のチューニングでつながりやマルチBA特有の籠もり感が出てしまうことも考えられるため、音作りの課程でトレードオフされた部分と捉えるべきなのかもしれないとも感じますね。
また、付属する「TRN T6」16芯OCC銀メッキ線ケーブルは「TRN BA15」のポテンシャルを引き出し、解像感と見通しの良さを維持する上で重要な役割を果たしています。「TRN BA15」は30Ω、100dB/mWと比較的鳴らしやすいイヤホンですが、左右合計30基のドライバーを鳴らすためには相応の駆動力が必要で、歪むこと無くクリアに鳴らすためには高いノイズ特性と安定した出力を確保できるDAPやアンプ等の再生環境が必須です。「TRN BA15」についてはできればバランス接続タイプのプラグを選択し、より分離に優れた環境で再生する方が実力を発揮できるでしょう。
15BAの構成は結構な「キワモノ感」があるイヤホンではありますが音質的にはきちんと「良い音」にまとめられており、積極的に持ち出してガンガン使う方が向いているイヤホンですね。正直この価格帯で1個だけを購入できる場合に選ぶイヤホンとしてはキワモノ度が高いとは思いますが、すでに同クラス以上の製品を色々持っている、使っているマニア向でも十分に納得できる仕上がりでしょう。このような点を理解し、かつ、TRNが送り出した「怪しすぎる構成なのに、外観も音も全く奇をてらわない仕上がり」という、別の意味でとんでもない「変態イヤホン」の「TRN BA15」に思わず魅力を感じちゃうような方には間違いなくお勧めできる製品だと思います(^^;)。