TFZ ESSENCE

こんにちは。今回は「TFZ ESSENCE」です。海外版が発売されてからはしばらく経ちますが、5月21日より国内版もリリースされましたのでこのタイミングでレビューすることにしました。

TFZというと最初の「SERIES 1/3/5」以降、同社独自の「デュアル磁気回路ダイナミックドライバー」の各世代を搭載した一連のシリーズを主軸に揃えていますが、ときどき「亜種」というかラインナップから外れた製品が登場します。
※TFZ製イヤホンのラインナップについては私のブログにて独自に作成した価格帯マトリクスを公開しており、随時更新をしています。よろしければ併せて参照ください。
・【メーカー別まとめ】 「TFZ」イヤホン編 / 最新版・価格別マトリクスチャート ※随時更新

今回の「TFZ ESSENCE」もそんな製品のひとつで、新設計された「ベリリウムコート振動板ダイナミックドライバー」を搭載し、ドライバーユニットを金属シャーシに収納した上で全体を充填レジンで成型する、従来とは異なるシェルデザインが特徴的な製品です。
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最近はピュアベリリウムドライバー搭載の高級イヤホン(final A8000など)がハイグレード製品を手がけるメーカーから相次いで登場し、さらに大幅に価格を抑えた、自称ピュアベリリウム(汗)や、ベリリウムコート仕様の製品も追随するように製品化されています。いっぽうのTFZは、これまで各世代で「チタン(第1世代)」、「グラフェン(第2~2.5世代)」、「DLC(第3世代)」と手堅く進化し、第4世代では一足飛びに「ナノゴールド振動版」を採用したことで、ちょっと先を行きすぎた?のか「やっぱベリリウムも押さえておこうかな」と思ったのかも知れませんね(^^;)。

TFZ ESSENCE」で採用されているドライバーユニットは11.4mmサイズの「ベリリウムコート振動板二重磁気回路ダイナミックドライバー」。TFZ独自の「デュアルチャンバー」「デュアルボイスコイル」という2つの磁気回路を持つドライバー仕様を継承し、テスラレベルの磁石を使用して構成されています。新たに採用されたベリリウムコートされた振動版(ダイヤフラム)の採用と、共振抑制効果があるドライバーユニット全体を覆うメタルキャビネット(金属シャーシ)によりパワフルな低域、滑らかな中音域、繊細な高域を実現しているようです。
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ちなみに、マニア界隈では有名な話ですが、「TFZ ESSENCE」のドライバーユニットを金属シャーシで覆い、その上から透明な充填レジンで成型されたシェルは中国のとあるOEM/ODMメーカーの製造技術と思われます。この製造会社から供給された、安価なダイナミックドライバーを搭載したノーブランド(あるいはショップブランド)の低価格イヤホンが以前よりAliExpressなどで幅広く販売されています。これらのイヤホンはマニアの間で最も販売数が多い製品の型番から「A2イヤホン」と呼ばれており、日本でも同様の製品がドスパラが運営する上海問屋から購入できます。
この製造メーカーにしてみると「A2イヤホン」を販売することよりも自社の技術を有名メーカーに採用し供給できるほうが良いでしょうし、今回たぶん急いでベリリウムコートモデルを製品化する必要があったTFZが「TFZ ESSENCE」でこのシェルを採用したことは望ましい出来事だったのではと思います。
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TFZ ESSENCE」の価格は国内版が17,600円(税込み)。国内版は主要な専門店および一部家電量販店で5月21日より販売されています。いっぽう海外版の価格は129ドルです。AliExpressでの購入方法はこちらを参照ください。今回は安心感のあるオフィシャルストアとディスカウント販売しているストアのリンクを貼っておきます。
Amazon.co.jp(国内正規品): TFZ ESSENCE
AliExpress(The Fragrant Zither Official Store): TFZ ESSENCE


■ レジン充填の美しいクリアシェルで覆われた金属シャーシ。虹色透明フェイスで美しさも倍増。

TFZ ESSENCE」のパッケージは「TFZ LIVE」シリーズ以降の白箱タイプ。パッケージ自体にはケースは含まれませんが、私が購入した海外セラーでは純正ハードケースがオマケに付きました。国内版でも初期ロットでは別タイプのケースがオマケに付くみたいですね。
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パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピースは白色の通常タイプがS/M/Lサイズ、黒色タイプはS/M/Lサイズと装着済みMサイズ、説明書。
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TFZ ESSENCE」のシェルは透明度の高いレジンで充填成型されており、11.4mmダイナミックドライバーを格納した金属製シャーシが埋まっています。ステムノズルも金属製でドライバーシャーシとは音導管で接続されています。つまり構造としては金属ハウジングのイヤホンをレジンで覆ってシェルを成型している、という感じですね。このシェル形状はコネクタ部分がTFZタイプのカバー付き2pinに対応した形状である点以外は前述の「A2イヤホン」と同じで、レジンシェル内に格納されている金属シャーシも同じ形状です。ただ実際に比較してみると「TFZ ESSENCE」のほうが(おそらくグレードの高い)透明度の高いレジンを使用しており、よりコストをかけているのがわかりますね。
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また、フェイス部分の透明な黄金色のカラーリングは見る角度と光の反射により虹のように様々な色で光沢を放ち、想像以上に美しさがあります。この質感はA2イヤホンとは明らかに異なり、高級感を演出しています。今回自社製のハウジングを採用しなかったため、従来のTFZ製イヤホンの装着感とは結構異なり、より耳穴奥までしっかり挿入する印象になります。イヤーピースをしっかり合せれば装着性は良いと思います。イヤーピースは付属品のほか、定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、より密着感の強いタイプではSpinFit「CP100+」などへの交換も良いと思います。ちなみに私は耳穴が細いこともあり、耳奥まで入る「TFZ ESSENCE」はもう少し円錐形のほうが良いかな、と思い何種類か試したところ、以前購入してそのまま放置していた「SpinFit CP500」がしっくり来ました。BLON製イヤホンに付属しているイヤーピースみたいな形状のものですね。
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ケーブルは「TFZ LIVE X」「KING RS」で採用されているミックス線タイプが付属します。見た目も華やかで取り回しの良いケーブルですね。このケーブル自体は癖がなく、従来の同社製ケーブルと比べても情報量は向上しているのですが後述の通り、「TFZ ESSENCE」との組み合わせではもう少し情報量が欲しいと感じるかもしれませんね。


■ パワフルな低域とベリリウムコートらしいまっすぐな解像感が魅力。ただし駆動力はかなり必要。

TFZ ESSENCE」の特徴は深く力強い低域が特徴のドンシャリ。インピーダンス35.5Ω、感度112dB/mWと多くのTFZ製イヤホンより鳴らしにくい仕様で、実際再生環境によって特に中高域の印象がかなり変化します。十分に駆動力のある環境だと一気に「覚醒」し、TFZらしいスッキしたキレのある中高域が明確に主張します。同様の理由から個人的な印象としてはより情報量の多いケーブルへリケーブルした方が印象が良く、、ベリリウムコートドライバーの真価を発揮するためには十分な駆動力を確保するかリケーブルは必須と考えた方が良いかもしれませんね。
TFZ ESSENCEもし低域とのバランスで中高域が後方に下がり気味で暗めに感じたら、プレーヤーをハイゲインのモードに変えるか、より駆動力のある再生環境に換えてみることをお勧めします。スマートフォンや低価格DAPなど省電力で音量を確保するタイプのアンプを使用している場合、明らかに駆動力不足だったり、音量を上げることで高域に歪みが発生しやすくなる場合もあります。具体的には、例えば「AKG K712 Pro」のような多少鳴らしにくいと言われるモニターヘッドホンをしっかり鳴らせるくらいの駆動力は最低でも用意した方が良いでしょう。また駆動力を稼ぐ方法として、後述のようにリケーブルやバランス化も有効な手段です。

TFZ ESSENCE」の高域はTFZ製イヤホンの特徴を継承した硬質でスッキリした印象の音を鳴らします。付属ケーブルでの組み合わせでは低域の強さが目立つため少し後方で控えめに聴こえますが伸び自体は良く明瞭な音です。しっかり鳴らすことでベリリウムコートらしい高い解像感と分離を実感できます。この環境では煌めきとともに適度な鋭さも表現されており、組み合わせるケーブルによっては刺さりを感じる場合もありますが、伸びの良いスッキリした音を楽しめます。

中音域はニュートラルかつダイレクト感のある味付けの無い音を鳴らします。標準ケーブルでは全体的に下がって感じる場合がありますが、駆動力を高める、リケーブルを行うことでしっかりした主張をします。この状態では特に女性ボーカルやピアノの高音などの中高域が明瞭に主張します。いっぽう男性ボーカルは低域の強い主張のため少し控えめに感じるかもしれませんね。音場は一般的またはやや狭く、どちらかというと広さより密度感があります。しかし演奏の分離は良く明瞭で、ギュッと詰まったなかでしっかり定位している印象です。しっかりした再生環境では1音1音の輪郭がはっきりとした明るいサウンドを楽しめます。

TFZ ESSENCE低域はパワフルで「TFZ ESSENCE」の最も特徴的な部分でしょう。標準ケーブルなどでは低域の主張が前面にでて目立つため、試聴などでは想像以上の低音イヤホンと感じるかもしれません。低域については駆動力の有無であまり大きいな変化は無く、中高域の主張により全体のバランスに違いを感じる印象ですね。分離は良く解像度は高い印象。ミッドベースは直線的ですが重くパワフルで、標準ケーブルでは心地良いはアタックを感じつつもスピード感のある曲での早さがもう少し欲しくなるかも知れません。ただリケーブルなどにより1音1音のキレが増し、よりタイトで明瞭な低音を実感できます。重低音は非常に深く沈み解像感があります。最近のTFZでは第4世代ドライバー搭載の「TFZ LIVE X」の低域の質感の高さが印象的でしたが、「TFZ ESSENCE」では描写の正確さでは及ばないものの、よりエネルギッシュな表現で、最近のロック、ポップス、EDMなどではこちらのほうが好みという方も結構いらっしゃるかもしれませんね。

そして繰り返し推奨している「TFZ ESSENCE」のリケーブルですが、中華2pin/CIEM 2pinまたはTFZコネクタ仕様のものが使用できます。情報量の向上を中心に考えるならTRIの銀メッキ線ケーブル「TRI TR4908」(中華2pin)または金銀銅ミックス線「JSHiFi-GYT8」(CIEM 2pin)、より中高域の明瞭感を高める場合は「NICEHCK C8s-1」(NX7/TFZ)、さらにグレードアップしたい場合は「NICEHCK C4-2」(NX7/TFZ)あたりが良いでしょう。個人的には見た目にも最もしっくりきた「NICEHCK C8s-1」の組み合わせが手頃で良いと感じました。
 

というわけで、「TFZ ESSENCE」はTFZ製イヤホンのなかでもメインのラインから外れた、いうなれば「亜種」に分類される製品ですが、シェルデザインで実績のある外部のものを採用することにより、開発コストや製造コストをドライバーまわりに集中しつつ、見た目の美しさや品質を保つことに成功していました。難点を上げるとするなら、やはり「鳴らしにくさ」という点で、試聴では単に低域モリモリの音と捉えられる場合も多いかも知れませんね。とはいえ最近のTFZでは「TFZ LIVE X」や「TFZ KING RS」が200ドルオーバーの価格設定であることを考えると、100ドル台、1万円台で購入できる「TFZ ESSENCE」は、そこそこの価格で見た目にも音質面でもバランスの良い仕上がりといえるでしょう。十分な再生環境やリケーブルで追い込めるマニアならば結構お手頃でお勧めできるイヤホンではないかと思いますよ(^^)。

※TFZの過去モデルのレビュー、および「まとめ」はこちらを参照ください。
過去記事(一覧): TFZ製イヤホンのレビューおよびまとめ記事