KBEAR NEON

こんにちは。今回は「KBEAR NEON」 です。数多くの製品リリースと手堅い音質で最近では中華イヤホンブランドのひとつとしてすっかり定着した感もある「KBEAR」ですが、ブランドとして最初の「つかみ」となったのがシングルBAイヤホンの「KBEAR F1」でした。KZやTRNのように大量のドライバーを実装するイヤホンがあるいっぽうで、1基のフルレンジ仕様のバランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーで全ての音域を担う「シングルBAイヤホン」も、一種のミニマリズムというか、マニアの間では注目をされます。「KBEAR F1」は外観もクリアブロックのような非常にシンプルなデザインで、ドライバーは中華ユニット(初期モデルではBellsing製、後期モデルではTENHZブランドのBAを搭載)を採用しつつ、比較的購入しやすい価格と非常に味のある音作りで好評を博し、「KBEAR」ブランドがマニアに浸透するきっかけになりました。
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今回の「KBEAR NEON」 はその時以来のシングルBAモデルで、満を持しての発売、ということになるでしょう。名称通りネオンのようにカラフルな円筒形のクリアシェルに、今回はKnowles製の定番フルレンジBA「ED-29689」を搭載。言うまでもなく、シングルBAイヤホンとしてはお馴染みのロングセラーモニターであるEtymotic Research「ER-4S」が採用したことで一躍有名になったユニットですね。つまり「F1」でスタートした「KBEAR」がイヤホンブランドとして成長し、認識されたところで「KBEAR NEON」を本格派モデルとしてリリースしたことで「凱旋」した感じですね。
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余談ですが、そもそも何故シングルBAのイヤホンがマニアに注目されるのか、というのは、BAの性質に起因します。BAドライバーはダイナミック型ドライバーと異なり、本来は構造的にドライバー単体では全ての音域をカバーすることができません。そのために各音域ごとにドライバーを配置するマルチBAやハイブリッド型イヤホンが生まれるのですが、そこを敢えて1基のみで構成することで、非常に特徴的なシングルBAイヤホンが生まれます。それは、どの音域にフォーカスするか、あるいはドライバー以外の要素をいかにチューニングするかといった「音作りのためのこだわり」が、そのまま色濃く製品に反映されるためですね。
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そのため、シングルBAイヤホンには「名機」とよばれる製品が数多く存在し、前述の「ER-4S」やその後登場した「ER4SR」はモニターイヤホンとして絶対的な評価を得ており、私自身もリファレンス的な欠かせない存在です。また過去には語り継がれるような個性的なモデルも数多く存在しますね。さらに最近は「qdc Neptune」「AUDIOSENSE DT100」「Shure AONIC 3」のようにシングルBAイヤホン用に作られた(よりレンジの広い)カスタムBAを搭載するやや力業な製品もレビューしていますね(^^;)。
ER-4S-B / ER4SRqdc 1LE / EPT-500 / AQUA EHP-BA100
そんなマニアにとっては多少前のめりな思い入れもある「シングルBA」の「KBEAR NEON」ですが今回もデザインは非常にシンプルでカラフルなデザインが印象的な製品です。「KBEAR F1」同様リケーブル可能な使用ですが、今回はカバー付きの2pinコネクタを採用しています。
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KBEAR NEON」のカラーは「レッド&ブルー」「パープル」「ブラック」の3色。購入はAliExpressの「Easy Earphones」またはAmazonの「WTSUN Audio」にて。
価格はAliExpressが49.99ドル、Amazonが5,899円です。AliExpressでの購入方法はこちらを参照ください。なおAmazonでは品切れの場合はカラーの選択が出来ない場合があります。その際は再入荷までお待ちください。
AliExpress(Easy Earphones): KBEAR NEON
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): KBEAR NEON


■ カラフルなクリアシェル。見た目はEtymoticぽさもあり、イヤピは交換必須かも。

KBEAR NEON」のパッケージは「KBEAR LARK」と同じサイズのボックスですが、ブラックにネオンサインを描いたような印象的なデザイン。パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/Lサイズおよびウレタンタイプ)、ハードケース、説明書。ケースが付属するのも「KBEAR LARK」と同様ですね。
KBEAR NEONKBEAR NEON
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イヤホン本体は非常にコンパクト。円筒形でクリアカラーの樹脂製のハウジングに「ED-29689」BAユニットが収納されており、さらにレジン充填により固定されています。配線などは非常にシンプルで抵抗等はありません。ステムノズルは金属製の一体形成でハウジングとは接着剤で貼り付けられています。試しに片方を外してみたのですが、ノズルの内側は非常に小さな穴でBAユニットの出音部がそのまま接する仕様になっているようです。
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コネクタはqdc仕様のカバー形状の2pin端子。コネクタの形状からどちら向きでもケーブルを装着でき、またマニュアルなどに装着方法の記載が無いため、取付ける向きで悩まれるかも知れません。KBEARのアナウンスでは図のように本体のマーキングに合せて取付けるのが「正解」のようです。なお、ケーブルはqdcとコネクタ互換で極性はCIEM 2pinと同じ「KZタイプCケーブル」と同様の仕様で、最近の中華イヤホンで増えているタイプですね。
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ケーブル装着後の形状はEtymotic Research製のモニターイヤホンにがっつり寄せているのが伺えます。ただ樹脂充填のドライバー形状のためひとまわり大きく、ステムノズルも太い形状になっているのがわかりますね。イヤーピースは中華イヤホンに付属しがちな「よく見る」タイプのものですが、「KBEAR NEON」の場合は最適な装着位置に合せるのにはあまり向かないかもしれません。後述の通りイヤーピースの交換は必須かもしれませんね。装着性や遮音性もまたイヤーピース次第ですね。


■ ミッドレンジにフォーカスしたシングルBAらしいサウンドながら変化も結構楽しめるイヤホン

KBEAR NEONKBEAR NEON」の音質傾向は癖のないニュートラルなバランス。シングルBAらしいミッドレンジにフォーカスしたフラット方向のサウンドながら、やや中低域寄りの聴きやすい印象。ある程度駆動力のある再生環境のほうが中高域の伸びは向上するものの、14Ω、105dB/mWと低インピーダンスで比較的鳴らしやすいチューニングであるため、モニターライクな解像感よりリスニングイヤホンとしての使いやすさを意識したチューニングですね。同じED-29689を使用したイヤホンでもサウンドモニターの「名機」と言われる「ER-4S」や「ER4SR」とはサウンドバランス、解像感、分離性などで相応に差があります。もちろん数万円クラスの「名機」との単純比較ができるわけはないので、それは仕方のない部分でしょう。「KBEAR NEON」も再生環境と装着感を合せてしっかり鳴らせば、この価格帯のイヤホンとしては十分な仕上がりだと感じます。

ただ、「KBEAR NEON」がより「本気」を出すためには、再生環境や装着感を利用者に合せてより追い込むことが必要かもしれません。まず、装着位置についてですが、やはり付属のイヤーピースではしっくりくるポジションを得にくく、この場合だと中音域が張り出し気味で、さらに抜け感や分離などに不満を感じる印象になるかもしれません。そのため、外耳道にダイレクトに音導管が来るようなイヤーピースが良いでしょう。具体的には「final Eタイプ」や「SpinFit CP100+」などが当てはまります。あえて少し小さめを選んで耳穴奥までしっかり装着するのが良いようです。
KBEAR NEONKBEAR NEON
またより高域の伸びを良くするためには「ER-4S」「ER4SR」のようにトリプルフランジのイヤーピースを用意するのも良いと思います。ただしノズル口径が「KBEAR NEON」のほうが太いためEtymotic ResearchやShureのトリプルフランジイヤーピースは上手く使用できないため、使えそうなものを探す必要はありますね。私はAmazonで低価格で販売されているものを何種類か購入して耳に合うものを使用しました。具体的にはこのへんこのへんですが、Sサイズの場合は装着部分を少しカットして使用しています。

KBEAR NEON」の高域は、イヤーピースや装着位置にもよりますが、比較的控えめで良く言えば聴きやすい音を鳴らします。刺さりなどの刺激は無いものの、伸びなどで物足りなさを感じることがあります。ただ特にフィルターや抵抗で高域の出力を抑えているわけではなく、後述の通りステムノズル部分の特徴により中低域の主張が増すため、相対的に弱くなっているようです。そのため、ある程度駆動力のある再生環境を使用することでスッキリ感が増します。またリケーブルなどにより多少派手めに変化させることもできます。
KBEAR NEON中音域は再生環境などの影響が特に大きく、自分にあった「追い込み」をしっかり行うかどうかでかなり印象は変化します。癖のないニュートラルな音ですが、シングルBAイヤホンらしくボーカル帯域の主張が強く、BAドライバーらしい密度感のある鳴り方をします。個人的にはしっかり密着する「CP100+」またはトリプルフランジのイヤーピースに交換した場合が好印象。通常のイヤーピースではやや音が団子状になりがちな部分の明瞭さが増します。また再生環境への依存度も高く、駆動力だけで無く、インピーダンスが低いためS/N(ノイズ特性)が高い(つまりCIEMなどをクリアに聴ける)再生環境のほうが見通しがよくなります。また情報量の多いケーブルやバランス接続により明瞭感を増すのも良いアプローチでしょう。
低域はミッドベースを中心に弾むような印象で鳴ります。中高域への籠もりなどは無く存在感はあるものの、どちらかといいうとボーカル帯域を下支えする印象。いっぽう重低音は弱く、下の方の帯域は割り切ったチューニングとなっています。ただこの辺はシングルBAではめずらしいアプローチではなく、強い抵抗を入れてサウンドバランスを変更するなどのアプローチを行っていない「KBEAR NEON」では想定通りの「ED-29689の音」という印象でもありますね。

KBEAR NEONちなみにシングルBAイヤホンのアプローチのひとつとして抵抗などによりインピーダンスをあげ、再生側に駆動力を必要とする代わりに、重低音の再現性を増したり、ノイズを抑制し解像感や見通しの良さを向上させるアプローチがあります。この手のチューニングの代表的な製品のひとつがまさに「ER-4S」でしょう。とはいえ、例えば「KBEAR NEON」にアッテネータなどでインピーダンスを強制的に上げたところで「ER-4S」の解像感や分離性に近づくわけではありません(これらの製品はノズル部にフィルターもありますし、そもそもの音作りの手法が異なりますね)。
いっぽうの「KBEAR NEON」では、チューニングにおける「最大のポイント」は金属製のステムノズル部分に集約されているようです。繰り返しですが「KBEAR NEON」は、「ER-4S」「ER-4SR」のように抵抗を入れたりノズル部分のサウンドフィルターで調整をしているわけでもないようです。しかし、この金属製ノズルは内部でBAユニットの開口部とほぼ同じ口径の極細の穴で接しており、レジン充填で制振されたユニットから出力された音がこのやや長めの金属ノズルを抜ける課程で反響し、低域の厚みが増し全体として聴きやすいリスニングサウンドに仕上げています。シンプルながらとても興味深い構成ですね。

KBEAR NEONそのため、低インピーダンスの仕様ながら、より駆動力をかけて少しハイ上がり気味にドライバーを鳴らす方がスッキリした印象になりやすいのではと推測します。またリケーブルによりバランス化や情報量を向上させるのも効率的なアプローチでしょう。KBEARのqdcコネクタ仕様の16芯や24芯ケーブルは付属ケーブルと同じ極性ですので、そのままリケーブルで使用できます。例えば手持ちの「KB4878」あたりでリケーブルしてみましたが、駆動力のある再生環境では明瞭感が一気に向上し、高域および低域の存在感の増したサウンドに分りやすく変化しました。現在購入できるケーブルでは24芯の「KBX4919」などでも同様の変化を実感できますね。
あと見た目で合せるとパープルのモデルはKinboofiの「KBF4851」(qdcタイプも2.5mmはまだ在庫有りのようです)とピッタリでした。ほかの16芯や24芯とリケーブル後の音質傾向も似ていますので私はこのケーブルに落ち着きました。


というわけで、「KBEAR NEON」は見た目の華やかさに対して中身は結構マニア仕様なイヤホンでした。ある意味非常にシングルBAらいい、ED-29689らしいサウンドだとも言えますし、追い込み次第で印象の変化もいろいろ楽しめるイヤホンだと思いますので、いろいろなイヤホンを持っているマニアの方であればコレクションに加えるのも良いでしょう。
KBEAR NEON以前のレビューでも記載した通り、KBEARの製品はサウンドチューニングについてはブランドとして方向性が一貫していますが、同社自体はファブレス(工場のない会社)で、それぞれ製品やシリーズごとに異なるOEM/ODMの製造元で製品を作っています。そのため初回ロット、あるいは一定数のみで生産および販売を終了するケースが多いのもまた特徴です。ですので、「KBEAR NEON」に限らず、同社製のイヤホンは気になった製品があれば購入できるうちに買っておくほうが良いかもしれませんね(^^;)。