THX Onyx

 こんにちは。今回は「THX Onyx」USBオーディオアダプタです。かつてのルーカスフィルムをルーツに持つTHX社はSTAR WARSファン(最初の3部作もギリギリでリアタイ組のおっさん)の私からはそれなりに気になる会社です。同社は技術開発やオーディオビジュアル関連の認証元としてお馴染みですが(私も以前はTHXロゴの付いたONKYOのAVアンプとかホームシアターで使ってましたね~)、最近はポータブルオーディオやピュアオーディオの世界でも存在感を高めています。
それが「THX AAA」(THX Achromatic Audio Amplifier)という同社独自の低ノイズおよび低歪みのアンプ技術で、私もAAA搭載の「S.M.S.L SP200」や「FiiO Q3」を購入・使用しています。
そんなTHX社が初めて自社ブランドでリリースした一般向けのオーディオ製品が今回紹介する「THX Onyx」です。製造および発売元はゲーミングデバイスのトップブランドとして知られる米国大手メーカーのRazer社で、両社のサイトに製品情報が記載されています。
THX社製品情報(英語サイト)
Razer社製品情報

THX OnyxTHX Onyx

THX Onyx」はコンパクトなスティック型オーディオアダプターながら、アンプデザインに同社の「THX AAA-78」を採用。必要要件をクリアするそれぞれの要素(チップなど)によって構成され、特許取得済みの「feed-forward topology」を使用して極めて低ノイズ、低歪みのサウンドを実現します。また同社のモバイル製品向けとしても「THX AAA-78」は最高出力の構成となります(「THX AAA」の比較表)。
またDACを含むコントローラーチップにはESS「ES9281PRO」を搭載。これは低電力DACの「ES9218P」と同等のコアをベースにMQAハードウェアレンダラーを内蔵し、さらに大出力のヘッドフォンアンプ部やスティック型オーディオアダプターに求められる機能をワンチップに搭載したソリューションのようです。これらの仕組みが「THX AAA-78」の重要な構成要素になっているのは間違いなく、このチップ単体でもスティック型DACに最適なシンプルでノイズ耐性に優れた内部構造を実現しているようですね。
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本体コネクタはUSB Type-Cで、さらにType-Aのアダプタが付属します。AndroidスマートフォンやiPad、Mac、PCなどでの利用を想定しています。ハイレゾオーディオはPCMが最大32bit/384kHz、DSD128、MQAが最大384kHzまで再生可能。またアップサンプリングで最大768kHzに対応します。またiOSデバイス以外ではマイク付きのヘッドフォン/イヤホンにも対応しますので、ビデオ通話やゲーム中の音声チャットなどにも対応可能です。この点はハイレゾオーディオアダプタではあまり搭載されていない部分ですので、気になる方には有効な選択肢となるでしょう。

THX Onyx」の購入はHiFiGoの直販サイトまたはアマゾンにて。
価格は直販サイトが 199.99ドル、アマゾンが21,769円 です。為替および手数料を考慮すると通常は少し割安なアマゾンからの購入のほうが良さそうです。
HiFiGo: THX Onyx
Amazon.co.jp(HiFiGo):  THX Onyx


■ シンプルなデザインながら高級感のある仕上がり。他では珍しいマイク付きイヤホンへも対応

THX Onyx」のパッケージは製品情報が記載されたコンパクトなボックス。本体、USB-A変換アダプタ、説明書、保証書などのシンプルな内容となっています。
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THX Onyx」は金属製で質の良い表面処理で高級感があります。「THX」のロゴだけを記載したシンプルなデザインもよいですね。またUSB Type-Cコネクタ部分につながる短いケーブル部分もラバー保護されており強度面も高いとこが好感できます。なお、本体部背面はマグネットになっており、コネクタ部分を貼り付けて持ち運ぶことが出来ます。細かい部分ですが手を抜かずに作られています。
本体をスマートフォンやPCに接続するとLEDインジケーターが点滅し接続されますが、プレーヤー側で認識はせず、イヤホンやヘッドホンを3.5mmジャックに挿したときに認識される仕様です(最近のスティック型DACはこのタイプが増えていますね)。
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また「THX」ロゴの横には3つの小さなLEDインジケーターがあり、ここのカラーで再生フォーマットやサンプリングレートを確認することができます。また前述の通り、3.5mmジャックは通常のステレオミニ(TRS)のほか、マイク付き4極(TRRS)プラグにも対応します。仕様によりiOS/iPadOSデバイスではマイク付きケーブルは認識しない(通常のオーディオケーブルとして認識)されるようですが、Android、WindowsおよびMacではマイクリモコンを利用することができます。なお、実際に使ってみたところリモコンについては「再生/一時停止」については一部のアプリで反応せず、音量ボタンは使用できないなど多少の制限はあるようです。
それでもオンライン会議やゲームなど音声コミュニケーションが必要なシチュエーションでも高音質イヤホン/ヘッドホンで「THX Onyx」のサウンドを楽しめるのは、用途がはまれば大きなアドバンテージになるでしょう。この点はゲーミングデバイスを数多く手がけてきたRazerらしさという部分かもしれませんね。
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なお、Lightning変換アダプタやケーブルは付属しないため、標準ではiPhoneには接続できませんが、iOSでの動作自体はサポートしており、Apple純正のLightningカメラアダプタなどを経由することで使用が可能です。他にも確認した限りではDDHiFiの変換アダプタ「TC28i」を組み合わせることでiPhone 12 Proで使用できました(ただし今後のiOSのバージョンアップなどで動作しなくなる可能性もあるためあくまで参考情報としてご理解ください)。


■ THXらしいクリアでクラス随一の駆動力を持つパワフルなサウンド。

THX Onyx」の音質傾向は明瞭が際立つとても元気なサウンド。ただし「THX AAA」らしく歪みなどのない非常にスッキリした出音のため各音域を捉えやすく、見通しの良いサウンドを楽しめます。特徴としてこの手のオーディオアダプターとしては非常に駆動力が高く、鳴らしにくいイヤホンやヘッドホンの多くでも抜けたような平坦な音になることなくしっかりと鳴らしてくれます。
THX Onyxアンプ部分の駆動力というのは単純に出力の大きさだけでは説明できない部分で、最近のiBassoやShanlingの高音質アダプターもひと通り購入していて(Twitterでの到着報告の通りです)、スペック面や音質的な違いで良い点や特徴的な部分はそれぞれありますが、「駆動力」というくくりだけで言えば「THX Onyx」は最強といえるでしょう。いっぽうでS/N(ノイズ特性)も非常に高く、反応の良いイヤホンやCIEMでもホワイトノイズが発生することなくクリアなサウンドが楽しめます。やはりアンプ性能に関しては「AAA」搭載は伊達ではない、という感じがしますね。ただしイヤホンによっては少し派手めに鳴るため高域の刺激が増したり、低域が強めに出ることもあるようです。

THX Onyx」の出力は搭載される「ES9281PRO」の仕様に基づき、上限で2Vrmsとなるようです。この出力はスティック型DACとしてはトップクラスの高さですが、駆動力という点では例えばインピーダンス250Ωのヘッドフォンでは「結構頑張っている」という印象なのに対して32Ωくらいの一般的なイヤホンでは溢れるほどのパワーを感じます。「THX Onyx」の特徴を最大限に発揮できるのはイヤホンや比較的鳴らしやすいレンジのヘッドホンを使用した場合で、この製品がより大出力の据置型のDAC/アンプと区別されるポイントとなるでしょう。
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そして「TIDAL」やMQAフォーマットの音源を数多く所有している方には「THX Onyx」のハードウェアレンダラーは大きなメリットとなるでしょう。実際に音源を再生した印象では非常にスムーズでソフトウェアエンコーダーを使用する場合よりプレーヤー側の負荷が少ないことを認識しました。プレーヤーにもよると思いますが音質的な違いは確認できなかったものの、MQAデータの長時間再生ではバッテリ消費や発熱などには結構違いが出てくるものと思われます。

THX Onyxまた「THX Onyx」は見通しの良さからより明確な定位感が得られること、そしてメリハリのあるサウンドはより臨場感を楽しめるという点でも優れており、Razerの製品らしく、ゲーミングデバイスとしてもその実力を発揮します。NetflixやYouTubeでの動画視聴やTHE FIRST TAKEの音源などは非常にクリアで臨場感のあるサウンドが最大限に発揮される領域ですし、ゲームでも細かい音をしっかり捉え立体的な定位感を得ることでアドバンテージを与えてくれそうです。
ただし、「THX Onyx」ドライバーなどは特に提供されておらず、Windows 10も含めて対応機器ではプラグ&プレイで動作すると記載されています。つまりMacおよびAndroid(あるいはiOS)では特に問題はありませんがWindows 10ではASIOドライバーは使用できずWASAPI排他モードまでの対応となります。動画やゲームのほか、Amazon Music HDなどのハイレゾストリーミングを使用する場合は特に問題はありませんが、foobar2000、iRMC、AudirvanaなどのASIOに対応するプレーヤーを使用する場合はウィークポイントとなりますね。

あと、現時点でファームウェアのアップデートについてはWindowsのみでツールが提供されています。THX社のサポートページにアップデートツール、ファームウェア、手順書が掲載されています。アップデートは「THX Onyx」をWindows PCに接続し(イヤホンも挿しておく必要あり)、ファームウェアをリードして実行するだけです。実際にファームウェアをアップグレードしてみましたが、違いはよくわかりませんでした。バージョンごとのリリースノートなども公開して欲しいところですね。
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というわけで、「THX Onyx」は最近増えているスティック型の小型オーディオアダプターのなかでも異彩を放つ個性的なデバイスでした。搭載DACチップやバランス対応、ASIOドライバーの有無など最近のポイントからするとちょっと異なる視点のアイテムですが、「THX AAA」技術が生み出す高い駆動力かつハッキリした印象のサウンドは他のスティック型DACでは得られないものです。そのため、個人的には結構使いやすいサウンドで利用頻度は高そうです。2万円程度とやや割高ではありますが、興味のある方は是非ともチャレンジしてみてはいかがでしょうか。