こんにちは。今回は「TFZ MY LOVE 4」です。中国のイヤホンブランド「TFZ(The Fragrant Zither)」の新製品ですね。最近「MY LOVE EDITION 2021」をレビューしたばかりなのに、また新しい「MY LOVE」かよ、と思われる方も少なくないと思いますが、今回はなかなか気合いの入った完全新作のモデルです(従来の「MY LOVE」はそれぞれの世代でベースとなる製品があって、その独自バリエーション扱いでだったのに対し、他に類似モデルが無い点では今回が初めて)。しかも最近わりと迷走気味だったデザインが一気に洗練され、見るからに美しく購入意欲をそそられるものになりました。というわけで、今回もリリースと同時に購入しております(^^)。
「TFZ MY LOVE 4」は従来のTFZ製イヤホンを踏襲したデザインの樹脂製ハウジングと厚めのアルミ合金製フェイスを組み合わせたデザイン。シンプルなフェイスデザインながら「LOVE」の「O」の文字にラインストーンで装飾されておりアクセサリーとしても通用するような美しさがありますね。
また、「TFZ MY LOVE 4」はその名の通り、TFZの「MY LOVE」シリーズの4代目モデルという位置づけになります。このネーミングからすると、2018年の「MY LOVE III」の後にリリースされた「MY LOVE EDITION (2019)」およびマイナーチェンジした「MY LOVE EDITION 2021」はカウントしないみたいですね。「MY LOVE EDITION」(MLE)は、もともと「KING PRO」の第2.5世代ドライバーを「MY LOVE II」のシェルに搭載した「特別モデル」扱いで、「MY LOVEとして新規で開発したイヤホン」としては「TFZ MY LOVE 4」が「MY LOVE III」に次ぐ4台目、という解釈のようですね。
※TFZ製イヤホンのラインナップについては私のブログにて独自に作成した価格帯マトリクスを公開しており、随時更新をしています。よろしければ併せて参照ください。
・【メーカー別まとめ】 「TFZ」イヤホン編 / 最新版・価格別マトリクスチャート ※随時更新
サイトの記述によると「TFZ MY LOVE 4」では、「K60 Strong Drive」という新しい仕様のダイナミックドライバーをシングルで搭載しているとのこと。このドライバーはTFZの伝統的な「デュアル磁気回路ダイナミックドライバー(Dual magnetic circuit two frequency division dynamic driver)」のテクノロジーを踏襲しつつ、さらに音質面をアップグレードした独自技術が採用されているようです。TFZの「デュアル磁気回路ドライバー」は、第1世代~第4世代まで登場しており、世代ごとに異なる振動版や新たなテクノロジーを取り入れることで高音質化してきました。「TFZ MY LOVE 4」の「K60 Strong Drive」ユニットでも同様の仕組みを採用しつつ、「新世代のナノメートル振動版」を採用。より軽く、より薄く、より剛性が高く、弾力性がある新しい振動版はより高いパフォーマンスとともに質感を向上を実現しているようです。
ちなみに、TFZの既存の「デュアル磁気回路ドライバー」はデュアルコイル、デュアルチャンバーという2種類の二重化(デュアル磁気回路)により、超高域/高域、中域/低域と異なる音域をそれぞれの回路が担当することでシングルダイナミックながらハイブリッドのような音域と分離性を実現していました。「K60 Strong Drive」ではこの技術に加えて、テスラレベルの磁力と強力なパワーととともに、独自の双方向バランス音場技術(two-way balanced sound field technology)など複雑な音響構造設計を行うことでより高いレベルの明瞭さと音質を実現したそうです。
サイトの情報等によるとこのような内容の情報が入手できるわけですが、気になるのはVGP受賞実績についての記述。従来のパターンからすると、これは既存の(受賞履歴のある)ドライバーをベースにしている、という意味で、使用しているCG画像や中国サイト等での情報から総合して、「TFZ MY LOVE 4」は「MY LOVE EDITION」(MLE)同様に「KING PRO」の第2.5世代ドライバーをベースにしているのではと推測されます。
MLEでは「KING PRO」のドライバーがほぼそのまま「移植」されていますが、「TFZ MY LOVE 4」では新たにチューニングを加えて音質面のグレードアップを行った「改良型」として「K60 Strong Drive」というコードネームを記載しているのではと考えます(2.5世代はグラフェン振動版のため、セールスポイントとして弱いと考えて振動版の「材質」にはあえて触れなかったと推測)。また後述しますが、「TFZ MY LOVE 4」のインピーダンスおよび感度はサイト記載されていないものの、「KING PRO」や「MY LOVE EDITION」の55Ω、108dB/mWと同様または近い値だろうと思われます。
ケーブルは銀メッキ線(4芯/1芯あたり0.05mm×24本)ケーブルが付属。プラグ部分に本体同様ラインストーンが施されており、美しさを引き立てています(ケーブルは本体カラーに関係なくシルバーカラーのプラグのようです)。カラーバリエーションは「シルバー」と「ピンク」の2色が選べます。それぞれのカラーのメタルフェイスに加えて、シルバーは樹脂部分は透明、ピンクはクリアカラー仕様になっています。
「TFZ MY LOVE 4」の購入はAliExpressなどの主要セラーにて。価格は89ドルです。AliExpressでの購入方法はこちらを参照ください。
※どのセラーも現在セール期間中のため10ドルOFFで購入できるようです。
7月29日より国内版もリリースされました。価格は13,800円です。
楽天市場(検索結果): TFZ MY LOVE 4
■ パッケージも一新。シンプルさに好感が持てる統一されたデザイン。
「TFZ MY LOVE 4」のパッケージは最近のTFZからデザインがかわり、シンプルな引き出し式のタイプになりました。「MY LOVE 4」のロゴがクールですね。引き出し式の内箱を出すと、大きめの布製のポーチにイヤホン本体および付属品が入った状態で入っています。
パッケージ内容は、本体、ケーブル、イヤーピース(開口部の大きい方、小さい方の2種類がそれぞれS/M/Lサイズ)、布製ポーチ、説明書、保証書など。イヤーピースは従来は台紙に固定されていましたが今回は袋色の簡易包装になっています。最近のモデルからポーチやケースが標準では付属しなくなっていましたので、このこのパッケージは嬉しいですね。いろいろパッケージで装飾するよりこのほうがシンプルですし、良いと思います。今後のモデルもこの方式に統一してほしいところです。
「TFZ MY LOVE 4」の本体は従来のTFZ製イヤホンの形状を踏襲しつつ、フェイス部分はアルミ合金製のパネルで覆われており、全体としてより丸みを帯びたデザインになっています。フェイス部分は「LOVE」と書かれたシンプルなプリントと「O」部分のラインストーン装飾がアクセントになっており、とてもクールな印象です。またステム部分が「LIVE X」で採用されている金属製ステムのずるになっており、より見た目にも高級感が増しています。
従来のシェルデザインの「LIVE 1」や「LIVE 3」と比較すると、背面部分も従来モデルより多少丸みがあるのがわかります。これは上位モデルの「LIVE X」や「KING RS」の形状を踏襲したもので、今後のTFZの方向性を感じますね。
ちなみに、TFZ製イヤホンについては過去に「第1世代」~「第3世代」までのまとめを掲載していますが(「その①」「その②」「その③」)、こちらでも触れているとおり同社の「MY LOVE」シリーズはその当時の主力製品を反映しており、デザイン面でも音質傾向的にも各世代の一貫性はほぼありません。実際にシリーズを比べてみるとその違いの大きさに驚かされますね。
「TFZ MY LOVE 4」の付属ケーブルは4芯の銀メッキ線で線材自体は「LIVE 3」に付属するものとよく似ています。やや絡まりやすいですが、とても柔らかく取り回しの良いものです。ただ手元にあるロットでは「LIVE 3」付属の方が少しだけ太いかもしれませんね(このへんはロットにより同じになっている可能性もあり)。ただプラグ等は前述の通りラインストーン装飾された独自のものになっています。イヤーピースは付属品のほか、よりフィット感を高めるために交換するのもお勧めです。具体的には定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、より密着感の強いタイプではSpinFit「CP100+」、AZLA「SednaEarfit XELASTEC」などがお勧めです。
■ 「KING PRO」を踏襲しつつさらにブラッシュアップしたフラット系サウンド。
「TFZ MY LOVE 4」のサウンドは全体的にニュートラルなサウンドバランスで「KING PRO」や「MY LOVE EDITION」の方向性を踏襲しつつ、全体的に寒色系でスッキリとまとめた印象です。音量自体は比較的取りやすくスマートフォン直挿しでもそれなりに鳴りますが、聴きやすいもののやや甘めの音になり、DAPやポータブルアンプでしっかり駆動力をかけることでキレとスピード感のある本来のサウンドが「覚醒」する印象です。この辺もインピーダンスの高い「KING PRO」などと似た傾向かもしれませんね。また音場は広さがあり空間表現も優れていますが、こちらも再生環境により分離が増すことでより立体的なサウンドを楽しむことができます。
外観的に「見た目イヤホン」の印象が強めの製品ではありますが(スペックを公表しないあたりにマーケティング的にも見た目押しなのかも)、本来は相応の再生環境でしっかり鳴らすことが必須のマニア向けの製品だと感じました。またデザイン的なコンビネーションも抜群の付属ケーブルですが、「TFZ MY LOVE 4」はTFZ製の他の製品同様にリケーブルによってかなり変化が大きく、「本気を出すならリケーブル必須」という感じもありますね。
外観的に「見た目イヤホン」の印象が強めの製品ではありますが(スペックを公表しないあたりにマーケティング的にも見た目押しなのかも)、本来は相応の再生環境でしっかり鳴らすことが必須のマニア向けの製品だと感じました。またデザイン的なコンビネーションも抜群の付属ケーブルですが、「TFZ MY LOVE 4」はTFZ製の他の製品同様にリケーブルによってかなり変化が大きく、「本気を出すならリケーブル必須」という感じもありますね。
確かに「TFZ MY LOVE 4」のデザイン的に「見た目イヤホン」として、例えばあまり詳しくない方にプレゼントする用途みたいなのも想定できるかもしれません(海外ではそういうあまり内容の無いレビューの方が多いような)。実際、スマホ直挿しでもそれなりに聴きやすい音色で鳴ってくれるので「これはこれでアリ」みたいな話かもしれません。もっとも最近でこの価格帯の、しかも有線の中華イヤホンがプレゼントとして成立する場合、受け取る相手もそれなりにポータブルオーディオに詳しそうという気はしますね(笑)。
TFZでは久々にクールなデザインの製品ですし、これまでも特にビジュアルアプローチが強い「MY LOVE」シリーズですので、「TFZ MY LOVE 4」も見た目でステレオタイプ的なイメージを持ってしまうのもまあ理解できます(「○○向け」みたいな短絡的なくくりはイマドキではありませんし、個人的にも好きでは無い、というニュアンスで理解いただけると幸いです)。しかし、普通にアンダー100ドルクラスのTFZで実績のある名称を引き継いだ新製品と考えれば、やはり中華イヤホンの激戦区、KZなどの多ドラ製品やMoondropをはじめとする話題のメーカーがひしめくなかで「同社の主力級」の製品と考えるのが普通でしょう。実際「TFZ MY LOVE 4」は、イロモノではなく、十分にこの中で戦える実力を持っていると思います。
「TFZ MY LOVE 4」の高域はTFZらしい比較的硬質でスッキリした音を鳴らします。刺激のある音もある程度コントロールさせつつ、しっかりと煌びやかでエッジの効いたサウンドを聴かせてくれます。インピーダンスが高くそれなりに駆動力を必要とするイヤホンですので、スマートフォンなどの再生環境ではやや主張が控えめに感じるかもしれません。このような再生環境でも情報量の多い8芯~24芯などの銀メッキ線ケーブルにリケーブルすることで分かりやすく変化します。しっかり鳴らすことで見通しが良く、適度な鋭さと煌めきを持った音を楽しめます。伸びの良さは金属シェルの「KING PRO」に近く、「MLE」より特に高高域の解像感は上回っている印象です。
中音域は癖のないニュートラルなサウンドで、明瞭ながら自然で伸びやかな音を鳴らします。「MLE」は樹脂シェルを採用していることで、「KING PRO」の金属シェルによる硬質な響きが多少失われているらしく、代わりにドライバー自体を若干派手めに鳴らすことで全体のバランスを取っていました。しかし今回の「TFZ MY LOVE 4」では振動版およびドライバー構造そのものをブラッシュアップすることで力強さ、キレ、ダイナミックレンジが改善されており、アルミ合金と樹脂の複合シェルながら「KING PRO」と同等の解像感および分離性、そしてより広く立体的な音場感を獲得することに成功しているようです。また「KING PRO」ほどモニター寄りではなく、キリキリしたディテール感より滑らかさ印象を多く感じ、高い解像度をより自然に、若干の温かさもあるリスニング的なリラックスしたサウンドです。ボーカルおよび演奏の定位は性格でそれぞれが自然な位置と距離で再生されます。女性ボーカルやピアノの高域は綺麗に伸びますが主張は一般的。いっぽう男性ボーカルの中低域は厚みがありエネルギーを感じます。そして同様に演奏もそれぞれの楽器がしっかり際立つ鮮やかな表現力があります。
低域は量感より質感を重視した印象。「LIVE X」のように重く深い低域ではありません。また同価格帯の「LIVE 3」と比較すると量的には大きな違いはないものの、ドンシャリ傾向とフラット寄りの違いもあり「LIVE 3」のほうが力強く臨場感のある低域を演出していますね。「TFZ MY LOVE 4」のミッドベースは直線的で解像感を感じやすい印象。ただスマートフォンなどの再生環境では中高域の出力が多少抑えられるため、若干ブーミーな反響をして緩めに感じるかもしれませんね。本来のサウンドを楽しむためには十分に鳴らし切れるDAPやポータブルアンプを使用したいところです。この環境では低域のキレが増し、重低音の沈み込みや解像感もしっかり感じられるようになります。それでもやはりサウンドバランスはニュートラルで、派手なドンシャリ傾向の製品とは異なる印象です。低域の方向性としては「NF AUDIO NM2」(NM2+では無く、ポリカーボネート製シェルのモデルのほう)に近いかもしれませんね。
このように「TFZ MY LOVE 4」は見た目のクールさに対して、音質傾向的には「KING PRO」を踏襲したフラット方向の「本格派」で曲のジャンルを問わず楽しめる実力があります。しっかりとした再生環境で鳴らせば、ボーカル曲だけで無く、演奏をしっかり聴き分けたり定位を実感することもできるため、各種インストゥルメンタル、さらにクラシックなどとの相性も良さそうです。たださらにキレのよさや低域の臨場感などを楽しみたい場合は「LIVE 3」などのほうが向いていそうですね。「TFZ MY LOVE 4」は全体的にはリスニングアレンジですが、「KING PRO」同様にスタジオモニター的な用途も多少は考慮されているかもしれません。そういえば初代の「SERIES 1S My Love」(2016年)も本来はミュージシャンとのコラボ製品でしたね。
また「TFZ MY LOVE 4」はインピーダンスが高く(おそらく)、リケーブル効果を得やすい製品でもあります。付属ケーブルは見た目的には抜群ですが、リケーブルによる変化を楽しむ選択肢もアリだと思います。具体的には「KBEAR KBX4925」や「NICEHCK C24-3」など、より情報量の多い16芯や24芯などの銀メッキ線ケーブルが相性が良さそうです。また8芯でも「JSHiFi-ZB8」など、明瞭感を底上げしてくれるようなケーブルが良さそうですね。
というわけで、「TFZ MY LOVE 4」は見た目をクールさを裏切らない完成度の高さで、アンダー100ドルの購入しやすい価格帯も含め、おそらく今年のTFZ製イヤホンのなかでは最も多くの方にお勧めできる製品だと感じました。今後国内版がリリースされるかはわかりませんが、新しいTFZ製イヤホンに興味がある方はややキャラ強めの「LIVE」シリーズもよいですが、とりあえず、王道のTFZらしさもありつつ、フラット方向の質の高さも実現した「TFZ MY LOVE 4」を狙ってみるのもお勧めです。特にKZなど同価格帯の多くの中華イヤホンとの違いを実感したい方には最適ですよ(^^)