KZ ZAS

こんにちは。今回は「KZ ZAS」です。低価格中華イヤホンブランドとしてすっかり定着した「KZ (Knowledge Zenith)」の最新の7BA+1DD構成のハイブリッドモデルです。この構成では昨年の人気モデル「KZ ZAX」がありますが、完全に一新されたシェルデザインおよび採用ドライバーにより別次元でのブラッシュアップを実現しました。
ちなみに最近のKZはいまいち評価が分かれるマルチBAモデルや、駆動時間や安定性からスペックや音質の割にマイナーな印象のワイヤレス製品など、活発な新製品のリリースのわりに一時期のような「勢い」は感じなくなっていましたが、やはりマルチドライバーのハイブリッドは得意ですね。KZの技術力はすっかり成熟期に入っている印象で、かつてのスペックモンスターだけど音質的にはイロモノ感は今回の「KZ ZAS」で完全に払拭し、多くのマニアを納得させるイヤホンに仕上げてきたなという印象です。間違いなく、KZの従来の全製品を比較しても個人的ナンバーワンの完成度だと思います。
KZ ZASKZ ZAS

KZ ZAS」は7BA+1DD構成で60ドル台、8千円程度とKZらしい低価格を実現した「スペックモンスター」なハイブリッドイヤホンですが、従来の「KZ ZAX」(同じく7BA+1DD構成)と比較し搭載ドライバーを一新。シェルデザインも最近のTWS製品同様のコンパクトなフォルムを採用しつつ、全体的に高級感をアップしています。また「KZ ZAX」のようなフェイス部分のベント(空気孔)は無く、より遮音性高い密閉型デザインになっているのも特徴です。

KZおよび姉妹ブランドであるCCAの最近のハイブリッドモデルと構成を比較してみると、新しいドライバーによるユニットごとの高音質化を活かした、従来とは異なる組み合わせの方向性が確認できます。

KZ ZAS:     (ステム部) なし   (ハウジング部) [30019]×+[50024s (2BA)]×3 +10mmDD(XUN)
KZ ZAX:     (ステム部) [30095]  (ハウジング部) [30019]×2 + [50024 (2BA)]×2 + 10mmDD 
CCA CKX:   (ステム部) [30095]  (ハウジング部) [30095]×1 + [30017 (2BA)]×2 + 10mmDD
CCA CA16:  (ステム部) なし   (ハウジング部) [30095]×3 + [50024 (2BA)]×2 + 7mmDD  

KZ ZASKZ ZAS
KZ ZAS」では搭載BAドライバーが「KZ ASX」以降の「s」付きモデルに変わったことで、「KZ ZAX」と比べても各ユニットの役割が大きく変わっていることがうかがえます。まず「KZ ZAX」ではステム部分にKZ製ハイブリッドではおなじみの「30095」が配置されていましたが、この役割を「KZ ZAS」では「30019」を単独で搭載。しかもステムでは無くハウジング部分での設置です。この出力部から少し距離を置いた配置および「いかにもKZな高域」の要素になっていた「30095」を使用しないという選択により、「KZ ZAS」では従来とは全く異なる高域の表現を行っていることがわかります。

また「KZ ZAX」では2種類のBAにより2Wayで実装していた中音域~中高域について、「KZ ZAS」では高性能化した「50024s」を3基(6BA)配置することで1Wayでカバーしています。搭載されたBAがしっかりとした表現力を持つことが条件ですが、とうぜん1種類のユニットで幅広い音域をカバーする方がつながりの良いサウンドになりますし、PCB基板により出力をしっかり制御できれば同じユニットを並列で配置することで1ユニットあたりの負荷が減るため、特に低コストのBAドライバーの場合は歪みの軽減に効果的です(「TRN BA15」の大量のドライバーを並列することでシングルダイナミックのような音作りをしたアプローチに近い発想ですね)。
KZ ZASKZ ZAS
そして低域用のダイナミックドライバーではワイヤレス製品の「KZ Z1」から採用された「XUN」ドライバーとよばれる独自のシャーシ形状を持つ10mm二重磁気回路ドライバーを採用。このドライバーは背面部分の独特な円錐状のシャーシ形状により、電磁コイルによりサウンドをターボチャージャーのように増幅させる仕組みになっています。有線イヤホンでは最近のKZ製イヤホンで特に評価の高い3DDモデル「KZ DQ6」でも搭載されていることで知られていますね。

これらのドライバーを「KZ ZAS」では樹脂製のクリアカラーハウジング内でダイナミックドライバーの外周に放射状にBAドライバーを配置する独特の内部デザインを採用。美しい金属製のフェイスプレートにより高級感を演出しています。
KZ ZASKZ ZAS
KZ ZAS」のカラーバリエーションはブラックとホワイトの2色が選択できます。価格はAliExpressでは66ドル~で販売されています。AliExpressでの購入方法はこちらを参照ください。
AliExpress(KZ Official Store): KZ ZAS

KZ ZAS」については「HiFiGo」でも購入可能です。「HiFiGo」の場合100ドル以上で送料無料となりAliExpressより優先配送便でより速く届くと思います。サポート面も含めてついで買いがあればこちらを選ぶのも良いですね。
HiFiGo: KZ ZAS

またAmazonではレビュー時点で「KZ Offical Shop」と「GK Offical Shop」から7.500円~で購入可能でした。また最近HiFiGoのAmazonマーケットプレイスからも少し安く販売されましたね。
Amazon.co.jp(LuckLZ Audio Store): KZ ZAS 7,500円~ ※プライム在庫あり
Amazon.co.jp(HiFiGo): KZ ZAS 7,831円~
Amazon.co.jp(KZ official shop): KZ ZAS 
Amazon.co.jp(GK official shop): KZ ZAS  7,599円~


■ 装着性も高く高級感のあるシェルデザイン。外観も「低価格イヤホン」から完全脱却かも

というわけで、今回もブラックとホワイトの2色をそれぞれ異なるセラーから購入しました。どちらも中国発送のためほぼ同じ2週間程度で届きました。「KZ ZAS」のパッケージはハイグレードモデルで採用されている黒箱タイプ。パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/Lサイズ)および本体装着済みの別形状タイプ、説明書。今回はケーブルが8芯銀メッキ線ケーブルにグレードアップしています。
KZ ZASKZ ZAS

KZ ZAS」の本体は樹脂製シェルと金属製フェイスプレート。ブラックはフェイスプレートの縁部分とステムノズルがゴールドカラー、ホワイトはシルバーの表面処理が行われています。「KZ DQ6」より若干大きいサイズ感で最近のKZ製TWS製品のシェル形状とほぼ同じくらいの印象ですね。
KZ ZASKZ ZAS
そのためステムノズルはKZのTWS製品同様の細い金属タイプが採用されています。このステム自体に問題は無いのですが、やはりネックになるのは柔らかくコシのないイヤーピースでしょう。今回も通常のイヤホンでMサイズ以上のイヤーピースを使用している方は付属のものは使用せず、交換は必須です(Sサイズ以下の方も交換推奨)。
KZ ZASKZ ZAS
ただ定番の「スパイラルドット」や「AET07」など開口部の大きいタイプのイヤーピースは抜けてしまうことが多いため、穴の小さいものを選びます。具体的には、「RHAイヤーピース」「Acoustune AET08」「final Eタイプ」などが候補に挙がるでしょう。また低価格のものでは「SONY ハイブリッドイヤーピース」は私もよく使います。他にはよりフィット感の高い粘着性のあるタイプで「SpinFit CP100+」もお勧めです。
KZ ZASKZ ZAS
耳にフィットするイヤーピース選びだけ最初から気をつけておけば「KZ ZAS」の装着性は良好です。本体は樹脂製のため比較的軽量で、また従来の「KZ ZAX」などと比べてフェイスプレートは細長くスリムなデザインになっているため、多少耳が小さい方でもしっかり収まるのでは思います。またイーピースをしっかり合わせれば遮音製もかなり良好になります。そして「KZ ZAS」は「KZ ZAX」にくらべて密閉度の高いシェルのため音漏れもほぼ無く、静かな場所でも問題なく使用できますね。

KZ ZASKZ ZAS
また「KZ ZAS」では従来の付属ケーブルより太さのある8芯銀メッキ線ケーブルが付属します。従来のケーブルより取り回しが良く情報量も大きく向上しています。ただ、最近単独で販売されているKZ純正の8芯銀メッキ線ケーブルと比べると明らかに細く(というかKZのオプションケーブルが結構太いというのもありますが)、いちおうリケーブルの余地は残している、という感じですね。


■ 「KZ ZAX」とは別次元の進化。低価格ハイブリッドの枠を自ら超えたサウンド。

KZ ZASKZ ZAS」の音質傾向はバランスが良く明瞭感のあるドンシャリ。以下はあらかじめイヤーピースを交換し、1日程度エージングを行った上での印象です。同じ「XUN」10mmダイナミックドライバーを使用している「KZ DQ6」同様に非常に力強く締まりのある低域が印象的ですが、KZ製ハイブリッドらしいドライで明瞭感のある中高域が非常に高い次元でミックスされており、「KZのサウンドもここまで成熟したか」と改めて驚かされる仕上がりです。今回の「KZ ZAS」では中高域のBAドライバーの組み合わせの従来のKZのパターンから大きく変えてきていますが、そのチューニングは完全に成功していると実感しました。「従来のKZらしさ」とされた部分で高域の金属質なギラつきなど気になる部分は完全に払拭し、さらに解像感が高くドライでスッキリした印象はしっかり継承するなど、KZのハイブリッドイヤホンの音作りが、いよいよ音質面でも「低価格イヤホン」の枠を超えてきているなと思います。

ちなみに、余談ですが、昨年「KZ ZAX」がリリースされた際、私のレビューおよびその後のランキングでは「一定の評価をしつつ個人的にはあまり好きではない」という内容のことを記述しました。「KZ ZAX」は良くも悪くも「当時のKZらしさ」の延長線上にあり、そのサウンドを好印象で受け入れたKZイヤホンのファンが多数いた反面、「さすがにもう飽きた」という声も少数派ながら存在しました(それ以外に当初から毛色が違った無印「ZS10」やその実質的後継「CCA C10」の流れを汲む「ZSX」のほうが「ZAX」より好き派も結構いらっしゃいますね)。
KZ ZAS個人的には(4BA+1DD構成、50ドル以下の)「KZ ZS10 Pro」あたりで一度ゴールした「低価格イヤホンとしての派手な寒色系ドンシャリサウンド」を、「KZ ZAX」という、当時より上位モデルでスペックモンスターな機種でも踏襲し続けていることに違和感を持ったのも事実です(当時のレビューでは「7BA+1DDという構成そのものを含めれば十分に価値があるが、音質比較だけなら同価格帯でもっと高評価の製品は複数存在している」と記載し、ランキングでも反映させました)。「KZ ZS10 Pro」のレビューでは「このちょっと下品さを感じるくらいの派手さが楽しい」と書きましたが、それは(50ドル以下の)「低価格イヤホン」だから成立することだろうと思ったんですね。

従来のKZ製品は最初のハイブリッドモデルである「KZ ZST」から代々、ダイナミックドライバーを中心に、高域または中音域をBAで補う音作りがあり、ダイナミックドライバー自体はシェル形状を活かした「箱鳴り」や「抜け」を最大限に活用してきました。どんなにBAの数が多くても主体はあくまでダイナミックドライバーで、それをKZロゴの付いた中華BAユニットが補う構図を継続していたからこその低価格だったと思います。反面、低域以外の音域もある程度ダイナミックドライバーで「鳴る」ことを抑制できないため、各BAはそれを踏まえたチューニングにする必要があり、結果的に「足し算」の音作りとなり「派手で人工的な印象」の「中華ハイブリッド的な音」を生み出す理由になっていたかもしれません。

KZ ZASしかし「KZ ZAS」では当初はTWS製品向けだった「XUN」ドライバーの採用で、ドライバーシャーシ内のドームで低域を増幅する(ドライバー単独で鳴らせる)構造により「箱鳴り」を意識すること無く音作りを行えるようになりました。これにより「シェルデザインの自由度が大幅に向上」しますし、音質的には出力やフィルター等で「制御がしやすくなる」という側面もあるだろうと思います。結果的に、見た目にも音質的にも様々な制約から解放され、寒色系弱ドンシャリの方向性自体は同じながら、「KZが意図したサウンド」に近づけているのではと思います。

このような理由もあって、「KZ ZAX」に持っていた少し「モヤモヤした感想」は今回の「KZ ZAS」で解消することが出来ました。そしてアンダー100ドルクラスでもトップレベルに評価できる製品に「大化けした」と感じます。全体としてはボーカル帯域にフォーカスした多少イマドキ感のあるチューニングで、聴きやすく非常に良いと思う方が多いだろうと思う反面、やや暖かく高域がもっと伸びてほしい、という感想を持つ方もいらっしゃるのではと思います。その点については例によってリケーブルで結構変化を楽しむことができます。今回の「KZ ZAS」は各音域により高いポテンシャルを持ち、多少駆動力を上げたり、派手めのケーブルに換えても破綻すること無くしっかり鳴ってくれる実力があるようです。


■ バランス良く聴きやすいサウンド。KZらしさを感じつつハイブリッドの良さを伸ばした秀作

KZ ZASKZ ZAS」の高域は、明瞭で伸びのよい音ながらより自然で聴きやすい音で鳴ります。寒色系の硬質な音ですが、従来の「30095」から「30019」に高域用BAが変更となり、6BA分が並列で鳴る「50024s」ユニットが高域の一部を担うことで、従来のKZ製ハイブリッド特有の金属質なギラつきが無く、より直線的な伸びがあります。いっぽう、中音域の主張およびパワフルな低域とのバランスにより、付属ケーブルでは少し下がって鳴る印象もありますね。スッキリしており適度な煌めきもありますがこのバランスのためかなり刺さりやすい曲でも聴きやすく鳴ってくれます。ただもっと高域の鋭さやシンバル音の煌びやかさなどをしっかり感じたい場合は、後述の通りリケーブルをお勧めします。

中音域は「KZらしさ」をしっかり感じさせつつ、明瞭で癖の無いサウンドを聴かせてくれます。全体的にドンシャリ傾向のため曲によって少し凹みますが、ボーカル帯域に主張があり、抜けが良く、ハッキリとした聴きやすい音で再生されます。「KZらしさ」を感じるポイントはスッキリ感のある金属質でドライな鳴り方で、キレとスピード感のあるサウンドを楽しめます。さらに「KZ ZAS」では中音域から中高域、中低域へのつながりが既存モデルより自然で、輪郭のはっきりした音ながら過度に人工的にならないのは好印象です。いっぽうで「KZ ZAX」を含む多少派手さのあるサウンドに慣れていると多少ウォームに感じるかもしれませんね。音場は広さがありますが、曲の雰囲気を楽しむタイプのイヤホンですので定位はボーカル寄りに少し演出されています。それでも分離は非常に良く演奏をより詳細に捉えることも難しくありません。

KZ ZAS低域は「XUN」10mmドライバーによるとにかくパワフルなサウンドが特徴的です。開封直後は少し響きが強い印象もありましたが1日程度のエージングで整ったバランスになりました。ミッドベースは僅かに膨らみますが分離は良く、KZらしいスピード感のあるアタックでベースラインは捉えやすい印象。これまでのKZのダイナミックドライバーは締まりはあるもののやや硬めで特に重低音の深さや重さに「コストの違い」を感じることがありました。しかし「KZ ZAS」の「XUN」ドライバーはシャシーの背面で低域を増幅させる構造になっており(いわばバックロードホーンスピーカーみたいな考え方ですね)、キレや締まりの良さを持ちつつ、より深く沈み強さのある重低音表現しています。このパワフルな低域用ドライバーの登場により、中高域のBAを重ねて出力を上げても全く負けない質感を実現できているようです。

KZ ZAS」はバランスの良いドンシャリ傾向のサウンドですので、ロック、ポップス、アニソンなどのボーカル曲はもちろん、EDMなどとも相性の良さがあります。また多くのインストゥルメンタルも心地よく聴くことができるでしょう。ただ全体的にドライでハッキリ、スッキリのサウンドですので、バラードなどを艶のある音で聴きたい方には向かないかもしれませんね。
KZ ZASKZ ZAS
あと女性ボーカルの高音など、もっと抜け感や伸びを向上したい場合はリケーブルを推奨します。高域の明瞭感を高める上では「NICEHCK LitzPS Pro」「KBEAR KBX4913」などの純銀線ケーブルがまず候補に浮かびますね。8芯純銀線の場合、駆動力のあるDAP等で鳴らすと中高域が結構派手めに変化します。また全体的に解像感やキレを向上し、より見通しの良いサウンドにしたい場合は「NICEHCK C24」シリーズの銀メッキ線やミックス線を試してみるのも良いでしょう。他にも価格的にはちょっと釣り合いがとれていない気もしますが、NICEHCKの青色線シリーズ(「 SpaceCloud」「BlueComet」「BlueIsland」)もそれぞれの違いがあって楽しいですよ。もちろん、KZ純正の8芯ケーブルや、「JSHiFi-Hi8」のような低価格の銀メッキ線ケーブルでも付属ケーブルと比べて十分にリケーブル効果はありますので、いろいろ試してみてくださいね。


というわけで、「KZ ZAS」はKZ製品としてはひさびさに「コレは良いイヤホンだ」と実感できた製品でした。低価格モデルに「KZ EDX」や「KZ ZSTX」を押さえつつ、少し上のお手頃価格なら「KZ DQ6」、マルチドライバーなら今回の「KZ ZAS」というのが、KZラインナップの「新しい定番」となりそうですね。
NICEHCK HB2個人的には毎回カラーバリエーションを異なるセラーで買っているのですが、今回は「各色持ってて良かった~」としみじみ実感できました(どれとは言いませんが、未試聴でカラバリ買い揃えたの失敗だった~、という100ドル級以上のKZ/CCAも増えてますからねぇ。涙)。実は同じ時期に購入したワイヤレスアダプタの「KZ AZ09」が思い切り不良品で今回のレビューでは試していませんが(どうも「KZ AZ09」はまあまあな確率でハズレが発生する地雷モデルという噂もあります)、このようなワイヤレス利用も含めて(多分私は「TRN BT20S Pro」か「NICEHCK HB2」と組み合わせます)、今後も利用頻度が増えそうなイヤホンだなと思っています(^^)。