Moondrop VARIATIONS

こんにちは。今回は「Moondrop VARIATIONS」です。マニアの間でも高い人気を維持している中国のイヤホンブランド「Moondrop(水月雨)」のリリースする上位モデルのひとつで、高域用の静電(EST)ドライバーを含む3種類のドライバーを合計5基(1DD+2BA+2EST)搭載する構成が大きな特徴のモデルです。実は7月下旬には届いていましたが、レビューは書きかけのままになっていました(^^)。その間に国内版もリリースされ1ヶ月くらい経っていますので今更ながらの紹介ですね。個人的にはMoondropのイヤホンは私自身も好みの機種が多く、最近は新機種が出るごとについ購入してしまいます(^^;)。
過去記事(一覧): Moondrop(水月雨)イヤホンのレビュー

Monndropは「S8」や「Blessing2」といったマルチドライバーの製品もリリースしていますが、今回の「Moondrop VARIATIONS」はクロスオーバー設計に「Blessing2」のエッセンスを取り入れつつも外観およびドライバー構成でまた新しいキャラクターを感じさせます。ちなみに、Sonion製の静電ドライバーを搭載するハイブリッド製品は複数のメーカーより以前から販売されていますが、基本ハイグレード扱いで10万円を大きく超える価格設定の製品も少なくありません。そんななか5万円台の価格設定は比較的購入しやすいモデルとなるのかも。音質傾向的に今回は中低域寄りで、特に低域の力強さが印象的なサウンド。またこの低域ととともに滑らかに奏でるESTを含めた各ドライバーの表現は上質で心地よさがあります。
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Moondrop VARIATIONS」は「1DD+2BA+2EST」の5ドライバーハイブリッドモデルで、低域用の「10mm LCP液晶ポリマーダイナミックドライバー」を、中音域に独自開発のカスタマイズBAドライバー「Softears D-MID-B」(2BA)、高域用に「Sonon製のデュアル静電ドライバー」の3種類のドライバーを搭載。3Dプリンティングされた樹脂製ハウジングおよび音導管にはKnolwles製アコースティックダンパーを搭載し、最適なチューニングが行われています。
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低域用のLCP液晶振動版ダイナミックドライバーはアンダー100ドルクラスで非常に人気の高い「Aria」でも採用されており、バランスの良い高音質を生み出すドライバーとしてMoondropらしさを感じる領域です。またミッドレンジ用のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーも同社カスタマイズのものを使用しています。搭載されているのは2BAユニットの「Softears D-MID-B」で同社の「S8」(8BAモデル)のミッドレンジでも採用されているBAドライバーです。そして高域用の静電(EST)ドライバーは、このタイプのドライバーとしては定番となっているSonion製のデュアルドライバーユニットを搭載しています。最近は低価格中華イヤホン用の中華ESTも僅かながら姿を現していますが、こちらはEST搭載のハイエンド製品で多くの実績のあるユニットをしっかり採用しています。また「Moondrop VARIATIONS」ではハイブリッドモデルの「Blessing2」で採用した3Dプリンティングによるクロスオーバーデザインを採用し、Knowles製音響ダンパーとの組み合わせにより音質の向上を行っています。
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Moondrop VARIATIONS」の価格は 520ドル。また8月より国内版もリリースされており、6万円前後の価格で購入できます。実際のレートおよび為替手数料を考慮すると2~3千円程度の違いがありますが、比較的価格の高い製品ですので、この程度の差でしたら保証なども考慮し今なら国内版で購入する方がよさそうですね。
HiFiGo (海外版/国外より発送): Moondrop VARIATIONS
Amazon.co.jp(国内正規品): Moondrop VARIATIONS


■ 今回も趣向を凝らしたパッケージ。ケーブルはプラグ交換式を採用。

というわけで、わたしは海外版リリース後にオーダーして購入しています。届いたのは7月下旬でしたが8月に入ってすぐに国内版もリリースされたので、「あ、もうちょっと待ってても良かったかも」と思ったのも事実。同社の国内代理店は価格設定やリリースのタイミングも含め結構良心的だなという印象ですね。
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Moondrop VARIATIONS」のパッケージはキューブ型で非常にこった作りになっています。パッケージに多少コストをかけられるのもハイグレードモデルならではですが、いろいろイヤホンを買っていると各社の趣向を凝らしたパッケージはなかなか棚の場所を取って・・・(汗)。
パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブルおよび交換用プラグ、イヤーピース各種、レザーケース、あと写真に載っていませんが(撮り忘れました)交換用のメッシュとピンセット、その他各種カード類です。より詳細は上記のメーカー写真も参照くださいね(^^;)。
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3Dプリントされたシェルはハウジング部分が適度にザラザラな表面処理が施されており、ツルツルのレジンシェルとはちょっと違った雰囲気を出してます。また滑り止め効果もあるので装着時のフィット感の向上にも多少役立っているのかも。フェイスプレートはこれもザラザラな表面処理をされたステンレス製ですが、全体としてはそれほど重くは無く、装着感も良好です。
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付属ケーブルは6NPCC同軸単結晶銅線を採用。「Moondrop Illumination」の付属ケーブルでも採用されているプラグ交換式のタイプで3.5mm、4.4mm、2.5mmの各コネクタを使用可能。交換コネクタはどの向きでも刺さってしまうので、ケーブル側およびプラグ側のマークを合わせてつなぎます。適度に細く取り回しの良いケーブルですね。
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またコネクタは従来モデル同様に0.78mmの2pin仕様のためリケーブルももちろん可能です。「Moondrop VARIATIONS」のシェルサイズは「Blessing2」と似たサイズ感で「KXXS」よりひとまわり以上大きいのものの、フェイス部分はより細身のデザインなのがわかります。
Moondrop VARIATIONSMoondrop VARIATIONS
イヤーピースはウレタンタイプとシリコンタイプが付属。付属のグレーのタイプはKXXSなどに付属するものより多少開口部分が広いタイプになっているようです。この付属品のほか定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」よりフィット感の強いタイプでは「AZLA SednaEarfit XELASTEC」などに交換するのも良いと思います。


■ 実は低域の存在感と質の高さが特徴的。低域に負けないESTの存在感と全体の完成度の高さ。

Moondrop VARIATIONSMoondrop VARIATIONS」の音質傾向は同社にしてはちょっと珍しい中低域寄りのバランスです。静電ドライバーを採用したチューニングというと同価格帯の「DUNU EST112」のようにどちらかといえば中高域寄りで高域の表現力を活かすチューニングが多い中で、このイヤホンは真逆のアプローチで、低域の量感および質感を中心に仕上げられているのがとても興味深いですね。とはいえ高域には静電ドライバーらしい独特の質感もあり、全体としての解像感も高く、この価格帯のイヤホンらしい精緻な表現力があります。また低域を中心に結構厚みのあるサウンドですが、Moondropらしい明瞭な透明感と柔らかさ、そして自然なつながりを感じる質の高さも実感できるリスニングイヤホンだと思います。

Moondrop VARIATIONS」の高域は非常に解像感が高く煌びやかさを持ちつつ、BAの金属感とはまた異なるEST(静電ドライバー)特有の質感があります。刺さりやすい帯域の刺激はコントロールされていますが鋭い音はしっかり鋭く、直線的な伸びの良さと明瞭さがあります。実際高域もかなりパワフルに鳴っており実際は十分な主張があります。個人的な印象ですが、Moondropは従来より低域の厚みのあるサウンドを作ろうとした際に、その低域に負けずに存在感を発揮できる高域として2基のEST(静電ドライバー)を採用したのかな、とも感じました。

Moondrop VARIATIONS中音域は癖の無いニュートラルな音で、明瞭かつ高い解像感と分離をもちつつ適度に柔らかい「いかにもMoondrop」というサウンドです。同社のマルチBA機やハイブリッド機でもミッドレンジは自社のカスタムBAユニットを使用する「こだわり」が生み出しているサウンドといえるでしょう。
非常にきめ細かい滑らかさがあり、適度な艶ととともに、高い透明感があります。女性ボーカルはより強めの主張を感じますが全体的に澄んでいる印象で、男性ボーカルもドライになることなく心地よい質感があります。音場は適度な広さと立体感があり、ボーカルが僅かに前に出るものの、しっかりした奥行きと広さで演奏の1音1音を捉えることが出来ます。レスポンスの速い高域および低域と比べると中音域はややゆったりしており、結果的にそのことが全体的な印象を高い解像感を持ちつつ柔らかい印象に繋がっているのかなとも感じますが、逆に硬質でキレッキレのサウンドを求める方には合わないかもしれません。

低域は量感とともに力強さがあり、アタックの強さはMoondropの他のモデルと比較してもかなり意外に感じるかもしれません。また非常に質の高い重低音があり、その深さや解像感は特筆すべきものでしょう。
Moondrop VARIATIONS前述の通り、この低域を表現するうえで、籠もること無く負けない高域を実現するためのESTだとしたら、やはりMoondropは相当に意欲的な音作りをしているのだなぁ、と思います。ミッドベースは太く厚みがありますが、いっぽうで直線的でキレと締まりを感じます。解像度の高いESTの高域と遜色ない解像感と分離性があり、その心地よさと楽しさはこのイヤホンを選択する十分な理由になるかもしれませんね。このように強力な低域ですが、中高域がマスクされて下がったり籠もるようなことはなく、しっかり分離して主張するバランスの良さも同社のチューニングの上手さを感じます。

Moondrop VARIATIONS」は質感の良いサウンドのイヤホンとして、ボーカル曲はもちろん、EDMなどのデジタル音源、各種インストゥルメンタル、そしてジャズやクラシックなども楽しめるでしょう。いっぽうでジャンルと言うより傾向でより硬質な音が良いと感じる方やモニター的な鳴りが欲しい方にはあまり向きません。非常に上質でエモーショナルなリスニングイヤホンだと思います。

Moondrop VARIATIONSここまで記載した通り、全体のバランスとしては低域の印象の強い「Moondrop VARIATIONS」ですが、据置きアンプや同等の出力のあるポータブルアンプ(例えば「XD-05 Bal」など)で鳴らすと中高域の主張がぐっと増し、よりメリハリのあるサウンドになります。DAPで聴く場合も3.5mmアンバランスと4.4mmまたは2.5mmバランスでは明瞭感や分離が向上するだけで無く中高域の主張が増すケースも多いのではと思います(一般的にバランス出力対応のDAPの多くは構造的な理由もありバランスの方が出力が大きい事が多いですね)。同様にリケーブルにより中高域の駆動力を稼ぐアプローチも有効でしょう。情報量が多く音質傾向を継承してくれるケーブルとの相性の良さがあります。個人的には「TRI TRX4935 TRI Grace-S」銀メッキ線ケーブルとの組み合わせが好印象でした。
Moondrop VARIATIONS」は決して安価なイヤホンではありませんが、「DUNU EST112」と並んで5万円台~で購入できる静電ドライバー搭載ハイブリッドイヤホンとして、十分にお勧めできる質感をもったサウンドだと実感しました。音作りの上手さはやはりMoondropですね。静電ドライバー搭載でもかなり印象の異なる製品ですので、できれば両方のモデルを試聴などで比較して好みを選ぶのも良いかもしれませんね。