
こんにちは。今回は「THIEAUDIO Legacy2」です。グローバルの中華イヤホンセラー「Linsoul」系のブランドのひとつである「ThieAudio」の最新のモデルで、1BA+1DD構成の最もエントリークラスの製品となります。ブルーの美しいレジンシェルにKnowles製の定番フルレンジBAユニット「ED-29689」と、独自の10mmベリリウムダイナミックドライバーを搭載。それぞれのドライバーの特徴を活かしたハイブリッドサウンドを実現しています。また高性能ドライバーを搭載しつつ100ドル以下と購入しやすい価格設定も魅力ですね。


「ThieAudio」からは平面磁気ヘッドホンの「Phantom」、EST(静電)ドライバーを搭載する「Signature」シリーズ(現在「Monarch」「Clairvoyance」「Oracle」の3モデルをリリース)、14BAのハイエンドモデルをはじめとする「Voyager」シリーズ、そして最もスタンダードなハイブリッドIEMである「Legacy」シリーズ、といった豊富な製品群がラインナップされています。また「Legacy」シリーズでは、それぞれドライバー数の異なる「5」「4」「3」の各モデルが販売されており、高品質なサウンドとプライスパフォーマンスの高さからマニアの評価も高いようですね。
今回の「THIEAUDIO Legacy2」は「Legacy」シリーズでも最小のドライバー構成で100ドル以下と最もエントリーなモデルとなります。しかし、低域用ダイナミックドライバーに独自の「クローズドバック10mmベリリウムダイナミックドライバー」を初めて採用し、上位モデルとのキャラクターの違いを鮮明にしています。このドライバーはベリリウムの高い硬度から非常に迅速なレスポンスがあり、より強力な内部磁石と新しいシャーシを使用することで、従来より優れた低域を実現しているようです。


そして中高域には定番のフルレンジBAユニットとしても知られるKnowles製の「ED-29689」を採用。ニュートラルな中音域と正確で高解像度の中高域および高域を実現しています。数多くの有名なシングルBAイヤホンで採用されてきたこのBAドライバーと、独自のベリリウムダイナミックドライバーを組み合わせ、上位モデルの「Signature」シリーズと同様のチューニングを行うことで、「THIEAUDIO Legacy2」は様々な用途に対応出来る最適なハイブリッドサウンドを実現しているようです。


「THIEAUDIO Legacy2」の購入はアマゾンの「L.S オーディオ」にて。日本での販売価格は11,980円です。この価格は海外での価格(99ドル)の現在のレートとほぼ同じで、さらに為替手数料を考慮するとより割安な設定となっています。
Amazon.co.jp(L.S オーディオ): ThieAudio Legacy 2
※2022年1月21日より代理店より国内モデルが販売開始されました。国内モデルは税込み 13,170円~程度で販売されています。
楽天市場(検索結果): THIEAUDIO Legacy2
■ コンパクトで美しいレジンシェル。装着性も良好。コネクタはフラットな2pin仕様。
「THIEAUDIO Legacy2」のパッケージはシンプルな黒箱タイプ。落ち着いたデザインは高級感がありますね。パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(黒色タイプ、白色タイプの2種類、それぞれS/M/Lサイズ)、レザーケース、説明書など。


レジン製の本体はコンパクトにまとまっており、装着性も良好です。充填タイプのハウジングではないためとても軽量にまとまっていますね。ベント(空気孔)は側面に2カ所。コネクタはフラットな2pin仕様で中華2pinまたはCIEM 2pinタイプのケーブルが使用できます。


本体の大きさは「qdc Neptune」などに近く、「qdc Uranus」より少し小さいくらい。先日レビューした「DUNU Studio SA3」とは価格帯も近く青系のレジンシェルということで似た印象がありますが、実際に比べてみると親子ほどサイズの違いがあって興味深いですね(まあSA3が大きすぎる、という話もあるのですが・・・^^;)。付属するケーブルは銀メッキ線タイプのケーブルで適度な太さがあり、質感も良く取り回ししやすいケーブルです。コネクタは中華2pin仕様になります。


イヤーピースは付属の2種類のほか、定番のJVC「スパイラルドット」やよりフィット感の強いタイプでは「AZLA SednaEarfit XELASTEC」や「SpinFit CP100+」など、自分の耳に合う最適なイヤピースを選択するのが良いでしょう。
■ バランスの良さに重点を置き制御されたサウンド。リケーブルでのアレンジも。
「THIEAUDIO Legacy2」の音質傾向は派手さは無いもののニュートラルなサウンドバランスで、全体的なまとまりの良さを感じます。いちおう1BA+1DDのハイブリッドですが、実際は構造的に「ED-29689」ベースのシングルBAイヤホンに低域をベリリウムダイナミックで補うような内容ということから、「あ、これは駆動力のいるやつだ」と想像されるマニアの方も結構いらっしゃるかも(私のブログをよく読んでいただいている方も、ある種のパターンに気づいたり^^;)。


「THIEAUDIO Legacy2」の高域は自然な伸びの良さと解像感があります。シンバル音などの鋭さや適度な煌めきなど、「ED-29689」らしい解像感とニュートラルな印象がありますが、全体のバランスに合わせてよくコントロールされており、聴きやすくまとまった印象です。そのため最近の中華ハイブリッドと比べると派手さはなくやや落ち着いた、曲によっては暗めな印象を感じるかもしれません。個人的には全体とまとまり感がある音作りで好感しましたが、高域により分かりやすい明瞭感を求める方は多少派手めに変化する銀メッキ線や純銀線へのリケーブルを検討するのも良いかもしれませんね。

低域はハイブリッドらしい十分な量感がありますが、全体のバランスとしてはニュートラルで、低域を強調したサウンドとは異なる印象です。量的にはミッドベースに集中しており、過度に膨らむことはありませんがパワーがあります。いっぽうで重低音の深さは一般的な印象です。一般的なベリリウム(コート)ドライバーの印象とは少し異なり、多少ウォームで緩やかな印象があります。
ちなみに、中高域をより明瞭に、あるいはよりキレのあるサウンドに変化させたい場合はリケーブルは有効な手段です。「ThieAudio」自身も純正のアップグレードケーブルを最近リリースしましたが、「THIEAUDIO Legacy2」は情報量の多い、比較的高品位なケーブルと相性が良いようです。


Linsoulのケーブルでは「LINSOUL Euphrosyne」 5N-OCC 銀メッキ Type6 Litz線ケーブルが想像以上に相性が良くて驚きました。情報量と分離性の向上による解像感や見通しが良くなるだけでなく、中高域の明瞭感や音場の空間表現などもかなり向上し、ウィークポイントに感じた部分のいくつかが解消されました。おそらく純正のアップグレードケーブルも同様の効果が得られるのではと想像します。また24芯銀メッキ線ケーブルなどとの組み合わせでは、低域や音場感には大きな変化はありませんでしたが、中高域の明瞭感が増し、スッキリした印象に変化しました。
「THIEAUDIO Legacy2」は全体のバランスの良さに重点をおいた印象で、おそらくサウンドエンジニアによる一貫したポリシーのもと、それぞれのドライバーを厳密にコントロールしているのだろう、と感じさせるサウンドです。そのアプローチは一応の成功を得ており、様々なジャンルの曲を破綻することなく聴かせることができるのはこのイヤホンの大きな特徴でしょう。その点においては100ドル以下のリスニングイヤホンとしてはかなりよく出来ていると思います。

SA3もいいんですけど確かにデカいんですよね・・・